魔界に堕ちよう RELAYS - リレイズ - 忍者ブログ
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取り敢えず更新頑張らないとっていう。Wantのプロットもまだまだだけどね!
頑張って書いてたのに消えて死にたくなったのは俺だけじゃないはずだ。




RELAYS - リレイズ - 36 【報告】

「今回は——」
そこまで言いかけて止まる。
今回の任務の内容は三つあった。一つ目の『の軍隊に加勢して敵を撃退すること』は終わっている。二つ目の『ウィジロの軍人を、数人でいいから捕らえること』。これはイーナが居るから大丈夫……という訳にもいかないだろうか。後でそこは聞いてみることにする。
だが三つ目だ。『極力死者を出さないこと』。
俺はあの時、焦げ茶の長髪に赤コートの青年——マーヴィンと対峙した時に気を失っている。
結局あの後はあちら側が撤退したらしいが、死者やその他の事は解らない。
要するに、俺は三つ目の事については本当に解らない……というか知らないのだ。
「……ああ、お前は気を失っていたか。仕方ない。オレが言おう」
「はい……すみません、シェイド大佐」
「じゃあ何でお前が話すみたいな感じになってんだよ? ちゃんと言えば良かっただろ」
ラスターさんの言う通り、何故俺は話す前に「気を失ってたので解りません」と言わなかったのか。
「いや、何か空気的に『それじゃあヘメ君よろしくね』みたいな感じでしたよね」
「知るか」
「知らないぞ」
「知らねぇ」
「知らないよ?」
ソーマとシェイド大佐、ラスターさん、ダグラスさんに同時に言われ、二の句が継げなくなる。
「絶対そういう空気でしたよ!! 俺がそういう空気に乗っちゃうって解ってて言いましたよねアレ!!」
「それは被害妄想だよーヘメくーん」
ダグラスさん特有の間延びした口調が何故か感に障るというか、何というか……兎に角無性にイライラする。
俺は何故か『それじゃあお願いします』といったような空気——といったらいいのだろうか、雰囲気になると、何となく自分がやろうと思ってしまう。
仕切るのが好き、というのとは少し違うが。
「まあそれは後々話せばいいだろう。全部オレが話すから黙っていろ」
「……わ、解りましたよ」
今ここで言い合っても、俺に良いことなんて一つもない。逆に醜態を晒すことになる。
「——それじゃあ、大佐」
ダグラスさんももうふざけるのはやめにしたのか、その口元から笑みが消えていた。
何となく、いつもよりも緊張しているような状況に、俺も気を引き締める。
と同時に、背後から本当に小さくだが舌打ちのような音が聞こえた。それを訝り、振り返る。
「……どれだけ脱線すれば気が済むんだ」
小声の筈なのにやけにはっきりと聞こえたソーマの聞いた者の背筋を凍らせるような低い声に、俺は身震いした。
そろそろ真面目に本題に入らないと色々な意味で危険だ。こいつは一度怒ると何をしでかすか解らない。恐らく、辺り一面に氷柱を発生させるか、凍らせるかのどちらか。
「……シェイド大佐」
ソーマが俺の背後でずっと黒いオーラを出し続けている、その現実に耐えきれず、シェイド大佐に小さく声をかけた。
「ああ、解っている。——まず、犠牲者の数だが」
やっと本題に入れたことに、俺は内心安堵の溜息を漏らしていた。背後でも、黒いオーラが若干だが薄くなった気がする。
「オレが確認しただけだと、本当に少なく抑えられたと思う。戦いで犠牲者を出さないのは不可能だったが、あちら側も同じらしい。死なない程度の怪我は容赦なくさせているが」
こんな戦いで、死者を出さないで戦えという方が無茶な話だ。
というか、そんな事はできるわけがない。有り得ない。
戦いなんて物がある以上、犠牲は避けられない。
そう考えると、何か溜息を吐きたくなるような、途方に暮れるような不思議な感覚がある。胸に穴でも空いた感じ、と言えば一番近いのかもしれない。上手く説明できないけれど。
「死なない程度の怪我……と言うと?」
「手足を撃ったり、切り付けたり……だな。その他にも多いのが、武器を使えないようにする、といった方法か」
ラスターさんがやったように、銃を真っ二つに切断したりという方法だ。一応俺にもできた……けど。
確かにそうすれば、戦力を削げる。勿論、この世界のどこかには居ると思うが、まさか銃や剣を持っている相手に素手や足技で大勢の兵に向かっていく人間は居ないだろう。
「ちゃんと治療もすれば、完治する。心配は要らない」
「それなら問題なし。今回の任務内容は全部クリアしてるよ。ほんと、お疲れ様」
黙ってシェイド大佐の話を聞いていたダグラスさんは、どこか安心したように微笑んだ。
言い終わった後、ダグラスさんは少し考え、思い出したように顔を上げた。
「ああ、それと何で大佐達を呼んだのかも言っておかないと駄目だね」
今まで忘れていたが、それだ。
シェイド大佐を呼んだのには、何か理由がある筈だ。
幾らダグラスさんが人使いが荒くてそういう意味では若干鬼畜だからといって、対した理由も無しに『ちょっと会ってみたかった』というような理由で呼ぶような人ではないことは良く解っている。
「では、その理由を頼む」
「勿論。……まあ、駄目で元々と思って言うんだけど」
そう前置きしてから、シェイド大佐の目を見据える。
「僕——いや、我々への協力を、お願いしたい」
「……協力要請、か」
シェイド大佐やラスターさんのような、戦闘能力が高い人間が居れば、これから少しでも楽になるかもしれない。
ただ、ラスターさんは店に休店の貼り紙を貼っているからいいとして、シェイド大佐はどうなのか。
「オレは別にいいぜ。店なんて放置してても大丈夫だろうし。あの店泥棒も入らねぇよ」
「それもそれでアバウトすぎると思うんですが」
「いっそ泥棒にでも入られて無一文になってしまえ、馬鹿が」
「いや、兄サンの貯金あるからそこは大丈夫だな」
「別に真面目に答えなくていいですよ、これ絶対馬鹿にしてるだけなので」
ソーマのツッコミというか、毒舌に真面目に答えなくても……答えなければ殺される、というわけでもないのだから。
だが突っ込んだ本人は大真面目らしく、「俺はふざけて等いない」と言ってきた。まあソーマがふざけるなんて事は有り得ないか。それこそ犠牲者を出さないくらいに。
「……それで、大佐は?」
「——オレも……良いだろう。どうせ戻っても、訓練と見張り程度だ。あんな平和な街、攻め込んでくる方が不思議だ」
「そうそう。リグスペイアなんて昔っから影薄いんだからよ」
この二人に、郷土愛なんて言葉はないのかと問い質したくなった。冗談なのか本気なのか解らない。
「良かった。……それじゃあ、二人ともこれからよろしく」
ダグラスさんが言った瞬間、イーナを部屋に案内し終わったのかアイドが帰ってきた。
——何か嫌な予感がするな、これ。
「し、司令官……終わりました」
「丁度良いところにきた! よしアイド、今度はこの二人を」
「いい加減にしてくれこの鬼司令官!!」
涙混じりの声で叫び、アイドは帰ってきたばかりだというのにどこかへ走って逃げていった。
「あーあ行っちゃった……冗談だったのに」
「冗談に聞こえないんですよ、ダグラスさんのは」
突拍子もないことを、常識的に考えてやるわけがないと思ったことを本当に実行してしまうから、冗談だと思われないのだ。
「そうなの?」
「……オレもそうだと思うぜ」
「ラスターと同意見だ」
「別に貴様がどう思われていようがどうでもいい」
「そうなんだ……取り敢えずソーマ、その言い方酷くない? 泣いていい?」
ソーマの言い方が酷いのもいつものことだ。取り敢えずソーマを抜いてここにいる3人が『冗談に聞こえない』という考えらしい。
「仕方ない……じゃあ僕が案内するから付いてきて。ヘメ君達はもう部屋に戻ってもいいしどこ行ってもいいよー」
「解りました。じゃあ、シェイド大佐もラスターさんもまた後で」
「ああ。またな」
「じゃあなー。また後で」
どこか面倒くさそうなダグラスさんに連れられて歩いていく二人の姿が見えなくなる。
それからしばらくして、サイラスとファンデヴが戻ってきた。
「おー終わったのか、丁度」
「ああ。そういえばどこ行ってたんだ?」
研究室付近は、サイラスにとってトラウマになっているだろうからそこには行っていないに決まっている。
となると、二人でどこに行っていたのか気になった。
「あー、ただちょっと面白いのねぇかなと思って、色々見てきた。ファンデヴは全部見たらしいがな」
「サイラスが研究員に絡まれてる間暇だったから、それだけ」
「そうだったのか。——あれ、ソーマ?」
俺の背後に居た筈のソーマが見当たらない事に気付き、俺は辺りを見回した。
「ソーマ? あああの白髪頭か。さっき俺等と入れ違いに出てったぞ」
「白髪頭って、本人に言ったら殺されるぞ……」
そんなことをソーマ本人に言ったら、氷柱で串刺しにされるかナトゥスで首を刈り取られるかのどちらかだ。
「まあいいか……それじゃあ俺も行く」
「あ? あー解った。んじゃ、俺等は部屋戻るわ」
「解った。じゃあまた今度」
サイラスとファンデヴに手を振り、俺はその場を後にした。




1週間くらいかかったとかしねる\(^o^)/

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Want to return終わってからかなりスランプ(´・ω・`)
でも頑張る。




RELAYS - リレイズ - 35 【安息】

「や、やっと終わった……!」
俺は最後のゴミ袋をまとめ、絞り出すように言った。
目の前には数え切れないくらいのゴミ袋と、それと同じくらいの資料の山。
資料を関係性があると思われる物別に分けて、ファイルに入れて、まとめて、積み上げて……その繰り返しだ。
中には魔法と魔術の一覧表なんて物もあった。魔法なんて使えない俺からすれば無縁のものだけど。
よく研究班の人間が自分でまとめたらしい資料の山に埋もれて死んでいるように眠っているのを見かける。
その度に「そんなに辛いのか」と思っていたが、確かにこれは辛い。今まで解らなかった自分は何だったんだと思うくらいに疲れる。
俺の後ろではイーナとラスターさんとサイラスが座り込んでいる。それに比べてソーマとシェイド大佐、ファンデヴは平然と立っている。この3人は疲れなんて知らないのか。
もしかしたら──いや、もしかしなくても、彼等の辞書に『疲労』という言葉はないのだろう。
「もうしばらく動きたくない……」
「オレこんなで疲れるなんて思ってなかった……」
「っほ、本気で腰が……」
3人の溜め息と共に出された言葉に、他の3人は何故そこまで疲弊しているのか理解できない、と言った様子で声をかけた。
「どれだけ体力がないんだ、貴様等は」
「ラスター、それでも武器屋の店主か? これより重い物なんて幾らでも持ち運びしているだろう」
「……サイラス、やっぱり歳なんじゃないのか」
体力がないんじゃなくて、慣れてないだけだと思うんだが。俺だって資料整理に大掃除なんて事をしたのは初めてだ。それを今本部に来たばかりの人間がやったらこうなるのも仕方がないように思える。
「──取り敢えずオッサン、これ。湿布」
「ああサンキュ……って、オッサン呼ばわりすんじゃねぇよ!」
自分に差し出されたアイドの手から湿布を受け取ると、サイラスは軽く息切れを起こしながら、それでも反論した。
どれだけオッサンと呼ばれるのが嫌なのか……そりゃ良い気分はしないと思うが、ここまで必死になるのも珍しい。
「やー、みんなお疲れ様!! 特にヘメ君達は帰ってきたばっかりなのにごめんね!」
どこか清々しそうに、いつも通りの爽やかな笑顔でダグラスさんは言った。その手には、コーヒーカップが握られている。
コーヒーが苦手なダグラスさんの事だ、中身は恐らくココア。……案外似合うな。
「だったら最初からやらせないでくださいよ!!」
「そうだそうだ! それにオレ達は何もしてねぇんだぞ!!」
「解ってるよそんなのはー。ただみんなでやった方が早く終わるよねってだけだよ」
解っていて何故やらせるのか。本当にこの人は考えていることが解らない。
というか、何なんだその理由は。連帯責任みたいな感じなのか?
「──あ、それと言い忘れてたけど、イーナは正式に機関に入るって事で決まったから」
「そうそう。それを言おうとしたら部屋に誰も居なくて、探しに行ったらこんな事になってたのよ」
座り込んだままの体制でイーナはダグラスさんの言葉に同調した。
俺が考えたよりも早く終わったらしい。だからここまで来たのか。
「案外あっさりいったな……」
イーナをここに連れてくるのも、入らせるのも、予想していたよりかなりあっさりと終わった。
それにはダグラスさんの人柄もあるのかもしれない。
「それじゃ、改めて──よろしくな」
これで晴れて、イーナも俺達の仲間だ。勿論、俺は機関に入っていなくとも彼女は仲間だと思っているけれど。
「──あ、アイド! 休んでる所悪いけど、イーナをどこかに空き部屋作ってそこに案内して!」
「アンタどこまで鬼なんスか!!」
半泣きで、いや、もう泣く寸前でアイドは叫ぶが、当の本人は聞いちゃいない。
何て人使いの荒い人なんだ……以前から感じてはいた。だがここまでとは思わなかった。
「いーから! じゃあイーナ、また」
「え、あ、ハイ……あの人かわいそ……」
ダグラスさんに返事を返した後、イーナはアイドにもダグラスさんにも聞こえないような小声でぽつりと呟いた。
「仕方ない、あの人はああいう人だから。ほら、アイドについてけ」
何か面倒ごとがあると、容赦なく他人を使う。それがダグラス=ティアマントというリレイズ司令官だ。
別に悪人とかじゃない。ただ、『何かこれ一人でやるの? えーそれ面倒じゃない?』という事を他の人間まで巻き込んで解消するのだ。自分一人、もしくは数人だけでは絶対にやろうとしない。
そういう性格のせいもあり、研究班なんて数十人以上、もしかすれば100人くらい居るかもしれないくらいの大人数だ。白衣を着ている人間はほぼ研究班と言っていい。
それさえなければ……いいんだけどな。
「解った。んじゃ、また後でね!」
「俺達は邪魔だろうから、どっか行っておくぜ。な、ファンデヴ」
「……そうだ。自分達は違う、無関係な他人だ。だから」
「あ、ごめんね二人とも! あとで猫じゃらしと何かお菓子あげるから!」
「いらねーよ!!」
「要らない……!」
猫じゃらしよりマタタビとかの方がいいと思う。だがそれを言うと俺自身の命も危ないから自重しておく。
ファンデヴが何処か焦っているような気がした。不思議な所もあるが、やっぱり人間じみてるところだってある。
手を振ってからアイドを追いかけるイーナの後ろ姿、それにファンデヴとサイラスが見えなくなってから、ダグラスさんは俺達に向き直った。
そして一度短く溜息を吐いてから、どこか寂しげに微笑んだ。
「──任務、お疲れ様」
「……はい」
途端に、ダグラスさんの口元から笑みが消え、眼鏡の奥の瞳が真剣な光を帯びる。もうふざけてはいない。
「それで、どうだった? ……報告を」
「解っています。……その前にダグラスさん。ココア啜りながら真面目な顔でいうの止めません? ギャップが凄くて吹きそうになるんですけど」
死ぬ危険性だって当然ある任務の話を真面目な顔でしているのに、ココアなんて啜りながら言われたらそれはもう酷い。
何の一発芸だ、と爆笑してしまいそうになる。これは酷い。
「仕方ない。僕はコーヒーなんて苦い飲み物は苦手なんだ。ブラックコーヒーなんて飲み物じゃない」
「……司令官。オレはブラック派なんだが」
「大佐はそうか……ラスター君、君は?」
「は? オレ? オレはカフェオレ派なんだけど」
「……見事に好みが分かれたな。オレはブラック、ラスターはカフェオレ、貴方はココアだ。仕方ない、あとはそこの二人の意見で」
「はいはいはいそこまでにしてください! もう突っ込みませんからさっさと進めましょう!!」
何でココアかコーヒーかなんて話しになっているんだ。
ちらりと横目で隣にいるソーマを見れば、本当に下らないとでもいうように醒めた視線を送っている。
こいつは……雰囲気からして甘い物は嫌っていそうな気がする。というか食べる物にそこまでこだわっている気もしない。
自分から会話をやめさせておいて何だが、俺はコーヒーやココア自体が苦手だ。できれば紅茶がいい。
緑茶なんてのもあるらしいが、あまり興味はない。今の所は紅茶だけで充分だ。
「この重苦しい空気をどうにかしようと思ったんじゃないか。僕はこういうの嫌いなんだって何回も言ってるでしょー」
「司令官ともあろう人がそんなんでいいんですか……!」
「こういう暗い状況だからこそ、司令官が明るくないとみんな暗くなっちゃうでしょ? 僕はそれが嫌なんだ」
ダグラスさんの言っていることは解る。俺も一緒にいる仲間が暗い顔をしていたら、冗談でも何でも言って、何とかして明るくしようとするだろうから。
だがこの人の場合はその方法が突拍子もないというか、冗談なのか本気なのか判断しづらいところがある。
そこが難しいのだ。本気のときに「冗談言わないで下さいよ」と突っ込めば怒られるし、かといって冗談のときに何も言わなければ「何で突っ込んでくれないのさ」と不満を漏らされる、という……
「……いい加減に話を進めたらどうだ。自分達で話題を元に戻すことも考えろ。俺の手を煩わせるな」
いつも通り、と言うと少し悪い気もするが、ソーマが話を元に戻した。
ここまで年上、それも大佐や司令官という自分よりも立場が上の人間に堂々と命令口調で言える人間も珍しい。
「ごめんごめん。そんな怒らないでよソーマ。君切れると手付けられなくなっちゃうから」
「別に怒っている訳ではない。ただいつまで経っても馬鹿な話ばかりしている貴様等に苛立っているだけだ」
「だからごめんってー」
俺は二人を見て溜息を吐いた。もうどっちが司令官なんだか解らない。
「……それじゃ、程良く明るくなった所で──どうだったか、話してくれるかな」
明るくなってないよ!! と突っ込みたかったが、いい加減にしないとそろそろやばい。色々な意味で。
今回の任務、それの報告。
俺は一度ソーマやシェイド大佐、ラスターさんを見てから口を開いた。




取り敢えずサイラスのオッサンは猫じゃらしで釣れないと思う。

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43歳と27歳のコンビはどうなんだろうか(サイラスとファンデヴ)
いや、それを言ったらアルディックとカラッド(29歳と16歳)もそうd…マスタング大佐とエドかよこいつら^p^p^p^




RELAYS - リレイズ - 34 【掃除】

「──というか何なんだこの紙の山は……」
「面倒だな」
「少しは整理した方が良いぞ、仕事の効率が上がる」
「兄サンの机が綺麗すぎるだけじゃね? 取り敢えずもうこれ面倒なんだけど」
「……逃げないでよ? 私だってちゃんとやってるんだから」
「逃げねーよ! ぶっちゃけ逃げたいけどな!!」
「仕方ないと思う。愚痴っても始まらない」
無理矢理掃除に参加させられた俺達は、巨大兵器の破損した部位や飛んできた資料等で酷い事になっている廊下を中腰で歩き回りながら掃除をしていた。
「取り敢えず、かなり度胸があると思うな、あの人は」
「そうですか?」
ゴミ袋を片手に、ネジや金属板、その他諸々の部品を拾い上げてはその中に放り込んでいたシェイド大佐が軍服の襟元を緩めながら言った。
「そうだろう。……堂々と大佐に掃除をさせるなんてな」
「……要するに怒ってるんですね、解ります」
「怒るに決まっているだろう! オレは何もしていないんだぞ!!」
確かにそうだが、ダグラスさんが『みんなで掃除しようよ!』と言ってしまったのだから仕方がない。
別に反論しても死刑とかはないに決まっている。ただ何となく反抗できないだけで。
あの人に逆らったら何があるか解ったもんじゃない。変な薬の実験台にされる可能性だってある。
実際研究班でそういう事になった人達を何回も見てきた。怖くて怖くてしょうがない。
「……自分のせいで、ごめん大佐」
今までほぼ無言で黙々と資料を集め、揃え、近くの部屋にあった机の上に置いていたファンデヴが不意に口を開き、大佐に向かって謝罪した。
「いや、お前のせいではない。こんなのをちゃんと強度のあるワイヤーで縛っておかなかった研究班が悪い」
「俺達のせいだって言いたいのか!」
そうだろ、どう考えても。何でそんな細いワイヤーなんだ。
ワイヤーの太さはせいぜい1,2ミリ程度だ。これだけ巨大な機械を拘束しておくにはどう見ても太さが足りない。
故障させたから大丈夫だ、ということでこうなったのかもしれないが、あんまりだろう。
「あー畜生……腰が痛ぇ」
「さすがオッサンだな」
「うるせェ誰がオッサンだ!! 20超えてるかどうかすら解らないような餓鬼に言われたくねぇよ!!」
「餓鬼じゃねぇ、オレはもう23だバーカ!!」
「馬鹿っていう奴が馬鹿なんだろうが!!」
「何だと、アンタの方が」
「煩い黙れ、どちらも馬鹿だ」
不毛な言い争いを続けていたサイラスとラスターさんを、ソーマが一言で黙らせた。これを鶴の一声っていうのか?
っていうかラスターさん23歳だったのか。まだ20歳くらいだと思っていたのに。
それにしても資料の種類──内容?が雑多すぎる。
何か訳の分からない薬品の調合法とか、複雑すぎてただの暗号にしか見えない数式とか、何が書いてあるのかさっぱり解らない物とかが溢れかえっている。
そして薬品の書類がまとめてクリップで留められているのかと思ったら、今度は能力者の旧名簿だったりする。何年前のなんだ。
若干この酷い惨状からの現実逃避も兼ねて、その旧名簿に目を通した。
俺の名前がどこにもない。恐らく俺が機関に来る前の名簿だ。ソーマの名前があったことに驚いたが。
俺は殺意のようなオーラが滲み出しているソーマの背中を見る。
一体こいつはどれだけの間、機関に所属しているのだろうか。
それが少し気になったが、ソーマが簡単に教えてくれる訳がない。どうせ『何故貴様に教えなければいけないんだ』と一蹴されるのがオチだ。
「──11年だ」
「え?」
一瞬心を見透かされたのかと思った。突然の言葉に、俺はソーマに聞き返す。
ソーマは俺の手から資料を取ると、それを読みながら答えた。
「俺がいつから此処に居たのか、それが訊きたいのだろう。だから答えただけだ」
「……何で解ったんだよ」
「旧名簿を見た後にこちらを見ていれば、すぐに解る」
資料を投げ捨てながら、小馬鹿にするような声音でソーマは告げた。
「って、何普通に投げてるんだ! 折角整理したのに!」
そんな俺の尤もな──自分でそう思っているだけかもしれないが──反論には答えないまま、ソーマは堂々と資料と機械の破片を踏みつけながらどこかに行ってしまった。
「11年……か」
今のソーマの年齢が18、ここに来たのが11年前──ということは、ソーマは7歳の頃から機関に所属していることになる。
どうしてそうなったのかは訊いてみなければ解らない。それに、あまり知りたいとも思わない。
勿論『今のところ』は、というだけだけれど。もしかしたら、今後知りたくなる事もあるかもしれない。
「はいはーいサボる暇があったらちゃんとやってねー」
「あ、すみませ……ダグラスさんが一番サボってません!?」
コーヒーカップを片手にのんびりと椅子に座りながら言われても困る。一番サボってるのは言っている本人だ。
「やだなー休憩だよこれは」
「休憩とは思えないんですけど」
「休憩って言ったら休憩」
本当に休憩ならコーヒーを自分で注いでゆっくりと飲むなんてしない……いや、この人ならしそうで怖い。何をしでかすか解らない人だから。
「──あれ、兄サンどうしたんだよ」
「包帯が邪魔で仕方がない。取る」
「え、いいのかよ?」
不意に聞こえた会話に、ダグラスさんから視線を外してそちらを見る。
シェイド大佐が、自分の後頭部に手を回して包帯を解いていた。
あれは邪魔だと思う。うん、絶対邪魔だ。
そういえば、イーナには『ただの怪我を隠すため』みたいな感じで話していたな、なんて事を思い出しながら、俺は資料を手にしたままで立っていた。
微かに衣擦れの音を残して、包帯が全てシェイド大佐の手の中に収まった。
「……やはり目立つか、傷は」
「いや、前に比べたらずっと目立たなくなってるけど。ホントに外して良かったのか?」
左頬の正面から見て斜め右下から鼻の辺りまで続いている傷痕と、髪の毛で隠れているが右の額に僅かに見える傷痕。
かなり時間は経っていると思うのだが、それは未だにはっきりと刻まれていた。
それを触りながらラスターさんと言葉を交わしている。
「──ああ、そういえばヘメティ達はオレの傷痕を見るのは初めてか。というよりも包帯を外す所さえ見ていなかったか」
俺の視線に気付いたのか、シェイド大佐が俺に近づきながら訊いてきた。
「そうですけど……その傷どうしたんですか?」
「数年前の戦いで、な。治っているから大丈夫だ。包帯を巻いているのは傷を隠す為でもあるが、それよりもオレ自身の趣味と言った方が正しいくらいだからな」
「どういう趣味ですか」
「格好いいだろう」
それは多分思春期の辺りに入ったほんの一部の子供が思う『眼帯とか血は格好いい』と同類な気がしてならない。
いや、本人の嗜好なのだからどうこう言うつもりはないけれど。
「あ、じゃあ私がむしり取っても大丈夫ってことね?」
「そうなるが──って、お前はいつの間にオレの後ろに居た!!」
「いや突っ込むところ違う! 何でむしり取っても良い感じになってるんですか!!」
本当にいつの間にイーナはシェイド大佐の後ろに立っていたんだ。しかも暗黒微笑ときている。
「だから換えの包帯だったら幾らでもあるから大丈夫だと言っているんだ」
大丈夫じゃないだろ、どう考えても。換えがあるから大丈夫、なんて。
「……にしても……傷、結構深かった?」
まるで患者の怪我の治りが遅いのを心配する医者のような目つきで、歩み寄ってきたファンデヴが問いかけた。
「確かに深かった。そうでなければ、傷痕がここまではっきりと残っているのもおかしい」
「やっぱりそうか。うん、いきなりごめん」
「おーいファンデヴ、あんまりふらふら歩き回るんじゃねぇぞー」
先程まで腰痛で唸っていたサイラスの声に、ファンデヴは「解ってる」とだけ返すとそちらの方へと今度は小走りで走っていった。
会ってから間もないのだから、相手がよく解らないのは仕方がないとは思う。
だが、ファンデヴの場合は色々扱いづらいというか、言動が意味深で対応しづらい。
元々そういう口調なのか、意図的にこうしているのかは知らないが、話し方も特徴的すぎてどう返したらいいのか少し戸惑ってしまう。
「……まあ、これから少しずつ慣れていけば大丈夫か」
最初はソーマもかなり戸惑った。何を言っても黙れとしか言われなかった。
それでも時間が経つに連れて結構上手く会話できるようにはなった。結局は『慣れ』なのだと思う。
だからきっと、何れはファンデヴともちゃんと話せるようになる。
それよりも、まずはこの惨状をどうにかするのが先決だ。早く終わらせないとこの後に色々響く。
俺はそう考えながら、取り敢えず手当たり次第に資料を手に取った。




真面目に掃除してるのはファンデヴとシェイドだけだったりする←

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悔しいのでWantと少しだけ本当に少しだけリンクさせてみる。
ちなみに今回また新キャラ出てくるよ!




RELAYS - リレイズ - 33 【案内】

「……えっと、まあ、研究室は迂回するとして」
「えー迂回すんのかよ」
「嫌だ、絶対に嫌だ、研究室は行かねぇぞ!」
だってサイラスがこんな状態なのだから、迂回する以外に方法はない。
頭にフードを被り、それだけで猫耳を隠すには大丈夫だというのに、更にフードが風で捲れ上がってしまうのを防ぐためにしっかりと掴んでいる。
まるで初めて見る人を怖がっている人見知りの子供のようで、本当に大人なのかと言いたくなるような姿だった。
「ホラ、だから研究室いかないから。機嫌直してくれよ」
「マジか!?」
「本当だって。だからそんなビクビクしないでくれ」
研究室に行かない、と言った途端、サイラスの顔に本当に嬉しそうな笑みが浮かんだ。
「よっしゃ!! じゃあさっさと行こうぜ!!」
「調子いいなアンタ」
うん、ラスターさんの言葉に激しく同意。調子良いなサイラス。
「──取り敢えず、こっちが俺達みたいな機関所属の能力者達が居る部屋」
勿論機関には、俺やソーマの他にも能力者というのは存在している。
魔力で作り出した弓矢を扱う人間や、投げる物──それこそティッシュに拳銃くらいの殺傷力を持たせられる人間とか。
魔術師も居る。ソーマも、能力者だが一応魔術師という事になる。氷属性の魔法しか使わない為、氷属性専門魔術師として。
俺が知っている中では、雷を操る魔術師なんて人間が居た気がする。魔法陣の描かれた手袋を着けた手の平から稲妻を出したり、何もない空間で電気を起こしたりとか。
だが、錬金術師という人間は機関には居ない。時々来るくらいで、所属はしていないらしい。
「それとこっちが食堂、あっちに行って左に曲がった先が……うん、研究室」
「絶対行かねぇぞ!!」
「行かないって言ってるだろ!!」
どれだけ研究室が嫌なのか……そりゃあんな事をされれば誰だって嫌だろうが、この警戒は凄いな。
「──っつーかアイツどこ行ったんだ……?」
「アイツ? 誰か居るのか?」
辺りを見回しながら呟いているサイラスに、知っている人間が誰か居るのかと思い、問いかけてみる。
「ああ。連れが一人な。俺が研究員達に絡まれてるときにはぐれた。赤い長髪の……あーいいや、アイツかなり訳分かんない奴だから」
話をされてるこっちが訳が分からなくなってきた。
赤い長髪、と言われても、それだけではよく解らない。ただ、この機関の中には居ない特徴だと思う。
俺は何故か、一度相手を見ると殆ど忘れない。
機関の中で、赤い短髪は見たことがあっても長髪はなかった。
「まあその内戻ってくるか」
サイラスが無責任とも取れる言葉を口にした瞬間、背後からとてつもない轟音が聞こえてきた。
「何だ!?」
弾かれるようにして後ろを振り返れば、そこには巨大な機械──丁度ウィジロの地下で見かけた兵器を巨大にしたような機械が堂々と存在していた。
大きさは、恐らく一軒家ほど。廊下も広々としている本部の中だから、あまりそうは感じないが。
「何でこれが機関の中にあるんだよ!!」
「あ、オイ!! また悪いけど手を貸してくれ!!」
その機械の後ろから出てきたのは、切れたワイヤーを手にしているアイドだった。
「あっちから適度に故障させて資料の為に持ってきた奴が暴走した! 中枢機関を壊さない程度なら攻撃したり壊して良いから止めてくれ!!」
「持ってくる物考えろよ!! 何考えてるんだ!!」
「にしてもこれ持ち込んだとかすげぇな……」
「オレの家にある武器倉庫くらいあるんじゃねぇかこれ……」
小さめの奴だって溢れ返っているのだからそっちを持ってくればいい物を、何故こんな巨大な物を持ってくる必要があるのか。
「──Lump ofest,」
詠唱の声にそちらを見ると、ソーマはもう既に巨大兵器に向かって魔法を発動していた。
巨大兵器の足下が、周りの床と共に徐々に凍り付いていく。
俺は闇霧の柄に手をかけ抜刀しようとしたが、止まる。
兵器の上に、誰かが上から飛び降りてきて着地した。
その男性は綺麗な赤い長髪を揺らしながら、どこから取り出したのかは解らないが二本のサーベルを取り出し、それを振りかざす。
「おっ、やっぱり出てきたか。やれ、ファンデヴ!」
サイラスの声と同時に魔剣が振り下ろされ、あれだけ巨大だった巨大兵器が、一瞬で真っ二つに両断された。
再度響いた轟音と、電流が流れるような音に耳を塞ぎ、それに巻き上げられた埃や資料に視界を遮られて俺は目を瞑った。
それが収まったのを感じてからゆっくりと目を開く。
「──中枢機関だけは避けて切った。そこは安心してくれ」
少し高い、少年のようなテノール声でファンデヴと呼ばれた男性は呆然としているアイドに言うと、俺達に近づいてきた。
「……研究員達に絡まれてたみたいだけど、大丈夫だったのか」
「死ぬかと思ったけどな。てめぇはどこ行ってたんだよ」
「ただ、一人でこの機関の中を見て回ってた。それだけ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
二人にしか解らないような会話を繰り広げている二人に、俺は耐えきれずに叫んだ。
「あ、自己紹介まだだったか。ホラやれファンデヴ」
「解ってる。──名前はファンデヴ。呼び捨てで、敬語なしでいい。それとこいつの仲間。よろしく」
「ああ、俺はヘメティだ。よろしくな」
どうやら先程サイラスが言っていたのは、ファンデヴの事だったらしい。
服装はハンターのようなサイラスとは違って、白いシャツに黒いズボン、その上から黒いジャケットを羽織っていて、少しカジュアルな印象があった。
「……突然で悪いんだけど」
ファンデヴはその青い瞳を俺に向け、言った。
「兄貴、見てないかな。知らないか?」
「兄貴?」
兄貴、というのは、彼の兄のことだろう。そうに決まっている。そもそも俺は記憶喪失で解らないのだから。
「ああ、自分と同じ赤髪で、後ろで一つ結いにしてる、オールバックの」
「……悪い、解らない」
「解った。ごめん。──これじゃあ、もう死んでるかな。7年くらい探してるけど」
ファンデヴの話はこうだ。
7年も、自分の実の兄が行方不明になっている。そしてそれを、家族で兄弟である自分が探している、と。
「そりゃあ生きてて欲しいけど、別にもし死んでても構わない。そうだったら自分がその骨を拾う」
呟くように言っているファンデヴにどう声をかけて良い物か解らず、黙り込む。
「あ、あんまり気にしないでくれ、こいつはいつもこうだ。──兄貴の名前さえ教えてくれたら探せるかもしれないんだけどなぁ」
そうだ、名前だけでも解れば、機関の情報網でどうにかできるかもしれないのだ。
「……気が向いたらでいいか?」
だが、それを強要するのも良くない。ファンデヴが言いたいときに言えばいい。
「──ヘメ君!? ちょっとみんなそこで何やってるの!?」
突然聞こえた声に若干驚きながら、もう一度振り返った。
「何か大きな音聞こえたから来てみれば……まさか暴走でもした?」
「……そのまさかですよダグラスさん」
駆け寄ってきたダグラスさんに答えると、ダグラスさんは困ったように笑いながら
「あちゃーやっちゃった。ごめんね」
いや、そんな語尾に星が着きそうなくらい明るく言われても。
「うわっ、これ凄いことになってない?」
「お、嬢ちゃんおかえり」
後から追いかけてきたらしく、少し息が上がっているイーナはまず最初にこの惨状を見てそう言った。
「しかしまた凄いね……」
ダグラスさんは少し考えてから、いつも通りの明るい調子で言った。
「よし、ここにいるみんなで掃除しようか! みんなでやれば早いしね!!」
……という訳で、サイラスやファンデヴも巻き込んで、この後片付けに追われることになった。




ファンデヴの兄貴はまあ、分かり易いからノーコメント←
解らないって人だけコメントとかで聞いてくれれば^p^

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ダンテって結構よくある名前なのかな。しょっちゅう見かけんぞ。
何ならアレスもダンテのまんまでよかったんじゃないkアッー




RELAYS - リレイズ - 32 【対談】

「──では、初めまして。僕がリレイズ総司令官、ダグラス=ティアマントです」
そういえば司令官は司令官でも総指揮官のような物だからそういう言い方になるのか。
別に司令官でも意味は通じると思うんだが、何か違うのか。まあ違うんだろうな、多分。
「こちらこそ、初めまして。リグスペイア軍大佐、シェイド=ダーグウェッジと申します。この度は──」
「兄サンそこまで言わなくていいから早くしてくれ」
「煩い、お前は礼儀がなさすぎるんだ!」
「あーもう何でこんなときにまで言い合ってるのよ!」
結局こうなるのかよ!と突っ込みたかったが、ここで俺が突っ込んだらどうなるか解ったもんじゃない。
「……え、えっと、それで、そちらのお二方は? どっちがヘメ君が言ってた人なのか解らなくて……」
確かにダグラスさんからすればそうだ。2人で並んでいればどっちが電話で話した人間なのか解らない。
最初に言っておけば良かったか、と後悔してももう遅いから、あまり考えないようにしよう。
「オレはラスター=ダーグウェッジ。シェイド兄サンの弟だ」
「兄弟……道理ですごい似てると……あ、すみません」
シェイド大佐とラスターさんは、着ている服と包帯のあるかないか以外殆ど一緒だった。
兄弟、というよりも、双子と表した方が確実かもしれない。そう思ってしまうほどに瓜二つだ。
「それで……君は?」
「私はイーナ。電話でここにこれるかどうかで話してたっていう」
「あー! 君だったの! っていうか女の子だったの!? それだったら早く言ってよヘメ君!!」
「いや何で俺なんですか!!」
何でここで俺が出てくるんだよ。女だっていうことは伝えていなかったが。
そこは別に伝えなくても大丈夫か、と思ったから伝えなかったのだが、そういうわけでもなかったらしい。
まあ考えてみれば当たり前か。
「……まあこれで全員の名前は解ったって事だよな」
「俺達まだですけどね」
俺は一応覚えたが。サイラスね。オッサンでも猫耳でもなくてサイラス。
しかし未だに信じられないぞ、この人。
「え、お前はクソ餓鬼でこっちのは銀髪。これでいいだろ」
「良くないに決まってるでしょうが!!」
だから何で俺の呼び名がクソ餓鬼で定着してるのか理解できない。この人は何が何でも俺をクソ餓鬼って
呼ぶつもりか。
それとソーマに銀髪なんて言ったらこいつ切れるぞ、本気で。
「銀髪ではない、ソーマだ。ふざけるのも大概にしろ、オッサン」
若干額に青筋を立ててはいるが、いつも通り冷静にソーマは訂正した。
……あれ、何か最後に言っちゃいけない言葉が聞こえた気がしたんだが、気のせいか?
ここで切れてナトゥスを振り回されたら手に負えなくなる。頼むからこれで勘弁してくれ。
「オイてめぇ今オッサンっつったろ、聞こえたぞ」
「オッサンにオッサンと言って何が悪い」
「連呼すんなこの白髪頭!!」
「だから俺は白髪でも銀髪でもないと言っているだろう」
「言い合うの止めろって!! 取り敢えずどっちも名前で呼ぶ、これでいいだろ!!」
何でこんなことができないんだ、と俺は頭を抱える。
オッサンオッサンって、どう考えてもソーマがサイラスの反応を面白がっているとしか思えない。
実際そうかもしれない。ソーマの性格からして、相手を馬鹿にしたような言動をして相手の反応を
楽しむことは良くある。というか俺も被害者だからよく解る。
「……で、どこまで話したっけ、ヘメ君」
「だから何で俺なんですか。確かイーナが名前言った後、全員の自己紹介が終わったところですよ」
何故こんな大切な話の最中に言い合って忘れるのか……今更だが、司令官がこんな軽い人で良いのか?
「あーそうだそうだそこだ。──その前に」
ダグラスさんはシェイド大佐の目を見据え、申し訳なさそうに言った。
「あの……お互い敬語なしでいきません? すごい何か、重いんですけど」
そりゃ重いだろうよ!!
世界で唯一しっかりとした機能を持ってあの都市と戦ってる機関の司令官と小さな街の軍とはいえ
大佐の会話だ、敬語はあって当然だろう。
それがダグラスさんにとっては重くて重くて仕方がないらしい。まあそういう人だから仕方ないか。
「あ、オレは全然構いません」
「それじゃあもう敬語なしって事で!」
あっさりシェイド大佐も了承してしまった。もしかして大佐も重かった……それはないな、うん。
それはどちらかというとラスターさんだろう。後はサイラスとか。
「──何か司令官っていうからどれだけお堅い人かと思ったらかなり話しやすい人で良かったなー……
オレそういう……厳格っつーのか? そういう気難しいのが一番苦手なんだよ」
ホラ見ろやっぱり。というか何なんだ、もしかして皆敬語とかって苦手……なのか?
俺がそう疑問に思っている内に、話はさっさと本題に戻っていた。
「──それでイーナ、君はどうして機関に入ろうと?」
「私にも何かできることがあるならそれをしたい、黙って見ていたくない、ただそれだけ」
はっきりと、イーナは強い意志を込めて口にした。
ここまではっきりと言える人間も珍しい。普通なら、少し戸惑ったり言葉を濁したりする事が多いのに。
それだけ、イーナの意志は固いという事だろう。
「……一般人より、力はあると?」
それは確実にある、と自信を持って言える。
何回も言うししつこいようだが、手加減していたとはいえあのソーマとほぼ対等に渡り合っていたのだ。
それだけでも、一般人より力はあると見れる。
ダグラスさんの問いに、彼女はしっかりと頷いた。
その瞳の奥にイーナの意志を見たのか、ダグラスさんは少し微笑んだ。
「解った。君がそこまで言うのならば──こちらに来て欲しい。少し時間がかかるから、早めに。
……大佐、悪いけど後で、二人でお話を」
「オレもそれでいい、大丈夫だ」
大佐と司令官が堂々と敬語なしタメ口で話している……すごく異様な光景だろう、これは。
いや、異様というよりはシュールか?
イーナはソファから立ち上がると、小走りでダグラスさんについていった。
「……それまで俺達は何をしてればいいんだ?」
ここにずっと座って待っているのも何となく違う気がする。かといってシェイド大佐とラスターさんと
サイラスの3人を放っておいてこのまま自室に戻るわけにもいかない。
「あ、それじゃあここ全部案内してくれよ。どこがどういう場所なのか全然分かんねぇ」
ラスターさんの言う通り、本部の案内というのもいいかもしれない。
見た感じサイラスは来たばっかりで研究員達に絡まれていたようだし、それが一番かもしれない。
「それじゃ、着いてきて下さい。俺が知ってる部分で案内します」
「もう研究室の前は通りたくねぇぞ俺は……」
本当に嫌な思いをしたらしいサイラスは溜息を吐きながら、服に付いていたフードを被ると頭の上に
ついている──本人は猫耳じゃなくただの獣耳と言い張っているが、どこからどう見ても猫耳なそれを
隠していた。
「しょうがないしょうがない。ホラ行こうぜ、オッサン!」
ラスターさんのオッサン発言にも反論する元気がないのか、黙ったままだ。
部屋から出るときに、一度ダグラスさんとイーナが出て行った別の入り口を見たが、帰ってくる気配はない。
それを確認してから、司令室の外へ出た。




オッサン!オッサン!!←

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だってサイラスのおっさん書きたかったんだもん(´・ω・`)
でもぶっちゃけ自分の頭についてる猫耳は取りたいらしいよ!




RELAYS - リレイズ - 31 【正体】

「──で!! 何であんたの頭に猫耳なんてものがついてんですか!!」
あの後、運良く通りかかったダグラスさんのおかげで、一応大惨事にはならないで済んだ。
打撲をした研究員が数名居ただけだったらしい。それと研究室のでかいドア。直すのに2,3日くらいかかる……らしい。
しかも研究室の中まで酷いことになっていた。資料は散乱している上、フラスコやビーカーなどの破片が
中身諸共至る所に飛び散っていた。
その為、今俺達が居るのは司令室だ。このオッサンとダグラスさん、それに俺達5人が入っても余裕がある。
そして俺は今、オッサンが何者なのかどうかを問い詰めている最中だ。
「だからさっきも言っただろが……世の中にはこういう獣耳ついてる種族もあんの。で、俺はその中の一人」
「解る訳ないでしょうがいきなりそんな話されて!!」
解るか?と妙に落ち着いた様子で言ってくるオッサンに、俺は先程ソーマに食って掛かっていたラスターさん以上の勢いで言い返した。
この世の中にそんな種族があるなんて信じられない。
「もしかしてこれカチューシャなんじゃないでしょうね、これで俺達をびっくりさせて『ドッキリ大成功!』とか
言うつもりじゃないでしょうね」
俺はソファから立ち上がり、オッサンの後ろに回るとその猫耳に手を掛けた。
「いっででででぇ!! 引っ張んなクソ餓鬼!!」
「クソ餓鬼!? 俺もう17なんですけど!!」
本人が「痛い」と言っていることから、どうやらこれは本物らしい。しかもさっきから何か動いてるし。
それを確認して、俺は手を離した。
「あーいってぇ……」
「……一旦落ち着けヘメティ。軍でのコントを繰り返す気か?」
耳をさすっているオッサン以上に落ち着いたシェイド大佐の声に、やっと頭に上った血が下がってくるような気がした。
でもあのコントはほぼソーマとイーナ、それにプラスしてラスターさんのせいだと思う。
「……取り敢えずこの人は」
「あーいいぜ。名前くらいは俺が言うから」
ダグラスさんの言葉を遮り、オッサンは出された紅茶を一度啜ってから、笑顔で言った。
「俺はサイラスだ。まあオッサンでも何でもいい。『さん』もいらねぇ。それと敬語はなしな」
オッサンでも何でもいいって……本気で言ってるのか?
敬語はなし、か。目上の人間には敬語を使う、これが俺の中での規則、常識だが、彼が『敬語はなし』と言って
いるのだから、使わない方が良いだろう。
今までにもこういう人間はいた。敬語は堅苦しくて息が詰まるからやめてくれ、と。
「あ、じゃあもうオッサンでいきますね」
「良い度胸だなクソ餓鬼」
やっぱり嫌なんじゃないか。こういうところでボケてないで、普通に言えばいいものを……
っていうか何?俺クソ餓鬼で定着してる?
「この人は世界中を回っているらしくてね。ハンターみたいなことをやっているみたいなんだ」
「まあ、ただ定住すんの面倒くさくて放浪してるだけだけどな」
言われてみれば、オッサン──じゃなかった、サイラスはハンターのような格好をしている。
言われなければ解らないような格好だが。
「でも此処にいるって事は勿論、俺達と同じなんだよな?」
「そうそう。彼も同じ能力者だよ。見せてみたらどうです? オッサン」
「オイ司令官てめぇもか。さっきまでサイラスサイラス言ってたくせにオッサンか」
「冗談ですよ。どうしますか?」
冗談にしては質が悪すぎないか、それ。さっきサイラスからソーマに勝るとも劣らない殺気を感じたんだが。
人間本気になればあれくらいの殺気は出せるものだと実感した。
「てめぇらはどうしたい? それで決める」
「私はどっちでも」
「オレもイーナと同じだ」
「オレも別にどっちでも……」
「勝手にしろ」
4人は全ての判断を放棄し、俺が決めることになってしまった。
「──それじゃあ……見せて下さ」
「敬語はいらねぇっつーの」
「す、すみま……ごめん」
「よし」
何なんだこの人は……扱いづらいというか、何というか、結構謎めいた部分が多い。まだ会ってから間もないのだから仕方がないことだが。
「じゃ、行くぞ。ソファとかテーブルぶっ壊したらごめんな!」
「いや待ってそれは困るよ僕が!」
備品を壊さないでくれ、と叫ぶダグラスさんなど気にも留めず、サイラスは自分の左耳に着けていた
細長い金属の棒に細かい装飾がされている形をしたピアスに手を伸ばした。
電流が流れるような音が響き、そのピアスが発光し始める。
「──Vocare!」
声に呼応するように、光がより一層強くなった。
その眩しさに、思わず目を腕で覆う。
光が収束したのを確認してから、俺は恐る恐る腕を下ろし目を開けた。
「……おー良かった。何も壊さなかったぜ司令官!」
サイラスの手に握られているのは、先程まであったピアスではなく、ブラックシルバーを基調とした
細長い槍だった。
「槍……?」
「そ、槍。これが俺の能力。名前は『ヴォカーレ』」
名前を言うだけで発動する、と付け足して、彼は子供のように屈託なく笑った。
「──じゃあ今度はてめぇらのを見せて貰おうかな? ここの5人全員能力者だろ?」
「オレ等違いまーす」
「私一般人だし」
「オレはただの武器屋店主だし」
「オレは……大佐だが」
「あ、それじゃあ……って、ヘメ君、何で店主の人までいるの?」
一番聞かれたく無かったことを聞かれてしまった。理由を説明するのは少し面倒だな……
だが、嘘なんてつけるわけがない。正直に言うことにした。
「いや、何か一緒に行くって言い出して……」
「あー何だそんな事!! 全然大丈夫! それじゃあ3人の人はヘメ君とソーマのが終わったら
話するから、ここで待っててね!」
滅茶苦茶軽いなこの人!!今まで思っていたが、どこまで軽いんだこの人は。
「え、ちょ、ここでやるんですか!」
「当たり前だろ。ホラさっさとやれ、見せてみろ」
見せてみろ、と言われても、俺の場合見せれない理由がある。
「……俺、『常時発動型』なんだけど」
いつでも、その能力が実体化していて、能力者が死ぬまでその実体化した武器が消えない。
その代わり、自分の意志で発動したり、それを解除したり出来ない。
それが俺の闇霧ような、常時発動型だ。
サイラスはソーマと同じく、自分の意志で発動、解除ができる。
こういうのは……何だったか、確か自由開放型だった気がする。そこは後でダグラスさんに聞けばいい。
「あーそうか。んじゃいい。──オイそこの銀髪! お前の見せろ!」
──ずっと思っていたが、何て偉そうなんだ、この猫耳オッサン。あ、間違えた。サイラスだ。
「……Natus sivement,」
ソーマの低い詠唱と共に、ソーマの左手が先程の光に比べたらずっと弱い光に包まれた。
「──へぇ」
驚いたようなサイラスの声と同時に、その光が粒子となって掻き消えた。
左手には、俺がいつも見てきたのと同じ、ナトゥスが握られていた。
「身の丈以上の巨大鎌、か。似合ってるぜ」
褒め言葉なのか、それとも皮肉なのかは解らない。
でも、彼はソーマが皮肉を込めて死神と呼ばれている事を知らない筈だ。
これは本心から、『似合っている』と思い口にしたのだろう。
「……別にどうでもいい。似合っていようが居まいが、これ以外に俺の武器はない」
能力を実体化させたときに出来る武器は、自分の心によって決まるらしい。
ナトゥスは、ソーマの持つ心の闇、冷たさを象徴している気がする。
能力者は基本、自分の武器以外は扱えない。
俺がナトゥスを使えないのと同じく、ソーマは闇霧を使えない。時折例外もあるらしいが、これが基本だ。
「──それじゃ、今度はこの3人と僕が話をするってことでいいかな?」
「あ、全然大丈夫です」
俺が答えると、ダグラスさんは少し笑ってから、ソファに座ると3人と向き合った。




色々入れ忘れた設定を無理矢理ここで入れる俺←

ってかすげえええ1日に3話とかすげえええええ

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30わあああああああああああああああ




RELAYS - リレイズ - 30 【有り得ない】

程なくして、何事もなく車が機関の前に停車した。本当にもうすぐだったのか。
「──着きましたよ」
冷静な運転手の声に、車のドアを開けると地面に降りる。
俺達の目の前にあるのは、機関──本部へと続く長い階段だった。
「うっわ何だよこの階段……全部上れっていうのか……?」
「一体何百段あるのよこれ……」
「そう言われても解らないに決まってるだろ」
俺は唖然としているラスターさんとイーナに言い残し、階段に足をかけた。
確かに普通の人間が見たら驚く、というか『なんだこの階段は』と怒るかもしれない。それくらい高い。
ソーマはもう既に数十段くらい上にいる。ジャンプ力が高いっていうのは、こういうときに楽だろうな……
「……し、仕方ない……行くぞ」
シェイド大佐ならこれくらい大丈夫かと思ったら、そうでもなかったらしい。
俺とソーマは慣れているから問題ないが、途中で3人がリタイアしてしまわないかと冷や冷やしながら
俺はゆっくりと階段を上っていった。

予想通り、3人とも途中でリタイアしかけた。
まず最初にイーナが『ごめん、もう駄目』と、その少し後にラスターさんが『いい加減にしろよ!!』と。
そして最後の最後で、『もう勘弁してくれ』とシェイド大佐が半泣きで。
その度に『頑張れ頑張れ』と励ますこっちの身にもなってくれ……というか、仮にも大人が、しかも
軍人で大佐が、17歳に励まされるってどうなんだ。大丈夫なのか?
「や、やっと……着いた……?」
「ああ。ここが一番上だな」
肩で息をしながら途切れ途切れに聞いてくるイーナは、本気で辛かったらしい。
「つ……疲れた……」
「もしこれからも呼び出されるとしたら……ここを上らなければ行けないのか……!?」
申し訳ないけど、そうだろうな……本部に続く道はここ以外に存在していないのだから。
敵の侵攻を防ぐためだとは思うが、幾ら何でもこれは……せめてヘリコプターか何かでも用意してほしい。
俺達はいいから、シェイド大佐とか一般人に対しては……
「と、取り敢えずこのまま行っても駄目だろうから少し休んでから行きましょう」
まさか肩で息をしている3人を『大佐とその一般人とその弟です』なんて言って出すわけにはいかない。
「──貴様等は何をしているんだ。これくらい普通だろう」
「いや普通じゃねぇよ!! お前どんな感覚してんだよ!!」
「ラ、ラスター、少し落ち着け、休む意味がない」
「これで休んでいられるかああああ!!」
息を荒くしながらも、必死でソーマに食って掛かるラスターさんを見ながら、イーナは俺の横で
深呼吸をしながら息を整えていた。
「……あー落ち着いた。こんな長い階段初めて見た」
「俺も最初見たときはびっくりした。良くこんなの作れたよな」
本当に、どうやって作ったんだろうか、こんな階段。
「──そろそろ行きま」
「いい加減にしろよこの白髪!! オレはお前と違って跳躍力なんてモンはねぇんだよ!!」
「そうか、災難だったな。それと俺は白髪ではない、銀髪だ」
「どっちでも同じだどっちでも!!」
「2人とも何でこんな所でまで言い合ってんですか!! ほら行きますよ!!」
未だに言い争いを続けているラスターさんの首根っこを掴み、引き摺るようにして俺は本部の敷地内へと入っていった。
少し歩いてから、有ることに気付いた。
「……今日はダグラスさん来ないんだな」
いつも俺達が帰ると、走って迎えに来てくれるのに。
まあ今日は来客も居ることだし、そこは自重しているのだろう。ダグラスさんも、少し子供っぽい所は
あってもれっきとした大人なのだ。
目の前にある巨大な扉を開け、本部の建物の中に入った。
「えっと司令室は……こっちか」
行き先を確認しながら、人をかき分けるようにして進んでいく。
本部の中にある研究室の前を通った瞬間、とんでもない声が聞こえてきた。
「あああもううるせェ!! 離せ馬鹿!!」
「何もしませんから!!」
「兎に角落ち着いて下さい!!」
「絶対信用できねえ!! 目がそう言ってんだよ!! この状況で落ち着けるか!!」
ガラスか何かが割れるような音に、ここまで届いてくる怒声。
俺は無意識のうちに耳を塞いでいた。ちらりと後ろを見ると、ソーマ以外の全員も俺と同じ事をしていた。
「……ヘメティ、何この声」
「機関ってこんなことやってんのか……?」
「……ラスター、後は任せた、オレは戻る」
「え、何兄サン、逃げるつもりかよ!?」
「あああもう誤解ですって!! こんなの俺だって初めてですよ!!」
今まで、。怒声なんて殆ど聞こえたことがなかった。あるとすれば、ダグラスさんがふざけておかしな薬品でも調合したときくらいか。
「あ、オッドアイ!! それと知らない奴!! 一回表出ろ!!」
「オッドアイじゃない、ヘメティ!! 何でだよ!?」
『おかえり』も何も言わずに、駆け寄ってきたアイドに開口一番表へ出ろと言われ、俺は状況が飲み込めずに聞き返した。
「いいから!! 危な──わあっ!?」
研究室のドアが外れ、アイドが下敷きになる。
そしてそこに、何人もの研究員達がドミノ倒しのように倒れ込んだ。
「い、一体何が」
「退けてめぇら!! 重いんだよ!!」
あったんだ、と呟き終わる前に、再びあの怒号が響き渡った。
その声の主は、大勢の研究員に押しつぶされそうになっている一番下に居る人物らしい。
声のトーンからして、男。それも30代後半辺りの、所謂……オッサン?て言ったらいいのか?
「ったくよー……あー酷い目に遭った」
研究員達を力任せに退かし立ち上がった男性は、溜息を吐きながら茶色に近い金髪を掻き上げた。
「……あれ、てめぇら誰だ?」
俺はそう言って近づいてくる彼を見て、自分の目がおかしいんじゃないかと思った。
普通に考えてこれは有り得ないよね、だよね、と自問自答したくなるような物が、男性にあった。
勿論助走しているわけでもないし、失礼だがヅラが取れているわけでもない。それどころか全く逆だ。
「何なんだよこの研究員共は……珍しいからって滅茶苦茶に触りたがるんだぜ? コレ」
自分の頭を指さし、そこにあるものを否が応にも認識する羽目になってしまった。
それを見て、後ろにいるシェイド大佐もラスターさんもソーマもイーナもが黙り込む。
──そりゃ誰でもそうなるだろう、これは……
「……あんた……」
一度大きく息を吸ってから、俺は男性を指さして精一杯、力の限り叫んだ。

「その頭の上にあるの説明してくださいよーっ!!」

「説明しろって言われても……なぁ」
俺の渾身の叫びに、彼は困ったように頭の上にある獣耳──いや、もうこれは猫耳か?それを自分の指先で弄んだ。




サイラスのおっさんktkr。ここで出そうと思ってたのよ^p^

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