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30わあああああああああああああああ




RELAYS - リレイズ - 30 【有り得ない】

程なくして、何事もなく車が機関の前に停車した。本当にもうすぐだったのか。
「──着きましたよ」
冷静な運転手の声に、車のドアを開けると地面に降りる。
俺達の目の前にあるのは、機関──本部へと続く長い階段だった。
「うっわ何だよこの階段……全部上れっていうのか……?」
「一体何百段あるのよこれ……」
「そう言われても解らないに決まってるだろ」
俺は唖然としているラスターさんとイーナに言い残し、階段に足をかけた。
確かに普通の人間が見たら驚く、というか『なんだこの階段は』と怒るかもしれない。それくらい高い。
ソーマはもう既に数十段くらい上にいる。ジャンプ力が高いっていうのは、こういうときに楽だろうな……
「……し、仕方ない……行くぞ」
シェイド大佐ならこれくらい大丈夫かと思ったら、そうでもなかったらしい。
俺とソーマは慣れているから問題ないが、途中で3人がリタイアしてしまわないかと冷や冷やしながら
俺はゆっくりと階段を上っていった。

予想通り、3人とも途中でリタイアしかけた。
まず最初にイーナが『ごめん、もう駄目』と、その少し後にラスターさんが『いい加減にしろよ!!』と。
そして最後の最後で、『もう勘弁してくれ』とシェイド大佐が半泣きで。
その度に『頑張れ頑張れ』と励ますこっちの身にもなってくれ……というか、仮にも大人が、しかも
軍人で大佐が、17歳に励まされるってどうなんだ。大丈夫なのか?
「や、やっと……着いた……?」
「ああ。ここが一番上だな」
肩で息をしながら途切れ途切れに聞いてくるイーナは、本気で辛かったらしい。
「つ……疲れた……」
「もしこれからも呼び出されるとしたら……ここを上らなければ行けないのか……!?」
申し訳ないけど、そうだろうな……本部に続く道はここ以外に存在していないのだから。
敵の侵攻を防ぐためだとは思うが、幾ら何でもこれは……せめてヘリコプターか何かでも用意してほしい。
俺達はいいから、シェイド大佐とか一般人に対しては……
「と、取り敢えずこのまま行っても駄目だろうから少し休んでから行きましょう」
まさか肩で息をしている3人を『大佐とその一般人とその弟です』なんて言って出すわけにはいかない。
「──貴様等は何をしているんだ。これくらい普通だろう」
「いや普通じゃねぇよ!! お前どんな感覚してんだよ!!」
「ラ、ラスター、少し落ち着け、休む意味がない」
「これで休んでいられるかああああ!!」
息を荒くしながらも、必死でソーマに食って掛かるラスターさんを見ながら、イーナは俺の横で
深呼吸をしながら息を整えていた。
「……あー落ち着いた。こんな長い階段初めて見た」
「俺も最初見たときはびっくりした。良くこんなの作れたよな」
本当に、どうやって作ったんだろうか、こんな階段。
「──そろそろ行きま」
「いい加減にしろよこの白髪!! オレはお前と違って跳躍力なんてモンはねぇんだよ!!」
「そうか、災難だったな。それと俺は白髪ではない、銀髪だ」
「どっちでも同じだどっちでも!!」
「2人とも何でこんな所でまで言い合ってんですか!! ほら行きますよ!!」
未だに言い争いを続けているラスターさんの首根っこを掴み、引き摺るようにして俺は本部の敷地内へと入っていった。
少し歩いてから、有ることに気付いた。
「……今日はダグラスさん来ないんだな」
いつも俺達が帰ると、走って迎えに来てくれるのに。
まあ今日は来客も居ることだし、そこは自重しているのだろう。ダグラスさんも、少し子供っぽい所は
あってもれっきとした大人なのだ。
目の前にある巨大な扉を開け、本部の建物の中に入った。
「えっと司令室は……こっちか」
行き先を確認しながら、人をかき分けるようにして進んでいく。
本部の中にある研究室の前を通った瞬間、とんでもない声が聞こえてきた。
「あああもううるせェ!! 離せ馬鹿!!」
「何もしませんから!!」
「兎に角落ち着いて下さい!!」
「絶対信用できねえ!! 目がそう言ってんだよ!! この状況で落ち着けるか!!」
ガラスか何かが割れるような音に、ここまで届いてくる怒声。
俺は無意識のうちに耳を塞いでいた。ちらりと後ろを見ると、ソーマ以外の全員も俺と同じ事をしていた。
「……ヘメティ、何この声」
「機関ってこんなことやってんのか……?」
「……ラスター、後は任せた、オレは戻る」
「え、何兄サン、逃げるつもりかよ!?」
「あああもう誤解ですって!! こんなの俺だって初めてですよ!!」
今まで、。怒声なんて殆ど聞こえたことがなかった。あるとすれば、ダグラスさんがふざけておかしな薬品でも調合したときくらいか。
「あ、オッドアイ!! それと知らない奴!! 一回表出ろ!!」
「オッドアイじゃない、ヘメティ!! 何でだよ!?」
『おかえり』も何も言わずに、駆け寄ってきたアイドに開口一番表へ出ろと言われ、俺は状況が飲み込めずに聞き返した。
「いいから!! 危な──わあっ!?」
研究室のドアが外れ、アイドが下敷きになる。
そしてそこに、何人もの研究員達がドミノ倒しのように倒れ込んだ。
「い、一体何が」
「退けてめぇら!! 重いんだよ!!」
あったんだ、と呟き終わる前に、再びあの怒号が響き渡った。
その声の主は、大勢の研究員に押しつぶされそうになっている一番下に居る人物らしい。
声のトーンからして、男。それも30代後半辺りの、所謂……オッサン?て言ったらいいのか?
「ったくよー……あー酷い目に遭った」
研究員達を力任せに退かし立ち上がった男性は、溜息を吐きながら茶色に近い金髪を掻き上げた。
「……あれ、てめぇら誰だ?」
俺はそう言って近づいてくる彼を見て、自分の目がおかしいんじゃないかと思った。
普通に考えてこれは有り得ないよね、だよね、と自問自答したくなるような物が、男性にあった。
勿論助走しているわけでもないし、失礼だがヅラが取れているわけでもない。それどころか全く逆だ。
「何なんだよこの研究員共は……珍しいからって滅茶苦茶に触りたがるんだぜ? コレ」
自分の頭を指さし、そこにあるものを否が応にも認識する羽目になってしまった。
それを見て、後ろにいるシェイド大佐もラスターさんもソーマもイーナもが黙り込む。
──そりゃ誰でもそうなるだろう、これは……
「……あんた……」
一度大きく息を吸ってから、俺は男性を指さして精一杯、力の限り叫んだ。

「その頭の上にあるの説明してくださいよーっ!!」

「説明しろって言われても……なぁ」
俺の渾身の叫びに、彼は困ったように頭の上にある獣耳──いや、もうこれは猫耳か?それを自分の指先で弄んだ。




サイラスのおっさんktkr。ここで出そうと思ってたのよ^p^

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