魔界に堕ちよう 35話 忍者ブログ
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Want to return終わってからかなりスランプ(´・ω・`)
でも頑張る。




RELAYS - リレイズ - 35 【安息】

「や、やっと終わった……!」
俺は最後のゴミ袋をまとめ、絞り出すように言った。
目の前には数え切れないくらいのゴミ袋と、それと同じくらいの資料の山。
資料を関係性があると思われる物別に分けて、ファイルに入れて、まとめて、積み上げて……その繰り返しだ。
中には魔法と魔術の一覧表なんて物もあった。魔法なんて使えない俺からすれば無縁のものだけど。
よく研究班の人間が自分でまとめたらしい資料の山に埋もれて死んでいるように眠っているのを見かける。
その度に「そんなに辛いのか」と思っていたが、確かにこれは辛い。今まで解らなかった自分は何だったんだと思うくらいに疲れる。
俺の後ろではイーナとラスターさんとサイラスが座り込んでいる。それに比べてソーマとシェイド大佐、ファンデヴは平然と立っている。この3人は疲れなんて知らないのか。
もしかしたら──いや、もしかしなくても、彼等の辞書に『疲労』という言葉はないのだろう。
「もうしばらく動きたくない……」
「オレこんなで疲れるなんて思ってなかった……」
「っほ、本気で腰が……」
3人の溜め息と共に出された言葉に、他の3人は何故そこまで疲弊しているのか理解できない、と言った様子で声をかけた。
「どれだけ体力がないんだ、貴様等は」
「ラスター、それでも武器屋の店主か? これより重い物なんて幾らでも持ち運びしているだろう」
「……サイラス、やっぱり歳なんじゃないのか」
体力がないんじゃなくて、慣れてないだけだと思うんだが。俺だって資料整理に大掃除なんて事をしたのは初めてだ。それを今本部に来たばかりの人間がやったらこうなるのも仕方がないように思える。
「──取り敢えずオッサン、これ。湿布」
「ああサンキュ……って、オッサン呼ばわりすんじゃねぇよ!」
自分に差し出されたアイドの手から湿布を受け取ると、サイラスは軽く息切れを起こしながら、それでも反論した。
どれだけオッサンと呼ばれるのが嫌なのか……そりゃ良い気分はしないと思うが、ここまで必死になるのも珍しい。
「やー、みんなお疲れ様!! 特にヘメ君達は帰ってきたばっかりなのにごめんね!」
どこか清々しそうに、いつも通りの爽やかな笑顔でダグラスさんは言った。その手には、コーヒーカップが握られている。
コーヒーが苦手なダグラスさんの事だ、中身は恐らくココア。……案外似合うな。
「だったら最初からやらせないでくださいよ!!」
「そうだそうだ! それにオレ達は何もしてねぇんだぞ!!」
「解ってるよそんなのはー。ただみんなでやった方が早く終わるよねってだけだよ」
解っていて何故やらせるのか。本当にこの人は考えていることが解らない。
というか、何なんだその理由は。連帯責任みたいな感じなのか?
「──あ、それと言い忘れてたけど、イーナは正式に機関に入るって事で決まったから」
「そうそう。それを言おうとしたら部屋に誰も居なくて、探しに行ったらこんな事になってたのよ」
座り込んだままの体制でイーナはダグラスさんの言葉に同調した。
俺が考えたよりも早く終わったらしい。だからここまで来たのか。
「案外あっさりいったな……」
イーナをここに連れてくるのも、入らせるのも、予想していたよりかなりあっさりと終わった。
それにはダグラスさんの人柄もあるのかもしれない。
「それじゃ、改めて──よろしくな」
これで晴れて、イーナも俺達の仲間だ。勿論、俺は機関に入っていなくとも彼女は仲間だと思っているけれど。
「──あ、アイド! 休んでる所悪いけど、イーナをどこかに空き部屋作ってそこに案内して!」
「アンタどこまで鬼なんスか!!」
半泣きで、いや、もう泣く寸前でアイドは叫ぶが、当の本人は聞いちゃいない。
何て人使いの荒い人なんだ……以前から感じてはいた。だがここまでとは思わなかった。
「いーから! じゃあイーナ、また」
「え、あ、ハイ……あの人かわいそ……」
ダグラスさんに返事を返した後、イーナはアイドにもダグラスさんにも聞こえないような小声でぽつりと呟いた。
「仕方ない、あの人はああいう人だから。ほら、アイドについてけ」
何か面倒ごとがあると、容赦なく他人を使う。それがダグラス=ティアマントというリレイズ司令官だ。
別に悪人とかじゃない。ただ、『何かこれ一人でやるの? えーそれ面倒じゃない?』という事を他の人間まで巻き込んで解消するのだ。自分一人、もしくは数人だけでは絶対にやろうとしない。
そういう性格のせいもあり、研究班なんて数十人以上、もしかすれば100人くらい居るかもしれないくらいの大人数だ。白衣を着ている人間はほぼ研究班と言っていい。
それさえなければ……いいんだけどな。
「解った。んじゃ、また後でね!」
「俺達は邪魔だろうから、どっか行っておくぜ。な、ファンデヴ」
「……そうだ。自分達は違う、無関係な他人だ。だから」
「あ、ごめんね二人とも! あとで猫じゃらしと何かお菓子あげるから!」
「いらねーよ!!」
「要らない……!」
猫じゃらしよりマタタビとかの方がいいと思う。だがそれを言うと俺自身の命も危ないから自重しておく。
ファンデヴが何処か焦っているような気がした。不思議な所もあるが、やっぱり人間じみてるところだってある。
手を振ってからアイドを追いかけるイーナの後ろ姿、それにファンデヴとサイラスが見えなくなってから、ダグラスさんは俺達に向き直った。
そして一度短く溜息を吐いてから、どこか寂しげに微笑んだ。
「──任務、お疲れ様」
「……はい」
途端に、ダグラスさんの口元から笑みが消え、眼鏡の奥の瞳が真剣な光を帯びる。もうふざけてはいない。
「それで、どうだった? ……報告を」
「解っています。……その前にダグラスさん。ココア啜りながら真面目な顔でいうの止めません? ギャップが凄くて吹きそうになるんですけど」
死ぬ危険性だって当然ある任務の話を真面目な顔でしているのに、ココアなんて啜りながら言われたらそれはもう酷い。
何の一発芸だ、と爆笑してしまいそうになる。これは酷い。
「仕方ない。僕はコーヒーなんて苦い飲み物は苦手なんだ。ブラックコーヒーなんて飲み物じゃない」
「……司令官。オレはブラック派なんだが」
「大佐はそうか……ラスター君、君は?」
「は? オレ? オレはカフェオレ派なんだけど」
「……見事に好みが分かれたな。オレはブラック、ラスターはカフェオレ、貴方はココアだ。仕方ない、あとはそこの二人の意見で」
「はいはいはいそこまでにしてください! もう突っ込みませんからさっさと進めましょう!!」
何でココアかコーヒーかなんて話しになっているんだ。
ちらりと横目で隣にいるソーマを見れば、本当に下らないとでもいうように醒めた視線を送っている。
こいつは……雰囲気からして甘い物は嫌っていそうな気がする。というか食べる物にそこまでこだわっている気もしない。
自分から会話をやめさせておいて何だが、俺はコーヒーやココア自体が苦手だ。できれば紅茶がいい。
緑茶なんてのもあるらしいが、あまり興味はない。今の所は紅茶だけで充分だ。
「この重苦しい空気をどうにかしようと思ったんじゃないか。僕はこういうの嫌いなんだって何回も言ってるでしょー」
「司令官ともあろう人がそんなんでいいんですか……!」
「こういう暗い状況だからこそ、司令官が明るくないとみんな暗くなっちゃうでしょ? 僕はそれが嫌なんだ」
ダグラスさんの言っていることは解る。俺も一緒にいる仲間が暗い顔をしていたら、冗談でも何でも言って、何とかして明るくしようとするだろうから。
だがこの人の場合はその方法が突拍子もないというか、冗談なのか本気なのか判断しづらいところがある。
そこが難しいのだ。本気のときに「冗談言わないで下さいよ」と突っ込めば怒られるし、かといって冗談のときに何も言わなければ「何で突っ込んでくれないのさ」と不満を漏らされる、という……
「……いい加減に話を進めたらどうだ。自分達で話題を元に戻すことも考えろ。俺の手を煩わせるな」
いつも通り、と言うと少し悪い気もするが、ソーマが話を元に戻した。
ここまで年上、それも大佐や司令官という自分よりも立場が上の人間に堂々と命令口調で言える人間も珍しい。
「ごめんごめん。そんな怒らないでよソーマ。君切れると手付けられなくなっちゃうから」
「別に怒っている訳ではない。ただいつまで経っても馬鹿な話ばかりしている貴様等に苛立っているだけだ」
「だからごめんってー」
俺は二人を見て溜息を吐いた。もうどっちが司令官なんだか解らない。
「……それじゃ、程良く明るくなった所で──どうだったか、話してくれるかな」
明るくなってないよ!! と突っ込みたかったが、いい加減にしないとそろそろやばい。色々な意味で。
今回の任務、それの報告。
俺は一度ソーマやシェイド大佐、ラスターさんを見てから口を開いた。




取り敢えずサイラスのオッサンは猫じゃらしで釣れないと思う。

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