魔界に堕ちよう 36話ー 忍者ブログ
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取り敢えず更新頑張らないとっていう。Wantのプロットもまだまだだけどね!
頑張って書いてたのに消えて死にたくなったのは俺だけじゃないはずだ。




RELAYS - リレイズ - 36 【報告】

「今回は——」
そこまで言いかけて止まる。
今回の任務の内容は三つあった。一つ目の『の軍隊に加勢して敵を撃退すること』は終わっている。二つ目の『ウィジロの軍人を、数人でいいから捕らえること』。これはイーナが居るから大丈夫……という訳にもいかないだろうか。後でそこは聞いてみることにする。
だが三つ目だ。『極力死者を出さないこと』。
俺はあの時、焦げ茶の長髪に赤コートの青年——マーヴィンと対峙した時に気を失っている。
結局あの後はあちら側が撤退したらしいが、死者やその他の事は解らない。
要するに、俺は三つ目の事については本当に解らない……というか知らないのだ。
「……ああ、お前は気を失っていたか。仕方ない。オレが言おう」
「はい……すみません、シェイド大佐」
「じゃあ何でお前が話すみたいな感じになってんだよ? ちゃんと言えば良かっただろ」
ラスターさんの言う通り、何故俺は話す前に「気を失ってたので解りません」と言わなかったのか。
「いや、何か空気的に『それじゃあヘメ君よろしくね』みたいな感じでしたよね」
「知るか」
「知らないぞ」
「知らねぇ」
「知らないよ?」
ソーマとシェイド大佐、ラスターさん、ダグラスさんに同時に言われ、二の句が継げなくなる。
「絶対そういう空気でしたよ!! 俺がそういう空気に乗っちゃうって解ってて言いましたよねアレ!!」
「それは被害妄想だよーヘメくーん」
ダグラスさん特有の間延びした口調が何故か感に障るというか、何というか……兎に角無性にイライラする。
俺は何故か『それじゃあお願いします』といったような空気——といったらいいのだろうか、雰囲気になると、何となく自分がやろうと思ってしまう。
仕切るのが好き、というのとは少し違うが。
「まあそれは後々話せばいいだろう。全部オレが話すから黙っていろ」
「……わ、解りましたよ」
今ここで言い合っても、俺に良いことなんて一つもない。逆に醜態を晒すことになる。
「——それじゃあ、大佐」
ダグラスさんももうふざけるのはやめにしたのか、その口元から笑みが消えていた。
何となく、いつもよりも緊張しているような状況に、俺も気を引き締める。
と同時に、背後から本当に小さくだが舌打ちのような音が聞こえた。それを訝り、振り返る。
「……どれだけ脱線すれば気が済むんだ」
小声の筈なのにやけにはっきりと聞こえたソーマの聞いた者の背筋を凍らせるような低い声に、俺は身震いした。
そろそろ真面目に本題に入らないと色々な意味で危険だ。こいつは一度怒ると何をしでかすか解らない。恐らく、辺り一面に氷柱を発生させるか、凍らせるかのどちらか。
「……シェイド大佐」
ソーマが俺の背後でずっと黒いオーラを出し続けている、その現実に耐えきれず、シェイド大佐に小さく声をかけた。
「ああ、解っている。——まず、犠牲者の数だが」
やっと本題に入れたことに、俺は内心安堵の溜息を漏らしていた。背後でも、黒いオーラが若干だが薄くなった気がする。
「オレが確認しただけだと、本当に少なく抑えられたと思う。戦いで犠牲者を出さないのは不可能だったが、あちら側も同じらしい。死なない程度の怪我は容赦なくさせているが」
こんな戦いで、死者を出さないで戦えという方が無茶な話だ。
というか、そんな事はできるわけがない。有り得ない。
戦いなんて物がある以上、犠牲は避けられない。
そう考えると、何か溜息を吐きたくなるような、途方に暮れるような不思議な感覚がある。胸に穴でも空いた感じ、と言えば一番近いのかもしれない。上手く説明できないけれど。
「死なない程度の怪我……と言うと?」
「手足を撃ったり、切り付けたり……だな。その他にも多いのが、武器を使えないようにする、といった方法か」
ラスターさんがやったように、銃を真っ二つに切断したりという方法だ。一応俺にもできた……けど。
確かにそうすれば、戦力を削げる。勿論、この世界のどこかには居ると思うが、まさか銃や剣を持っている相手に素手や足技で大勢の兵に向かっていく人間は居ないだろう。
「ちゃんと治療もすれば、完治する。心配は要らない」
「それなら問題なし。今回の任務内容は全部クリアしてるよ。ほんと、お疲れ様」
黙ってシェイド大佐の話を聞いていたダグラスさんは、どこか安心したように微笑んだ。
言い終わった後、ダグラスさんは少し考え、思い出したように顔を上げた。
「ああ、それと何で大佐達を呼んだのかも言っておかないと駄目だね」
今まで忘れていたが、それだ。
シェイド大佐を呼んだのには、何か理由がある筈だ。
幾らダグラスさんが人使いが荒くてそういう意味では若干鬼畜だからといって、対した理由も無しに『ちょっと会ってみたかった』というような理由で呼ぶような人ではないことは良く解っている。
「では、その理由を頼む」
「勿論。……まあ、駄目で元々と思って言うんだけど」
そう前置きしてから、シェイド大佐の目を見据える。
「僕——いや、我々への協力を、お願いしたい」
「……協力要請、か」
シェイド大佐やラスターさんのような、戦闘能力が高い人間が居れば、これから少しでも楽になるかもしれない。
ただ、ラスターさんは店に休店の貼り紙を貼っているからいいとして、シェイド大佐はどうなのか。
「オレは別にいいぜ。店なんて放置してても大丈夫だろうし。あの店泥棒も入らねぇよ」
「それもそれでアバウトすぎると思うんですが」
「いっそ泥棒にでも入られて無一文になってしまえ、馬鹿が」
「いや、兄サンの貯金あるからそこは大丈夫だな」
「別に真面目に答えなくていいですよ、これ絶対馬鹿にしてるだけなので」
ソーマのツッコミというか、毒舌に真面目に答えなくても……答えなければ殺される、というわけでもないのだから。
だが突っ込んだ本人は大真面目らしく、「俺はふざけて等いない」と言ってきた。まあソーマがふざけるなんて事は有り得ないか。それこそ犠牲者を出さないくらいに。
「……それで、大佐は?」
「——オレも……良いだろう。どうせ戻っても、訓練と見張り程度だ。あんな平和な街、攻め込んでくる方が不思議だ」
「そうそう。リグスペイアなんて昔っから影薄いんだからよ」
この二人に、郷土愛なんて言葉はないのかと問い質したくなった。冗談なのか本気なのか解らない。
「良かった。……それじゃあ、二人ともこれからよろしく」
ダグラスさんが言った瞬間、イーナを部屋に案内し終わったのかアイドが帰ってきた。
——何か嫌な予感がするな、これ。
「し、司令官……終わりました」
「丁度良いところにきた! よしアイド、今度はこの二人を」
「いい加減にしてくれこの鬼司令官!!」
涙混じりの声で叫び、アイドは帰ってきたばかりだというのにどこかへ走って逃げていった。
「あーあ行っちゃった……冗談だったのに」
「冗談に聞こえないんですよ、ダグラスさんのは」
突拍子もないことを、常識的に考えてやるわけがないと思ったことを本当に実行してしまうから、冗談だと思われないのだ。
「そうなの?」
「……オレもそうだと思うぜ」
「ラスターと同意見だ」
「別に貴様がどう思われていようがどうでもいい」
「そうなんだ……取り敢えずソーマ、その言い方酷くない? 泣いていい?」
ソーマの言い方が酷いのもいつものことだ。取り敢えずソーマを抜いてここにいる3人が『冗談に聞こえない』という考えらしい。
「仕方ない……じゃあ僕が案内するから付いてきて。ヘメ君達はもう部屋に戻ってもいいしどこ行ってもいいよー」
「解りました。じゃあ、シェイド大佐もラスターさんもまた後で」
「ああ。またな」
「じゃあなー。また後で」
どこか面倒くさそうなダグラスさんに連れられて歩いていく二人の姿が見えなくなる。
それからしばらくして、サイラスとファンデヴが戻ってきた。
「おー終わったのか、丁度」
「ああ。そういえばどこ行ってたんだ?」
研究室付近は、サイラスにとってトラウマになっているだろうからそこには行っていないに決まっている。
となると、二人でどこに行っていたのか気になった。
「あー、ただちょっと面白いのねぇかなと思って、色々見てきた。ファンデヴは全部見たらしいがな」
「サイラスが研究員に絡まれてる間暇だったから、それだけ」
「そうだったのか。——あれ、ソーマ?」
俺の背後に居た筈のソーマが見当たらない事に気付き、俺は辺りを見回した。
「ソーマ? あああの白髪頭か。さっき俺等と入れ違いに出てったぞ」
「白髪頭って、本人に言ったら殺されるぞ……」
そんなことをソーマ本人に言ったら、氷柱で串刺しにされるかナトゥスで首を刈り取られるかのどちらかだ。
「まあいいか……それじゃあ俺も行く」
「あ? あー解った。んじゃ、俺等は部屋戻るわ」
「解った。じゃあまた今度」
サイラスとファンデヴに手を振り、俺はその場を後にした。




1週間くらいかかったとかしねる\(^o^)/

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