魔界に堕ちよう Want to return 13 忍者ブログ
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こっから先はR指定だ!!

みっくみっくにしってあげるー
みくみく聞きながらこういうの書くってどうなんだろ。

Want to return 13

「──それから1ヶ月くらい経っても帰ってこなかった。そして1年くらい一人で生きて、いきなり
ここに飛ばされた。それだけ」
カラッドの話を、アルディックは何も言わずに黙って聞いていた。
かける言葉も見つからない上、容易に口なんて開けるような話ではなかった、というのもあるだろうが。
「……俺が主催者を殺しに行くって言ったのは、アイツが俺の肉親だからだ」
自分の手で決着をつけたい、カラッドはそう考えていた。
「まさかアイツがこんな事してるとは思ってなかった。『ホール』で集められたときに初めて声
聞いて解ったけど」
この遊びの為に呼び出された人間達は、この世界の中心に建っている塔の1階にあるホールと呼ばれる
広間に集められる。
そこで主催者の声とルールを聞き、自分が扱う武器を2つ程選択し、ペアを組んでようやく遊びが始まる。
剣や刀なんて物が持てるわけもない、銃の使い方は解らない。勿論、質問でもすれば教えて貰えた
だろうが、何が起こっているのかさえ解らない状態で、そんな事ができるわけもなかった。
だからカラッドは、一対のナイフと投てき用のナイフを選んだ。
自分が一番見慣れていて、使い方をよく知っているものだったから。
「……俺って本当に弱いんだな」
声を聞くだけなら、あんな事にもならなかったのに、何故ダークの姿を見たときに身体が動かなくなったのか。
大丈夫だと思っていたのに、何で、どうして。
「──弱くねぇよ」
今まで黙っていたアルディックの口から発せられた言葉に、カラッドは俯いていた顔を上げた。
「お前は充分強いだろ。俺なんかより」
肯定することも、否定することもできない。
ただ、自分は抗うこともできずに、感覚も何もかもを閉ざして耐えているしかなかった。
相手がおかしいと気がついておきながら、止めることも抗うこともしなかった。
「俺は……ただの臆病者だ」
「本当の臆病者なら、この世界で生きていけない。とっくに発狂してる」
本当に精神が脆弱ならば、こんな世界で生きていけるわけがない。
ゲームが開始したのと同時に、その場で自害するかわざわざ敵の目の前に出て行って自ら殺して貰いに行くか。
「俺はそういう人間を何人も見てきた。お前は違う」
この世界を彷徨っていれば、嫌でもそういう人間は目に入ってくる。
カラッドも見たことはあったが、自分も何れああなるのだろうかと考えるだけで『自分は弱くない』とは
考えたことがなかった。
「今のまんまで良いんだよ、お前は。──ただ、な」
カラッドの頭に、体温が低いのか少し冷たいアルディックの手が置かれた。
「……辛いんだったら、我慢してないで大声上げて泣けば良いんだよ」
耐えすぎれば、重みに耐えきれずにいつか壊れてしまう。
彼がここまで自我を保ち、壊れなかったのは、奇跡に近い。
自分だったら耐えられただろうか、アルディックは考えて、すぐに答えを出した。
耐えられる訳がないのだ。
実の兄が母親を惨殺した時点で、自分ならば発狂していたかもしれない。
だからこそ、カラッドは自分よりも精神的に、遙かに強いと感じていた。
「別に、今は……辛くない。それに、大声上げて泣くなんて、どうやったらいいのか解らない」
涙は出るけれど、大声なんて上げられない。──上げる術さえ、知らない。
「それじゃ、その方法が解ったときに、今までの分泣けばいい」
言いながら、アルディックはカラッドの頭をできる限り優しく撫でた。
「……そういう物、なのか。兎に角もう子供扱いは止めてくれよ」
もうこれ以上心配されたくない。自分も、心配させたくない。
これはただの強がりだろうか。
カラッドは今まで通り、冗談交じりに言うと彼の手を退かした。
「その様子じゃ……もう、大丈夫そうだな」
カラッドの考えていることが解ったのか、アルディックは反論せずに呟いた。
「だから大丈夫だって言ってるだろ……そういえばあんた怪我大丈夫なのか?」
何か普通に会話をしているため、重傷者だということを忘れそうになる。
「あー大丈夫だ。まだ痛ぇけど、な。一応あいつから鎮痛剤も貰ったし」
彼が指さした先には、小さめの瓶と紙切れが置いてあった。
紙切れには、荒々しい文字でアルディック宛と見られる短い文が綴られている。
「『結構効く奴だからさっさと治せバーカ』だってよ」
「……アポフィスらしいな」
会ってから数時間で別れた者同士だが、彼の人柄はある程度解っていた。
「──だから、俺のことは何も心配しなくていいからな? 何ならこのまま塔に乗り込んだっていい」
窓の外には、巨大な塔がそびえ立っている。
あそこに主催者は、ダークは居る。そこに行けば、全ての決着をつけられる。
「本当に、いいのか?」
「当たり前だろ? じゃなかったらこんな事言わねぇよ」
腰掛けていたベッドから立ち上がり、傍にあった棚の上からショットガンを手に取る。
「で、行くのか?」
分かり切った問いに、カラッドはしっかりと頷いた。
「……行く」
「よし、それじゃあ行くぞ!」
アルディックはどこか嬉しそうに笑って、部屋のドアを勢いよく開け放った。

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