魔界に堕ちよう Want to return Final 忍者ブログ
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こっから先はR指定だ!!

最後までこの警告文だったね!

っていうことで最終話。書くぞー。

Want to return Final

雨は降り止む気配を見せない。これを降らせたのがアルディックなのだから、雨を止ませるのも彼次第だ。
雨に打たれて冷えていく身体よりも、カラッドの心の中は冷たく凍えきっていた。
今まで信じていた人間に、仲間に裏切られたという事実。それが、彼の心を締め付けていた。
「向かってこないのか? 今まで参加者にやってきたみたいに、俺にそのナイフの切っ先でも突き立ててみろよ。今の俺はお前の敵だ」
挑発的な笑みに、そうとしか捉えられない言葉を吐きながら、ショットガンを玩具のように弄ぶ。
そんなアルディックの様子にも、カラッドは何の反応も示さずに俯いたままだった。
「本当に戦わないらしいなー……それじゃ、こっちからいかせて貰──」
言いかけた瞬間、カラッドのナイフがアルディックを襲った。
今までに見たこともないような速さで自分の顔に向かってくるナイフを、間一髪の所で避ける。
その一閃は、アルディックの頬と右目に巻かれた包帯の一部を薄くだが切り裂いていた。
アルディックは後ろに跳んで間合いを取ると、血が流れ出ている頬の傷を指で撫で、愉快そうに更に口元を歪めた。
「そうこなくっちゃな……面白くな──ッ!?」
またも言い終わる前に、今度はカラッドの全体重を掛けた一撃が振り下ろされた。
一瞬驚いたが、それをショットガンで受け止めると弾き返す。
だが、それにも構わずにカラッドはもう一度ナイフを振り下ろした。
「──あんたを……ずっと……!」
ナイフを握りしめている右手が、怒りで震えている。
「俺は、あんたをずっと信頼してたんだ!! 周りの大人だって信じられない、親も居ない、家族も居ない、それでも、あんただけは違うって!!」
今まで大声なんて物を出したりしなかったカラッドが、叫んでいた。
怒りに任せて自分に向けられるナイフを避けながら、アルディックは醒めた眼でカラッドを見下ろした。
「そんなのお前の勝手だ。俺は裏切ったつもりはない。勝手に俺を信じたのは誰だ? お前だ、カラッド」
「うるさい!!」
カラッドは一度少し後方に下がり、投てきナイフを取り出すと力の限り投げ付けた。
明確な『殺意』を持って自分を狙うそれを、アルディックは表情一つ変えずに全て撃ち落とした。
金属と銃弾がぶつかり合う悲鳴にも似た激しい金属音が辺りに鳴り響く。
のんびりとショットガンに弾を込めているアルディックを睨み、カラッドは言葉を途切れさせながら、ダークの死体の傍に落ちていたダークのナイフを手に取った。
「それなのに──ふざけるな!!」
叫ぶと同時に、そのナイフをアルディックへと槍投げのようにして飛ばす。
予想していなかったのか、アルディックは防ぐことも避けることもできずにそのままその一撃を受けた。
カラッドが飛ばしたナイフは、アルディックの左脇腹を貫いていた。
「ぐぁッ……あ……」
腹から溢れ出た血が、耳障りな水音を立ててアルディックの足下に落ちる。
それを、降り続いている雨が徐々に滲ませていった。
「──やるじゃねぇか、カラッド」
痛みで息を荒くしながら、それでもカラッドを見据えてアルディックは言った。
その口元には、先程からずっと浮かんでいた笑みはない。
「でも、これだけで終わるほど……俺は優しくない」
アルディックは左手でナイフが刺さったままの傷口を押さえる。
そして右手でショットガンを構えるとカラッドに狙いを定め、その引き金を引いた。
3発続けて撃たれた銃弾を、カラッドは避けられずにその身体で受け止めてしまう。
いや、避けなかった。
自分から銃弾に突っ込み、アルディックとの間合いを一気に詰める。
「なッ!?」
「……許さない──許さないッ!!」
カラッドの眼から、雨とは違う雫がこぼれ落ちた。
彼のすぐ傍まで走り寄ると、自分が持っている全ての力を振り絞り、ナイフをアルディックの左胸──心臓の位置に的確に、深々と突き刺した。
アルディックは悲鳴も上げずに膝をつくと、カラッドの方へと倒れ込んだ。
手に伝うアルディックの血の温かさが、酷く生々しく不快だった。今までにも血で手を濡らすことはあったが、ここまで不快になったのは初めてだった。
アルディックは未だに、か細く呼吸を続けている。
心臓を貫かれてまで生きているのは、奇跡にも等しいだろう。
「……アルディック」
もう言葉を発する力も残っていないのか、カラッドの呼びかけにも答える気配はない。
だが、アルディックは口元を自分の血で赤く染めながら、それでも口を開いた。

「──ゲームクリアだ」

アルディックの呼吸と心臓が、完全に、止まった。

あれだけ降り注いでいた雨が止み、その代わりに光が差す。
その瞬間、周りの景色が鈴の音を思わせる音を立てながら、薄いガラス細工のように砕け散っていく。
それと同時に、カラッドとアルディックの身体も薄く透き通って消えようとしていた。
「……どうして」
再び、カラッドの眼から涙が溢れ出した。
「何でなんだよ! どうして──どうして!」
上手く呼吸ができない、そんな状態で、消滅する世界と信じていた『仲間』の亡骸を見ながら、消える寸前

「──うあぁあああああああああああああ!!」

泣き叫ぶ事なんてできない、そう思っていたのに。

『Congratulations.──Krad』

一際大きな音を立てて、この世界の全てが、砕け散った。


信じられるものなんてない、ずっとそうして生きてきた筈なのに
裏切られるのが当たり前、ずっとそう考えて生きてきた筈なのに
裏切られるのは、こんなに痛かったか?
信じていた相手を殺すのは、こんなに狂いそうになるものだったか?

暗い、どこまでも堕ちるような感覚の中で、ずっとそう考えてた


全部、終わった

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