魔界に堕ちよう 52話ー 忍者ブログ
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戦闘シーンは苦手なんだよ!




先程までの話し声は聞こえず、アレスとザクストは軽い足音を響かせながら家屋の屋根、その上を走っていた。
前を鋭く見据えているアレスの口から、呟きにしては大きな声が零れる。
「——石造りの平坦な屋根、確かにこちらを走った方が簡単だな。貴様にしては良い判断だ」
「ハハッ、俺にしてはってどういう意味だよ、馬鹿にしてんのか」
「そういう意味だ」
そこ会話を止め、徐々に見えてくる宿屋だけを見つめながら更に走る速度を上げる。
丁度高く跳躍すれば届く距離まで来たところで、二人は止まらずに本当に跳躍した。
そして、
「……行くぞ」
宿の窓を蹴破り、部屋の中へと進入した。

RELAYS - リレイズ - 52 【奇襲】

耳に届いたのは、ガラスが派手に割れる大きくも高く澄んだ音だった。
寝言も何も聞こえない、数人の寝息が聞こえるだけの静かな空間に、それはやたらと響いた。
勿論、全員が音を聞き取り、眠りから覚めて目を開く。
俺は飛び上がるようにして身体を起こすと、音が聞こえたと思われる、ガラスが破壊されたらしい窓へと顔を向けた。
月明かりを背負っているのは、一人の屈んだ人間とこの場に似付かわしくない程に背筋を伸ばして立っている人間だった。顔は月明かりで照らされているとはいえ薄暗く、よく見えない。
「——一体何が……!」
明らかに狼狽したのが解る誰かの声が聞こえると同時に、立っている人間が行動を起こした。
その人影は真っ直ぐ俺に向かってくると、ベッドから降りて傍に立てかけていた闇霧を手に取ろうとしていた俺の首を強く掴んだ。
そこで、相手が何者なのか気付く。
「ッ、アレス……!」
「……茶髪にオッドアイ、貴様だな。『貴様を連れてこい』、あの方の命令だ。貴様以外は殺す」
アレスは淡々と何のことでもないように言っているが、俺としては何が何だか理解できない。命令、というのが支配者であるマーヴィンの命令だということ以外は。
「ヘメティ!」
「おっと、動くなよ? 別に俺はお前等に興味はないんだ。ただこれは命令……や、俺にとっちゃ仕事みたいなモンだからな。やらなきゃならないって奴さ」
もう一人は予想通りザクストだったらしく、背後では彼の声と銃を構える金属音が鳴っていた。
「騒がれれば面倒だ、意識を失った所を連れて帰らせて貰——」
その瞬間、部屋のドアが先程の破壊音に比べれば小さな音を立てて開け放たれる。
「ちょっと……ど、どうしたの!?」
明らかに異常な光景を目にしたイーナが、戸惑いながら悲鳴に近い声を上げた。彼女の後ろには、同じくファンデヴも驚愕の表情で立っている。
「……イーナ……!」
ザクストが、絞り出すような声で彼女の名前を口にする。それには、焦燥や怒り、悲しみといった感情が見え隠れしていた。
「何で、何でアンタがまたここに居る訳!? どういう事なの!?」
イーナの声は、今まで訊いたことがないくらいに強い口調だった。彼女もザクストと同じ感情を感じているらしいが、その声からは殆ど『怒り』しか伝わっては来ない。
「撃て」
不意にアレスが手を離し、立ち上がるとザクストに向けてはっきりと言い放った。
即座に闇霧を手にすると瞬時に抜刀し、先程アレスに掴まれていた所為で痛みのある首を左手で押さえながらふらふらと立ち上がる。
「……何故撃たない?」
アレスは微かに不機嫌そうに眉根を寄せると、吐き捨てるように問う。
ザクストの持っている二丁拳銃、その内右手に持たれている白黒に塗られている拳銃の銃口はイーナに向けられてはいるが、明らかに震えていた。
彼は、彼女に発砲することを躊躇っている。
「……貴様が殺らないのならば私が殺る」
またも事務的な、抑揚のない声で言うとアレスはザクストの手から拳銃を奪い取る。
「待てッ!」
待て、とザクスト自身が制止するのも構わず、彼女に銃口を向けると躊躇なく引き金を引いた。
無機質な発砲音が一発だけ響き、反響する。
それは幸いにもイーナの左頬を掠めただけで済んだらしく、彼女は先程と変わらず立っていた。その事に安堵し、短く息を吐く。
「……やはり慣れない武器は使いづらいな」
さほど困っていない様子でアレスが拳銃を彼に返し、軽く辺りを見回した。
「……まあいい、こちらは貴様等を殺してそこのオッドアイを連れ帰れば良いだけの話だ。あの方の為にも、この町を脅かす訳にはいかんな。——貴様等の死に場所を変えるとしようか」
自分から奇襲を掛けておいて、と反論したいのを何とか堪え、俺は目の前でこちらの返事を待っているアレスを睨み付ける。それは少し離れたところに立っているシェイド大佐やラスターさん、サイラスも同じようだった。
「——賛成だな」
重苦しく、緊迫した沈黙を破ったのは、シェイド大佐でも俺でも、勿論アレス達でもない。ソーマだった。
左手には、いつの間に発動したのだろうか、この暗い中でも解る程に淡く発光しているナトゥスが握られている。
「こんな狭い所で戦うのは貴様等も嫌だろう。その意見にだけは賛成だ。この町でないのなら、場所はどこでもいい、勝手に指定しろ」
「ソーマ……」
ソーマは微かに目を伏せる。それが、苦しそうにも寂しそうにも、はたまた悲しんでいるようにも見えた。
「これ以上、この町を下らない戦争等に巻き込んでくれるな」
有無を言わせない口調だった。言っても認めはしないだろうが、こいつは確実にこの町を、自分の故郷を案じている。
「……それでは、町の外れにある廃墟になっている教会と荒れ地の辺りにでもするとしよう。付いてこい」
あっさりと俺達から視線を外すと、アレスは堂々と敵である俺達に背を向けてガラスの破片を踏み潰しながら宿の窓から出て行った。
今まで口を閉ざしていたザクストも、それに習って宿を出て行こうとする。
「待って! 説明してよっ!!」
先程とは違う、悲痛な叫びに一度は足を止めたザクストも、何も答えずに黒いシャツの裾とベルトに括り付けているらしい青い布を揺らしながら闇に紛れて消えていった。
「——行くぞ。話ならばどこでもできる」
ナトゥスを肩に担ぎ、ソーマはそれだけを言い、宿の外へと足を進める。その背中は、今までと何も変わっていない。
「……さっさと来い、貴様等は道を知らないだろうが」
意外にもソーマはすぐに立ち止まり、こちらを振り返ってまるで俺達の事を考えてくれているような言葉を発した。
「……ここは大人しく従っていた方が良いらしいな。イーナ、辛いとは思うが行くぞ」
「……うん、……大丈夫」
イーナは辛そうに、それでも微笑んで歩き出した。服の裾を掴んでいる手が、少し離れた位置にいる俺からも解るくらいに震えていた。
「——それにしても、ソーマがこんな事を言い出すなんてな……驚いた」
サイラスもソーマと同じく、もう既に発動されているヴォカーレを軽く回しながら呟いた。
それは俺も驚いたが、この町がソーマの故郷なのだと解っているからかそこまでおかしいとも感じない。ただ、ここにいる全員は知らない筈だ。
「……ま、死神だ何だって言われてても、結局アイツも人間さ。……オレと違って」
「え? じゃあ、ラスターさんは——」
自分と違って、という言葉が指しているのは、ラスターさんが人間ではないということではないのか。
ならば、彼は何だ?
「なんてな。冗談冗談。混血種でも悪魔でもねぇよ。悪かった。……こういう状況でこそ、こういう事言ってねぇと辛いんだよ」
腰に差している長剣の柄に手を置き、ラスターさんは軽く笑って、その後すぐに表情を変えると溜め息を吐く。
「……行こう、道が解らなくなる」
「あ、ああ、解った」
サーベルを既に鞘から抜いているファンデヴは、一度俺とシェイド大佐とラスターさん、それにサイラスを見てから、イーナ達が出て行ったのと同じ場所から出て行った。
「……後で、宿の主人にも謝っておかなければならないな……準備はいいな? 行くぞ」
「謝るってレベルじゃねぇだろ、これは。……ま、責任は全部アッチに擦り付けりゃ良いだけの話だけどな」
確かに、これは宿の主人も恐怖に駆られた事だろう。突然ガラスの割れる音、それに次いで銃声だ。謝る、なんてレベルじゃない。
だが、今はそれを考えている時間はない。
俺は闇霧を持ち直すと、歩き出した三人を追った。

ソーマ達を追って着いたのは、崩れかけた古く小さな教会と、元は庭園だったと思われる草が伸び放題の空き地だった。墓は全て町にあった教会に移動したのか、一つもない。
その庭園の中心に、アレスとザクストは立っていた。赤錆の浮いている金属製の柵の傍には、ソーマとイーナの姿も見える。
「——遅かったな」
アレスは庭園に入ってきた俺達を見て、まずはそう口にした。
そして片頬を上げると目を細め、嘲るように吐き捨てる。
「貴様等は甘い。この上なく甘く、それでいて愚かだ。……何故、逃げなかった?」
明らかに見下した発言だったが、『何故逃げなかったのか』という問いは彼にしてみれば本当に不思議だったのだろう。だからこそ、問うてきた。
「そんなの決まってる、仲間だからだ。それ以外に何があるっていうんだ」
大切な仲間を見捨てて逃げるなんてこと、出来るわけがない。俺は強く闇霧の柄を握り締め、憤りに耐えていた。
「仲間、か。……下らんな、そんな物」
「何を……!? じゃあザクストは何だ!? そっちの支配者——マーヴィンはどうなんだ!」
「マーヴィン様が仲間だと? ふざけるな。あの方は私の主であり、私の生きる意味であり、私の全てだ。仲間等という馬鹿げた括りに入れるな」
アレスの目と言葉の節々には、明確な怒りと殺意がちらついていた。
「それとこいつはただの同行者だ。マーヴィン様に救われ、付いてきているのは事実だが、私には関係ない」
本当に興味がない、といった様子で彼は言い切り、横目でザクストを見る。
何かを探るような視線に耐えられなかったのか、ザクストは俯いて細く静かに溜息を漏らした。
「……本当、に……どういう事なの?」
混乱と戸惑いに満ちた声でイーナは呟き、震える手で自分の武器である鎖鎌を手にすると構える。
「ねえ……教えてよっ!」
懇願——いや、これは違う。哀願にも彼は動じず、俯いたままで左手を上げた。その手には勿論拳銃がある。その銃口の先には勿論彼女が居る。
「ザクストっ!!」
「やめろッ!!」
「……貴様か!!」
イーナがザクストを呼ぶ声、俺がやめろ、と叫ぶ声、そして——俺の横からの銃声と怒声。
そちらに視線を向ければ、そこには銃口から細く煙が立ち上っている拳銃を構えてアレスを睨み付けている
「シェイド、大佐……!?」
シェイド大佐は俺の声にも答えず、今までにない怒りを秘めた目でアレスを射抜いていた。
先程の銃弾は掠めもしなかったのか、彼は表情一つ変えずに立っている。傷はない。
「何がだ、軍人」
「……今まで、思い出したくもなかった、思い出すこともしなかった……だから忘れていた……だが、今やっと思い出した!!」
そこで気付く。先程感じた感情は怒りじゃない。禍々しく、彼には似合わないような感情、……憎悪だった。
そんなシェイド大佐とは対照的に、アレスは醒めた眼でその視線を受け止め、次の言葉を待っている。
「数年前のあの時、あの戦いで! アイツを——クヴァシルを殺したのは貴様か!!」
余りにも激しい憎悪、それでかたかたと震えている銃口の先に居るアレスは、嗤った。

男はガラスの破片が散らばっている宿の一室の中心に立つと鋭い目付きで室内を見渡し、一度舌打ちした。
「——クソッ……遅かったか。……おい」
そして、開け放たれたドアの前で立ち竦んでいる宿の主人に低く声を掛ける。主人はその声に肩を震わせると返事をした。
「この部屋にいた奴等はどこに行った?」
「は……えっと、上手くは聞き取れなかったのですが……町の外れにある廃墟となっている教会、だったと……」
どうやらあの騒ぎの中で、果敢にも現場に近づいて盗み聞きしていたらしい。度胸があるのか、命知らずなのかは解らない。
「そうか。……ならいい」
男は頷き、主人に背を向けると割れた窓の枠に足をかけた。
地面に降りるものだと思われたが、彼はそのまま器用に屋根の上へと上り、石造りの煙突の近くまで歩み寄るとそこから町全体を見下ろした。
「……あっちか。銃は解りやすくて助かる」
そう遠くはない所から聞こえてきた銃声に、そちらを向くと呟いた。
口許に笑みを形作りながら、男はコートに隠れている腰から黒い一本鞭を取り出すと一度地面に打ち付ける。
「今は助けてやるが、その次の標的はテメェ等だ。——ダーグウェッジ家の人間共」




戦闘いやあ←
戦闘難しいです先生(´・ω・`)

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こんにちわ~^^ノノ
戦闘シーン、妄想ではすごいスムーズで楽しいのにいざ文章や絵で表現するとなると、何か…うっ;ってなりますよね^^;ノシ
私めも思い描いている通りに書けなくて、毎度奮闘倒れてます(苦笑)
でも、伝わってきましたっすよ…!戦闘の緊迫感が(;`・∀・)ゞ
リレイズを拝見していつもうぉおおおカッコえええ…!!と心の中ですごい叫ばしてもらってます^^(オイイ)私めのヘタレた野郎達にも見習ってもらわねば(ノ_T(倒)←
シュリ 2010/01/30(Sat)16:48:39 編集
コメント返信→シュリさん
ぎゃああああああああ(ry

そうなんですよ!妄想ではすげー事になってるのにwwwなんで文章とかで描けないんですかね(´・ω・`)
俺も大変ですよ…途中からはもうどうにでもなーれ状態ですがw←

いやいやいやいやwwwwwwwwwww
こいつらただのあほですよあほ!!アレスに至ってはただのマーヴィン厨ですよ!!うぜえ!!←
でも有り難う御座います^p^

いやいや、シュリさんの子も格好いいじゃないですかwww
俺の方が見習ってほし(ry
赤闇銀羽 URL 2010/01/30(Sat)16:54:43 編集
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