魔界に堕ちよう 39話ー 忍者ブログ
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廃館慰安旅行!超怖い!←
いやだって怖いだろjk…廃館だぜ…!?




RELAYS - リレイズ - 39 【異形の館-1】

耳に入ってくるのは、強風で煽られた草や枝葉が出す葉擦れの音と、鳥の鳴き声だけだった。
目の前にあるのは、窓ガラスが割れ、壁にツタが這い、如何にも廃墟ですといった雰囲気を醸し出している大きな館だった。
そう、俺達は今、慰安という事で廃館の前にいる。
イーナやサイラス、ファンデヴはここまで荒れ果てているとは予想していなかったのか、館を見据えたままで呆然と立っていた。
ソーマだけは本当に興味がなさそうだったが。当然と言えば当然の反応かと思う。
だが、そんな中でも呆然とせず、それどころか逆に好奇心を搔き立てられたのが約二名居る。
「——すっげ、マジで廃館だなこりゃ……!」
「廃墟になってからかなりの年月が経っているらしいな……面白そうだ」
「でしょ? 僕もここまで念入りに調べて見付けたんだ。さすがに疲れたよー」
「何なんですかシェイド大佐!! こんなの面白くないですよ!!」
逆に怖いだろう、これは。どこの幽霊屋敷だ、どこの罰ゲームだ。
「ね、ねぇ、これ本気で中に入るの? 大丈夫?」
来る前は本当に楽しみだったらしくはしゃいでいたイーナも、どこか恐怖を感じているのか解りきった事を訊いてきた。
当然、入るに決まっている。ここまで来て引き返すなんて事は有り得ない。
「何か幽霊とか居そうだよなぁ……」
「幽霊というよりは吸血鬼とか、死神とか」
ファンデヴの言うとおり、確かにここは幽霊やお化け、霊というよりは吸血鬼や死神が住んでいそうな気がする。
「そうだねー……もしかしたら本物が居るかもしれないね、これは」
人間の魂を狩る為の巨大鎌を持った黒ずくめとかか。……なんだ、こうやって表すとどこのソーマだ?
「よし、じゃあ早速入るよ!!」
「おー!!」
「何でラスターさんそんなにテンション高いんですか!」

廃館の中は廃墟だから当たり前だが、埃や枯葉、老朽化、割れた窓ガラスの破片などでかなり廃れていた。
床を踏みしめる度、木が軋む音がした。広間に敷かれている元は鮮やかな赤だったであろうカーペットは色あせてしまっている。
窓から入り込む風、それが誰かの泣き声に聞こえてきて、それにより一層不気味さを増していた。
俺達はそんな廃館の中、ダグラスさんを中心に輪を描くようにして集まった。
「それじゃあ、ここからは2人組を作って散策ってことにしよう」
ダグラスさんも入れて、丁度8人だ。2人組は4組できる。
……俺が誰とのペアになるかなんて、この時点で決まったような物なのだが。
「僕が勝手に決めておいたけどいいかい? ——サイラスとファンデヴ、シェイド大佐とラスター君、ヘメ君とソーマ、イーナは僕とね」
やっぱりか、と、俺は心の中で溜息を吐いた。
別にソーマが嫌な訳じゃない。嫌いなわけでもない。確かに少し苦手なタイプではあるが、俺が初めて任務についたときからずっと一緒に行動しているのだ。どう接すればいいか、等は一応解っている。
ただ、たまには違う人と組みたいと思っているだけだ。
いや、できれば今はシェイド大佐達は避けたい。あの二人はこの廃館に魅入られてしまっている。
決められた時間内に戻ってくるかどうか不安だ。ぶっちゃけた話、もう俺は諦めている。
二人なら、4,5時間は帰ってこないんじゃないだろうか。
そうなったら全員で捜索することになるな……迷子になる、なんて事は有り得ない……よな?
楽しそうに広間を見回しているラスターさんとシェイド大佐を見ながら考えていると、ダグラスさんが号令をかけた。
「はい、みんな散ってー! 2時間後にこの広間に集合ね!」
2時間の間に、この廃館を散策して何かないか探すこと、か。
皆は早速、階段や廊下、豪華な装飾が施されているドアを開けたりしている。
「——さっさとしろ、行くぞ」
「え? あ、悪い!」
てっきりソーマの事だから、舌打ちでもして面倒だとか言うんじゃないかと思っていた。
もしかしたら、この廃館に来るのが嫌じゃなかったのか。
床が軋む音を聞きながら、俺とソーマは廃館の奥へと歩を進めた。

割れたガラスの破片を踏みながら歩いた廊下の先にあったのは、一つの両開きのドアだった。
こんな奥まったところにあるなんて、何か理由がある筈だ。例えば、何かの実験場、とか。それはないか。
だが、良からぬ事やその痕跡がある可能性も捨てきれない。
俺はドアの取っ手に手をかけたが、それを考えて開けるのを躊躇した。
それを見ていたソーマが、俺を一瞥してからドアを開けた。
壊れるのではないかと思うほどに大きな音を立てて、ドアが全て開け放たれる。
目の前に広がった光景は、近代的な実験場でも、人が住んでいるような掃除された部屋でもない。
どこにでもあるような、古びた書斎だった。
部屋を囲むように巨大な本棚が幾つも置かれており、壁は煉瓦を積み上げて作られている。
本棚には、本が陳列されたままだ。理由は分からないが、この館を出る際に本を運び出す暇がなかったのだろう。
小さなテーブルの上には、何冊かの本とランプがそのまま放置されていた。
「何だ、ただの書斎か……ここには何もなさそうだな」
言いながら、傍にあった書物の内一冊を手にとって捲ってみる。
どうやらこれは魔術書らしく、俺には解読できない文字が延々と綴られていた。
「……全て魔術書か、ここにあるのは」
今まで自分が読んでいた魔術書を元あった場所に戻すと、ソーマは俺の手から魔術書を取ると軽く流し読む。
「焔属性か、俺には合わないな」
俺には全く解らないが、どうやらこの魔術書に綴られている魔法や魔術は焔属性のものらしい。
確かにソーマには合わないだろう。氷属性の魔法しか使わないのだから。
別に氷属性以外扱えないというわけではなく、ただ単に焔や雷といった属性が自分に合っていない、というだけだということは以前聞いているため解っている。
言われてみれば、ソーマが焔や雷を出しているなんて想像できない。
「出るぞ。こんな所、貴様には居ても意味がない」
ソーマは一冊の魔術書を持つと、書斎を出ようとしていた。
「待てよ、それどうするつもりなんだ?」
「ここにはこれがあった、その照明としてだ」
即答し、ソーマは片手に魔術書を携えたままで書斎を出た。
俺もその後を追おうと足を踏み出したが、止まる。
「——ん?」
足下に視線を落とす。
何か、妙な物を感じた。不快ではないが、ただどこか妙な感覚だった。感じたこともないような——言葉には上手く表せない。
最も近い言葉で言うなら……足下に何かの気配を感じたといったところだろうか。
「……何だったんだ?」
少し気にかかったが、それは後で調べればいい。
俺は再び歩き出すと、両開きの扉をゆっくりと閉めた。

男は閉ざされた空間で、壁にもたれかかって座っていた。
その傍にある小さなランプが出す灯りだけが、この空間を照らし出していた。
閉じられていた彼の瞼が開かれ、作り物のように真っ赤な瞳が覗く。
男は久々に感じる『何か』に笑い、天井を見上げた。
そして、誰に言うでもなく、実に楽しそうに呟いた。
「——あァ、久々に来たか」




廃館散策って何か面白そうよね!←

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