魔界に堕ちよう 薄赫 忍者ブログ
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『おい』

最近、夜になると必ずと言っていい程に出てくる「あいつ」の声が、月明かりだけが照らす
バルコニーに響いた。
ここには、俺以外誰も居ない。
俺はその声を無視し、ただ月を見続ける。

『聞こえているだろう?俺の声が』

そう問い掛けてくるあいつの声。
姿はまだ見えない。
「───だったら、早く出てきたらどうだ」
呆れ気味に言うと、俺の足下の影が歪んだ。
そこから床をすり抜けるようにして、あいつが姿を現した。
「来たか」
『自分で呼んでおいて何を言っている?』
そいつは笑いを含んでいる「俺と全く同じ声」で言った。
「何か用があるようだから呼んだだけだ───さっさと言え」
俺は少し苛立つ。
こいつが何を言うかなど、分かり切っている。
数ヶ月前に初めて出てきたときから、言う質問は何も変わらない。

『貴様は何を求めている?』
「───以前に言った通りだ。何も変わってはいない」

そこでそいつは一度確認するように頷くと、愉快そうに口元を歪めて俺に言った。


『「彼方」に行ってどうするつもりだ?』
「───やはり、それか」
『貴様は何度俺が言っても答えはしない。だから俺は同じ質問を貴様に繰り返すだけだ』
俺が何も言わずに黙っていると、そいつは笑った。

『どうせ行っても何も変わらないだろう───それは貴様自身がよく理解している筈だ』
『変わるとすれば、そう───貴様と「あいつ」の運命か』
「黙れ」
俺は耐えきれずに、口を開いた。
『黙れ、か。俺は貴様だ。俺が言う言葉は全て───』
「黙れと言っている」

俺が叫ぶと、そいつはバルコニーの手摺りに音もなく飛び乗った。
飛び乗ったというよりは───その場に瞬間移動したような。

『貴様が気付くまで。』

そいつはそう言い残すと、月明かりに熔けるように消えていった。


『黙れ、か。俺は貴様だ。俺が言う言葉は全て、お前の』

俺はあいつの言った言葉を、無意識の内に呟いていた。

俺と全く同じ声をした
俺と全く同じ顔をした
俺と全く同じ、赤い奴の残した言葉を。


『黙れ、か。俺は貴様だ。俺が言う言葉は全て、お前の』





「『心の叫びだ』───とでも言うつもりか」


馬鹿馬鹿しいと思った。
だが、俺は解ってしまっている。




あいつが、真っ赤なあいつが、俺自身だということを

バージル。赤兄。

赤兄はバージルの影でしょう。鬼畜度も凄い上がってますよ。
だから多分兄貴にすげー困る質問して困らせて楽しんでるんだ・・・(妄想

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