魔界に堕ちよう 忍者ブログ
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煉獄(レンゴク
性別:男
年齢:外見年齢は二十代
武器:大鎌
容姿:尻の辺りまで伸ばした赤い長髪。純粋な赤という訳ではなく朱色や紅色、はたまた赤黒い色などが所々に混じった所謂混色ヘアー。オールバックにしているが長い前髪が二本ほど顔にかかってしまっている。髪紐で纏めたりはしておらずそのままストレートの髪を垂らしている。
眼の色は黒で切れ長だが目付きは悪く、普段から威圧感を醸し出している程。顔立ちは整っているがやはり「怖い」という印象が先に出る。普段見えないが歯はギザ歯。笑顔はそりゃもう暗黒微笑や獰猛な笑みと表すのが的確な笑みばかりを浮かべる。
服装は黒い革製の襟を立てるタイプのロングコート。シャツなどは着用しておらず半裸、下には一応灰色のスラックスを履いているがしっかりと着用する気はない。見た感じでは露出狂にも見えかねない。靴は赤いエナメルの靴でヒールは高め。コートはメタリックな赤の装飾が所々にある程度で案外シンプル。
正面から見て左肩から腰、左の腰から脇の下辺りに、と交差するように重厚な金属製の鎖がまかれ、交差した部分には黒い南京錠も着いている……が、特にこれといって意味はないらしく鍵が無くても外れる程。ただのアクセサリー感覚のよう。
耳は悪魔のように尖っており、イヤーカフやピアスがチェーンで繋がっていたりとシルバーアクセがじゃらじゃら。
190センチ以上の長身で体付きは細身だが、付くべき筋肉は付いているし案外がっしりとした体格。肌の色は健康的な色。黒く塗られた爪はかなり長め。
性格:滅茶苦茶上から目線、しかも横暴。それでいて仕事したがらない面倒くさがり屋、少し動く事すら面倒だという横着者+怠惰。そのくせして他人への物言いはどこか偉そうで傲慢じみている。
ただ「こりゃ自分がやらないと駄目か」というような仕事は嫌々ながらも取り組み、それなりの結果を出す所を見ると「やれば出来る子」らしい。時折気紛れで仕事をガンガンこなす時もあるが、その場合は大抵後々仕事をしなくなるという傾向がある。
誕生日:6月20日
備考:一人称は「俺」、二人称は「お前」や「テメェ」。口は悪く礼儀も殆どなっていない。以前は細めのピンヒールを履いていたのだが歩きにくくしょっちゅう転んだり足を挫くということで上げ底にも等しい靴を履いている。案外パンプスに近いかもしれないがそこは気にしていない。
ちなみに視力が悪く普段からコンタクトを使用しているが、それを紛失してしまった際には赤いフレームの度のきつい眼鏡を使用する。


アーシラトの大鎌擬人化。需要はない。
能力具現化武器が持ち主と正反対なら、純粋な武器は持ち主に似るんですよ、多分。それをナトゥスと煉獄が証明してくれr(ry

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6月25日はリレイズ一周年の日ですよふっふー!!
この日に間に合わせる為に67話を必死こいて書き上げました、誰か褒めて!!www
でも67話が出たおかげでヘメティのフルネームとか晒してもいいんだぜ! ネタバレできるって素晴らしい!

というか元々俺は長編が苦手な奴で、どうしても三話坊主とかになりがちだった。今でもたまーに放置する←
それなのに何で初めて書いたに等しいオリジナルファンタジーが続いたんだろうかw
何だもう、何なんだよ、みたいな、自分でも何を書いてるのかたまに見失います。
ぶっちゃけ最近ソーマのキャラも見失いがちだったりとか。これはあれか、アンソロではっちゃけ過ぎた結果か? びえるェ…

普段から小説をちまちま書いてはいましたが、長編は数話書いて止めてしまうような奴でした。俺。
そんな俺が色々とキャラの設定を考えてここまで長く書けたのは当然初めてで、ぶっちゃけ俺自身一番びびってます。
少ないとは思われますが読者様、こんな自己満の塊の小説を読んでいただき有り難う御座います。
まだまだ拙い上に「こんなの一人称で書けねーよw三人称で書きたいwww」とかのたまう馬鹿ですが、生温かい白けた眼で見守っていただけるともれなくソーマが貴方の家に乗り込みます。えへへ。
一年経ったのにまだ序盤抜けてない話です。ヘメティの正体ここでばらした理由だって「テイルズオブジアビスのルークと同じ感じの盛り上がり方でいいんじゃね」とか何かそんな感じの馬鹿みたいな理由です。パクリじゃないよ(^ω^)
俺がこういう顔文字使うと何だかきもいという。いや慣れてないから俺も←


それでは、引き続き俺の子達をよろしくお願いします。

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まじで長かったよ、ここまで…っ!(´;ω;`)ブワッ
作業用BGM:君は僕に似ている




軽快にキーボードを叩きながら、最早研究員としての面影など消え失せているアイドは口許にゆっくりと弧を描いた。
その笑みはどこか不気味で、見た者の背筋を凍らせるようなものでもある。彼を知る人間が見たら「何があったのか」と問い質してしまうかも知れない。
余りにも、今のアイドは『研究班班長であるアイド』からかけ離れていた。
「一人はこれでよし、と。……精密すぎるってのも考え物だな」
ぽつりと呟き、彼は紅茶の入ったカップを傾ける。カップはそこらの棚から拝借し、紅茶は丁度事務机に置いてあったポットから勝手に注いだ物だ。恐らく避難する直前に入れたものだったのか、まだ温かく湯気を立ち上らせている。
そしてこれまた勝手に貰った角砂糖を入れた紅茶を堂々と啜りながら、アイドは一つの画面を見た。
まるで監視カメラの映像のようなものが映し出されている画面には、地面に倒れ伏している一人の男。それが『彼』から言われた機械人形という存在である事は明白だった。
「全く、俺の存在を忘れて貰っちゃ困るぜ支配者殿。ちゃんと部下にも教えておかなきゃ駄目だろ?」
苦笑めいた笑みを漏らし、彼は肩が凝ったとでも言いたげに肩に手を当てて軽く首を回す。
仕方がないな、というような口調とは裏腹に、アイドの心は高揚していた。資料や薬品に囲まれての研究院生活では味わえなかった興奮に高揚感。
数年程昔には毎日のように味わっていた感覚が懐かしかった。
「大量の電子機器を壊して使い物にならなくして、中枢部まで狂わそうとしたクラッカーの話を、な」
ああ、こんなに気分が高ぶったのはいつぶりだろうか。血が騒いで騒いで仕方がない。
アイドはそこで紅茶のカップを置き、再びキーボードと画面に向き直る。
もっと狂わせてやりたかった。精密なプログラミングで自我を得たあの二人を。
「さて、後はもう一人だけだな。二人居なくなるだけで結構な戦力を削げると思うんだけどな……上手くやってくれよ、戦闘要員」


RELAYS - リレイズ - 67 【絶望の光】

思えばマーヴィンは初めて出会ったときにも俺を知っているような意味深な言葉を吐き捨てていた。「生きていたのか」というような問いを。
あの時の頭痛の事もあり、彼が俺のことを知っているのは最早明白だった。
思い出したくても思い出せなかった過去の記憶。それを彼が知っているかも知れない。そう考えれば、今すぐにでもマーヴィンに詰め寄りたかった。だがそれが自殺行為である事は痛い程によく分かる。
何度か深呼吸を繰り返し、動転しているにも等しい心を落ち着かせていく。焦っても良いこと等何もない。
「……アンタは俺を知ってるみたいな言い方ばっかりだ。リグスペイアでの時も、今も」
落ち着いてゆっくりと言葉を発し、剣を肩に担ぐマーヴィンに話しかける。その立ち姿からも余裕が滲み出ていた。アレスはといえば既にマーヴィンの隣に移動している。
彼はただ黙って俺を見据えているだけで、それを肯定することもなければ否定することもない。
シェイド大佐やソーマも黙ったまま、俺を止めるでもなくマーヴィンに話をさせてくれた。
本来ならばここはそうはっきりと本題に入ってはいけないのだろう。ちゃんと順序を踏まえて話を進めるべきだ、と頭では理解していてもそれを行動に移すとなるとどうしても無理だった。
「悪いが単刀直入に言わせて貰う。……アンタは俺を知ってるのか? 知ってるなら、俺の過去も分かるのか?」
言い間違えないように慎重に、普段話す時よりも声を若干張り上げて、自分を知っているであろう人間に問い掛ける。
この問いにも表情を変えず、マーヴィンは特にこれといった感情の籠もっていない目で俺に視線を注ぎ続ける。血に濡れたような鮮やかな赤い瞳に見つめられ、威圧感など発されていない筈なのにもかかわらず身震いしてしまいそうになった。
彼はふぅ、と溜め息のように息を吐けば、肩から長剣を下ろし振り上げる素振りもなくその切っ先を床に向ける。
「……じゃあ僕からも質問だ。それを知ってどうする? 自分の過去を知ってどうするんだい?」
予想していなかった切り返しに、思わず呆気に取られる。確かにただで教えてくれるとは思っていなかったが、まさかこう聞き返されるとは思ってもいなかったのだ。
「俺には十五歳までの記憶がない。自分の欠けている部分を知りたいと思うのは普通だろ」
記憶を失う、自分がどのような人間であったかも忘れるというのは余りにも重く苦しい。自分が何者だったか、何処の生まれか、家族が居たのか、自分の人間関係や想い出すら残っていない。
空っぽだった。十五年という年月を忘れてしまった俺はただ自分が何故ここにいるのかすらも理解できていなかったのだから。
実を言えば、名前すら正確に覚えていなかった。自分の名前は分かるものの、姓だけが分からない。それだけでも分かれば、記憶の手がかりにはなっただろうに。
「成る程、大体分かったよ。確かに僕は君を知っている」
「それなら——」
それなら教えろ、と言い切る前に、丁度自分の右側から不穏な空気を感じ取る。それとほぼ同時に聞こえてきた盛大な溜め息に、俺はそちらに視線を向けた。
ナトゥスを肩に担ぎ、俺に侮蔑のような感情の籠もった瞳を向けてくるソーマに身が竦みそうになるのを住んでで堪え、敢えてその侮蔑の視線と自分の視線を絡ませる。
「……貴様は疑うという事を知らないらしいな。アイツが真実を言っているという証拠はどこにある?」
確かにソーマの言うとおりだ、マーヴィンが記憶の事で戸惑う俺に嘘やデタラメを言っている可能性もある。それでも俺は彼のように人をとことん疑えるわけでもない。
「心外だね、僕が嘘を吐いているとでも?」
「信じられると思うか?」
ソーマの言葉に気を悪くした様子もなく、マーヴィンは肩を竦めて困ったような表情を見せる。それに更に追い打ちを掛けるようにしてソーマは吐き捨てるように口にした。
断固として自分を信じようとしないソーマに彼はほんの少し不服そうに顔を顰めるも、すぐに今まで通りの表情へと戻る。
「まあいいか。どうせ君に言うことは何もないんだからね。今の君にこれは必要ない」
これ、と代名詞で言われたそれが俺の欠けた記憶である事は十分に理解できる。だからこそ、余計にマーヴィンに対しての憤りが激しさを増した。
「必要ないなんて、アンタに決められる事じゃない!」
「いや、要らないのさ。だからこそ君は忘れたままなんだろう?」
忘れているのなら必要のない記憶だ、とマーヴィンは淡々と続け、おもむろに長剣を腰に差してある鞘へと戻す。明らかに戦闘中にする行為ではない。
ならば最早戦う意志がないのか。それとも、武器が無くても俺達三人程度ならばあしらえるという余裕の表れか。彼の性格からすれば後者だろうが、もし前者なのだとしたらどうなるのか。このまま彼等は撤退するのか?
「……何のつもりだ」
先程全て弾丸を撃ち終わったらしい拳銃を足下に落とし、シェイド大佐はまた別の拳銃を構えてマーヴィンに低く問い掛ける。
銃口は依然としてマーヴィンの頭部を狙っていて、いつでも引き金が引けるような状態だ。それに加えて後ろ手に全く同じ型の拳銃も取り出し、それではアレスを狙っている。
「いや別に? 特に意味はないよ。ただ君達になら『これ』を使っても大丈夫そうだ」
再度代名詞で示したマーヴィンはその場にしゃがみ込み、足下に落ちていたそれを拾い上げた。
辛うじて流れ弾で破壊されていない証明の光を反射して鈍色に輝く金属。柄も刃も存在していないそれはただの少し細身の鉄パイプで、到底武器になりそうにない。いや、確かに柄の悪い男達は使用するのだろうが、どう考えても彼のような身分の人間が使うものではない。
「……貴様、ふざけているのか?」
明らかに苛立ちを含んだソーマの声に言葉は至極尤もで、俺やシェイド大佐の心境を代弁したものだろうとすら思う。これはふざけているとしか思えない。
「ふざけてなんていないさ、元々僕は剣よりもこっちの方が扱いやすいんだ」
ソーマの声に気分を害した様子は全くなく、マーヴィンは数回ほど鉄パイプをバトンのように回したり軽く振り回したりと具合を確かめていた。彼の本来の『武器』であるらしいそれが手で踊る度、ひゅん、と澄んだ風切り音がこちらまで届いてくる。
「…………ああ、そうだった。話の続きをしようか、何となくそれも面白そうだ」
面白そう、と称されているのは俺にとって重要すぎる程に重要な事だ。しかしそれはマーヴィンの中で「何だか面白そうだから少し話をしてみようか」という程度の認識のようだった。
本当に彼は気紛れだ。どう話が転ぶか解らないから余計に話すのも難しいし応対しづらい。
「……マーヴィン様、宜しいのですか?」
「ああ。絶望に染まった顔を見るのも面白そうだからね」
途方もなく身勝手な話。薄々予想はしていたし分かってはいたが、どうやらマーヴィンは他人の苦しむ様を見るのが好きな人種らしい。サディスティックとも取れてしまいそうだ。
絶望なんてするわけがない。不安がないと言えば嘘になるだろうが、自分の記憶が戻ってくるかも知れない、自分の分からなかった正体が解るかも知れない。それに対しての期待や希望はあれど、絶望なんてあるわけがなかった。
「さて、そこの大佐に銀髪の『子』。今から僕は彼と話をする。下らない魔術や陳腐な銃弾なんかで話の邪魔をしないでくれるかな?」
意図的に人の神経を逆撫でする言葉を選んでいるようなマーヴィンに、ソーマとシェイド大佐がほぼ同時に顔を顰めたのが俺でも解る。それにソーマが子供扱いされるのを嫌っている事を知っていて言っているかのように、マーヴィンの表情は楽しげだった。
「……ソーマ、落ち着け。奴の言葉に耳を傾けるんじゃない」
「……貴様が言えた事か?」
必死で怒りを押し留めているのは分かるが、二人の声は震えてしまっている。下手をすればドス黒いオーラすら見えてきそうだ。軽いようなコメディのような比喩だが、そう表すのが的確だった。
勿論この怒りや激情すらもマーヴィンに取っては『面白いもの』なのだということは今までの言動や話、様子で分かっている。
「——そろそろ良いかな? 話しても」
俺は大丈夫だ、だが二人はどうだろうか。ちらりと視線を向けてみれば、シェイド大佐はただ小さく頷いただけで肯定を示すもソーマは何も言おうともしない。
不意にソーマが此方に視線を向けてきたと思えば、彼は普段通りの無表情に淡々とした声で言った。
「……別に構わないが、一つ言っておく。単純な貴様の事だ、また何でも信じるだろうがな。……鵜呑みにしないことだ」
まるで俺を案じるような言葉が彼の口から飛び出した事が意外で、思わず目を瞠ってしまう。ソーマはといえば既に俺から視線を外していて、さっさと話を進めろと彼が身に纏う雰囲気が語っている。
それを確認してからマーヴィンに向き直り、彼にも分かるようにしっかりと頷いた。
「よし、それじゃあ話をしよう。そう簡単に真実を教えちゃあ面白くない、少し謎掛けじみた事を言ってみようか」
自分が楽しむのを優先する前にまずさっさと本題に入れ、と言いたいのを必死で押し留め、どう話に入っていくのかを黙って見守る。自分の手がかりは彼しか知らない、ならば俺に出来ることは黙ってマーヴィンの『演説』を聞くくらいの事だった。
「君は自分のことを知らない。僕は君のことを知っている。君は自分のことを知りたい……言わば記憶を取り戻したい、っていう事だ。ただ僕が知っているのは君の『正体』だけで、記憶は君自身が持っている」
人の記憶を奪って自分の手元に置いておくことなんて不可能なんだから、とマーヴィンは普通に世間話をするような口調で話を続けていく。
当然彼の言うとおりだ、とここだけは納得できる。他人の記憶を奪い去って、それを何らかの形で手元に置いたままに出来る人間が居るのだろうか。居るとすればほんの一握りの魔術師程度だろうとも思う。
「だから僕は君の『手助け』しかできないのさ。だけど、最初から真実を提示しても無意味だろうから、君に考えて貰うとしよう」
手助け、という言葉がここまで似合わない人間が居るのか。マーヴィンは他人を無償で助けるような人間ではないだろう、それに助けを借りるような人間だとも思えない。どちらかといえば「自分の事は自分で後始末をしろ」「自分の身は自分で守れ」というような。
それでいてアレスという戦闘にも特化した機械人形を執事、自分の側近として置いておく理由がよく解らないが、アレスに対してもそれは変わらないのだろうとも思う。ただ自分の生存の為の保険、もしくは建前か、はたまた全く別の理由か。
「……そういえば君、世襲制って知ってるかい?」
そういえば、と思い出したようにマーヴィンは口を開き、少し首傾げに言ってきた。
「……親から子供へと地位が受け継がれる制度、だろ?」
俺は何故マーヴィンが突然そう切り出してきたのかが分からず、怪訝に思いながらもそれだけを返す。一応それくらいの知識ならば持っている。
「そうそう。それなんだけどね、長年ウィジロはそうだったのさ。親から子へ、子から孫へ、ってね。勿論僕もそのおかげでこの地位にいる」
持っていた鉄パイプを肩に担ぎ、マーヴィンは聴き取りやすい音程と速さで言葉を紡いでいく。やはり話慣れているからか、言葉を詰まらせるような様子は全くない。この部分だけを聞いていれば、普通の世間話にも聞こえてしまいそうだ。
彼の口許は緩やかに吊り上がっていて微笑を湛えている。その笑みの意図も何も分からない上に感情も汲み取れない、何を考えているのか分からないと表すのが的確な微笑み。
「それじゃあ、もし世襲制だっていうのに双子や兄弟が生まれたらどうする? 実際はタブーなのかもしれないけどね。そこまで僕も詳しい訳じゃあない」
問いかけの次にわざとらしく肩を竦めながらマーヴィンは自虐的とも取れる発言をする。本当に扱い方が分からない男だ。
それでも彼の質問に対しての答えを考えようと俺は頭を働かせる。もしそうなったら、と考えると何故だか知らないが物騒なものしか出てこない事、自分の頭の回転がこういうときに限って鈍いことに少し落ち込んだ。
「ここからは例えば、の話も混ざってくる。お互いで話し合って支配者と側近を決める。もしかすれば、兄弟同士で殺し合って決める場合もあるのかもしれない。何なら、一人が身代わりとして生きてもいい。色々と手段はあるんだから」
まるで何かの小説や童話、お伽噺のような『例えば』だった。しかしその内どれもが先程自分が考えた物で、やはりそのような結果になってしまうのかとも考える。そのような事が実際にあるのかどうかまでは分からない。
何も言わずに黙っている俺にマーヴィンはほんの少し笑い声を漏らし、鉄パイプを持ち肩に担いでいない左手を挙げれば人差し指を立てる。
「当然これは例えだ。他にも、それこそ全然全く違う末路だって存在する。僕はそれを実際に体験したことがある」
つい数分前の世間話のような口調とは違い、勉強の分からない子供に優しく分かりやすいように解説する教師のような声音で彼は俺を真っ直ぐに見据えて言った。
マーヴィン曰くこれは『そう簡単に真実を教えても面白くない、だから少し謎掛けじみた事』だ。その宣言通り、ずっと話は抽象的なものも混ざって続いている。
しかし残念なことに、話を聞きながらこんな短時間で伏線を引っ張り出して答えを導ける程俺の頭は上手く作られている訳でもないらしく、やはり核心は導き出せないままだ。
「何だ、ここまで話しても分からないのかい?」
ちょくちょく響きを変えるマーヴィンの声は笑いも混じっており小馬鹿にしたようなものになっていて、息を潜めていた憤りがまた溢れ出しそうになる錯覚に陥る。
それでも彼の言うことは事実で、俺は何も言い返せないまま話を聞き、服の裾を掴み強く握り締める事しかできなかった。
「……これ以上君にこのレベルの謎掛けをしても無駄みたいだ、もう少し核心に迫ってみようか」
鉄パイプを持った手と人差し指を立てていた手を合わせ、良いことを思いついたとでも言わんばかりの笑顔でマーヴィンはのたまい、鮮血に濡れたように赤い瞳を細める。
「これから僕が言う全く違う末路。もうそれが答えだ」
笑いを抑えようともせずに続けた彼の噛み殺したような笑い声は禍々しくもあり、聞いた者の背筋を凍らせるかのような響きを持っていた。それでいて凄く楽しげで、それが余計に恐怖を倍増しにしている。
マーヴィンの隣でこの笑い声を聞いているアレスは当たり前のように涼しい顔をして立っているが、シェイド大佐やソーマが心底嫌そうに顔を顰めたのが見なくても気配で分かった。
この笑い声を何とか止められないものだろうか、と考えたのかソーマが身動ぐ気配もしたがシェイド大佐に制されたのかすぐにその動きも止まり、彼は舌打ちすればマーヴィンを睨み付けているらしい。
「実に面白い末路だよ。——『最初は二人で仲良く支え合っていた、それでも途中でお互いが邪魔になってお互いを殺し合う』なんてね!」
本当に、心の底から楽しみや面白さを感じている。それが分かる高く澄んだ声でマーヴィンは叫び、何らかの感情で爛々と輝く瞳で俺を射抜く。
口許に今までで一番深く弧を描き、鋭い刃にも似た鋭い光を宿した眼で鉄パイプを携えて此方を見る様は、好青年にも見えなければ『支配者』にも見えない。面白い玩具を見付けて嬉しがっている子供のようだった。
「……さあ、全ての疑問は解けた筈だ! 答えを導き出してみなよ、『ヘメティ』!」
マーヴィンが俺の名を今までも何度もそうしていたかのような滑らかさで口にした途端、今まで正常に脈を刻んでいた筈の心臓が大きく跳ね上がる。それに呼応するようにして呼吸すらも出来なくなるような、そんな感覚も覚えた。
彼は何故自分を知っていたのか。彼は何故こんな事を言い出したのか。彼は何故俺の名をこんなにも滑らかに言えるのか。
マーヴィンは何を言いたかったのか。
俺の頭の中に浮かぶ一つの答え、それを口に出そうとしても身体が拒否しているように口が動いてくれない。
何度か口を開いたり意味もなく息を吐き出したり、を繰り返した後に辛うじて絞り出せた声は自分でも嫌になるくらいに弱々しく掠れ、震えていた。
「まさ、か」
呟きよりも小さなその声が彼に届いたかどうかは分からない。それを理解する程の冷静さすら、俺はこの時点でほぼ失っていたに等しかった。
マーヴィンは禍々しい笑い声を止め、人懐っこいとも取れるにっこりとした笑みを浮かべ、こちらにゆっくりと手を差し伸べてきた。
「君と会うのは二年ぶりだ。……久しぶりだね、ヘメティ。お兄さんだよ」

望んだ希望は望まなかった絶望。




[樹海] ┗(^o^ )┓三

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創作暴露バトン


さて、中身は単純明解。
貴方が創作している作品の世界感。
その元ネタをバラしてしまおうではないか!と言うバトンです。
元ネタとまではいかなくとも、何かしら影響を受けた……だろう作品を、ただただ羅列してしまいましょう。
ではどうぞ。

・ウィジロのモデルはFF7のミッドガル。
・ヘメティと(ry)の関係性はDMC3のダンテとバージル。
・ソーマの性格は俺だけど外見は「くりきん ナノアイランドストーリー」のシン。
・シェイドのモデルは鋼の錬金術師のマスタング大佐。包帯は趣味だが最近「めだかボックス」の名瀬ちゃんに似てる気がしてきた。
・ラスターのモデルはDMC3の19歳時ダンテ。
・イーナのモデルはFF7のエアリスとかユフィとか。
・ザクストのモデルはきっとFF7のザックスや俺やマクロスFのアルトやD,グレの神田。
・Want to returnのモデルはない筈が何となく「咎狗の血」の舞台に似てる気がしてしまった件。
・サイラスのモデルはDMC4のおっさんダンテに猫耳生やした姿。
・情報屋のモデルはファンタシースターポータブル2のシズル。

お疲れ様でした。
どなたか、暴いてみたい方がいらっしゃれば回してみましょう。
・シュリさんとか待草様とかどうですかね^p^



タロット創作バトン


絵師さん創作家さんに送る
タロット22のお題バトン
 
内容は至って簡単、
計22枚のタロットカードになぞらえたイラストを描きましょう!
No01〜00まで22枚存在する、占いでお馴染みタロットカード。
 
今まで全部のカードの名前がわからないや
No どれとどれなんだか…
などと思っていた、そこの貴方!
コレを見て描いてみようかと
ちょっと考えっちゃった方!
この機会に貴方だけのタロットカードを
完成させてみてはいかがでしょうか?
オリジナルで描きあげるも良い!何かのキャラクターで
パロディーにして仕上げる〜
 
世界に一つだけのカードを描き上げて下さい。
 
00)愚者
01)魔術師/奇術師
02)女教皇/女祭司長
03)女帝
04)皇帝
05)法王/教皇
06)恋人達/恋人
07)戦車/征服者
08)力
09)隠者
10)運命の輪
11)正義/裁きの女神
12)吊られた男
13)死/死神
14)節制
15)悪魔
16)塔/神の家
17)星
18)月
19)太陽
20)審判/復活
21)世界
 
お疲れ様でした。
 
フリー地雷可能バトン
・取り敢えず地雷で。一応ちまちま書いていこうかな。

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創作小説ヴァトン!



はい、迷える仔羊がやってまいりましたね。
え?迷ってない?


…さて、始めましょう!
あなたの創作小説についてお聞きします!



・今書いてる小説のあらすじを教えて!

粗筋とか俺が一番苦手なwwwwww
何だろうね、何て言えば良いんだろうね、取り敢えず「記憶喪失のヘタレ偽善者が何やかんやする話」?

・主人公は誰?

記憶喪失のヘタレことヘメティです。フルネームは次回で明かされる予定。
取り敢えず最初から比べるとかなりヘタレ度がアップした気がします。それに偽善者。
偽善的っていうよりも天然なのかなコイツ。

・ヒロイン(ヒーロー)は誰?

一応イーナたん! …………なんだけど影薄い!! ちなみにこの子絶対ザクストに気があります、ザクストもイーナが好きです、コイツ等両思いです。ザクイナ? いいえイナザクですハァハァ。

・大体何人ぐらいが出てる?名前だけ、一回だけはカウントしないよ。

待って待ってwww
ヘメティ、ソーマ、イーナ、シェイド、ラスター、アノード、ウライ、ダグラス、アイド、ハウンド、ホリック、アレス、マーヴィン、ファンデヴ、サイラス、アーシラト、ザクストかな?
17人か、今は17人だね! でもこれからガンガン増えていく予定←

・どういうときにネタがわく?
→鬱になってると執筆速度が速くなる。

・一番お気に入りのキャラは?

キャラで言えばソーマ。一番思い入れもあるし。他には最近マーヴィンとアレスの主従コンビも熱いよ!

・こっそり今後の展開とか教えて!
反転。
<ネタバレ/この後はヘメティの本名とかが明かされたりソーマの両親を殺した軍人が出てきたりシェイドが離脱したりラスターが錯乱したりラスターの正体が明かされたりアーシラトが出てきたりダーグウェッジの親父が出てきたりするよ! そんだけ!/ネタバレ>

お疲れさまでした^^

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作業用BGM:雨降る街にて風船は悪魔と踊る、黒い羽根の天使、神騙りの愚者への断罪と懲罰




RELAYS - リレイズ - 66 【絶望と希望まで後一歩】

普段は研究員や魔術師、戦闘要員達の足音と話し声で溢れ返っている廊下は、本来の喧噪が嘘のように静寂に包まれていた。
反響する足音がやけに大きく聞こえ、長剣の切っ先を地に向けたまま軽やかに走るラスターは一度舌打ちした。
ただでさえ緊張感に張り詰めた自分達には堪えるというのに、更には背後から全く違う人間——と言っていいのかは分からないが、一人の男が近付いてきていることを知らせる足音が聞こえてきていた。
本来ならば軽いような、それでいて革靴の底が床を叩く音が響く筈が、何故かその音は重苦しい。
まるで金属だ、と負傷したホリックを抱えできる限り彼に負担がかからないように走るサイラスは思う。
その考えはあながち間違いではない、ということも合わせて悟り、サイラスは肩越しに後ろを振り返った。
黒に近い焦げ茶の髪を揺らしながら気怠そうに走ってくる燕尾服を纏った男。ハウンドの鋭い瞳は彼等を捉えて離そうとしなかった。
ハウンド——猟犬、という名の通りだ。その瞳は獲物を狩る獣の光を宿していた。
「……二人でもアイツ等に応戦できるってか……? ふざけるなよ、オイ」
絶対的支配者であるマーヴィンとその執事であるアレスの元に残してきた三人は、自分達のなあkで喪戦闘能力の高い者達だ。ヘメティ自身が戦おうとせずとも、彼の持つ力が高いことは分かる。
あの三人にかかられれば流石のマーヴィンでも無傷ではいられないだろう、とは思うのだが、これも楽観的すぎるか。
そんな考えすら頭を過ぎり、サイラスは緩く頭を振ってその考えを打ち消した。
「……大丈夫だ、兄サン達なら。オレ達にできるのはコイツを守ることとあの機械人形を倒すことだ」
徐々に、しかし確実に距離を縮めてくるハウンドにラスターは頬に汗を伝わせながら彼に耳打ちする。
ホリックの出血は多少は収まっているようだったが依然として止まって折らず、床に点線のような模様を描いていた。
ラスターの言うとおりだ、とサイラスが思い直したとき、すぐ後ろから誰かが転んだような鈍い音が耳に届く。
この状態から考えてイーナかファンデヴのどちらかが転んでしまったのだろうかとラスターとサイラスが弾かれるように振り返るも、二人は変わった様子もなく走っている。
「な、何!? どうしたの!?」
「い、いや……何でもない。じゃあさっきの音は何だって……」
息継ぎの間に問うてくるイーナはどうやら走るのに必死で先程の音にも気付かなかったらしい。そんな彼女にラスターはしどろもどろになりながらも答え、音の正体について考察を巡らせる。
それとほぼ同時に、その正体とも呼べる『もの』が目に飛び込んできた。
その場に突っ伏して呻いているのは自分達でも当然ホリックでもなく、あのつい数秒前まで自分達を捕らえ殺そうとしていたハウンドで、一同は思わず足を止めてしまう。
当の本人は自分に何が起こったのかすら理解できていないようで、信じられないとでも言いたげな表情で居る。
「……一体どうしたってんだ?」
サイラスが疑問に思うのも当然で、彼の言葉はこの場に居合わせたハウンド以外の全員の心境を代弁した物でもあった。
「ッ、知るか! お前等がやったんだろうが、あ゛ぁッ!?」
ドスの利いた声で喚くハウンドは、どうやら起き上がろうとしても身体が言うことを聞かないようで、声を絞り出すのがやっとのようだった。以前行った廃館で出会した死神に施した呪縛魔術、それが皆の頭に思い起こされていた。
そんな彼の不調はラスター達にとってみれば好都合で、彼等は互いに顔を見合わせ視線で意志を伝える。
当然ハウンドをその場に放置して背を向け走り出そうと足を踏み出した瞬間、今度は何やら電流が走るような音が響いた。
「今度は何だって——」
言うんだ、とサイラスが言葉にするよりも先に、ハウンドの身体を稲妻のような青白い光が包み込む。それだけでなく、彼の身体の下には同じ色の魔法陣まで浮かび上がっていた。
苦悶し声を上げるハウンドを襲ったそれは明らかに誰かが恋にやった物で、その『誰か』が特定できないラスター達はハウンドと同等、もしくはそれ以上に困惑していた。
「がっ……あ゛……オイ、何のつもりだ!」
「こっちが訊きたい。……これは何?」
ハウンドとは違い落ち着いた声のファンデヴはサーベルを両手に抱えたままでハウンドを見る。
この場に攻撃魔法を使える人間は居ない。ソーマがいれば違ったかも知れないが、彼は雷属性の魔法を使うような人間ではない。冷酷な性格を表すような、氷だ。
ならば誰か。誰がやったのか。
それを知りたくとも、今はそれを考えている時間はない。
今ここでハウンドの機能をある程度壊してしまうか、それともさっさと逃げてしまうか。それを考えつつ、彼等は各々の持つ武器を構えた。

広々とした機関本部のロビーとも言える空間に、甲高く耳障りな金属音と銃声が反響する。
「——ほらほら、どうしたんだい? 反撃して御覧よ、面白く無いじゃないか!」
マーヴィンの高らかなに透き通った声が金属音と共に耳に飛び込んでくる。それに言葉を返せる余裕があるのかと問われれば、当然Noだ。
彼は細身の長剣を軽々と扱い、正に目に見えない程の速さで切り掛かってくる。それを弾き返すのがやっとで、とても反撃どころではない。
軽く後方に跳んで間合いを取り、左手に持った拳銃の銃口をマーヴィンに向けて発砲する。入っているのは対機械人形用の銃弾だが、制作者であるアイドの話では当然普通の弾丸としても使える筈だ。
「遅い!」
吠え、臆することもなく長剣で銃弾を弾き落としたマーヴィンはそのまま此方に瞬時に接近してくれば、赤いロングコートを翻しながら突きを繰り出してきた。
それを前髪が数本散る程度、それこそ間一髪の所で避けたものの、即座に容赦のない蹴りを喰らわせられ、俺は大した受け身を取ることも出来ずに吹き飛ばされてしまう。
「っ、ヘメティ!」
銃声の合間にシェイド大佐の声が微かに聞こえてくるが、それもすぐに金属音ややけに重厚な音に掻き消されていった。
すぐに立ち上がれば、マーヴィンからの神速と言っても良い程の剣劇で切ってしまったらしい頬の傷から伝う地を手の甲で拭う。避けた筈なのだが完全には避けれていないらしく、腕にも所々血を滲ませる傷があった。
だがそれを気にする暇は勿論ない。
闇霧を構えたままでシェイド大佐とソーマが応戦している場へと急げば、シェイド大佐は両手に拳銃を携えた二丁拳銃のスタイルでアレスと抗戦していた。ソーマは今まで通り、彼自身の癖とも言える戦い方——魔法での牽制から鎌での接近戦という戦法でアレスとマーヴィン二人ともに殺意に満ちた一撃を繰り出していた。
シェイド大佐の撃つ銃弾など恐るるに足らない、とでも言いたげな程にアレスはそれを防ぐこともなく彼に飛び掛かり掌打を喰らわせており、彼の燕尾服は様々なところが切れ、ぼろぼろになってしまっている。
しかし当然のこと、血は出ていない。
「……巻き込まれたくなければさっさと退けろ」
この状況でも良く通るソーマの声が聞こえ、視線を向けてみれば彼は今までに見たこともない大量の氷柱を生成していた。ソーマの周りだけ空気が真冬のように冷たく、吐く息も白くなっている。
本来ならば魔法での攻撃や鎌を振り回す際に周囲の人間にこんな事を告げる事もないソーマがこうして俺に言ってくるということは、恐らくかなりの範囲を攻撃する魔法なのだろう。
言われたとおりに彼からある程度の距離を取り、闇霧を構えたままで動向を見守る。
「——死に晒せ」
淡々とした声音で吐き捨てると同時に、何十何百という氷柱がマーヴィンとアレスに向けて射出された。
氷柱が標的に向かっていく様は見慣れたものだが、これほどまでに大量のそれが標的を射殺さんばかりに向かっていくというのは見たことがない。
アレスは流石にこれは防がざるを得なかったのか、小さく呻き声を漏らせば腕で視界を覆い、襲いかかる氷柱を防ぎ始める。
やはり魔力で造られた物とはいえ氷だ。金属よりも硬度はなく、アレスに当たる度に砕け、青白い光のようなものとなって霧散していった。
そんな彼に視線を向けることも、言葉を掛けることもなく、マーヴィンはその場から一歩も動くことなく長剣で氷柱を弾き、真っ二つに切り分けては霧へと還していく。
アレスが防御に入るのは予想していたらしく表情を変えなかったソーマだったが、流石にマーヴィンが自分の攻撃を全て防ぎきったのは意外だったらしく僅かに目を見開いた。
俺だって予想していなかった。幾らマーヴィンが非情に剣術に長けているからといって、まさか全てを防ぐなんて考えつくわけがない。
最後の一本である氷柱を砕き、彼は血払いでもするかのように剣を一降りする。
「遅いって言ってるじゃないか……もっと本気でかかってきたらどうなんだい?」
呆れた、とでも言いたげに肩を竦めて挑発してくるも、その挑発に乗る人間は誰一人としていない。
ソーマはそもそも安っぽい挑発に乗る人間ではないし、シェイド大佐はアレス以外狙っていない。彼の場合これも問題だろうが、何の柵もなくマーヴィンに飛び掛かるよりずっといい筈だ。
そして俺も彼等と同じだ。確かにマーヴィンの物言いはいちいち癪に障る。それでも、自分の命を省みずかかっていく真似はしない。
ただ妙なのは、その癪に障るという感覚だろうか。上から目線で如何にも支配者、といった他人を見下す物言いに苛立つだけではなく、もっと他のものを感じる。どう言い表せばいいのか分からない感情が渦巻いている感覚だった。
「……マーヴィン様、御怪我はありませんか?」
「大丈夫さ。そういう君こそ、そんなに銃弾や氷柱を受けて立っていられるのかい?」
自分を心配してくれる従者に対してまでもの上から目線、もしかすれば支配者や絶対的権力者という人間は皆こうなのかもしれないが、見ていて気分の良い物ではない。
アレスは気にしていない、というよりも気にならない、といった風だろうか。主さえ無事ならばそれでいい、という考えがその立ち姿から滲み出ているようだった。
彼の燕尾服は既に殆ど燕尾服としての原形を留めていない。下に着ていたシャツやベストは辛うじて分かるが、上着はどう繕っても再び着用する事は叶わないだろう。
「貴方さえ無事であれば、私は——」
その後に続く筈だった言葉を遮り、アレスの胸の中心辺りに銃弾が被弾する。
「……無駄話をする程余裕があるのか。……腹立たしい」
必死に抑えてはいるものの、シェイド大佐の声は僅かに震えている。彼の背後に立つ俺でも解るくらいに、強く握られた手も声と同じく震えていた。
彼は今にも溢れ出しそうな憎悪に激情を必死に理性で押し留めている。
「それは君の価値観だよ、大佐。君達に余裕がないだけの話だ。違うかい?」
冷静に、変わらない声音でマーヴィンの口からそう発せられた途端、シェイド大佐の抑えていた『何か』が溢れ出してしまったらしい。
彼は何の言葉も吐かず、表情を変えることもなく、ただ瞳に憎悪と侮蔑、様々な感情を込めてマーヴィンとアレスを睨み付けて銃の引き金を立て続けに引いた。
勿論それをマーヴィンが易々と受けるわけもない。アレスが易々と自分の主を襲わせる訳がない。
既に自分も傷ついているというのに、彼はマーヴィンの盾として前へ出ればシェイド大佐の放った銃弾をその身に受ける。
マーヴィンはそれも分かっていた行動らしく、驚くことも何もせずに腰に手を回せば投擲用と思われるナイフを取り出せばそれを躊躇うことなくシェイド大佐へ向けて飛ばした。
本来ならばこの程度の攻撃は避けられただろうと思う。しかし今の彼は防御の態勢も取っていないどころか、まずそのナイフの存在にすら気付いていない。
「シェイド大佐ッ!」
俺が叫んだところで漸く我に返ったようだったが、もう遅かった。
シェイド大佐の右肩にナイフが深々と突き刺さり、彼はその痛みに手から拳銃を滑り落とす。
すぐにそれを左手で引き抜き適当に投げ捨て、じわじわと鮮血で黒い軍服を汚す傷を白い手袋の嵌められた手で押さえた。
「……君達はやる気があるの? 生きるか死ぬか、その瀬戸際で、相手を殺す気はあるの? 全然感じられないね」
まるで俺達を意気地無しとでも言っているような言葉だった。マーヴィンの瞳には俺達三人に対しての明らかな侮蔑が浮かんでいたし、そう考えていいだろう。
ただ、どうしても彼に対して反論したくて仕方がなかった。
「……相手を殺す事が最善とは思わない」
気付けば俺はそう口走っていて、リグスペイアで初めて邂逅したときに激しい頭痛を感じた元凶であるだろうマーヴィンを見据えていた。
彼は暫くの間呆然と、それこそ『きょとん』という擬音が似合うような表情を浮かべていたが、すぐにその血に濡れたような赤い瞳を細め、口許を実に楽しそうに吊り上げる。
それから噛み殺したような笑いが辺りを包み、十秒と経たずにその笑いが辺りに響く程の高笑いへと変化した。
本当に面白そうな笑い声はこの状況に酷く不釣り合いで、思わず俺は顔を顰めてしまう。
恐らく本人にとっては不快だっただろうが、それにすら反応する事なくマーヴィンは俺に視線を向けてくる。
「……本当に君は変わってないね、その偽善的思考。昔と同じだ」
まるでずっと昔から俺を知っているかのような口ぶりで言い、彼は嘲笑のような自嘲のような曖昧な笑みを浮かべた。




ずっとコイツ等のターン。
最近更新頻度が落ちてるなー(´・ω・`)

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トレス元:「神騙りの愚者への断罪と懲罰」

トレスが楽しくなってきた。

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