魔界に堕ちよう 46話ー 忍者ブログ
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大晦日までの目標:今年中にリレイズ50話行くこと。
あーくんもヘメティやソーマに負けないくらい重い過去。にしても色々な面であーくんが誰かに似てる希ガス…




RELAYS - リレイズ - 46 【異形狩り】

「——昔、っつっても百年くらい前の話だ。この館は元々、どっかの金持ちの別荘みてェなモンだったらしい。もう用済み、って言ってるみてェに捨てられてたのを俺が見付けて、かなり綺麗だったから勝手に住み着いた。それだけだ」
この館はアーシラトの物ではなく元は誰かのもので、既に廃館となっていたここに住み着いた、という事か。
「その後は、ここを拠点みてェな場所にして、色々とフラフラ歩き回ってた。途中で仲間も見付けた。俺と同じ、人間じゃねェ奴をな。例えば吸血鬼、悪魔、堕天使、そういう奴等だ」
アーシラトの死神という種族と同じく、そんな存在は非現実的、空想の世界でしか存在していないとばかり思っていた。
全員が黙って彼の話を聞いている。誰も声を発しない。発せる状況でもなかった。
「でもなァ……どっかから人間が見付けたんだろうよ、そして告げ口だ。『館で平然と暮らしてる化け物』が居るってな。——それからだ」
最後怒りが混じった声で、吐き捨てるように言った。
それから、というのは、先程ファンデヴも口にしていた『異形狩り』の事に違いない。
この館の存在、アーシラト達の存在が知られてしまったことで、浮き彫りになってしまったことで、ここにも異形狩りの手が伸びた。
「……ほんっと、迂闊だった……俺がな。ちゃんと情報を集めていれば、避けられた筈なのに、って」
俯いたアーシラトは、泣いているようにも見えた。
いや、もしかすれば、本当に泣いていたのかも知れない。
「そっからはもう想像つくだろ? この館を中心として、範囲は狭ェが殺し合いさ。勿論俺も参加した」
ぼんやりとでも、予想していた通りだった。館に入る前に考えた『この近くで戦いがあったのかもしれない』という予想が的中してしまっていた事に、俺は少なからず動揺していた。
「こっちは俺を入れて十数人、あっちは数百だの千超えの人数だ。幾ら人外で、魔力だの何だの持ってるっつったって、多勢に無勢だ。全員殺されるのなんて時間の問題だった」
感情を無理に押し殺した、淡々とした口調で続ける。
その言葉、口調、声音は、聞いているこちらの胸も締め付けるものだった。
彼はそこで一度話を区切る。どこから話そうか、言葉を選んでいる様子で細く長く溜め息を吐いた。
「——最終的には全員で真っ向から突撃だ。逃げるなんて考えちゃいなかった。ただ……守りたかったんだろうなァ、自分達の居場所を」
彼等にも、彼等なりに誇りがあったのだ。
それに、自分達が今まで過ごした土地を、この館を放って置いて、逃げるなんて真似はしたくなかったに決まっている。
「まァ結局、死ねない身体の俺だけが生き残っちまったけど」
「……それじゃあ、他の……」
訊いてはいけないことは解っている。訊いても俺達に何の得もない、訊かなきゃ良かったと後悔するのは目に見えている。
それに、アーシラトの深い傷口を抉ってしまうだけだ。
それでも、訊かずにはいられなかった。
「悪魔は十字型の聖剣で切り殺された。堕天使も同じようにして殺られて——確か、羽も切り落とされたか。吸血鬼は……俺の盾になりやがった。ンな事しなくても、俺は死なねェっつのに……」
最後は、殆ど呟きのように小さな声だった。
恐らくかなり言葉を削って端的に話しているのだとは思うが、それでも陰惨なものに変わりはなかった。
頭を抱えたままで口を閉ざしたアーシラトを見る。
——やはり、訊かなければ良かった。途端に強い後悔に襲われる。
「……あー、自分から暗くしておいて何だが、あんまり暗くならねェでくれ。暗いのは好きじゃねェんだ」
「これで暗くなるなって方がおかしいでしょ!? 馬鹿!? アンタ馬鹿なの!?」
顔を上げると無理に作っていると一目で分かるような笑みで言ったアーシラトに、イーナがテーブルを叩き立ち上がった。
「馬鹿で結構だ。まァ、自分で勝手に自分の過去を話しておいて暗くなるなっつー方が無理……」
アーシラトの声が徐々に小さくなり、最後は消えてしまった。
彼の視線は、イーナに向けられたまま固定されている。
「……何だ、てめェ。何で泣いてやがる?」
彼女の目からは、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちていた。
「……だって……こんなの、酷すぎる……よ……ッ」
涙声、それも途切れ途切れで必死に言葉を繋げるイーナは、見ていて辛かった。声も、聞いている人間の胸を締め付けるかのような、悲しみに溢れた声だった。
何となく、貰い泣きをする人の気持ちが解るような気がする。
「——優しいんだなァ、てめェは」
どこか自嘲めいたような響きを持った言葉とは裏腹に、アーシラトは今までとは全く違う、優しげな微笑を浮かべていた。
死神にはいささか似合わないと思われる、心の底から嬉しくて、喜んでいて笑っている、といった感じの微笑。
「……な、別にそんなんじゃ……!」
「泣くんじゃねェよ、ったく。言っちゃ悪ィが、似合わねェぜ?」
「ばっ、馬鹿にしないでよ!」
こんな状況下で思ってはいけないことなのだろうが、先程の彼の言葉は殆ど口説き文句にしか聞こえない。遠回しでなくても、あれは『イーナに泣き顔は似合わない』と言っている。
もっと言えば『似合わないから笑っていろ』とも取れるのではないか。
「ハハッ、そうだ、それでいいんだよ。……話に戻るが、良いか?」
「え? あ……うん、大丈夫よ」
まだ若干涙が混じっていたが、イーナは目に浮かんでいた涙を手の甲で拭うと頷いた。
「……結局、だ。俺が人間を襲うのは、きっと死神の性とかそういうんじゃねェ……そうだな、憎悪……いや、復讐とでも言った方が正しいかもしれねェな」
自分の仲間を殺した人間達への復讐、それが彼の行動理由なのか。
「だからって、俺達は……」
「解ってる」
彼等を無惨に殺したのは、自分達と同じ人間だ。
だが、俺達は何の関係もない。俺に至っては、異形狩りの事も知らなかった。その上、アーシラト達、死神や悪魔の存在さえ信じていなかった。
アーシラトは俺の発言を強い口調で遮った。
「解ってんだ、それくらい。他の人間を襲うノなんて、殺すのなんて筋違いだ。……それでも、耐えられなかったんだ……だから、この地下に一人で居たんだよ」
一体、彼はどれだけ苦しんできたのだろう。
頭では、心の中では理解していても、それを止められない。いつも、後には後悔しか残っていなかったに違いない。
「……復讐心ってのは、深く根付くモンだな。自分でも、こんなに囚われてるなんて……馬鹿馬鹿しい」
「——そんな事はない、復讐に囚われてしまうのは、誰だってそうだ。ただ、それを断ち切れるか、断ち切れないか。違いはそれだけだ」
アーシラトはしばらくの間、言い切ったシェイド大佐を驚いたように見つめていたが、不意に視線を逸らした。
「成る程なァ……そういう考えもあるか。取り敢えず、俺の話はこれで終わりだ」
曖昧な独り言をこぼし、彼は全てを話し終えたらしくそう締め括った。
話が終わったにもかかわらず、誰も口を開こうとしない。いや、開こうとしてもできないのだ。
俺も、何と言って良いのか解らなかった。
普通に『それじゃあ俺達は帰ります』なんて言って出て行けるわけがない、だからといって、ずっとここにいることもできない。
どうしたらいいのか、と本気で焦りだしたとき、アーシラトは欠伸をかみ殺したような声で言った。
「さて、と……俺は別にてめェ等の事に興味はねェ。他に何か訊きてェ事は? 一応死んで自分が連れてった人間は全員覚えてっけど」
彼の言葉が終わるか終わらないか、というタイミングで、ファンデヴとシェイド大佐が同時に椅子を蹴り飛ばさん勢いで立ち上がった。




変なところで切りやがったなこの野郎とか言われても聞こえない。だって仕方ないだろ←

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