魔界に堕ちよう 64話ー 忍者ブログ
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RELAYS - リレイズ - 64 【再度邂逅】

その三人組は、突然機関の敷地内——もとい本部の一階に姿を現した。
突然と言えば語弊があるかもしれないが、誰も予想していなかったのだから『突然』としか言いようがない。というよりも、予想できるわけがない。
真っ先に彼等の姿を発見したのは、丁度一階に訪れていたホリックだった。普段ならば研究室に籠もって何やら実験していたりするだけの彼が、珍しいことに暇潰しにと一階まで降りてきていた。
重厚な金属製の正門が突如として開け放たれる音に、彼はちらりとそちらを見る。
扉の向こうに立っているのは、恐らく姿からして男が三人。今の時刻は丁度昼過ぎの為に逆光になっていてよく見えないが、それだけは確認できた。
それにしても、誰だろうか。……いや、それよりも。どうやって彼等は入ってきた?
それなりに腕の立つ人間を門番として配置しているし、部外者はそう易々と入ってこられないような造りになっている……筈なのだが。
周囲の人間達も大半は立ち止まり、彼等を見て何やらざわついている。
誰しもが彼等を怪しがって近付こうとしない。賢い行動だとは思うが、それでは自体は何も進展しない。
ホリックは意を決し、彼等に一歩一歩ゆっくりと近付き始めた。普段ならば面倒だからとさり気なく研究室に戻ってしまうが、今日は何となくだ。所謂気紛れ。
数人程から止めろ、という制止の声が聞こえたが、構わず足を進めていく。
丁度彼等と数歩程の距離を保った所でホリックは立ち止まり、目の前にいる男達を見た。
黒いフードを纏ったその姿は、何となく魔術師にも見える。フードを目深に被っている為に顔は見えず、表情も窺えない。
「……申し訳ありませんが、どちら様でしょうか? 門番の方が居た筈——」
『居た筈ですが、どうやって入られたのですか』という彼の言葉は続かなかった。続かなかったのではなく、続けられなかったというのが正しい。
ホリックの腰の辺りから、明らかに異常である物が姿を現していた。
それは無機物で、金属で、一言で例えるならば剣の切っ先。勿論それを手に持っているのは、目の前にいる黒いフードを被った男。
男が、手に持った細身の長剣でいとも容易くホリックの身体を貫いていた。
彼の白衣に血が染み込み、赤く染まっていくのと同時に辺りから悲鳴が湧き起こる。それと同時に、フードを被っていた男達も行動を起こす。
剣を携える一人以外の男二人がフードへと手を掛ける。その内の一人は、まるでうざったくて仕方がないとでも言いたげに乱暴に取り去った。
降り積もったばかりの雪のように白い髪を持つ執事と、黒に近い茶、例えようのない色をした髪を持つ到底執事に見えそうにもない執事を引き連れた男はホリックから剣を引き抜くと、フードをぱさりと音を立てて取る。
「あんな弱い門番を配置するなんて不用心だ、って司令官に伝えておきなよ? 僕でさえ殺せたんだから」
好青年の如くにこやかな笑みを浮かべたマーヴィンは、何のことでもないように言った。

「——何が、どうなったんだ」
目の前の惨状が理解できない。何がどうなったのか、何が起こったのか、何も全く解らない。そんな俺の心境や考えている事が、そのまま口をついて出る。
シェイド大佐も、俺と同じで現状を余り理解できないのか表情を驚愕に彩ったままで絶句していた。
このフロアに研究員達の姿はない。全員避難したのか、入り口の辺りに立っている三人と俺達を除いて他の人間は一人も居なかった。
中もあまり荒らされたような様子はない。瓦礫や土煙、土埃が床を覆っている訳でもなければ家具や本、資料が散乱しているわけでもない。
それでも、この空間が異常なこと等十分に解る材料が揃いに揃っていた。
侵入者らしい三人と俺達は十メートル離れているか離れていないかといった程度の位置で互いに向き合う。
焦げ茶の長髪に赤いロングコートを羽織った青年と白い長髪に燕尾服を纏った機械人形。青年の手にはここから見ても若干色が変わっている長剣が握られている。
その足下に見覚えのある白衣姿の男が倒れているのをここまで来てやっと視認した瞬間、その驚きを塗り潰すようにして青年の声が響いた。
「……やあ、また会ったね」
不思議な響きを持ったテノールの声は反響し、鼓膜を揺さぶってくる。
「…………また会ったな、機械人形とやら」
隣から、激情を押し殺したように低いシェイド大佐の声が聞こえてくる。それは青年の後ろに立っている執事——アレスに対しての物だとすぐに解った。
そうすれば後は誰が誰かという特定は容易い。赤いコートといい『また』という言葉といい、機械人形を引き連れた人間なんて、少なくとも俺は一人しか知らないしそんな人間は一人居れば十分だ。
「久しぶり……でもないかな。改めて自己紹介しようか? そうしよう。君も覚えていないだろうし」
状況を全く理解できていないこちらの事など当然考えず、彼はほいほいと自分のペースで話を進めていく。
恐らく俺に向けられた言葉もあったが、その意味がどうも上手く理解できない。
「僕の名前はマーヴィン。君達のよーく知る大都市の支配者だよ」
「お前の名はマーヴィン、あの機械大都市の支配者だろう」
シェイド大佐の口から青年——マーヴィンと同じような言葉が吐き出される。
彼の声と自分の声が被ったことに驚いたのか、マーヴィンは僅かに目を瞠るとにこっと笑みを浮かべた。
「正解。やっぱり知らない訳がないんだよね。当然か、だって僕は……」
「あー、もう止めね? めんどくせぇ」
僕は、の後に何が続くのかは大体解るが、何やら演説を始めようとしていたマーヴィンの声を誰の物とも取れない気怠そうな低い声が遮った。
それに聞き覚えはなく、その声の主を捜してみる。
今までマーヴィンとアレスの後ろに居た所為でよく姿が見えなかったもう一人の男が、荒々しい足音を響かせながら二人を追い越して前に出てきた。
彼もだらしなく着崩しているながらも燕尾服を纏っており、マーヴィンの部下であり執事というのが窺える。アレスのように白い手袋は嵌めていない。
黒に近い茶髪を揺らしながら前に出てきた男は、黄緑に近い緑の眼を細めて口角を緩やかに吊り上げる。
「……何だ、まだ気付かないのか? まさか一週間やそこらで忘れたとか言わないよな?」
小馬鹿にしたような言い方は置いておいて、男の口ぶりからして俺達は彼に出会ったことがある、らしい。一週間前と言うと、丁度ソーマの故郷に行ったときだ。
しかし彼のような柄の悪い執事に会った記憶はない。
記憶を掘り返して今まで会った人物に男の姿を当て嵌めているとき、隣でシェイド大佐が静かに息を吐く音が聞こえた。
「……まさかとは思うが、お前は……その髪の色といい眼の色といい、あの時の宿屋の店主か?」
予想もしていなかった男の正体への予想に、俺はシェイド大佐に視線を注ぐ。こんな細かいところまで覚えていたのか、という感心のようなものもあった。俺も彼のことは覚えていたが、まさか目の前にいる男が宿屋の店主だとはそれこそ思ってもみなかった。
彼に自分の事を指され「へぇ」と男は驚いたような過人したような声を上げる。
「勘が良いな。いや、記憶力か? まあどっちでもいいんだ、それじゃあ俺も改めて自己紹介って所だ」
わざとらしく肩を竦め、彼は自分の背後を指差すと自分の名を告げた。
「俺はハウンド。そこの馬鹿で女顔で主中毒者の弟に当たる機械人形弐号機だ」
ハウンドに馬鹿——それだけではないが、悪く称されたアレスが彼に殺意を向けているのがありありと見て取れる。だがそんなのはどうでもよかった。
何故彼も機械人形であるのか。アレスのように自分の身体が無機物であるという証拠があれば話は別だが、その証拠もない。
「……成る程、大方アレスのデータを複製して人格だけを変えて新たな機械人形に、と言ったところか?」
「すげーな、流石軍人ってか? 大正解。俺はこのマーヴィン狂信者から派生しただけの代用品さ」
余りにも自虐的な言葉だった。浮かぶ笑みも禍々しく、見る者の身を竦ませるようなものだった。
ハウンドは言い終わると、燕尾服の左袖から手の甲に沿う形になる仕込みナイフを展開させるとそれで自分の右手の甲を切り裂く。
予想通りというか予想外というべきか、血は一滴も出ていない。その代わり、人工皮膚のようなものの下には鈍色に光る金属が見えた。
「……ハウンド、そこまでにしよう。そろそろ話も僕は飽きてきたんだ」
「それはお前が、だろ。アッチはまだまだ話し足りないみたいだぜ?」
「みたいだけどね。彼等はこの人を救いたいのか救いたくないのかも解らないな。今はまだ生きてるみたいだけど、このまま放っておいたら死んじゃうだろうし」
マーヴィンは長剣の切っ先で床に倒れているホリックさんをつんつんと突き、世間話でもするような軽い口調で言った。
助けたい気持ちは勿論ある。それこそ狂おしい程に。目の前で助けられもせずに死んでいくのを見るなんて御免だった。だからといって、迂闊に近付けば逆に様々な被害を大きくしてしまう可能性もある。究極の選択やら板挟みという言葉の意味がやっと理解できた気がする。
「……ああ、助けたいなら勝手に助けてくれて構わないよ。用があるのはこの人じゃないんだ。助けるっていうなら『助けたときだけは』手は出さないよ」
悪魔の囁き——とは少し違うだろうか、兎に角甘い言葉で他人を惑わすような言葉だった。それを鵜呑みに思想になった自分自身にも腹が立って仕方がない。
誰がそう簡単に敵、それも黒幕の話を信じるだろうか。少なくとも俺は信じないし、シェイド大佐だって同じだろう。
「オレ達がそれを信じるとでも思っているのか? だとすればそれは大きな誤りだ」
「うん、思ってないね。だから君達は現に迷っている。誰かが助けに来るまで、無力な子供みたいにそこに突っ立ってるだけ」
彼は言い回しがいちいち感に障るというか、こちらの神経を逆撫でするような言葉ばかりを使って話してくる。それがマーヴィンの狙いなのだという事は知っている。
「——餓鬼なのは貴様等だ」
今までに何度も聞いたよく通る声が聞こえたと同時に、一階の周りを取り囲む渡り廊下のような螺旋階段のような所から旗が風に煽られるような音が耳に入ってきた。その音と声の主はよく知っている。
「……また無茶な事を」
隣でぽつりと漏れた呆れたようなシェイド大佐の言葉に、俺も大体同意する。
彼等三人に吐き捨てたソーマはかなりの高さがある廊下の辺りから跳躍し、左手に普段通りにナトゥスを携えたまま空中にいる時点で魔術を発動させようとしているのか右手をマーヴィン達に突き出していた。
あのままではソーマも巻き添えを食う可能性が高くなる。勿論彼のことだからそんな事はしないと信頼しているが、どうしても気になるものは気になるのだ。
そんなこちらの気など全く知る由もないと言いたげに、ソーマは驚愕に頭上を見上げたままのマーヴィン達に向けて明確な殺意を持った凶器を向けた。
「——Lump oficle,」




スランプ抜けたい。

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