魔界に堕ちよう 61話ー 忍者ブログ
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何か目次まとめるのが怠くなってきt(ry




RELAYS - リレイズ - 61 【偽り】

司令室のソファに座り、俺達はダグラスさんと向き合っていた。
普通ならば司令官は椅子に座って、俺達はその前に一列に並んで報告するのだろう。だが、何故かそのスタイルを彼は取ろうとしない。別にそれで何か問題が起こるというわけでもない為、もう黙認している。
「——成る程、奇襲か」
ダグラスさんは苦々しく呟き、ポットを手に取り紅茶をカップに注ぐと角砂糖を一つ落とし、数回スプーンでかき混ぜてから口を付けた。
「……迂闊だったとしか言い様がない。……これは僕の落ち度だ。申し訳ない」
カップを置いて俯いたダグラスさんに、俺は頭を振って否定する。
彼に罪はない。あの状況で緊張感もなしにふらふらと歩いていた自分達の責任だ。アレス達と接触した時点であの町を出ていれば、こんな事にはならなかった筈だ。
逃げる時間、猶予は十分にあった。それなのにそれをしなかった俺達が悪いのは明白だった。
「……それでも、良く生きていてくれた」
顔を上げてふっと微笑んで、彼は言ってくれた。彼がこのような状況で、このような話の時に冗談を言ったりしないという事はよく知っている。
今俺達が生きているのは、恐らくアレスとザクストの二人と戦っている時にアノードが割り込んできた事も影響しているのだと思う。予測もしていなかった乱入者、それは彼方も考えていなかった筈だ。
「……どうやら、今回の事から解釈するにアッチも本格的に皆を確実に始末する為に動いているみたいだね。……さて、これからどうするか」
これからどうやって動けばいいのか、ダグラスさんは思案する為に口を閉ざす。誰も口を開かず、ただ静寂だけが司令室を包んでいく。
ちらりと皆を見てみれば、俺の横に座っているソーマは何を考えているのか紅茶のカップに大量の角砂糖を放り込んでいるし、サイラスは何も言わずに身じろぎもしないまま……だが、彼の頭の上にある猫耳だけが時折動いている。
かと思えばラスターさんは心此処に在らずといった風にぼんやりとしているし、ファンデヴは何時も通り何を考えているのか解らない。イーナは先程から紅茶のカップを手に持ったまま。見ただけで考えていると解るのはシェイド大佐だけ、だった。
勿論皆も何か考えているのだろうから別にそこを気にしたりはしないが。
「——しばらくは、余り動かない方が良いだろうな。それだけは確かだ」
シェイド大佐が口を開き、ダグラスさんの目を見据えてはっきりと口にする。やはり軍人というだけあって、こういう部分は判断に長けている。
「動かずにいれば、その間に色々と作戦も立てられる。これからの動きも考えやすい。……どうだ、司令官」
「……僕も、それがいいと思っていた。しばらくの間、何もせずに居よう。その間に、今後どうするか考える。……これでいいかな?」
俺を含めて、誰も反対する人間は居なかった。ダグラスさんとシェイド大佐の言っている事は正論だし、丁度俺もそう考えていたところだったから。
「しばらく僕は何もしない。この間にゆっくり休むか鍛錬をするかは君達の自由だ。……ただし、絶対に本部の外に出ないように」
彼は俺達に釘を刺し、残っていた紅茶を一息に飲み干した。だからといって乱暴という訳でもなく、どこか優雅さが漂っているように見えた。
「それじゃあ、もう戻って良いよ。——ああ、そうだ」
そこで思い出したように声を上げたダグラスさんに、ソファから立ち上がろうとしていた全員の動きが止まる。そrめお見事なまでに全く一緒のタイミングで。
「……ヘメティ、君だけは少し残ってくれ」
いつものあだ名ではなく普通に名前を呼ばれ困惑するも、俺は黙って頷いた。あだ名を使えるような話ではない、という事に違いない。
何を話されるのかは解らないが、気を引き締めておくに超したことはない。
「じゃ、オレ達は先に戻ってるぜ?」
「あ、解りました。それじゃあ、また後で」
ラスターさんに軽く手を振り、ぞろぞろと司令室を出て行く皆の背中を見送る。
サイラスはあんな話をした直後だと言うのに既に眠そうにしていた。後ろ姿からそれが解るのかと問われれば、肯定する。うつらうつらと舟を漕いでいるのだからすぐに解った。
全員が司令室から出たのを見計らい、ダグラスさんはこちらを振り向いた。
「……突然すまない。ただ、どうしても言いたくてね」
ぎこちなく笑い、彼は司令官が座るべき椅子へと腰掛ける。思えば、彼がその席に座っているのを見るのは本当に久々だった。
いつも普通にソファに座っているから忘れかけていたが、本来司令官であるダグラスさんが座るのはその席だ。
「……何、ですか?」
彼が身に纏う雰囲気が普段とは違うことを感じ取り、妙に不安になる。恐る恐るといった風に、それを尋ねてみる。
「いや、そこまで……大したことじゃないんだ」
大したことじゃない、とは到底思えない。だが、それをしつこく食い下がって追求するわけにも行かず、俺はただダグラスさんの次の言葉を待った。
「君は一度あちら側に捕らえられそうになった身だ。今回は良かったものの、今後どうなるか解らない。……兎に角、用心してくれ」
「……はい」
彼は普段とは違う真面目な光を帯びた目で俺を見据え、はっきりと固い口調で言った。
言われなくても、そうするつもりだった。どうなるか解らないのだから、用心するのは当然のことだ。
それでも、まだ解らないことはある。
「それにしても、何で俺だけ捕まえようとしたんでしょうかね?」
何気なしに俺が口にした瞬間、ダグラスさんの表情が強張った。見たこともない、所謂狼狽と呼ばれるような物だった。
「それは……——解らないね」
少しの間をおいて、ぽつりと彼が漏らす。どこか堅苦しい、演技のような響きを持っている言葉だったが、これ以上訊くことも出来ない。彼の纏っている雰囲気が、そう告げていた。
俺は頭を掻き、首を傾げる以外にできることがなかった。
「さ、ヘメ君ももういいから。引き留めてしまってすまなかった」
今まで通りの微笑と声音で言われ、思わず頷く。もうこれ以上訊いてもダグラスさんは話してくれないだろうと、心の何処かで悟っていた。
「……失礼しました」
俺は頭を下げると扉を開け、司令室を出た。
扉を閉めて息を吐いたのとほぼ同時に肩を叩かれ、僅かに肩を震わせる。誰だと思いながら振り返れば、そこにはアイドが悪戯っぽく笑いながら立っていた。
「よっ、ヘメティ」
「何だアイドか……って、やっと俺の名前覚えたのか?」
今までオッドアイとしか呼ばなかった彼がまともに自分の名前を呼んだことに、俺は少なからず感動を覚えていた。自分の名前を覚えて貰えた、という達成感が胸を満たしていく。
「別に覚えてなかったんじゃなくて、あえてアッチのあだ名で呼んでただけなんだけどな?」
「なっ……覚えてないとか忘れたとか言った癖に!」
まさか、今までの言葉が嘘だったというのだろうか。だからといって別に構わないが、やはり腹が立つ。
彼の白衣の襟を掴んで訊けば、アイドはただ笑っているだけだった。
「ま、いいだろ。今度からはちゃんと呼んでやるから。それじゃ、俺等は司令官に用があるから、じゃあな」
俺等、ということは他にも来ているのだろうかと思い辺りを見回せば、丁度アイドの後ろに隠れるようにしてホリックさんが立っていた。
長い灰色の髪を揺らしながら彼はアイドの後ろから出てきて、俺に微笑んできた。その微笑みはやさしいものだったが、その目は『今まで気付かなかったなんて酷いですね』と冗談無しに語っている。気迫が半端じゃない。
「気配を殺すのは得意ですが……まさか戦う人間にまで通用するとは思っていませんでしたよ」
含み笑いをしながら、ホリックさんは眼鏡を指で押し上げる。それだけを言い残し、彼はさっさと司令室に入ってしまった。
「アイツの嫌味は気にしなくていいぜ? どうせ冗談だろうから。それじゃ、今度こそな」
アイドは短く切られたパステルカラーの水色の髪を掻き上げながら、ホリックさんの後を追って司令室へと足を踏み入れた。
どんな話をするのかは少し気になったが、そこまで気にする必要もない。どうせまた研究班に何か妙なものでも作らせるつもりなんだろう。ダグラスさんの思考回路から行けばそうなる可能性が高い。
一度司令室の扉に目を向けてから、その場を後にした。

「——司令官、またですか?」
紅茶を啜り、アイドは呆れたように、それでいて悲しそうにダグラスへと言った。
向かいにはホリックがソファに腰を下ろしており、ダグラスは司令官の座るべき椅子に腰掛けている。
彼は何も言えず、ただ細く長く溜め息を吐いた。
「……そろそろ、言うべきなんじゃないですか」
普段のアイドからは想像も付かないほどに真面目な固い声で、彼は呟く。その表情は苦しげで、酷く辛そうだった。
「……解っている。……解って、いるんだ……他の皆も、薄々気付いてる。恐らく、ソーマはもう完璧に感付いていると考えていい」
頭を振り、ぼそぼそとダグラスは絞り出すようにして言葉を紡いでいく。
「やっぱり、ですか。……アイツは、昔から勘も良いですからね」
まだその頃は少年と呼べるかも知れない年齢だった頃に、アイドは機関に保護されたソーマと出会った。その頃から、彼が他の人間とは違う事をアイドは見抜いていた。
「後々気付いて絶望するよりも、今言ってしまった方が彼の為にもなると思うんですが、ね……」
ホリックは苦々しく言い、全てを吹っ切るかのようにカップに注がれていた紅茶を全て飲み下した。
「……俺が思うに、アイツはそこまで精神が弱くはないと思うんですよ。絶望しても、それを乗り越えられると……俺は、信じてます」
アイドに返事をすることもなく、ダグラスは立ち上がると机の上に置いてある金属光沢を発する物体を手に乗せる。手の平で軽く包める程度の小さなものだった。
それを握り締め、彼は目を伏せる。
「僕は未だに解らない。このままでいいのか? 彼はこのままで幸せなのか? ここで真実を告げてしまった方が、楽になるんじゃないかって」
「……そんなの、俺だってアイツの顔見る度に考えてますよ」
男三人が同時に溜め息を吐く司令室という空間は、陰気で重苦しくまとわりついてくるような空気に満ちていた。
いつもの明るさなどどこへやら、全員が頭を抱え、苦悩している。
「——彼は何も悪くない。……彼に罪はないんだ……」
呟いたダグラスの声は弱々しく、僅かに震えていた。物体を握り締める手も、声と同じく震えている。
「だからこそ、言う事も必要なのでしょう。……先日やっとまともな会話をした私よりは、あなた達が言った方が……彼の為にもなる筈です」
自分は、真実を告げる程に彼と関わっては居ない。ホリックはそのような意味を込めて、アイドとダグラスに向けて静かに話した。
「……でも、まだ……まだ、時間が欲しい。——こうしていれば、ずっと先送りにしてしまうのは目に見えているのに……」
最早ダグラスの声には涙が混じっていた。それでも頬に涙が伝うことはなく、言葉を詰まらせることもなかった。
アイドはもう一度大きく溜め息を吐き、髪を掻き上げる。
「もう一度、考えてみた方がいいですかね。……司令官も、俺達も」
脱力したように肩の力を抜き、彼はホリックとダグラスを見る。彼等も、言葉には出さずにいるものの同じ考えだった。
今ここで互いに言い合っていても、堂々巡りになるだけなのは目に見えている。
結局、自分達は何もできない無力で覚悟も何もない人間なのだと、三人は否が応にも理解してしまっていた。
「……わざわざ呼んだのに、すまない。……今日は、もういい」
ぽつりと漏らしたダグラスに、二人はまだ何か言いたげだったがソファから腰を上げる。
「——失礼、しました」
その言葉だけを残しホリックとアイドが司令室を出たのを確認してから、ダグラスは大きく息を吐いた。まるで、何かに必死に耐えていたかのように。
指をゆっくりと開いて今までずっと握り締めていたものを見る。余程強い力で握り締めていたのか、手の日は赤く痕がついていた。
「……外さない方が、良かったのかもしれないね」
シルバーのリングに同色の細長い長方形のネームプレートがついたそれを見つめ、彼は何を今更言っているんだと歯噛みし、顔を歪める。
それを机の上、元あった場所に置くとダグラスは紅茶のカップを片付ける為に席を立った。




伏線はあえてバレバレ、それが俺。
何気に五七五とかwww

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