魔界に堕ちよう 49話ー 忍者ブログ
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大晦日にソーマの過去編!THE☆シリアス!!…と、思ったら1週間経っちゃった。
ソーマの過去明かすの早すぎたかね。




ソーマは18年前に、他の町に比べて少し住人の少ないこの町——ベガジールに生まれた。
生まれた時刻は、そろそろ日付が変わるかという時間帯だった。
その時の空の色によく似た、光の加減で黒にも見えるような濁った青の瞳に、その時の空に浮かんでいた月の色をそのまま映したかのような銀髪。
母親の銀髪に父親の瞳の色を受け継いだ姿に、その場に居た両親と大人達は、皆一様に『神秘的』という言葉を思い浮かべた。
そして付けられた名前が、『月の神』という意味を持つ『ソーマ』だった。
両親と自分一人。自分達は争う事もなく、平和に生きていけるものだと思っていた。

11年前のあの日までは。

RELAYS - リレイズ - 49 【嘗て】

丁度その夜は、ソーマが生まれた時と同じような月が浮かんでいた。
空の色は、黒というよりも濃紺に近い色合いをしていて、酷く幻想的に町を包み込んでいる。
普段通りの平和な夜、立ち並ぶ家々からは住人の楽しそうな談笑の声が聞こえてくる。その談笑の中には、勿論彼の家族も含まれていた。
この日も、いつも通りの平和な夜で、いつも通りに明日を迎えられる物だと誰もが思っていた。この平和なときが失くなる、そんな事は考えつかなかったのかもしれない。
それを破ったのは、一発の銃声だった。
平和な箱庭、そこにその音は酷く不釣り合いで、誰の耳にも届いた。——届いてしまった、と言った方が正しいだろうか。
町に足を踏み入れたのは、数人の軍人に百数十人程の兵士達だった。
彼等はその手に銃や剣といった武器を携え、この町では殆ど聞くことの無い銃声を聞き、外に出てきていた住人達に銃口や剣先を向け、片端から殺していった。
談笑の声は掻き消え、町にはただ悲鳴と銃声だけが反響していた。
ソーマは両親と共に、その音に震えていた。
家族で逃げなければならない。頭ではそう解っているのに、『逃げよう』ということも出来ず、かといって足も動かない。
ただそこで、いつ殺されるかも知れないという恐怖に耐える以外になかった。
「——大丈夫だ。……もう少しで、終わるさ」
「……ええ」
父親はそれでも気丈に笑みを浮かべ、妻と息子を安心させようと優しく言い続けていた。
だが、その笑みが仮面な事は誰が見ても明らかな程に罅割れていた。ソーマと同じ色の眼には、はっきりと恐怖が映っていたのだから。
母親は掠れた声で返すと、ソーマを守るように抱いている手に微かに力を込める。
不意に悲鳴も銃声も止み、静寂が訪れる。
「……終わった、か……?」
白いカーテンの掛かった窓から外を窺いながら、父親が小声で呟いた。
その瞬間、部屋の扉が剣によって切り壊され、軍服に返り血を染み込ませている二人の軍人と数人の兵士が入り込んできた。
「——おい! ソーマを連れて逃げ……」
逃げろ、と告げ終わる前に、白い軍服を身に纏った軍人は手に持っている長剣を振るい、父親を袈裟懸けに切り倒した。
「……父さんッ!」
ソーマの悲鳴に似た声にも、父親は反応することなく倒れたまま動かない。
「——あとはこの二人で最後ですか」
「そうらしいですねぇ。もう住人は居ないようですし」
軍人は低く、死刑宣告に等しい言葉を漏らすと父親の血で赤く濡れ光っている剣を一度血払いした。
いつの間にかその隣に立っていた、眼鏡をかけている軍人はちらりと横目で、住人達の倒れている外を見た。
母親は眼に涙を浮かべてかたかたと震えながら、ソーマを抱いていた腕を解く。
そして、その背中まで伸びた綺麗な銀髪を揺らしながら前へ出た。
「……絶対、に……この子は——この子だけは、殺させません……!」
黒いロングスカートの裾をその華奢な手で強く握りしめ、明らかに震えている声で、それでもはっきりと言い切った。
軍人はそれに何も答えず、醒めた眼で母親を見る。
「——面倒ですね。やってしまいなさい」
「ええ。丁度私もそう思っていたところです」
眼鏡の軍人は微笑を湛えたままで銃を取り出すと迷うことなく彼女の胸に狙いを定め、躊躇することなくその引き金を引いた。
母親の血がソーマの白い頬に飛び散り、その頬を伝い落ちる。
声も何も出せず、ソーマはただ呆然と、涙さえ流すこともなく足下に倒れている母親に向けて発砲した軍人を見つめていた。
「……親が恋しいですか、餓鬼」
父親を切り殺した軍人の明確な殺意で光る緑色の瞳が細められ、その口許に嘲笑が浮かべられた。
「……フン、すぐに両親の後を追わせてやりますよ」
軍人は無感動に鈍色に光る剣を一度彼の目の前でちらつかせてから、構え直した。
ソーマの眼が見開かれ、躯が小刻みに震え出す。
それは軍人の瞳には、今から自分に襲いかかってくる死に怯えているのだとしか映っていなかった。
父親を殺した凶器が、ソーマの首を目掛けて振り下ろされる——筈だった。
「……う、ああああああああああああッ!!」
彼の口から絶叫が迸ると同時に、周囲がガラスに罅が入るような音を立てて凍り始めた。
それに加え、頭を抱えているソーマの手から、鎌の刃に酷似した力が放出される。
「クソッ、この餓鬼……! 自分の力を押さえられないで暴走しましたねぇッ!」
軍人は悪態を吐くと、剣を持っている手を下げると後退した。
ソーマは頭から手を離すと、ぎこちない動きで震えている左手を自分の横に向ける。
軍人でさえも近づけない程の魔力が渦巻いている空間に、電流が流れるような音を立てて何かが出現した。
彼の手がそれを掴んだ瞬間、軍人の持っている剣よりも鋭い魔力が明らかに指向性を持って後方に下がっていた軍人、それに兵士達に襲いかかった。
「……ぐああぁッ!!」
母親を撃ち殺した張本人である眼鏡の軍人が出す悲鳴、それさえもソーマには届いていない。
「——許、さ、ない……消え、ろ……消えろ……消えろおッ!!」
異様な光を宿した暗い青の瞳が『敵』を睨み、軍人の殺意を遙かに超える『憎悪』を込めてソーマが叫ぶ。
耳鳴りのような音が響き渡り、彼の周りを覆っていた魔力が全てを巻き込んで爆発した。

「——間に合わなかった、か……」
「……中には生きている人も居るみたいだけど……酷いな」
小さな瓦礫の破片を踏み締めながら、金髪に白衣を羽織った男は悲しげに目を伏せる。
「今自分達にできる事をする……そうだろ、司令官」
白いコートを羽織った中年と思われる男は、くすんだ金髪を風に揺らしながら言った。
「……そうだね。すまない」
白衣の男は答えると、自分の背後に整列していた、同じく白衣を纏っている人間達に指示を出し始めた。
「医療班、A班は彼方を、B班はここ周辺を——」
金髪の男はその様子を遠目に見ながら、何かに吸い寄せられるように足を踏み出した。
この町のどこかから、何か引っ掛かるようなものを感じる。言葉には言い表せない不思議な感覚が、彼の身体を満たしていた。
しばらく町中を徘徊していた男は、ある一件の崩壊した家屋の前で足を止めた。
入るか入らないか少し躊躇ったが、一度短く息を吐くと瓦礫を踏み越えて入り込んだ。
白い絨毯に染み込んでいる数人分は有りそうな血、そこに倒れている、数人の兵士と女性と男性の死体。
男はあまりに陰惨な光景に顔を顰める。が、そこで気付く。
恐らくは居間と思われる部屋の真ん中に、一人の少年が俯いて座り込んでいた。
男は少年に歩み寄るとしゃがみ込み、涙を流すこともなく虚ろに視線を宙に彷徨わせている彼の顔を覗き込んだ。
「……生きてるか」
命が、ではなく、心が、精神が。死んでいないか。
できる限り優しく問いかけるが、反応はない。
次にかける言葉が見つからず、途方に暮れていた男の目にある物が映った。
少年の身の丈程はあろうかという巨大鎌だった。持ち手も刃も、何もかもが白く、淡く発光している。
それを見て男は瞬時に少年に何があったのかを悟った。
目の前で両親を殺され、それにより『能力』が開花——いや、この惨状を見れば『暴走』か。
未だに何の反応も示さずにいる少年に男は一度頷いた。
「……立てるか?」
そこで初めて彼は反応し、ゆっくりと立ち上がると今までもそうであったかのように鎌を拾う。
「……大丈夫だ、お前の父さんと母さんは、俺等がきちんと——……天国、に送ってやる」
言葉を選ぶように黙り、男は寂しそうに微笑むと少年の手を取り、歩き出した。

その後、白衣の男と白コートの男と共に『機関』に来たソーマを待っていたのは

「——あんな経験を味わった、それなのに……すまない」
「……何」

酷く残酷な宣告だった。

「……戦って、欲しい」




\(^o^)/
もうやだ何で一週間かかるのよ!!Die!!!

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