魔界に堕ちよう 48話ー 忍者ブログ
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もう今年中に50話行けなさそげ\(^o^)/




RELAYS - リレイズ - 48 【道程】

葉擦れの音と足音、それ以外聞こえない。先程の館での会話が嘘のように、誰も口を開かなかった。
皆、何か一様に考える事があるのだろう。
俺も色々と考察したい事はあるが、それよりも訊きたい事があった。ただ、そのタイミングを掴めない。というか、どうやって切り出せばいいのか解らなかった。
誰か言うかとも思ったが、誰も言おうとはしない。気にしていないのか、俺と同じくタイミングを掴めていないのかは解らない。
俺は溜め息を吐くと、重苦しい沈黙を破るように声を出した。
「……そういえばすっかり忘れてたんだけど」
結局、普通にこう切り出す以外に方法が見つからなかった。
いきなりこんな切り出し方をしたせいか、皆の視線が自分に向けられるのが解る。
「いや、こういうときに言うのも何だとは思うんだけどな……ファンデヴ」
最後尾を歩いていたファンデヴが顔を上げる。空色、と表すのが一番しっくりくる水色の瞳が俺を映した。
「……解ってる。全部説明する」
ファンデヴは言うと、ちらりと横目で自分の隣を歩いていたサイラスを見た。
「俺も解ってるっつーの。ちゃんと色々言ってやるよ」
サイラスはそこで一呼吸置き、片手で茶色に近い金髪を掻き上げるともう片方の手をファンデヴの肩に置いた。
「まあ、見ての通りだがコイツは女だ。分かり易く説明すれば……男に変装してたって感じだな、魔術で。ただ体付きを変えるとかそういう程度だ。それに動きも大分鈍くなる」
あの地下室でサイラスが言っていた『解除』という言葉の意味がようやく解った。
彼女はあの時、助けに入る際に魔術を解除していたのだ。それならばつじつまが合う。
「……でも何でそんな事する必要があるんだ?」
「女が一人旅、なんてしてたら危険だと思うから」
浮かんだ疑問を即座に消される。確かに、女性が一人で旅をするのは危険だ。俺にもそれくらいは解る。
だが、ファンデヴの技量や強さからして、そこらを闊歩している盗賊や山賊、都市から出てきている兵士に負けるとは思えない。
「襲われたら色々面倒。時間も喰う」
いくら強いからと言って、怪我をしないわけではない。ファンデヴが戦いを避ける理由は、面倒だからというだけではない気がした。
それに、あまり敵と戦いたくない、そんな雰囲気があるようだった。
「でもそんな性別だけで変わるとは思えねぇんだけどなー……効果はあったのかよ?」
ラスターさんの尤もな問いに、ファンデヴは俯いて口を閉ざした。
どうやら、自分が期待していた程の効果はなかったらしい。図星を突かれたのか。
「そ、そこは突っ込まないでおいてくれ。コイツこう見えて結構ガラスのハートだから」
俯いたままで暗雲を頭の上に浮かばせている彼女の肩を、サイラスは今度は慰めるようにぽんぽんと叩いた。
「——まあ、仲間という事に変わりはない。性別なんてどうでもいいだろう」
「そりゃ当然だろ? 男だろうが女だろうがオレはどうでもいいぜ? 逆に男だらけの中に華が増えたじゃねぇか」
「……ラスター、何故お前はいつもそういう事を……確かにオレも思っていない訳ではないが」
「ホラ見ろやっぱりな!」
「いや何でいつも大佐とラスターさんが話せば脱線していくんですか!!」
それでも華だの何だのと色々脱線した話をしている二人に、俺は深く溜め息を吐いた。
何故彼等が言葉を交わせばこうなってしまうのか、本当に理解できない。誰か知っていたら教えて欲しいくらいだ。
「……っていうか良いの? アイツ一人でさっさと先行っちゃってるけど」
さほど驚いていないようなイーナは呆れ顔で、少し遠くに見える黒い影を指さした。
俺達の前を歩いていた筈のソーマが、もう十数メートルは先を歩いている。俺達が追いついていないことに気付いていない……という訳ではなさそうだ。あいつにそれは有り得ないか。
「……早く行かないと、この草原の真ん中で立ち往生、なんて事になりそうだな。行くぞ」
ここから先の道を知っているのはソーマだけなのだ、そのソーマが俺達を置いて先に進めば。自分達は道も解らずにここに待機することになる。
いくらこの草原が綺麗で清々しいからといって、それだけは避けたかった。
俺は足を速めたシェイド大佐に続き、歩き出した。
その時背後でファンデヴが何か呟いた気がするが、気のせいだっただろうか。
少しそれが気にかかったが、俺は足を止めずにそのまま歩を進めた。

「——遅いな、何を無駄話をしていたんだ」
もう既にここが目的地だったのか、ソーマは遠目でぼんやりと確認できる程度の小さな町の正門の前で立っていた。
「お前が立ち止まらないんだろ……少しは待ってくれたっていいじゃないか」
少し肩で息をしながら抗議するが、ソーマは殆ど疲れている様子も見せずに俺を一瞥すると、さっさと街の中に入っていった。
「あ、おい、待てよ!」
普段ならば、振り向きはしないが少しでも足を止めてくれるものを、今回だけは俺達に目もくれなかった。
そしてそのまま、街の中に消えていく。
「待てヘメティ、この町はかなり小さい。焦らなくても簡単に見付けられる」
追いかけようとした俺の腕をシェイド大佐が掴み、ソーマが歩き去っていった方向を見る。
「……さて、まずは宿を探すぞ。それからだ。——何なら、お前だけソーマを探しに行っても構わないが。オレ達で決める」
「いや、それは——」
さすがにそれは無理だろう。ただ何か様子がおかしいソーマが少し気になるから、という理由だけでシェイド大佐達に全て任せる訳にはいかない。
「気になるんでしょ? ま、私は何か薄々解るんだけどねー」
さも『自分は解ってるけど言わないよ』と言った様子で、イーナは不敵な笑みを浮かべると語尾を伸ばして口にした。
「オレ等は気にしなくていいから行ってこい。どうせ宿決めたらすぐに自由時間だ」
「俺もどうでもいいぜ? 別に寝るだけだし。ファンデヴも同じらしいぜ?」
「……解った。ラスターさんも有り難うございます。なるべく早く戻ってくるので!」
俺は一度頭を下げて言うと、ラスターさん達に背を向けて走り出した。

町は住人が少ないのか、かなり静かだった。あの館の方が賑やかだった、と感じるくらいに。
白い石でできた家が建ち並び、細い樹が色々な所に生えている。空想やファンタジーの世界に良くありそうな、綺麗な町並みだった。
俺は町中を走りながらソーマの姿を探すが、どこにも見当たらない。
ラスターさん達と別れてからずっと走っていたせいか、さすがに息が荒くなってきた。
一度立ち止まると、息を整えながら額に浮いた汗を拭う。
何処にいるんだ、と思い不意に顔を上げる。それと同時に気付いたが、どうやらここは町の端、それに俺の目の前にあるのは小さな教会だった。
藍色の屋根に、銀色の十字架が掲げられている。
俺は部外者である自分がここに足を踏み入れることに一瞬躊躇したが、意を決して入り込んだ。
建物の丁度横には十字架の形を模している墓が幾つも建てられている。
そこに、見慣れた後ろ姿を見付けた。
機械のように整った姿勢に、風に微かに揺れているコートの裾。今まで探していた物と何ら変わりはない。
ソーマが、一つの墓に背を向けて立っていた。
「——ソーマ?」
声を掛けながら近づくが、何も反応を示そうとはしない。
「……もうここまで復興したのか。まあ11年もあれば当然の事か」
そう言って、ソーマは口許に緩く弧を描いた。数度しか見たことがない、彼の笑みだった。
「ソーマ、お前何で——」
「見れば解る」
何でこの町に来ようとしたんだ、と続ける前に、ソーマは自分の背後にある墓を指さした。
訝りながらも、その白い墓石に掘られている名前を見る。
「——え……!?」
一瞬、自分の目がおかしいのかと思ってしまった。それか、自分の読み間違いか。
そこに刻まれていた名前は、綴りも何もかもが同じ、紛れもなくソーマの名前だった。
「……この町で、どうやら俺はもう死人らしいな」
今度は先程までの笑みとは違う、自嘲めいた笑みを浮かべてソーマは言った。
どういう事なのか、状況が殆ど理解できない。
何故ソーマがこの町に来ようと思ったのか、何故ソーマの名前が墓石に刻まれているのか——
そこで、俺はようやく一つの答えに辿り着く。
「……まさか……」
「ああ、そのまさか、だ」
ソーマを見れば、未だに口許には笑みが浮かんでいた。
そして墓に向き直り、真っ直ぐに前を見据えた。
「ここはベガジール。——俺の、故郷だ」
この町が、ソーマの生まれ育った故郷。その言葉は、静かに胸に染みていくようだった。
ただ、一つ解らない事がある。
何故、ソーマは生きているのに、ここに墓石があるのか。
「……知りたいか」
「え——」
何時しかソーマの口許からは笑みが消えており、代わりにまるで刃のように鋭い目が俺を射抜いていた。
その濁ったような青い瞳からは、上手く意志が読み取れない。
「何故俺の墓がここにあるのか、何故俺がこの町から居なくなったか。……何故俺が、能力者として機関に所属しているのか」
今まで、ずっと気にかかっていた事だった。
訊いても教えてはくれないだろうなんて考えて、口には出していない物の、知りたかった事。
俺はソーマから視線を外さずに、しっかりと頷いた。




次から視点切り替えいっきまーす(棒読み

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