I permanently serve you. NeroAngelo
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BGM:ドイジェドイジェとパラジクロロベンゼン
RELAYS - リレイズ - 59 【謝罪】
僅かに震えた声が辺りに反響する。
いつもの彼からは想像できないほどに弱々しい声で、ラスターはシェイドに全てを告げた。その表情は、悲しんでいるようにも苦しんでいるようにも、怯えているようにも見えた。
シェイドは聞き終わった後、驚愕に瞠目するでも、涙を流すわけでもなく彼の目を見据えていた。
「……それで、全てか」
無理に感情を表に出さないようにしているのがすぐに解る程の単調な声で訊いてきたシェイドに、ラスターは小さく頷いた。
彼の肯定の後、シェイドは暫く何も言わずに黙っていたが、不意にラスターが話し出した時からずっと掴んだままの手を離すとその手で彼の頬を叩いた。
勿論少しでも手加減はしているのだろうが、それでもまさか平手打ちが来るとは予想もしていなかったラスターは驚愕と恐れが入り交じった目でシェイドを見返す。
やはり怒らせてしまったのか、という後悔も混じっているように思える目を見据え、シェイドは彼の頬を叩いた手を下げた。
「——ラスター、オレが怒っているのか解るか」
静かだが確かな怒りを秘めた声で言われ、ラスターが言いづらそうに口を噤む。その様は、親に叱られた子供のように思える程弱々しかった。
俯いたままで答えないラスターに、シェイドは諦めたように溜め息を吐いた。
「……別に、オレはお前がそんな身体になった事に対して怒っている訳ではない」
顔を上げた彼を見たシェイドの目には、先程までの冷たい光など何処にもない。代わりに宿っているのは、ただ純粋な悲しみだった。
「……何故その事を、オレに言ってくれなかったんだ」
彼がシェイドに言った事が、とてつもなく言いづらい事だということは容易に解る。それでも、何故言ってくれなかったのだという疑問がシェイドの頭の中に浮かんでいた。
だからといって、ラスターにこれを問うても答えが返ってこないことも理解していた。理解して尚問いかけてしまったのは、心の何処かで『もしかしたら話してくれるのでは』という希望を抱いていたからかも知れない。
だが、予想外というべきか予想通りと言うべきか、はたまた案の定か、ラスターは何も言わずに黙っているだけだった。
シェイドは困ったように溜め息を吐くと、右手に白い革手袋を嵌め直す。
「……もういい、話してくれただけでも良かった、悪かったな」
「っ、違う……! 謝るべきなのはアンタじゃねぇ、オレだろ!? 何で責めないんだよ!」
「責める理由がない。それだけだ。……解ったか?」
ラスターはまだ何か言いたげだったが、服の裾を強く握り締めると口を閉ざした。
「——ラスター、一つ言っておく。……いや、約束しろ」
改まって言われ、ラスターは若干まだぎこちないながらも、ほぼ普段通りに首を傾げる。そんな彼の様子を見て、シェイドは安心したように目を細めると言った。
「お前がオレの弟であることに変わりはない。……ただ、今回の件で今まで通りに過ごせなくなるというのは不快だ」
遠回しではあれど、ラスターは兄の言葉の裏に秘められた優しさを感じ取っていた。
シェイドは、ラスター自身が告げた事柄を気にするなと、全てを許しているのだ。
「……ああ、解ったよ」
肯定すると、ラスターは口許を緩めた。それは乾いた笑いだったが、シェイドはそれを見届けると歩き出した。
「——さて、行くとしようか」
アレス達から逃げてきた方向とは逆から迂回して町を目指したおかげか、途中で彼等に会うこともなく無事にベガジールへと辿り着いた。
途中に背丈の高い草が生い茂っていたりとかなり通り抜けるのは大変だったが、誰か一人がはぐれたりといったこともなかった。
後ろを振り返ってみるが、まだシェイド大佐とラスターさんは来ていないらしい。余程長く重要な話だったのだろうか。ただ、あの二人ならば道に迷ったりといった事はないだろうから安心できる。
兎に角、町の入り口で待っていた方がいいのだろうか。それとももう俺達だけで宿屋に行って謝罪すればいいのか。謝るとはいっても、どんな風に謝ればしっかりと誠意が伝わるのか解りづらい。
ここでシェイド大佐が居れば、その言葉を教えてくれただろうに。生憎、この場にいるのは眠たそうにしているオッサンと真面目そうではあるが無口に近い女性、それに未成年が俺を含めて三人だ。
ならば二人を待った方が良いとも思うが、ここで待っている内に大事にまで発展しかねない、という考えもある。
「——で、どうするんだ? あの二人を待つのか? ここで」
今にも舟を漕ぎそうなサイラスの怠そうな声に、俺は答えることができなかった。
「……別に後から来るって言ってたんだし、待って無くてもいいんじゃない? 時間ももったいないし」
確かに時間ももったいない。このまま朝になればどうなるか解った物じゃない。尤も、あれだけ派手な音がしたのだから住人達は全員気付いているとは思うが。
「もう先に行こうぜ、さっさと終わらせて俺は寝てぇんだ」
「……そういう理由?」
サイラスの頭を軽く叩き、ファンデヴは呆れたように言った。
寝たいからというのは解る。睡眠は人間の三大欲求だ何だと言われていた気がする。……いや、サイラスにもそれは起用されるのか? 彼はあの廃館の地下で『自分が人間じゃない』と口にしていた筈だ。
いや、彼の場合猫耳というだけで他は人間と変わらない。ならば他は人間と同じなのか? ……まずい、混乱してきた。
ふと顔を上げれば、ソーマもサイラスも皆町の中に入っていくところだった。結局待たずに入るらしい。
「お、おい! 置いていくな!」
一瞬自分だけでもここにいるべきかと悩んだが、結局俺は遠ざかっていく皆の背を見て焦って走り出した。
「——本当に、申し訳ありませんでした!」
宿の瓦礫の中で呆然と立ち尽くしていた店主に向けて、俺は精一杯の謝罪と共に頭を下げた。
こんな言葉だけじゃ足りないのは見て解る。だが、俺にはこれしか言葉が浮かばなかった。こんな時、シェイド大佐やダグラスさんだったらどうしたのだろう。
「修理費はこちらが負担するので……すみません」
勢いでそんな事を口走ってしまった。機関からどうにか出せない物だろうか。いや、出せなくても必死で頼み込んでみよう。……うん、それしかない。
おかげで背中に殺気にも似た視線が突き刺さってくる。それが怖くて怖くて仕方がない。恐らくこの視線は主にソーマの物だろうか。
「いえ、大丈夫ですよ。ご心配なさらずに。あなた方に罪はないのは解っていますから」
まだ少し驚愕や狼狽が入り交じった混乱が抜けていないらしい店主は、それでもにこやかに笑みを浮かべて言ってくれた。どこまで優しいのだろう。何か裏があるんじゃないかと思ってしまう。
「……あのまま弁償等という流れになっていたらどうするつもりだ、少しは考えろ」
「わ、悪かった……でもああ言う以外にないだろ」
一オクターブほど低くなった声でソーマに言われるが、ならどう言えばよかったのか教えて欲しい。俺にとっては混乱要素が揃いに揃っているこの状況でどう言えばよかったのか。もしかして、これは皮肉や嫌味になってしまうだろうか。
礼を言いもう一度頭を下げようとしたとき、背後から二人分の足音が聞こえてきた。一つは乱れることのない規則的な足音、もう一つは乱れてはいないもののどこか力強いような足音だった。
聞いたことのあるその音に振り返れば、暗がりの中からシェイド大佐とラスターさんがこちらに向かって歩いてきていた。
「——すまない、遅くなった。終わったか?」
何も変わらない様子で訊いてきたシェイド大佐に、曖昧ではあれど返事を返す。厳密にはまだ終わっていないのかもしれない。
それにしても、二人とも何も変わっていない。俺が気付いていないだけなのだろうか。いったい何の話だったのかは気になるが、それを訊く権利はない上失礼だ。
「……店主、迷惑をかけたな」
「これくらいは平気ですよ。泊まりに来てくれる人間も少ないですし、時間は有り余るほどあります。修理に時間はかかりませんよ。……それに、狙われているのならすぐに出発した方がいいでしょう、じきに夜も明けますから」
もうここまで来ると涙が出そうだ。ここまでいい人が現実にいるなんて考えたこともなかった。
それは兎も角、店主の言うとおりだ。すぐにここを離れた方が良い。
「……解った。それでは、すまないがオレ達はここで失礼させて貰う。……有り難う」
俺達に向き直り、彼は短く「行くぞ」とだけ言うと足早に歩き出した。もうこれ以上、店主に迷惑を掛けたくないという気持ちの表れかも知れない。シェイド大佐が、関係のない他人を巻き込むのを嫌う人間だというのは知っている。
誰もそれに対して何も言わないまま、彼の後を追って歩き出す。
俺は一度店主を振り返ると軽く頭を下げ、それから皆の後を小走りで追った。
ヘメティ達が闇に紛れ見えなくなるまで、店主は人の良い微笑みを浮かべていた。
だが、彼等の姿が見えなくなった瞬間、店主の顔から笑みが消え失せる。それこそ仏頂面や三白眼といった表情になり、彼は舌打ちすると黒いズボンのポケットから黒い携帯電話を取り出した。
迷うことなく一つの番号を押し、店主は先程とは打って変わってドスの利いた低い声を出す。
「……俺だ。こっちはお前みてーな奴と連絡なんざ取りたくねーんだがな。……アイツ等は戻るらしいぜ?」
相手に吐き捨て、ヘメティ達の歩いていった方向を見遣ったままで呟く程度の声で言った。その言葉遣いと声は、およそ好青年とは思えない。
「まあいい、俺はどうせここに居るだけだ。……必要とされてるお前と違ってな。せいぜい『あの方』の護衛でもやってやがれ、必要とされてる分、な」
そこまで一息に言い切ると、店主は相手の答えも聞かずにさっさと通話終了のボタンを押した。相手と話したくないというのがありありと見えている。
「……修理費はマーヴィンから貰ってくりゃいいか。『身内』だからって派手にブッ壊しやがって」
パキパキとガラスの破片を踏む音を聞きながら、店主という仮面を取り去った男は宿屋だった建物へと足を進めた。
頑張ったけど上手く書けてはいないかね。
RELAYS - リレイズ - 59 【謝罪】
僅かに震えた声が辺りに反響する。
いつもの彼からは想像できないほどに弱々しい声で、ラスターはシェイドに全てを告げた。その表情は、悲しんでいるようにも苦しんでいるようにも、怯えているようにも見えた。
シェイドは聞き終わった後、驚愕に瞠目するでも、涙を流すわけでもなく彼の目を見据えていた。
「……それで、全てか」
無理に感情を表に出さないようにしているのがすぐに解る程の単調な声で訊いてきたシェイドに、ラスターは小さく頷いた。
彼の肯定の後、シェイドは暫く何も言わずに黙っていたが、不意にラスターが話し出した時からずっと掴んだままの手を離すとその手で彼の頬を叩いた。
勿論少しでも手加減はしているのだろうが、それでもまさか平手打ちが来るとは予想もしていなかったラスターは驚愕と恐れが入り交じった目でシェイドを見返す。
やはり怒らせてしまったのか、という後悔も混じっているように思える目を見据え、シェイドは彼の頬を叩いた手を下げた。
「——ラスター、オレが怒っているのか解るか」
静かだが確かな怒りを秘めた声で言われ、ラスターが言いづらそうに口を噤む。その様は、親に叱られた子供のように思える程弱々しかった。
俯いたままで答えないラスターに、シェイドは諦めたように溜め息を吐いた。
「……別に、オレはお前がそんな身体になった事に対して怒っている訳ではない」
顔を上げた彼を見たシェイドの目には、先程までの冷たい光など何処にもない。代わりに宿っているのは、ただ純粋な悲しみだった。
「……何故その事を、オレに言ってくれなかったんだ」
彼がシェイドに言った事が、とてつもなく言いづらい事だということは容易に解る。それでも、何故言ってくれなかったのだという疑問がシェイドの頭の中に浮かんでいた。
だからといって、ラスターにこれを問うても答えが返ってこないことも理解していた。理解して尚問いかけてしまったのは、心の何処かで『もしかしたら話してくれるのでは』という希望を抱いていたからかも知れない。
だが、予想外というべきか予想通りと言うべきか、はたまた案の定か、ラスターは何も言わずに黙っているだけだった。
シェイドは困ったように溜め息を吐くと、右手に白い革手袋を嵌め直す。
「……もういい、話してくれただけでも良かった、悪かったな」
「っ、違う……! 謝るべきなのはアンタじゃねぇ、オレだろ!? 何で責めないんだよ!」
「責める理由がない。それだけだ。……解ったか?」
ラスターはまだ何か言いたげだったが、服の裾を強く握り締めると口を閉ざした。
「——ラスター、一つ言っておく。……いや、約束しろ」
改まって言われ、ラスターは若干まだぎこちないながらも、ほぼ普段通りに首を傾げる。そんな彼の様子を見て、シェイドは安心したように目を細めると言った。
「お前がオレの弟であることに変わりはない。……ただ、今回の件で今まで通りに過ごせなくなるというのは不快だ」
遠回しではあれど、ラスターは兄の言葉の裏に秘められた優しさを感じ取っていた。
シェイドは、ラスター自身が告げた事柄を気にするなと、全てを許しているのだ。
「……ああ、解ったよ」
肯定すると、ラスターは口許を緩めた。それは乾いた笑いだったが、シェイドはそれを見届けると歩き出した。
「——さて、行くとしようか」
アレス達から逃げてきた方向とは逆から迂回して町を目指したおかげか、途中で彼等に会うこともなく無事にベガジールへと辿り着いた。
途中に背丈の高い草が生い茂っていたりとかなり通り抜けるのは大変だったが、誰か一人がはぐれたりといったこともなかった。
後ろを振り返ってみるが、まだシェイド大佐とラスターさんは来ていないらしい。余程長く重要な話だったのだろうか。ただ、あの二人ならば道に迷ったりといった事はないだろうから安心できる。
兎に角、町の入り口で待っていた方がいいのだろうか。それとももう俺達だけで宿屋に行って謝罪すればいいのか。謝るとはいっても、どんな風に謝ればしっかりと誠意が伝わるのか解りづらい。
ここでシェイド大佐が居れば、その言葉を教えてくれただろうに。生憎、この場にいるのは眠たそうにしているオッサンと真面目そうではあるが無口に近い女性、それに未成年が俺を含めて三人だ。
ならば二人を待った方が良いとも思うが、ここで待っている内に大事にまで発展しかねない、という考えもある。
「——で、どうするんだ? あの二人を待つのか? ここで」
今にも舟を漕ぎそうなサイラスの怠そうな声に、俺は答えることができなかった。
「……別に後から来るって言ってたんだし、待って無くてもいいんじゃない? 時間ももったいないし」
確かに時間ももったいない。このまま朝になればどうなるか解った物じゃない。尤も、あれだけ派手な音がしたのだから住人達は全員気付いているとは思うが。
「もう先に行こうぜ、さっさと終わらせて俺は寝てぇんだ」
「……そういう理由?」
サイラスの頭を軽く叩き、ファンデヴは呆れたように言った。
寝たいからというのは解る。睡眠は人間の三大欲求だ何だと言われていた気がする。……いや、サイラスにもそれは起用されるのか? 彼はあの廃館の地下で『自分が人間じゃない』と口にしていた筈だ。
いや、彼の場合猫耳というだけで他は人間と変わらない。ならば他は人間と同じなのか? ……まずい、混乱してきた。
ふと顔を上げれば、ソーマもサイラスも皆町の中に入っていくところだった。結局待たずに入るらしい。
「お、おい! 置いていくな!」
一瞬自分だけでもここにいるべきかと悩んだが、結局俺は遠ざかっていく皆の背を見て焦って走り出した。
「——本当に、申し訳ありませんでした!」
宿の瓦礫の中で呆然と立ち尽くしていた店主に向けて、俺は精一杯の謝罪と共に頭を下げた。
こんな言葉だけじゃ足りないのは見て解る。だが、俺にはこれしか言葉が浮かばなかった。こんな時、シェイド大佐やダグラスさんだったらどうしたのだろう。
「修理費はこちらが負担するので……すみません」
勢いでそんな事を口走ってしまった。機関からどうにか出せない物だろうか。いや、出せなくても必死で頼み込んでみよう。……うん、それしかない。
おかげで背中に殺気にも似た視線が突き刺さってくる。それが怖くて怖くて仕方がない。恐らくこの視線は主にソーマの物だろうか。
「いえ、大丈夫ですよ。ご心配なさらずに。あなた方に罪はないのは解っていますから」
まだ少し驚愕や狼狽が入り交じった混乱が抜けていないらしい店主は、それでもにこやかに笑みを浮かべて言ってくれた。どこまで優しいのだろう。何か裏があるんじゃないかと思ってしまう。
「……あのまま弁償等という流れになっていたらどうするつもりだ、少しは考えろ」
「わ、悪かった……でもああ言う以外にないだろ」
一オクターブほど低くなった声でソーマに言われるが、ならどう言えばよかったのか教えて欲しい。俺にとっては混乱要素が揃いに揃っているこの状況でどう言えばよかったのか。もしかして、これは皮肉や嫌味になってしまうだろうか。
礼を言いもう一度頭を下げようとしたとき、背後から二人分の足音が聞こえてきた。一つは乱れることのない規則的な足音、もう一つは乱れてはいないもののどこか力強いような足音だった。
聞いたことのあるその音に振り返れば、暗がりの中からシェイド大佐とラスターさんがこちらに向かって歩いてきていた。
「——すまない、遅くなった。終わったか?」
何も変わらない様子で訊いてきたシェイド大佐に、曖昧ではあれど返事を返す。厳密にはまだ終わっていないのかもしれない。
それにしても、二人とも何も変わっていない。俺が気付いていないだけなのだろうか。いったい何の話だったのかは気になるが、それを訊く権利はない上失礼だ。
「……店主、迷惑をかけたな」
「これくらいは平気ですよ。泊まりに来てくれる人間も少ないですし、時間は有り余るほどあります。修理に時間はかかりませんよ。……それに、狙われているのならすぐに出発した方がいいでしょう、じきに夜も明けますから」
もうここまで来ると涙が出そうだ。ここまでいい人が現実にいるなんて考えたこともなかった。
それは兎も角、店主の言うとおりだ。すぐにここを離れた方が良い。
「……解った。それでは、すまないがオレ達はここで失礼させて貰う。……有り難う」
俺達に向き直り、彼は短く「行くぞ」とだけ言うと足早に歩き出した。もうこれ以上、店主に迷惑を掛けたくないという気持ちの表れかも知れない。シェイド大佐が、関係のない他人を巻き込むのを嫌う人間だというのは知っている。
誰もそれに対して何も言わないまま、彼の後を追って歩き出す。
俺は一度店主を振り返ると軽く頭を下げ、それから皆の後を小走りで追った。
ヘメティ達が闇に紛れ見えなくなるまで、店主は人の良い微笑みを浮かべていた。
だが、彼等の姿が見えなくなった瞬間、店主の顔から笑みが消え失せる。それこそ仏頂面や三白眼といった表情になり、彼は舌打ちすると黒いズボンのポケットから黒い携帯電話を取り出した。
迷うことなく一つの番号を押し、店主は先程とは打って変わってドスの利いた低い声を出す。
「……俺だ。こっちはお前みてーな奴と連絡なんざ取りたくねーんだがな。……アイツ等は戻るらしいぜ?」
相手に吐き捨て、ヘメティ達の歩いていった方向を見遣ったままで呟く程度の声で言った。その言葉遣いと声は、およそ好青年とは思えない。
「まあいい、俺はどうせここに居るだけだ。……必要とされてるお前と違ってな。せいぜい『あの方』の護衛でもやってやがれ、必要とされてる分、な」
そこまで一息に言い切ると、店主は相手の答えも聞かずにさっさと通話終了のボタンを押した。相手と話したくないというのがありありと見えている。
「……修理費はマーヴィンから貰ってくりゃいいか。『身内』だからって派手にブッ壊しやがって」
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職業:
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