魔界に堕ちよう 54話ー 忍者ブログ
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戦闘シーンは苦手だけど、回想シーンを書くのは大好きです!!
アーシラトとか凄く楽しかったよ^p^




RELAYS - リレイズ - 54 【愚か】

「——遅い」
アレスは自分の首を狙って振りかざされたナトゥスの刃を臆すことなく右手で掴む。彼が手に嵌めている白い革製の手袋が破れ、その下にある人間と殆ど変わりない肌が露わになった。
言葉が悪いかも知れないが、その精巧さもあり、未だにアレスが機械人形と信じられない自分が頭や心の何処かに居た。理解した筈だったのに。
普通の人間ならば、ナトゥスの刃を革手袋一枚だけの手で掴めば良くて切り傷、悪くて切断まで行ってしまうかもしれない。
アレスの攻撃や防御は、機械人形という自分の身体を生かした物だった。
一方、攻撃を防がれたソーマは微かに眉を顰めると瞬時にその場を離れ、ある程度の間合いを取る。
「……何だ、六人でかかってきてこの程度か?」
革手袋を脱ぎ捨て、アレスは嘲笑混じりに挑発してくる。だが、そんな挑発に乗る人間は居ない。少なくとも、俺はそう信じている。
「……やはり頑丈だな。……だが、それでも壊れない訳ではないだろう」
シェイド大佐は低く呟き、右手に持っているボレアーリスの引き金を引く。それと同時に、左手に持った違う拳銃の引き金も。
「確かにそうだ、私も壊れない訳ではない。それでも、貴様等を殺すのには十分だ」
銃撃と剣劇によって所々破れている執事服の裾を若干気にしながら身体に触れ、アレスは肩を竦めた。
「……まあ、オレは貴様が壊れるまで壊すだけだ。ただの残骸に変えてやる」
シェイド大佐は、アレスに発砲した時に比べればかなり落ち着いている。だが、その殺意は微塵も薄れてはいない。
「……軍級は大佐だったか、軍人。私の目には貴様が一番愚かに見える」
唐突に、アレスはシェイド大佐に視線を向けて言い放った。恐らく、彼の荒れた心に一番突き刺さるであろう一言を。
「復讐心に囚われて私を壊す。それで貴様は満足するのか?」
「黙れ」
有無を言わせぬ口調で、銃口をアレスの心臓の位置に的確に向けたままで短く告げる。周りに居る俺達でさえ、口を開くことを許さないとでも言っているようだった。
「私に人間の心は解らないが、憎悪というものは消える物なのか?」
「黙れと言っている」
「……復讐に身を任せている貴様は、私には——」
「黙れ!!」
更に言葉を続けようとしたアレスに、シェイド大佐は容赦なく銃弾の雨を浴びせる。その姿は、隣で見ている俺でさえ背筋が寒くなるようなものだった。
「……さっきから待てって言ってるんだ、兄サン」
いつの間にかシェイド大佐の背後に立っていたラスターさんが静かに言い、ゆっくりと彼の手を掴む。
「先程から言っている、離せ」
「……こういう状況で言っちゃ悪いけどな、オレはコイツの言ってることも解る」
警戒心は薄れていない。その上、ラスターさんが持っている長剣はいつでもアレスに攻撃できるように構えられている。そんな状況下で、彼はアレスを視線で指し示した。
「復讐なんてしたって無駄だろ。……アンタに取っては自分の命を懸けてでもやりてぇ事だとしても。アンタはそれで満足なのか?」
シェイド大佐の表情が強張り、戦い始めてからずっと煙が立ち上っている銃口が微かに揺れた。
彼はラスターさんの手首を掴むと自分の腕から引き剥がす——筈だった。
途中でその手が止まり、シェイド大佐が訝るように眉を顰める。それに対して、ラスターさんも首を傾げた。
「……どうしたんだよ」
「……ラスター、お前……いや、何でもない。今言っている暇は無い」
そこでその会話を打ち切り、シェイド大佐はもう一度アレスに向き直った。
「……何故攻撃してこない? オレ達を殺すのなら、今が絶好の機会だったと思うが?」
確かにそうだ。今ラスターさんとシェイド大佐が話していたのは隙だらけだった筈だ。それなのに何故、彼は狙ってこなかった?
「少し興味があっただけだ、人間の心に。……すぐに消えるようなものだがな」
一目見ただけでは人間と遜色ない姿のアレスがそんな事を言うのは、何となく奇妙だった。勿論、彼は人間ではないのだから仕方がない。
「さて、もう貴様等に興味はない。……続けるとしようか」
アレスはそう仕切り直し、最初と同じ構えを取る。シェイド大佐やラスターさんも同じく、剣の柄と銃を握り直した。
闇霧の柄を握り直し、俺は目の前にいるアレスを睨む。
その時、すぐ近くから銃声と悲痛な叫び声が聞こえてきた。
「イーナ……」
彼女は大丈夫だろうか。ザクストと一対一で戦っている筈だが、無事でいるのか。そして何よりも、精神的に傷ついてはいないだろうか。
「……嬢ちゃんなら大丈夫だ。信じてやれよ」
突然ラスターさんに小声で耳打ちされ、俺は軽く肩を振るわせたがすぐにしっかりと頷く。
彼はこの戦況でも気遣うような笑みを浮かべ、頷き返した。
「それに、あの赤髪だって……いや、これは別に良いな」
「——何を話している。かかってきたらどうだ?」
アレスの挑発する声が響き、全員の視線が彼に集中する。
「……挑発に乗るつもりはないが、確かにそうだな。……じゃあ、遠慮無く行かせて貰うぜ」
ヴォカーレを数度回転させ、サイラスは答えるとアレスに飛び掛かった。それが合図だったかのように、俺達も。

「……そんな、思うわけないでしょ!? そんな事考えてたの!?」
「考えてたさ。悪いか? ……馬鹿だと思いたきゃ勝手に思って良い」
ザクストの事を最低だなんて、イーナは思うわけもなかった。そんな感情は今まで持ったこともない。そしてこれからも、持つことはない。
「馬鹿だとも思わない……だから、もういい加減話してよ!」
先程から自分の鼓膜を震わせる彼女の悲痛に満ちた叫び声。ザクストは苦しそうにも見える表情を垣間見せた。
それもすぐに消え失せ、また虚無的な、無気力な無表情へと変わる。
「……何だよ……じゃあお前は、自分が生きる為に他人を犠牲にするような人間を見て最低だとも何とも思わないのか!」
彼が絞り出した声は掠れていたが、それでも辺りに良く響いた。まるで悲鳴のように。
ザクストは一度大きく息を吸い、深く溜め息を吐く。それは諦めとも呆れとも取れる曖昧な物だった。
「……俺が居なくなったのは2年前。その2年前に大きな事故があった、それは何だ?」
唐突に話始めたザクストに、イーナは戸惑いながらも耳を傾ける。今までの話からは全くもって繋がらない話だ。
「2年前……丁度アンタと私が住んでた中層部で列車の脱線事故があったけど、それがどうしたって……」
2年前に彼女が居候していたザクストの家があったウィジロの中層部、そこで大規模な列車脱線事故があった。それはイーナも良く覚えている。
それがどうしたのか、と聞き返そうとしたイーナの目が、驚愕に見開かれた。
「まさか……アンタが……!?」
「……そうさ、俺もその列車に乗ってたんだ。それで事故に巻き込まれた」
彼はそこで一呼吸置くと自らの右手を銃を持ったままで見、何も言えずに呆然としているイーナに更に続ける。
「この右腕はそのせいさ。巻き込まれたときに切断された。……本当に、あそこで俺は死ぬんだって思った」
口調は淡々としているが、ザクストの瞳は確かに揺れていた。2年という時を経ても、未だに残っている恐怖で。
「その時だよ、どっから来たのかも解らないマーヴィンが俺の所に来たのは。多分列車には乗ってなかったんだろうな、傷一つなかった。勿論その横にはアレスも居た」
列車の脱線事故現場、そこに現れたマーヴィンとアレス。何故こんな所に居るのか、その時のザクストに考える余裕はなかった。
「アイツは俺にこう聞いてきた。……『お兄さん生きたい?』」
話す内、ザクストの口許は自嘲の形に歪んでいった。そして彼は笑みと同じく、自嘲めいた乾いた笑い声を漏らした。
「俺はこう答えたよ。『生きてぇよ。生きたいに決まってる。こんな所で死にたくねぇに決まってるだろうが』ってな。……もう解るだろ?」
「……それで、マーヴィンに救われて、義手を貰った……!?」
途切れ途切れに言葉を発したイーナに、ザクストは何も言わずに一度だけ頷いた。
「もうここまで来れば予想は付くだろ? マーヴィンは病院で意識を取り戻した俺を脅してきたよ。部下になれ、ならないならここで殺す、って」
紛れもない、理不尽な脅迫だった。
「……俺は結局、自分が生きる道を選んだんだ。自分が生きたいから。……嗤えよ。最低だって罵れよ! 愚か者って嘲笑しろよ!!」
いつしか彼の手からは二丁拳銃が手放され、地面に落ちていた。両手で頭を抱えて吐き捨てたザクストの目からは、確かに涙がこぼれ落ちている。
「笑わない。……笑えるわけないでしょ!?」
「何でだよ! 何でお前はそこまで人間を許せる!? 自分が生きる為に幼馴染みの友人さえ殺すような人間を! お前は何で許せるんだよ!!」
イーナが何故ここまで自分を責めないのか、それがザクストには不思議で不思議で仕方がなかった。
ザクストは二丁拳銃を拾い、構えることなく、立ち尽くしたままで肩で息をしている。
それを見て、イーナも慎重にだが構えていた鎖鎌を下ろし、短く息を吐いた。




もうだめぽ\(^o^)/

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