魔界に堕ちよう 忍者ブログ
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氷属性魔法

術者の魔力を媒介に、周りの水分を急速に凍らせて対象に向けて射出、飛来、対象を凍らせることができる。高度な物になれば意のままに操る事も可能。
下級魔法の時点では氷塊を生み出す、対象を少し凍らせるといった程度。中級魔法の時点では更に大きな氷塊、そして数本の細めの氷柱を生成する事ができるようになる。上級魔法になると大きめの氷柱も何本も生成できるようになり、対象を数秒もしくは一瞬で凍らせる、氷塊や氷柱に指向性を持たせて使役する事も可能となる。
勿論中級、上級魔法を使用できるまでにはそれなりの訓練、実践も必要となる。上級になれば術者本人の素質や才能も関わってくる。
他の魔法に比べると発動までのタイムラグが少なく、詠唱呪文も短く使用しやすい。比較的混戦の中でも使いやすい魔法となっている。
Lump oficle, の詠唱で氷柱を生成、対象に向けて射出できる。氷柱の大きさは術者の意のままに変えられ、それこそ針程度の物から鉄骨程の物まで生成できる。だが巨大な氷柱を作る為にはその分強大な魔力が必要となる。
Lump oeleon, の詠唱で氷塊、氷球を生成、対象に向けて飛来させることができる。氷柱と同じく大きさは意のままに変えられる。ビー玉程度からテニスボール程度、両手で抱える程度辺りまで、等。氷柱に比べると殺傷力が低い為、足止め、牽制等に使用するのが好ましい。
Lump ofest, の詠唱で対象を凍らせる。表面を凍らせるか、中から凍らせるかは術者の判断に委ねられている。表面だけを凍らせて足を地面と凍り付かせて足止めする事も可能。凍らせる速さは中級魔法ならば数秒から十数秒、上級魔法となると一瞬で凍らせる事ができるようになる。


ひとまずこんな感じにまとめてあります。
これ以上細かくなんてできません^p^

ナトゥスの名前をディスペア(意味:絶望)に変えたいんですがどうするべきでしょうか。
そうなるとソーマの師匠の巨大鎌の名前も変えないと駄目だがな!←

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最近小説しか上げてないのでそれ以外の話を。ブログの話とか、俺の近状報告とか。

えっとですね、まずはブログで変わったところを。

ボカロのプレーヤーですが、作り直しました。
今更いろは唄やダブルラリアットを聞きましたよ。どちらも大好きです。デPの椿の花まであったのにはびっくりしましたよ。
名前は作業用BGM集です。俺は普段こんな曲を聞きながらリレイズ書いてるんですよーっていうことです。最近は肉声を聞いてない気がします。
ちなみに俺は密かにダブルラリアットをソーマで真面目に替え歌やったことがあります。ログはあるのでもしかすれば載せる…かもしれません。
最近はいろは唄や永久に続く五線譜ばっかり聞いてますが。昨日初めてマリオネット聞きました。「糸と蜜絡めて」が「仕事見つからねえ!!」に聞こえるとかどういうことだ^p^

そしてテンプレを変えました。前の奴は使いやすいっちゃあ使いやすかったんですが、どうも俺の目が死にますので(文字が二重に見える
だから変えたのにあんま意味がない気がする^p^ 忍者ユーザの人でもし見てる方がいらっしゃいましたら何かいいテンプレ教えて下さい←
でもまたあの真っ黒けテンプレに変えるかもしれません。あれ好きなんです^p^


俺の近状報告。

本家ブログで言いましたが、高校の前期は落ちました。昨日定時制の受験行ってきました。
以前言っていた「円周率千桁覚えて面接で言えば受かんじゃねwww」ですが、暗記できなかったので言えませんでした。
でも3,14159265358979までいったんだよ! それとローレライの音素振動数って円周率だよね!!
そしてモンハンにはまりました、今更。PSPの一番最初の奴やってますがもう駄目です、非竜の卵取れません。どうしようどうしよう、ガンナーです。
ソーマに似せてキャラ作らなきゃ良かったと失笑してます。名前はsekiyamiですがwww
ネタ過ぎて楽しいですwwwwwソーマが馬鹿やってますwwwwやーいヘタr…おや、誰だこんな時間に?
そして俺は学校行くために毎日オールナイトで頑張りました。家に帰ってきてから3時間くらい寝てまたオールです。その間パソコンとモンハンです^p^
ちなみに最近は昼型に戻ってきましたよ。まあ金縛りに遭うから怖くて仕方がないんだけd(ry


リレイズ近状報告。

何故か今のリレイズをほっぽってリメイク版、そして続編を考えてによによしてます。ごめんなさい。
そして死神とか魔法の定義とか考えて楽しんでます。面白いです。
それとソーマの姓がやっとこさ決定しました(`・ω・´)そしてアーシラトの過去やら異形狩りの事やら平行世界の事もまとまりました。
そろそろアレですね、核心が出てきます。具体的にはヘメティの以下省略。まあまだ序盤だけどね^p^


その他近状報告。

オリキャラが増えて増えて仕方がありません。何だこれ、155人って。
まあアレですね、アビスとかいう奴等が増えたせいですね解ります^p^p^p^
実はアピスにするかで迷ったんですよ。テイルズとごっちゃになるからwでも意味からしてこっちだろうということでアビスです。
フルネームでアビス=レ・テネーブル、レ・テネーブルはイタリア語で闇だそうです(darknessのイタリア語訳
今気付きましたが、深淵の闇って何か中二くさい名前ですね、これ。まあそれを言ったらダークの名前直訳も中二だけど(ダーク=レゾンデートル→闇の存在意義


それではでは。

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まさかここまで続くとは。




「——ハウンドか。丁度こちらも処理が終わった所だ」
アレスは片手で携帯電話を持ち、もう片方の手で頬に飛んだ液体を拭い取る。
不機嫌さを隠そうともしない電話の相手に心の中で盛大に溜め息を吐く。こちらだって連絡を取りたくて取っている訳ではない。仕方がないから取っているのだ。
「……相変わらず皮肉屋だな、貴様は」
苦笑混じりにそれだけを言うと、言い終わったそのタイミングで電話が切られた。届いたかどうかは解らないが、届いていても届いていなくとも別に構わない。所詮これはただの一言二言交わすだけの雑談だ。
「……私の修理費といい宿の修理費といい、またこれで出費がかさむな。……後は一人の人間をデータから消すだけ、か」
我が主にどう説明すればいい。自分の故障はそこまで重大な物ではないから良い。いざというときの為に代用のボディもある。
だが、宿の修理費が必要ですなんて事を言ったらどうなると思っているんだ。
そんな思いを込めて肩を竦め、アレスは携帯電話をパタンと音を立てて閉じながら、数メートルも離れていない所に倒れている男を見遣った。
「死因は……あれだけ葛藤していた貴様の事だ、自害が一番偽るとしては妥当だろうな? 丁度銃もある」
銃弾によって撃ち抜かれてしまったらしく焦げ付いた穴が空いているメモ帳を取り出すと、彼はどこか気品漂う動きで付属のボールペンを走らせた。
「『ザクスト=フェスレイン 死亡 死因は拳銃による自害』」

RELAYS - リレイズ - 60 【隠し事】

車にがたがたと揺られながら、俺はまだ夜の明けきっていない外を見た。
あの後すぐに電話を掛けて快く応対してくれたダグラスさんには本当に頭が下がる。……というか、普段ダグラスさんはいつまで起きているのだろうか。もしかすれば徹夜というわけではなくただの早起きかも知れないが、まさかこの時間に迎えを頼んで普段通りに了承して貰えるとは思っていなかった。
運転手も、眠そうな素振りは全く見せない。
そんな今の状況を一言で表すと、沈黙。誰も一言も喋らない。喋ろうとしているのかすら解らない。
サイラスは車に乗ってからすぐに後部座席の端で座ったまま寝てしまった。ファンデヴは彼を呆れたように見ているが起こすようなことはしない。イーナも、俺と同じく窓の外を見たまま。
ソーマが喋らないのはいつも通りだとして、シェイド大佐とラスターさんが一言も言葉を発さないのが一番不思議だった。シェイド大佐はまだしも、ラスターさんならば何か喋っても良さそうな物だ。
そう考えているのだが、彼は合流してからずっと無表情で黙ったままだった。それも無理して表情を押し殺していると表すのが的確だろう物で。
以前から思っているし言っている事だが、俺はこういう沈黙が苦手だ。重苦しい空気も苦手だ。
身体にのしかかってくるような、息が詰まるような感覚。苦手というよりは……嫌い、嫌いだ。
だからといって自分から何か話題を振ることもできない。結局、俺はこういうところでも臆病なのかもしれない。誰か何か話せと心の中で念じるだけだ。
「……おい」
泣きたくなる程の沈黙を破った低い声がソーマの物だと気付くのに数秒の時間を要した。彼から口を開くなんて本当に珍しい。いつもなら話している俺達を見て黙れとしか言わないのに。
ソーマに目をやれば、彼は何故かこちらを見ていた。その濁ったような深い青の眼に俺が映る。
「……貴様等は何も疑問に思わないのか?」
「どういう意味だよ? アレスの事なら信じるしかないだろうし、アノードなら——」
「違う」
途中で否定の言葉を投げられ、俺は口を止める。では、何だというのか。
「貴様だけを捕らえろという命令の事だ。それ以外に何がある。……とことん呑気だな」
嘲笑うような響きを持った声で言われ、俺はようやく何のことを言っているのか理解した。今までそれ以上に衝撃的なことが起こりすぎていた為に忘れてしまっていたが、そこも重要だ。
何故俺だけを捕らえようとしたのだろう。普通ならば俺もソーマ達と同じく殺そうとするだろうし、俺を逝かす理由が見当たらない。
「……確かにそれはオレも気になってはいた。……ソーマ、お前は何か思い当たる事でもあるのか?」
「ない。……予想ならばあるがな」
シェイド大佐の問いに対し間髪入れずに否定すると、彼は呟く程度の声で意味深な言葉を吐いた。
「……予想? 何だ?」
皆意味が汲み取れなかったのか、俺を含めたほぼ全員がソーマに聞き返した。サイラスだけは寝ているから自動的に除外となる。
「言う程の物ではない。貴様等全員、薄々気付いているだろうからな」
ソーマはそう言っているが、俺には何のことなのか全く見当も付かない。他の皆はどうだろうか。
全員が、何かを考え込むように俯いている。何か思い当たる事がある、という雰囲気だった。
「も、もしかして何も思いつかないのって俺だけ……なのか?」
「……貴様はただ目を背けているだけだ。考えろ」
恐る恐る問いかければ、いつになく刺々しい口調で返された。何かソーマの気に障るようなことでもしてしまったのかと不安になり、俺はたまらず彼から視線を外す。
目を背けている、というのはどういう事だろうか。ソーマもかなり抽象的な言い方をする。何か違う意味が隠されているのかも知れない。まるで謎解きだ。
シェイド大佐やラスターさん辺りに訊いてみたいとも思うが、今の二人は今までになかった……雰囲気、と表せばいいのだろうか、どこか『今は話しかけるな』といった風の空気を纏っている。
イーナは、今はそっとしておいた方がいいと俺は考えている。下手に話しかけるのも駄目だろうと考える俺が居る。
……となると、今普通に話せそうなのはファンデヴ一人だけか。彼女の話し方にも癖があるが、話せないという程でもないから大丈夫だ。
「……なあ、ファンデ」
「解らない」
「そんな即答するなよ、まだ何も言ってないだろ?」
名前さえ呼び終わらない内に否定され、俺は溜め息を漏らすと抗議してみる。何もそこまですぐに答えることはないじゃないか。
「何が言いたいのか解る。……ただ、余り気にしすぎても駄目、少し心のどこかに置いておくだけでいい、と思う」
ファンデヴは俺を見て微笑み、そう答えてくれた。要するに、明確な答えは分からないがこうしておけばいいんじゃないかという方法の提示だ。
「解った。有り難う」
彼女に礼を言い、座席に座り直す。
再度訪れた沈黙をどうすることもできず、俺は窓の外に視線をやる意外にすることがなかった。
あと1,2時間もこの重苦しい空気に押しつぶされないようにするのは至難の業だが、これは頑張るしかない。
流れていく景色を見ている内、俺は眠りに落ちていった。

突然大きな揺れを感じ、反射的に目を開く。それと同時に視界が揺らぎ、俺は車の窓ガラスに頭を打ち付けた。強打という程ではないが痛い。
何故急にこんな揺れを感じたのだろうかと車内を見渡せば、丁度機関前に着いたところだったらしい。
もう少し丁寧に駐車してくれると有り難いと思いながら、俺は車を降りる。車のなかではまだ明けきっていなかった夜も既に明け、朝日が降り注いでいた。
寝起きの所為か、まだ頭がぼんやりしている。霞む視界を確保する為に目を擦り、数度瞬きをすると目の前にある毎回恒例の長い階段を見た。
「……さすがに大した睡眠もなしに上るのは……きついな」
どうやらシェイド大佐達は一睡もしなかったらしい。……いや、もしかすれば眠ることができなかったのかも知れない。彼等は何か思い悩んでいるようだったし、それも当然といえば当然だ。
「し、仕方ないんですよ……行きましょう」
こればかりはどうしようもない。本部の立地条件からしても。まさかヘリで迎えに来て貰うわけにも行かない。
盛大に溜め息を吐き、シェイド大佐やラスターさんは階段を上っていく。ソーマはいつの間に上っていたのか、もう中間地点の辺りに居る。サイラスは未だに眠そうだが、それでもしっかりとした足取りをしている。
それを見ながら、階段の一段目に足をかけた。

結局、本部の正門前に着いたのは車を降りてから30分以上経ってからの事だった。本当にどうにかならないのだろうか。どうしようもないことは解っているが、そう思わずにはいられない。
息を切らしながら、黒い鉄製の正門を開ける。そこで、内部への入り口の前にダグラスさんらしき人影が立っていることに気付いた。
「——おかえり、皆。……何か息切れてるけどどうしたの?」
「あ、あの長い階段の所為ですよ……!」
普段通りのおどけた様子で訊いてきたダグラスさんに、俺は絞り出すようにして反論する。確かに今までは少し息を整えてから内部に入っていた。彼にしてみれば、そんな俺……俺達か? 俺達が息切れしながら帰ってくるのは不思議なのかも知れない。
「あー、成る程ね。やっぱり小型のヘリコプターでもあった方が良い?」
「是非そうしてくださいお願いします」
彼の言葉が終わるか終わらないか、という所で俺はまくし立てる。そうしてくれると本当に有り難い。
「まあそれは後で検討するとして……どうだった?」
ベガジールに行ってみてどうだった、というニュアンスを含んだ質問に、俺を含めた全員が沈黙する。アレスとザクストに襲撃を受けて、その後にラスターさんとシェイド大佐の生き別れである兄弟が出てきたなんて、どうやって説明すればいいのか解らない。
「……それが……なぁ……」
言いづらそうに言葉を濁したラスターさんを見て何かを察したのか、ダグラスさんは数秒程思案すると顔を上げた。
「……それじゃあ、司令室で話そう。何があったのかは知らないけど、そっちの方が話しやすいだろう」
「……有り難う、御座います」
「いや、僕も寒いし立ち話は面倒臭い」
礼を言った直後にこれか。俺達の緊張を解く為だろうとは思えるのだが、如何せん彼が言うと冗談に聞こえない。本当にそう考えていてもおかしくない。半分冗談で半分本気、半々といったところだろうか。
それは置いておいて、だ。ダグラスさんは、もう既に本部の両開きの扉を開けてしまっている。
ここで立ったまま呆然としていても何にもならない。俺は一度皆の方を振り向くと、後を追って歩き出した。




最近更新ペースが鈍いな。

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BGM:ドイジェドイジェとパラジクロロベンゼン




RELAYS - リレイズ - 59 【謝罪】

僅かに震えた声が辺りに反響する。
いつもの彼からは想像できないほどに弱々しい声で、ラスターはシェイドに全てを告げた。その表情は、悲しんでいるようにも苦しんでいるようにも、怯えているようにも見えた。
シェイドは聞き終わった後、驚愕に瞠目するでも、涙を流すわけでもなく彼の目を見据えていた。
「……それで、全てか」
無理に感情を表に出さないようにしているのがすぐに解る程の単調な声で訊いてきたシェイドに、ラスターは小さく頷いた。
彼の肯定の後、シェイドは暫く何も言わずに黙っていたが、不意にラスターが話し出した時からずっと掴んだままの手を離すとその手で彼の頬を叩いた。
勿論少しでも手加減はしているのだろうが、それでもまさか平手打ちが来るとは予想もしていなかったラスターは驚愕と恐れが入り交じった目でシェイドを見返す。
やはり怒らせてしまったのか、という後悔も混じっているように思える目を見据え、シェイドは彼の頬を叩いた手を下げた。
「——ラスター、オレが怒っているのか解るか」
静かだが確かな怒りを秘めた声で言われ、ラスターが言いづらそうに口を噤む。その様は、親に叱られた子供のように思える程弱々しかった。
俯いたままで答えないラスターに、シェイドは諦めたように溜め息を吐いた。
「……別に、オレはお前がそんな身体になった事に対して怒っている訳ではない」
顔を上げた彼を見たシェイドの目には、先程までの冷たい光など何処にもない。代わりに宿っているのは、ただ純粋な悲しみだった。
「……何故その事を、オレに言ってくれなかったんだ」
彼がシェイドに言った事が、とてつもなく言いづらい事だということは容易に解る。それでも、何故言ってくれなかったのだという疑問がシェイドの頭の中に浮かんでいた。
だからといって、ラスターにこれを問うても答えが返ってこないことも理解していた。理解して尚問いかけてしまったのは、心の何処かで『もしかしたら話してくれるのでは』という希望を抱いていたからかも知れない。
だが、予想外というべきか予想通りと言うべきか、はたまた案の定か、ラスターは何も言わずに黙っているだけだった。
シェイドは困ったように溜め息を吐くと、右手に白い革手袋を嵌め直す。
「……もういい、話してくれただけでも良かった、悪かったな」
「っ、違う……! 謝るべきなのはアンタじゃねぇ、オレだろ!? 何で責めないんだよ!」
「責める理由がない。それだけだ。……解ったか?」
ラスターはまだ何か言いたげだったが、服の裾を強く握り締めると口を閉ざした。
「——ラスター、一つ言っておく。……いや、約束しろ」
改まって言われ、ラスターは若干まだぎこちないながらも、ほぼ普段通りに首を傾げる。そんな彼の様子を見て、シェイドは安心したように目を細めると言った。
「お前がオレの弟であることに変わりはない。……ただ、今回の件で今まで通りに過ごせなくなるというのは不快だ」
遠回しではあれど、ラスターは兄の言葉の裏に秘められた優しさを感じ取っていた。
シェイドは、ラスター自身が告げた事柄を気にするなと、全てを許しているのだ。
「……ああ、解ったよ」
肯定すると、ラスターは口許を緩めた。それは乾いた笑いだったが、シェイドはそれを見届けると歩き出した。
「——さて、行くとしようか」

アレス達から逃げてきた方向とは逆から迂回して町を目指したおかげか、途中で彼等に会うこともなく無事にベガジールへと辿り着いた。
途中に背丈の高い草が生い茂っていたりとかなり通り抜けるのは大変だったが、誰か一人がはぐれたりといったこともなかった。
後ろを振り返ってみるが、まだシェイド大佐とラスターさんは来ていないらしい。余程長く重要な話だったのだろうか。ただ、あの二人ならば道に迷ったりといった事はないだろうから安心できる。
兎に角、町の入り口で待っていた方がいいのだろうか。それとももう俺達だけで宿屋に行って謝罪すればいいのか。謝るとはいっても、どんな風に謝ればしっかりと誠意が伝わるのか解りづらい。
ここでシェイド大佐が居れば、その言葉を教えてくれただろうに。生憎、この場にいるのは眠たそうにしているオッサンと真面目そうではあるが無口に近い女性、それに未成年が俺を含めて三人だ。
ならば二人を待った方が良いとも思うが、ここで待っている内に大事にまで発展しかねない、という考えもある。
「——で、どうするんだ? あの二人を待つのか? ここで」
今にも舟を漕ぎそうなサイラスの怠そうな声に、俺は答えることができなかった。
「……別に後から来るって言ってたんだし、待って無くてもいいんじゃない? 時間ももったいないし」
確かに時間ももったいない。このまま朝になればどうなるか解った物じゃない。尤も、あれだけ派手な音がしたのだから住人達は全員気付いているとは思うが。
「もう先に行こうぜ、さっさと終わらせて俺は寝てぇんだ」
「……そういう理由?」
サイラスの頭を軽く叩き、ファンデヴは呆れたように言った。
寝たいからというのは解る。睡眠は人間の三大欲求だ何だと言われていた気がする。……いや、サイラスにもそれは起用されるのか? 彼はあの廃館の地下で『自分が人間じゃない』と口にしていた筈だ。
いや、彼の場合猫耳というだけで他は人間と変わらない。ならば他は人間と同じなのか? ……まずい、混乱してきた。
ふと顔を上げれば、ソーマもサイラスも皆町の中に入っていくところだった。結局待たずに入るらしい。
「お、おい! 置いていくな!」
一瞬自分だけでもここにいるべきかと悩んだが、結局俺は遠ざかっていく皆の背を見て焦って走り出した。

「——本当に、申し訳ありませんでした!」
宿の瓦礫の中で呆然と立ち尽くしていた店主に向けて、俺は精一杯の謝罪と共に頭を下げた。
こんな言葉だけじゃ足りないのは見て解る。だが、俺にはこれしか言葉が浮かばなかった。こんな時、シェイド大佐やダグラスさんだったらどうしたのだろう。
「修理費はこちらが負担するので……すみません」
勢いでそんな事を口走ってしまった。機関からどうにか出せない物だろうか。いや、出せなくても必死で頼み込んでみよう。……うん、それしかない。
おかげで背中に殺気にも似た視線が突き刺さってくる。それが怖くて怖くて仕方がない。恐らくこの視線は主にソーマの物だろうか。
「いえ、大丈夫ですよ。ご心配なさらずに。あなた方に罪はないのは解っていますから」
まだ少し驚愕や狼狽が入り交じった混乱が抜けていないらしい店主は、それでもにこやかに笑みを浮かべて言ってくれた。どこまで優しいのだろう。何か裏があるんじゃないかと思ってしまう。
「……あのまま弁償等という流れになっていたらどうするつもりだ、少しは考えろ」
「わ、悪かった……でもああ言う以外にないだろ」
一オクターブほど低くなった声でソーマに言われるが、ならどう言えばよかったのか教えて欲しい。俺にとっては混乱要素が揃いに揃っているこの状況でどう言えばよかったのか。もしかして、これは皮肉や嫌味になってしまうだろうか。
礼を言いもう一度頭を下げようとしたとき、背後から二人分の足音が聞こえてきた。一つは乱れることのない規則的な足音、もう一つは乱れてはいないもののどこか力強いような足音だった。
聞いたことのあるその音に振り返れば、暗がりの中からシェイド大佐とラスターさんがこちらに向かって歩いてきていた。
「——すまない、遅くなった。終わったか?」
何も変わらない様子で訊いてきたシェイド大佐に、曖昧ではあれど返事を返す。厳密にはまだ終わっていないのかもしれない。
それにしても、二人とも何も変わっていない。俺が気付いていないだけなのだろうか。いったい何の話だったのかは気になるが、それを訊く権利はない上失礼だ。
「……店主、迷惑をかけたな」
「これくらいは平気ですよ。泊まりに来てくれる人間も少ないですし、時間は有り余るほどあります。修理に時間はかかりませんよ。……それに、狙われているのならすぐに出発した方がいいでしょう、じきに夜も明けますから」
もうここまで来ると涙が出そうだ。ここまでいい人が現実にいるなんて考えたこともなかった。
それは兎も角、店主の言うとおりだ。すぐにここを離れた方が良い。
「……解った。それでは、すまないがオレ達はここで失礼させて貰う。……有り難う」
俺達に向き直り、彼は短く「行くぞ」とだけ言うと足早に歩き出した。もうこれ以上、店主に迷惑を掛けたくないという気持ちの表れかも知れない。シェイド大佐が、関係のない他人を巻き込むのを嫌う人間だというのは知っている。
誰もそれに対して何も言わないまま、彼の後を追って歩き出す。
俺は一度店主を振り返ると軽く頭を下げ、それから皆の後を小走りで追った。

ヘメティ達が闇に紛れ見えなくなるまで、店主は人の良い微笑みを浮かべていた。
だが、彼等の姿が見えなくなった瞬間、店主の顔から笑みが消え失せる。それこそ仏頂面や三白眼といった表情になり、彼は舌打ちすると黒いズボンのポケットから黒い携帯電話を取り出した。
迷うことなく一つの番号を押し、店主は先程とは打って変わってドスの利いた低い声を出す。
「……俺だ。こっちはお前みてーな奴と連絡なんざ取りたくねーんだがな。……アイツ等は戻るらしいぜ?」
相手に吐き捨て、ヘメティ達の歩いていった方向を見遣ったままで呟く程度の声で言った。その言葉遣いと声は、およそ好青年とは思えない。
「まあいい、俺はどうせここに居るだけだ。……必要とされてるお前と違ってな。せいぜい『あの方』の護衛でもやってやがれ、必要とされてる分、な」
そこまで一息に言い切ると、店主は相手の答えも聞かずにさっさと通話終了のボタンを押した。相手と話したくないというのがありありと見えている。
「……修理費はマーヴィンから貰ってくりゃいいか。『身内』だからって派手にブッ壊しやがって」
パキパキとガラスの破片を踏む音を聞きながら、店主という仮面を取り去った男は宿屋だった建物へと足を進めた。




頑張ったけど上手く書けてはいないかね。

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今更だけど、リレイズの綴りがこれで合ってるのか不安だ。
しかも消えたよばーかばーか!!




RELAYS - リレイズ - 58 【中断】

アノードが闇に紛れて消えていったのを見届けてから、シェイド大佐は安堵にも似た溜め息を漏らしラスターさんへと向き直った。
「……立てるか、ラスター」
僅かに呻き声を上げ、ラスターさんは自分に差し伸べられた彼の手を取るとふらつきながら立ち上がった。
ラスターさんの白いシャツは所々切り裂かれており、少しだけだが赤く染まっている。腕にも切り傷があったが、そこまで深くなかったのかもう既に血は止まっていた。
最初は綺麗なパステルカラーの水色だった筈のエプロンは土や血、砂で汚れてしまっている。
彼はエプロンの汚れを悲しそうに、残念そうに見つめてがっくりと肩を落とした。
「悪ィ、兄サン。これ汚しちまった。洗濯しても落ちづらいだろうな、こりゃ……折角アンタが作ってくれたのに」
「別に良い、布さえあればいつでも作ってやる。そもそも、汚したくないなら戦う前に脱げばよかっただろう」
「……はい?」
二人の会話の意味が解らず、俺は思わず間の抜けた声を上げてしまった。
ラスターさんの言葉を簡潔にまとめれば、彼の着ているエプロンはシェイド大佐が作った物……ということだろうか? いや、まさかそんな筈はない。仮にも軍人、しかも大佐の彼が洋裁なんてしない筈だ。
「どうした?」
「い、いや、どういう事なのかなー、と……」
何度か言葉を詰まらせてしまったが、やっとの思いでそれだけを口にする。
俺が何を言おうとしているのか、何に驚いているのかがやっと理解できたらしく、シェイド大佐は納得したように声を上げた。
「要するに、オレがエプロンを作ったりといった事ができるのが意外だったということか?」
「そうですそうです、っていうかシェイド大佐何なんですか!? どういう事なのか教えて下さいよ!」
俺の掴み掛からんばかりの勢いに押されたのか、彼は少し驚いたように目を見開くと俺を手で制してきた。
さっきから何が何だか、色々なことが起こりすぎてはいないか。アレス達の奇襲にしろ、アノードにしろ、シェイド大佐にしろ。
「落ち着けヘメティ。これはただ単に、オレの特技が洋裁と裁縫というだけの話だ」
考えていたまさかという予想が見事に的中していた。してしまっていた。
彼が裁縫をしている姿なんて想像できない。どうしても想像できない。というか……似合わない。
「昔っから手先は器用だったもんな、兄サンは」
「お前も器用だろう。何丁もの拳銃を一度に整備するなんてオレには到底無理だ」
茶化すように言ったラスターさんは、できる限りでも汚れを落とそうとエプロンを手で払う。だが、少し土や砂が落ちた程度で、汚れは未だに残ったままだ。
どうやっても汚れが落ちないことを悟った彼の顔が曇る。
シェイド大佐の言ったことも気になったが、それも洋裁や裁縫の話によって思考の外へとはじき出されてしまった。
「……似合わないと思ったか?」
ふっと微笑を浮かべたシェイド大佐の表情は、以前にもこれと同じようなことを言われたことがある、と言っているように思えた。
「え、いや、その……」
「別に気にしなくていい、よく言われる」
何と答えたらいいものか、と思案している内に彼に言われ、俺はただ項垂れて「すみません」と小さく謝罪するのが精一杯だった。
「……人は見掛けによらないのね」
鎖鎌をしまい、気付かない内に俺の後ろに来ていたイーナが小声で呟く。
宿屋でシェイド大佐が言った『自分は小食だ』という言葉よりも、ソーマの甘党大食い説よりも、何よりもこれが意外だった。勿論、他の物も意外と言えば意外だったが、ここまで衝撃を受けた物はない。
「——兎に角、この話は後々ゆっくりするとしよう。もし良ければ、その時にでもお前達の服のほつれた部分でも直してやるぞ?」
会話を打ち切ったシェイド大佐は、最後若干得意げに付け足した。
もし彼が良いというのなら是非やって貰いたいが、生憎俺は丁度良くほつれている服なんて持っていない。シェイド大佐の裁縫の腕がどれくらいのものなのか気になるが、仕方がない。
「……それにしても、どうするんだよ? あのド派手にブッ壊された宿に戻って謝りに行くのか?」
「まずはそれが先になるんじゃないですか? さすがに謝りに行かないのも……」
謝ったところで許されるような事じゃないのは解っている。だからといって、謝らずにこのままというのも駄目だ。結局の所、許す許さないは別として、俺達には宿に戻って謝罪するという選択肢しか残されていない。
「しゃーねぇな、めんどくせぇが戻るか。……その後はどうなる?」
サイラスは欠伸をすると、目に浮かんだ涙を指の背で拭い言った。頭の上にある猫耳が、それに合わせて微かに揺れる。
その後は恐らく、もう一度機関に戻ることになる。元はと言えば、あの廃館を出たらそのまま戻る予定だったのだから。
ただ、ベガジールに来たのはソーマの要望だ。もしかすれば、彼は俺達に言わないだけで何か用事があるのかも知れない。そうなれば、事を決める権利はソーマにある。
「……ソーマはどうしたいんだ?」
離れたところにいる、唯一アノードに武器を向けていなかったソーマに向けて問いかけてみた。
「……別に、用はない。勝手にしろ。俺はただあの町が気になったから見に来ただけだ」
言い終わると、彼は手に持っていたナトゥスの発動を解除する為に短く詠唱する。青白く発光していた巨大鎌は青白い光の粒子となり、空気中に舞いながら消え失せた。
結論からすれば、この後急いで宿屋まで戻り謝罪、その後機関に戻るという形になる。
俺だけでなく他の皆も納得したらしく、もう既に動き始めている。確かに一緒に行動しては居たが、この切り替えの速さは少し驚きだった。
「——ああ、すまない。お前達は先に行っていろ。オレは少しラスターと話す事がある。すぐに追いつく。……来い、ラスター」
シェイド大佐は何のことでもないように言うと、ラスターさんのシャツの襟首を掴むと片手でずるずると引っ張っていく。
「あ!? ンだよ兄サン! やめろって!」
彼のそんな叫び声が聞こえたが、シェイド大佐は立ち止まることなく木が生い茂っている茂みへと歩いて行った。
俺達には聞かれたくない話なのだろうか、そうでなければあんな所で離れて話す意味がない。
「……ま、アイツ等の事はアイツ等に任せるとしようぜ。んじゃ、行くとするか」
「大丈夫だと思うし、ね。それに、早くしないと夜が明ける」
ファンデヴもサイラスに同調し、もう一度大きく欠伸をしている彼の背中を軽く叩くと歩き出した。
先程からやけにサイラスは眠たそうにしているが、一体どうしたというのか。訊いてみたいが、まさか猫だから等と言われてしまってはどう反応すればいいのか解らない。ここは訊かないでおこう。
「……にしても、ソーマの奴何だって言うんだろうな。不思議な奴だ。何かこの町に思い入れでもあんのかね」
独り言のようにサイラスは言うと、ベガジールに来たときのように既に遠くに居るソーマの後ろ姿を見る。全身を黒で固めているソーマは、未だに明けない夜の闇の中に溶け込んでいる。彼の銀髪だけが、辛うじてぼんやりと見えていた。
サイラスやファンデヴ達は、あの町がソーマの故郷だということを知らない。それを言おうとした瞬間、先にイーナが発言した。
「……あの町が、あいつの故郷か何かなんでしょ?」
「な……イーナ、何でそれを知ってるんだ?」
俺はイーナに話したつもりもないし、ソーマが彼女に話すとも思えない。そもそも、ソーマが自分のことを話すこと自体が稀だ。ならば、何故彼女は知っている?
「え? 女の勘で。……何てね。あんな行動取ってたら、誰でも解るわよ」
悪戯っぽく笑い、イーナは歩く速度を速める。
誰でも、とは言うものの、彼女の観察眼が他人よりも鋭いことは今までの事で知っている。あの廃館での戦いの時、アーシラトが回避の時に必ず右足から踏み出すという事を真っ先に見抜いたのもイーナだ。
サイラスとファンデヴが驚いているのを見ながら、俺も歩く速さを早め、ソーマの後を追った。

「——で、何だって言うんだよ、兄サン」
ラスターは、目の前のシェイドを見据えて不服そうに言った。改まって話すことは何もない。それなのに何故こんな所で話さなければならないのだろう。
シェイドは無表情に彼の目を見返した。それは無表情ではあれど、無理に感情を押し殺していると表すのが正しいような表情だった。
「……お前、何を隠している」
低い声で問われ、ラスターは微かにだが確かに眉根を寄せる。
「……何のことだよ」
「惚けるな。……何だ、オレから言わないと解らないか?」
「ああ、解らねぇな。オレが何を隠してるっていうんだ」
シェイドは静かに息を吐くと、右手の白い革手袋を外した。軍人にしては綺麗な傷一つ無い手が晒される。
そして外した手袋を軍服のポケットに無造作にしまうと、無遠慮にラスターの手首を強く掴んだ。
「痛ッ……何なんだよっ!」
「……やはり冷たいな、まるで氷だ」
冷たい光を宿した目を細め、シェイドは刻み込むように、確かめるように呟いた。
『冷たい』、その言葉をラスターが聞き取った瞬間、彼の肩が何かに怯えるように震える。
「それに、ある筈の物も感じない。先程のは間違いではなかったらしいな」
アレスと戦っている際に感じた違和感、ラスターの手首に触れた瞬間に感じた違和感。それが間違いではなかったことに、シェイドは少なからず『驚愕』していた。
「何、を……」
先程までの強気な様子など消え去り、ラスターは掠れて震えた声を喉の奥から絞り出した。
未だに白を切ろうとする彼に、シェイドは苛立ちを露わにすると手首を掴んでいる手に力を込める。
「……言え、何を隠しているのか。……そして、お前の身体の事も、全てだ」
有無を言わさぬ口調、それは兄として、家族である弟に向けるものではない。軍人としての、明らかな『命令』だった。
もう言い逃れはできない、そう悟ったラスターは、辛そうに目を瞑ると口を開いた。
「……言いたく、なかったんだよ……誰がこんな事言えるかよ……」
「何……?」
ラスターは今にも泣き出しそうな表情でシェイドを見ると、話し出した。




今回はさくさく進んだよ!

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取り敢えず筆が乗らないと書けないとかどういう事だと思ったよ!
回想入るかと思ったけど入らなかった^p^




RELAYS - リレイズ - 57 【約束】

「——オレが軍人になろうと考え始めたのは、丁度18歳辺りだったな。もうその頃には既に父親は居なかった。別に死んだというわけではないんだが、旅に出た」
「旅? ……何か理由があったんですか?」
旅に出るなんて、何かそれなりの理由があったんじゃないだろうか。だが、そんな俺の予想は悉く外れてしまう。
「いや、何もない。……『風が呼んでる!』だそうだ。全く、あの時は何を言っているんだと思ったな」
シェイド大佐は苦笑し、やれやれとでも言うように肩を竦めた。
まさか、そんな理由で旅に出る人間が居るとは思わなかった。勿論俺に旅をした経験も何もないのだから、これは俺の偏見でしかない……と思う。もしかすれば、本人は何かしっかりとした理由があって旅に出ているのかもしれないし、そうでないのかもしれない。
「……話を元に戻すが、それをラスターに言ったときに猛反対された。一発殴られもしたな」
「殴られ……っ!?」
「昔からアイツは喧嘩馬鹿だった。力だけなら、オレよりも上だな」
先程の苦笑とは似ているようで違う、若干呆れが入ったような笑いを口許に浮かべてシェイド大佐は息を吐いた。
確かに、ラスターさんの力は強いと俺も思う。今まで数度だけしか彼の戦いぶりを見たことはなかったが、それは理解していた。
アーシラトの巨大鎌での一閃を軽く片手で受け止められたのも、その力があったからこそだ。ラスターさんの技術なども関わってくるのかも知れないが。
「その後も、オレは必死に説得した。最終的にはラスターが折れて了承してくれたんだが、その時に言われたんだ」
彼を説得するまで、どれほどの時間がかかったのだろう。少なくとも、数週間なんて単位で表せるような時間ではないことは解る。それくらいで決まるような事じゃない。
いつの間にかシェイド大佐の口許からは笑みが消えていた。
「……『そこまで言うなら良い、だけど条件がある。オレもアンタも、絶対に死なない事が条件だ』、とな。……思ったよりも長くなかったな」
アノードと切り結ぶラスターさんを睨んでいるとも言える目で見据えながら、シェイド大佐は締め括る。
約束、というのはそういう事だったのだ。絶対に死なないこと。それならば、彼がラスターさんに向けて言った「死ぬな」の意味も解る。
「成る程……そういうことだったんですね。有り難う御座います」
軽く頭を下げ礼を言い終わると、辺りに激しい金属音を響かせながら戦っている二人に視線を戻した。
二人は丁度互いに間合いを取り、武器を構えている。
どれほどの速さで、強さで斬り合っていたのか、ラスターさんもアノードも軽くだが息が上がっていた。
ラスターさんは腕や肩口といった所を切られ、少量だが血を流している。アノードも軍服や黒コートに血を滲ませているが、その量はラスターさんと比べてかなり少なかった。
アノードは舌打ちすると頬の傷から垂れる血を手の甲で拭い、サーベルを構え直すと間合いを詰める。
「——さっさとくたばりやがれ、愚息!」
ラスターさんは凄まじい勢いの一閃を一度は受け止めたものの、その力に耐えきれずに吹き飛んだ。
どれほど肩で息をしていようと衰えない怒号の鋭さは、まるで彼の剣劇にそのまま反映されているようだった。
ラスターさん僅かに呻き声を漏らしながらも受け身を取り、長剣の柄を握り直と自分に向かって走ってきていたアノードに向かって跳躍すると、両手で構えた長剣を振り下ろした。
それをアノードは軽く片手で受け止めると弾き返した。あの一撃を細いサーベルで、それも片手で受け止めて弾き返すなんて、彼の力はラスターさんよりも上らしい。
ふらつきながらも体制を整えた彼はアノードを睨み、剣の切っ先を向ける。
「オレは、死んでなんかいられねぇんだよ……アンタの勝手な逆恨みで殺されるなんて御免だ!」
勝手な逆恨みという言葉に、アノードの目により強く殺意が宿る。
「黙れよ……! テメェにオレの何が解るんだ!」
「解らねぇよ。出会って一時間も経ってないような奴のことなんか解るわけないだろ。……それでも、アンタの行動が何なのかだけは解るぜ?」
アノードの剣幕にも怯まず、語尾まではっきりと言い切った。未だに肩で息をしているが、その声は微塵も掠れていなかった。
「今のアンタがやってる事は、筋違いだ。それに乗ってるオレもオレだけどな」
それに、と彼は続け、数度深呼吸をして呼吸を落ち着かせてから次の言葉を発する。
「アンタは真実を見ようとしていない。探そうともしていない。勝手に決めつけた上で行動してるんだ」
「……黙れって言ってんだよ」
アノードの絞り出すような低い声は、聞いているだけで身が竦むようだった。俺は関係ない筈なのに、何故か自分もその戦いの中にいるような錯覚に陥る。
「少しは答えを探してみろよ、こんな無意味な決闘なんて吹っ掛けないで!」
「黙れっつってんだよ!」
かけられる言葉全てを一蹴する彼には、ラスターさんの声も届いていない。俺に解る筈もないが、どれほど憎み、妬んでいるのか、その心の闇は計り知れなかった。
強制的に会話を打ち切り、アノードは再度彼に接近するとサーベルを一閃させる。
それを剣で受け止め、弾き、必死に応戦しているラスターさんを見て、今まで俺の後ろで一言も話さずに黙っていたソーマが唐突に口を開いた。
「……負ける」
呟きにも等しい声に振り返ってみれば、彼はさほど興味のなさそうな目で二人の戦いを見ていた。普段通りと言われれば普段通りの目にも見えるが、何故か今だけはどこか違って見える。
俺の視線に気付いたのか、ソーマは彼等から視線を外すと俺を一瞥した。
「あのままでは負ける——いや、死ぬだろうな」
誰が、どちらが、とは聞かなかった。何故か、理解してしまっていた。ただ目を背けていただけで。
このまま戦っていても、アノードが勝利するのだと。それは即ち、ラスターさんの死を意味している。
ラスターさんをこのまま死なせる訳にはいかない。アノードにも、殺させるわけにはいかない。
加勢すれば、アノードは逆上するに決まっている。彼の性格は、出会ってから1時間足らずだが何となく理解していた。あくまでも何となくなのだから、本来の性格がどんなものなのかは解らない。
それに、加勢はラスターさんも望んでいない気がする。彼等は自分達だけで、決着をつけようとしている。
「どうするかは、貴様等で考えろ」
普段通りの無関心、だがそれが妙に気にかかる。今だけは、自分の無関心なんて通らない。そんな気がした。
「俺はどちらが勝とうが興味はない。アイツが殺されようがな」
俺の考えを見透かしたかのようにソーマは言い、俺達と2,3メートルほど距離を置く。
この状況下でもはっきりと言い切った彼に対して言いたい事は山ほどあったが、それを話す時間はない。
ソーマから目を外し、全員の顔を見る。
サイラスもファンデヴも、未だに辛い筈のイーナも、勿論シェイド大佐も、全員が同じ考えを持っているようだった。それが表情からも解る。
口を開こうとした瞬間、俺の発言にラスターさんの短い悲鳴が被さった。
弾かれるように振り返れば、彼が地に伏していた。剣は弾き飛ばされたのか、手から離れたところに転がっている。
「……しぶといな、さっさとくたばれっつってんだよ……消えろよ」
アノードは独り言のように言いながらラスターさんに近付き、サーベルを彼の首に突き付けた。
まだ意識を失うまではいっていないらしく、彼は倒れたままでアノードを睨み付ける。
それに気を悪くしたのか不快だったのか、アノードは一度顔を顰めるとサーベルを振り上げた。
「——待てよ」
彼がラスターさんの首にサーベルを突き立てる寸前に、俺は彼に届くように声を発した。そして抜刀した闇霧の切っ先を真っ直ぐアノードに向ける。
アノードはサーベルを止め、俺を睨んできた。その威圧感に一瞬押されそうになったが、その刃にも似た視線をしっかりと、真っ向から受け止めた。
「……何のつもりだ。邪魔するんじゃねぇ、人の家の『家庭事情』に口出しするなよ」
確かにそうだ、これは本来ならばシェイド大佐やラスターさん、それにアノードといったダーグウェッジ家の問題だ。
だが、だからといってラスターさんを見捨てることはしない。助けられるのならば助けたかった。
「テメェ……」
「そこまでだ。もうやめろよ、こんなのは」
何も言わずにいる俺に彼がもう一度何かを言おうとしたが、それよりも先にサイラスが口を開いた。
その手には発動したばかりのヴォカーレが握られており、柄と同じくブラックシルバーの矛先はアノードに向けられている。
それだけではない、ソーマを除く全員が、アノードを円形に取り囲んでいた。皆一様に自らの武器を持ち、その切っ先を、シェイド大佐は銃口を彼に向けている。
「……何だ、皆揃ってオレを敵視するか。まるで悪役の扱いだな」
嘲笑を浮かべ、アノードは困ったように肩を竦めた。彼に会ってから、彼の嘲笑や自嘲以外の笑いを見たことがない。
「……少なくとも、今のお前は俺達にとっちゃあ敵だな。サーベル、離せよ」
サイラスもアノードと同じように肩を竦め、有無を言わさぬ口調で告げる。今の彼は、俺達に取っても敵だ。それは俺も同じく考えていた。
「それは要するに、オレに殺すなって言ってるって取っていいんだな? ……部外者が出てくるなよ」
「違う」
俺は短く、叫びにも似た大声で言った。
「部外者なんかじゃない、ラスターさんは仲間だ。殺すのだけは、これ以上傷つけるのは許さない」
部外者なんて言葉で表せるほど、軽く浅い関係ではない。他の誰がどう思っていようと、俺はそう思っていた。
「仲間か……面白ぇな、そうやって救える人間は全員救う、偽善者気取りか?」
「偽善者だろうがどうでもいい、何とでも言えばいいだろ……俺はこれ以上アンタがラスターさんを痛めつけるのを見たくないだけだ」
偽善者、偽善。確かにそうかもしれない。戦場でそんなのは通用しない。それは何度も自分の考えが違うのだと再認識している。
それでも、俺はこれ以上二人が戦うのを見ていたくなかった。
もしかすれば、見ていたくないならばここから立ち去ればいいと彼は答えるかも知れない。
ただ、俺はそれだけではない。人が、仲間が死ぬのが——殺されるのが嫌だった。
「……アノード、もう止めろ」
銃口を下げたシェイド大佐が、輪から外れて数歩程度アノードに近付いた。
彼は肉親に対する情も何もない、赤の他人や敵を見るような目付きでシェイド大佐を見る。
「……何だよ」
「……これ以上は止めろ。オレの目の前でこんな戦いを見せるんじゃない。ラスターの意志を尊重したつもりだったが……兄弟同士で戦うなんて馬鹿な真似は、もう終わりにしろ」
シェイド大佐は、苦しげな様子でアノードに向けて言った。ラスターさんが彼と戦うといったのだから一度は決闘を認めはしたものの、実の兄弟が互いに戦う様を見るのは苦しかったに違いない。
「兄弟かよ……オレはテメェ等と兄弟だなんて認めたくもねぇんだがな」
その言葉に嘘はないのだろう、吐き捨てた言葉の端々からもそれが解る。それに、彼の目付きは本気だった。
「それでも構わない。……ただ、お前はラスターの言うとおり、真実を確認しようとは思わないのか」
「確認して、何の意味がある。それどころか、捨てた筈の子供が戻ってきたなんて事になったらとんでもねぇ事になるだろうよ」
「だから、その捨てたのかどうかの確認を何故……」
「どうして……どうして最初から諦めてるの?」
シェイド大佐の発言を遮り、イーナが鎖鎌を構えたまま問いかけた。
「……何で、最初から決めつけてるの? 本当の事なんて自分から知りに行かないと解らないに決まってるのに、何でそれをしないの?」
若干紫がかった桃色の目でアノードを見つめ、ゆっくりと言葉を紡いでいく。
彼は答えずに、シェイド大佐を見るのと同じ目でイーナを見据えた。先程に比べて刺々しさが少しでも薄れた気がするのは、俺の気のせいだろうか。
「……アノード、一度リグスペイアに行って父さんと母さんに——」
「ハッ、誰が行くか。……ここで殺りたかったんだが、テメェ等と戦える自信はねぇな」
至極残念そうに、アノードはラスターさんの首からサーベルを離した。
一度振って血やその他の汚れを落とし、彼はファンデヴに歩み寄るとそれを律儀にも手渡した。
「……感謝するぜ。いいサーベルだ。使い勝手も良いしな。せいぜい大切にしろよ」
ファンデヴにサーベルを返すと、彼はコートのポケットから取り出したサングラスを掛ける。そして俺達を振り返り、中心のラスターさんをサングラス越しに睨み付けた。
「……今度会ったら、その時こそテメェを殺してやる。……シェイド、テメェもだ」
そう言い残して歩き去っていくアノードの背中を見ながら、俺は溜め息のように大きく息を吐いた。
恐らく、彼は本当はあんな人間ではないのだと思う。根本からああならば、ファンデヴに礼を言うなんてしない筈だ。
復讐や嫉妬といった負の感情で、自分も自分が行くべき道も見失っているように思える。
幾らそんな事をいっても、彼自身に訊かない限り、これは俺の憶測でしかないが。
全員の緊張が解けたらしく、皆自分の武器をしまっている。それを見ながら、俺も闇霧を鞘に戻した。




もう6時半過ぎとか信じない。

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Happybirthday イーナ!!


何のイジメだよ、三日連続とかwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

はい、いまだに外見ビジュアル絵描いたことのないイーナたんです←
名前も改名したしね。うん。ついでに外見も変わったよね。最初黒髪だった記憶があるんだけど。

最初に比べると口調が変わってきてるなぁ、と最近のリレイズを読み返していて思います。
何かユフィみたいなイメージで書いてたのに気付いたらティファだった的な感じの不思議さ←
それに気付けば普通に戦闘キャラになっていました。最初は戦えないヒロインだった筈なのに…
できればレイヴのエリーを目指したかった。知ってる人居るかなー。
戦闘能力で言えばアレです、多分カラッドと対等に戦えるくらいだと思うよ。これって結構強くね? イーナ強くね?←
いや、いいんだけどね。

どうしても年頃のおにゃのこの思考が解りません。
俺女なのに何で解らないんだ、と思ったら。根本的にイーナと考えも何もかもが違いました\(^o^)/
俺はこんな乙女じゃない。
ちなみにこの後はイーナが何やかんや色々あるよ。色々ね。アビスで言えばナタリアな立ち位置かな。


これからも頑張れというか、よろしくイーナ。頑張ってね。



この後一番近い誕生日はマーヴィンです←

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