I permanently serve you. NeroAngelo
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アーシラトbot http://twitter.com/Arshilat_bot
アイコン制作:keiさん(@kei_0928)感謝感謝です。もしイラストうpが駄目でしたら遠慮無く拍手でもコメントでも言っちゃって下さい><
アーシラトbotとの遊び方
つぶやき
つぶやきは主にリレイズ39〜47話、異形の館に関しての話に出てきた台詞を呟きます。なので若干真面目です。
時折「冥府なう」や「【急募】林檎」など、ネタつぶやきも収録。ちなみに今のところ数個だけですが、これから先の台詞が少し混じっています。
ですがリレイズ本編でアーシラトの出番が来るまで台詞のボキャブラリーがあまりにも少ないので、異形狩り、過去編関連の台詞もまた追加していく予定です。
リプライ内容
「おやすみ」「おはよう」「ただいま」「行ってきます」など、基本的なリプライは対応している筈です。筈、というのは俺自身よく覚えていないからです。
林檎やアップルパイが好物という裏設定も相俟って、「林檎」や「アップルパイ」がに過剰反応します。
ネタリプとして「あーすぃらと」「ニート」「がじがじ」を現在の所登録中です。随時追加。「死神」にも反応しますが、案外真面目な反応が返ってくるので面白くないかも。
定期Postについて
アーシラトが毎日午後九時に定期Postでリレイズを宣伝してくれます。主に最新話更新のお知らせです。
自分が出てこないので今はかなりテンションが低いです。
諸注意・備考
友人である吸血鬼、ヴェルガーダ=イクスプロジアの名前をリプライすると時々ヴェルガーダ本人が出てきてお話ししてくれます。大抵一度のリプでさっさとひっこみます。
時々急募でアーシラトを探しているので、「アーシラト居たよ」または「アーシラト見た、見掛けた」で確実に出てきます。
「おやすみ」でも時々睡眠中のアーシラトに変わってリプを返してくれる良い子です。みんな仲良くしてあげてね。
◆ちょっとシリアスなアーシラトが好きな方には「ナンバー」や「死神」等、痛々しい過去に関連するワードを入れて話しかけるのを推奨します。
◆アーシラトにとことん可愛がって貰ったりなでなでされたい
こちらも合わせてお楽しみください っ@Relays_bot @r_soma_bot
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調子に乗って書いていたら恐ろしく長くなりました。でもこの話が一番書きたかったんだ…!
にしても話数を重ねるごとにどんどん長くなること。
作業用BGM:アンチクロロベンゼン
ほんの少しだけカップに残っていた生ぬるい紅茶を飲み干し、アイドは唇を嘗めてから再びモニターに視線を注ぐ。
先程まではその場に二本足で立ち、主の盾として矛として立ち回っていた白い髪を持つ執事。
彼が実に呆気なくシェイドの銃撃によって吹き飛ばされ、床に這い蹲る様をアイドはそれは楽しそうな眼で鑑賞していた。
「……何て言うか、呆気ないな」
世界の支配者に仕える機械人形であるというのだから、もう少し頑丈かと思っていた。そうなればハウンドもそうなのだが、彼はその行動やだらしなく着崩した燕尾服などの事もあり、マーヴィンに絶対の忠誠を誓っているとは考えづらかった。
考えづらい、というよりも、何となくマーヴィンへの反発心が見受けられる。
それもあり、アイドは真っ先に自分やダグラスの所に近付いてきそうな彼を封じた。今頃は自分の“仲間”によって総攻撃を受けているだろうな、なんて事を考えて、アイドは思わず噴き出してしまう。
笑いを堪えながら空になったカップを置き、モニターを見ていた彼は不意にモニターの端を掠めた『それ』に眉を顰めた。
見間違いかも知れない。そう思い、ごしごし、と目を乱暴に擦る。目を擦っている間に先程の影はモニターから消えていた。
普段ならば「何だったんだろうな」とすぐに視線を逸らすところを、今のアイドは何故かそうしなかった。
あの影を捉えた瞬間に、嫌な予感がした。背筋が凍るような、身体が震えてしまうような。
現実離れしたパステルカラーの水色をした前髪を掻き上げ、アイドは食い入るようにモニターを見つめる。
凝視し始めてから一分も経たず、そのモニターの中心にとある人影が映った。どうやら監視カメラは斜め後ろからその姿を捉えているらしく、その横顔が見て取れる。
「…………嘘だろ……」
焦燥感を含んだ声で呟いたアイドの視線の先にあるモニターの向こうで、『彼』は口角を吊り上げて歪に笑った。
RELAYS - リレイズ - 69 【暴走】
マーヴィンを除いたほぼ全員が疲弊し、負傷し、その場から動けなくなっていた状況で、突如響いた足音と金属音にその場に居た全員が例外なく目を瞠った。
ソーマやシェイドが呆然と目を瞠っているのとは違い、マーヴィンだけはすぐに平常心を取り戻したのか普段通りのにやにやとした笑みを浮かべて楽しげに眼を細めていた。
その視線の先にいるのは、自分とは何もかもが正反対にある筈の、三つ違いなだけの数年前に捨てた兄弟。
力がある癖にそれを使わず、役立たずな癖に戦場に出向き、結果的に何もできずに——それでも無惨に命を散らすこともなく無事に帰ってくる。忌々しささえ覚えるほど、相変わらずの『悪運』の強さを持つ弟。
今回もまた、その悪運の強さにより引き起こされたものだろうか。
黒い軍服と白い手袋を赤く汚しながら床に赤く模様を描く鮮血を流しながら、シェイドもまたヘメティの変化に敏感に気付いていた。
自分に限らず仲間がこうして血を流していれば敵が目の前にいようが武器を捨てて近づき、身を案じてくれる彼が、自分や床に膝を着いてしまったソーマの状態に見向きもせずに刀の柄を握り締めてゆっくりと歩みを進めている。
それだけでも、十分異常だった。
「……本当に君は、良く空気を読んで僕を楽しませてくれるね」
自分のすぐ足下に膝を着いたソーマを軽く蹴り飛ばし、マーヴィンはくすりと笑ってから一歩一歩着実にヘメティに向けて歩みを進めていく。規則正しく響く足音はヘメティのそれと重なり、フロアに響いては掻き消えた。
「ッマー、ヴィン、さ——」
主の身を案じるアレスの声を、甲高い銃声が遮った。それと同時にアレスは短く悲鳴を上げ、無機物で構成された身体をどうすることもできずにほんの少し後方に飛ばされる。
その後も何度も彼の身体は痙攣でも起こしたかのように跳ねて徐々に砂埃が薄く積もった床の上を転がっていく。血は出ていないものの、燕尾服に開いた幾つもの穴が何発もの銃弾が撃ち込まれたという事実を物語っていた。
当然、床に縫いつけられていたシェイドにも流石にそんな芸当は出来ない。そうなれば最早誰がやったのかなど明白な物だ。
アレスに向けた銃口から薄く煙を立ち上らせる黒光りするそれを構え、冷淡にさえ見える佇まいでヘメティは彼を撃ち抜いていた。
幾ら機械人形であろうと、自我のあるもの、生きているものを傷つけることを恐れてばかりだった少年が、今ここで自分の目の前で他人に発砲した。その事実に、どうしようもなくこの場にいる人間は動揺していた。
どうやら全ての銃弾を撃ち終わったのか、もう用済みだと言わんばかりに拳銃を投げ捨てたヘメティは俯いたままだった顔を上げてマーヴィンを見る。
彼の口角は歪に吊り上がり、狂気のような感情を露わにした笑みを形作っている。瞳は今までヘメティが持つとも思えなかった感情で煌々と煌めいていた。
これだけでも混乱と戸惑いは増幅するというのに、更に追い打ちをかけるような事実にも、周囲の人間は気付いてしまう。
紫水晶のように澄んだ紫を宿していた筈のヘメティの左目が、今は血を被ったように赤く染まっていた。
その様は、数メートルほどの間合いを取って対峙するヘメティとマーヴィンが切っても切れない血縁関係にあるのだ、ということをあからさまに誇示しているようにも見える。
暫くは歪みに歪んだ笑みを浮かべたままでその場に立っていたヘメティだったが、一度獰猛そうに唇を一嘗めしてその手に携えた闇の名を冠する刀を構え、地面を蹴った。
それも予想していたかのようにマーヴィンは涼しい顔で受け止めては、ソーマにもしたように弾き返す。
だが、ヘメティは刀を弾き返されても尚、素早い剣劇を繰り返した。
甲高い金属音は短く、連続して辺りに響き渡ってはびりびりと空気を震わせて反響し続ける。
その音に顔を顰めながら、鎌を杖代わりに立ち上がったソーマは額に浮いた汗を拭えばシェイドの元までつかつかと歩み寄る
「……ソーマ」
この状況に似付かわしくない——いや、逆に調和しているのかもしれないが、静かな声でシェイドは彼の名を呟く。しかし、シェイドの瞳はソーマを捉えてはおらず、ただただ目の前でマーヴィンに切り掛かるヘメティのみを映していた。
「何だ」
短く、どこか切羽詰まったような様子でソーマは聞き返す。
「…………今、オレ達の目の前で何が起こっている?」
「見ての通りだ」
ソーマに尋ねた時点で既に答えは知れたようなものだった。「見れば分かる」というような内容の答えを返されることなど分かっていたが、それでも違う答えを期待して問い掛けたのに、とシェイドは歯噛みしてしまう。
その間にも、刀と鉄パイプが触れ合って起こる金属音は止まないままで鼓膜を揺さぶり続ける。
「——ただ、異常であることは確かだがな」
ぽつりと付け加えたソーマにシェイドは頷き、自分から肩を拘束する剣を引き抜こうと柄を掴む。
彼がその行動を取った瞬間、マーヴィンが今までに一度も上げなかった悲鳴を上げて背後の壁へと叩き付けられていた。
今まで延々と片手で刀を扱い続けていたにもかかわらず、何も疲労など感じていないかのようにヘメティはその場に立ち尽す。実際、今の彼に疲労など何のブレーキにもなりはしないのだ。
彼は遠目から辛うじて分かる程度に肩を微かに揺らし震わせ、噛み殺したような笑いを上げ始める。
それを確認し、「今彼は笑っている」とソーマ達が認識した頃には、その狂った笑い声はマーヴィンを彷彿とさせる高く響く哄笑にまで変わっていた。
「……予想通り、か」
空気を震わせる耳障りな笑い声に顔を顰めながら、ソーマはそう意味深な言葉を漏らす。
苦々しく呟いた彼の様子にシェイドは怪訝に思ったのか一瞬身動ぎしたものの、貫かれたままの肩に激痛が走ったことで動きを止めた。
哄笑は徐々に収まり、今ではくすくすと嘲り笑うような笑い声へと変わっている。
「…………どういう事だ?」
状況が全く理解できない、というような表情を崩さないまま、独り言のようにしてシェイドがソーマに問うた。ソーマは彼の薄い黄色の瞳を一瞥し、すぐに視線を逸らしてしまう。
「……俺達『能力者』は、自分の意志で力を抑える事で能力を使役する。俺の場合は大鎌、アイツの場合は刀、という風にな」
突然、それも今自分が問うた内容には全く沿っていないようにすら感じられる内容の話をし出したソーマに虚を突かれたものの、シェイドは黙って彼の言葉を聞き入れる。
その間にもヘメティはその口許に歪んだ笑みを浮かべ、起き上がり自分に向かってきたマーヴィンに応戦していた。
またもフロア中を包み込む金属音に負けないよう、声を張り上げながらソーマは続ける。
「そして当然、アイツも人間だ。アイツには感情がある。脆弱な精神がある。……平たくまとめれば、今回はアイツが精神的に受け止められるものの許容量を超えたんだろう」
敵である筈のマーヴィンから告げられた事実に加え、自分はおろか仲間までもが窮地に陥った今回の状態。その状況に、ただでさえソーマ曰く『脆弱』なヘメティの精神が耐えられるわけもなかったのだ。
「——おかげで、普段力を抑え込んでいる箍が外れたらしいな。俺も味わったことがある。言わば『暴走』だ」
淡々とした声音は普段通りで、危機感も焦燥感も全く感じさせない。相変わらずの無表情でそう締め括って、ソーマはナトゥスを肩に担いだ。
「……要するに、今ヘメティがマーヴィンに刀を向けているのもヘメティ自身の意思ではない、と?」
「そうなる」
やっと状況が呑み込め、理解できたらしいシェイドの呟きにも、彼は特に感情を表に出そうとはしない。
ただその藍色で、マーヴィンの身体に着々と傷を刻み続ける『臆病者』の姿を捉えているだけ。
他人を傷つける事が嫌いで怖くて仕方がない、それとは真逆の様子でマーヴィンに向かっていくヘメティも当然身体中に傷を負ってはいるのだが、その傷の量も血の量も、マーヴィンに比べてみれば遥かに軽い。
マーヴィンに至っては既に片腕を深々と切り裂かれて赤いコートの袖を更に濃い赤で染め上げていた。あの傷では腕を動かすことも困難であることは遠目から見てもよく解る。
結局彼は片手で鉄パイプを操ってヘメティの剣劇を受け止めるしかないのだが、その力は普段のヘメティの比ではない。
圧倒的な力の差とも言えるそれを目の当たりにして、シェイドは勿論のことソーマも少なからず驚愕は感じているらしい。
「……まあ、俺自身アイツにここまでの力があることは予想していなかったがな」
口許に嘲るような、それでいて焦燥感を滲ませた笑みを微かに浮かべ、吐き捨てたソーマの頬に汗が伝う。
だがその直後にはその笑みは消え、逆に戸惑いや訝るような感情が浮かべられた。
悲鳴や呻きを噛み殺し、自分の肩に鈍痛を発していた傷口を作り出し、その傷を塞ぐ長剣の柄を掴んで引き抜こうとするシェイドに、ソーマは今度こそ眉を顰める。
「何をしている」
「見ての、通りだ、……ッ」
確かに見れば彼が何をしようとしているかなんて分かるのだが、そんな事はどうでもいい。
「余計に血を流すつもりか?」
今彼の傷を塞いでいるのはその長剣だ。それを引き抜けば、当然今以上の血が噴き出す事になる。
まるでシェイドの身を案じるかのように口にしたソーマの目の前で、彼の身体を縫いつけていた長剣が床から抜ける。それでも大分楽になったのか、彼は上体を起こせば息を吐いて剣の刃を手で掴んだ。
「……オレの血程度ならば、安いものだ」
答えになっていないだろうが、と嫌味を込めて言ってやりたいのをぐっと堪え、ソーマは口を噤んだまま彼を見守る。否、傍観する。
恐らく特殊な素材で出来ているのであろう白い手袋のおかげか、手が切れる事もなく徐々にではあるが長剣は引き抜かれていく。真紅の血で赤く光る鈍色の刃は不気味でもあった。
シェイドが痛みに耐えている間、ヘメティはただマーヴィンを追い詰め、傷つけて楽しんでいるようにしか見えない行為ばかりを繰り返して刀を振るっている。
肩で息をしているマーヴィンと、呼吸を弾ませることもしないヘメティの差は歴然で、ソーマはシェイドから意識を逸らして彼等の『兄弟喧嘩』という名の殺し合いを見ていた。
ヘメティの刀がマーヴィンの服も皮膚も肉も切り裂き、彼の命を悪戯に生死の境まで追い遣る。それを止めようと声だけでも張り上げるアレスにすら容赦はない。
つい数十分前までは逆だった筈なのに、マーヴィンがその場に膝を着く。それをソーマが認識したとほぼ同時に、耳の端でからん、というやけに軽い音を聞いた。
視線を向けてみれば、そこにあったのは血に濡れた長剣だけ。その場に居た筈のシェイドの姿は既に無い。
その代わりに、とでも言うように聞こえてきた足音と転々と切取線のように続く鮮血のお陰か、彼の動向は知ることができたのだが。
ソーマはその場に縫い止められたかのように動くことも出来ず、傍観者のようにして立ち尽くした。
その間にも、当然の事ながらヘメティの暴走は続いている。
ぼろぼろになった黒い燕尾服を身に纏い、降り積もったばかりの雪のように白かった髪を汚したアレスの頭を片足で踏みつけ、闇霧を携えていないもう片方の手では赤いコートを殊更赤く染めたマーヴィンの胸倉を掴んでいる。
ワインレッドのリボンタイも、今は解けて申し訳程度に首に掛かっている状態だ。白くフリルのついたシャツもまた、深い刀傷の形にじわじわと緩慢ながらも確かに血が滲んでコートと遜色ない色にまで変わっている。
気道を圧迫された苦しみからか、ただでさえ苦痛で歪んでいた顔を更に歪めてマーヴィンは軽く咳き込む。それと同時に微かに血が吐き出され、彼の白い口許を伝いヘメティの手に落ちた。
「……っ、殺したかったら殺したらどうなんだい? そんな薄気味悪い嗤いなんて、浮かべてないでさ」
傲慢な様子は相変わらずだが、ここまでくるとそれが虚勢であることなど誰が見ても明白なものだ。
自分の兄の赤い瞳を薄笑いを浮かべて見下ろし、彼はだらりと下げていた刀をマーヴィンの首へと突き付ける。
あと少し力を込めて刃を動かすだけで、いとも容易くこの戦争の終焉は訪れる。この世界も、恐らく破滅を迎える事になる。何せ支配者である男が居なくなるのだから。
その事をヘメティが考えられたのかは誰にも分からない。
彼は胸倉を掴んで引き寄せた支配者の首を切り落とそうと更に力を込め、微かに引きつったような笑い声を零す。
それに被るようにして足跡が止まり、小さな金属音が嫌なほどに辺りを包んだ。
その音に反応してなのか、それとも頭に感じる感触に対してなのか、ヘメティの動きが止まる。
「やめろ」
どんな状況であっても、よく通る声だった。
荒い呼吸の合間に吐き出された割には掠れてもいない声に、王族二人の血の色の瞳が見開かれる。
血を流す右肩の所為で力の入らない右腕を下げ、唯一無事な左手で拳銃を構えたシェイドは無理矢理に取り繕ったような無表情で、ヘメティを見据えていた。
その拳銃の銃口は、自分の仇であり憎悪を向ける相手であるアレスでも、支配者であるマーヴィンでもない。ヘメティの後頭部に震えることなく押し付けられていた。
「……ヘメティ、もうやめるんだ」
マーヴィンの胸倉を掴む手が震え、白くなるほどに力が込められているのを見て一度は止まった手の動きが再開されたことを悟る。
シェイドは短く息を吐き、ほんの少しだけ身体から力を抜いた。
「それ以上やったら、戻れなくなるぞ」
一度人を殺してしまえば、もう後には戻れない。自分に残るのは『人殺し』という汚名だけ。軍人という職業柄、シェイドはそれを身をもって理解していた。
その言葉がヘメティの耳に届くかどうか、というのは最早賭けで、これでもし彼の暴走とやらが止まらなければ容赦なく手足を撃ち抜いてでも止めてやろう、とシェイドは考えていた。それはソーマも同じで、彼もまたシェイドの背後からではあるがヘメティの首に鎌の刃を押し当てている。
暫くの間、戦闘の行われていたフロアにはマーヴィンの荒い息づかいとアレスの時折挙げる呻き声だけが反響し、尾を引いていた。
その静寂を破るように、マーヴィンは不意に嘲り笑うような声を漏らした。
「……僕らに、情けをかけるつもりかい? 軍人のクセに」
酷く掠れ、ぜぇぜぇという呼吸音に掻き消されそうなものだったが、辛うじて聞き取れた声に彼は態とらしく溜め息を零す。
「別に、貴様等を助けようとは思っていないさ。オレは仲間を助ける、それだけだ」
言葉とは裏腹に、銃口をヘメティの後頭部に押し付ける力は徐々に強まっている。ここで誤って引き金を引いてしまえば当然彼も死ぬことになるというのに。
シェイドが再び、今度は懇願でもするような声音でヘメティの名を呼ぶ。
その硬質の感触、首に当てられる冷たい感触に感化されたのか、それともただの『気紛れ』か——それとも、本当に『仲間』の声が届いたのか。
今までマーヴィンの胸倉を掴んで刀を突き付けているだけだったヘメティが、不意にマーヴィンから手を離した。
だがその動作もまた荒々しいもので、ゴミ袋を無造作に投げ捨てるようにして彼の身体を床に叩きつけるそれ。ろくな受け身も取れずに床に横たわったマーヴィンは身体中に奔った激痛に短く悲鳴を上げた。
その悲鳴を聞き届けたかのように、今度はヘメティがその場に膝を着く。銃をその場に落として彼の身体を間一髪の所で片腕を使い支え、シェイドは安堵に溜め息を漏らした。
かと思えば、今度はヘメティの身体からがっくりと力が抜け、強く掴んでいた筈の闇霧が滑り落ちる。重厚、とも耳障り、とも、何とも言えない音が、悲鳴や笑い声とは違い反響する事泣く掻き消えた。
ヘメティは既に意識を手放してしまっているのか、目を閉じて腕を力なく下げたままだ。薄笑いで情事吊り上がっていた頬も、眠っている時のような表情に変わっている。そのあどけなさすら残る表情は、今までのヘメティと何ら変わりない。
ただその頬にべったりと付着した血飛沫が、全てを物語っていた。
その血痕を何とも言えない表情で見つめていたシェイドだが、何の前触れもなく耳に飛び込んできた吐息のような嗤い声に顔を上げる。
床を這いずるようにして身体を僅かに起こし、血が染み込んで若干汚れてしまった焦げ茶の長髪を床に垂らしながらマーヴィンは嗤っていた。
楽しそうでもあり、悔しそうでもあり、それでいて嘲笑のようで、微笑のようで。優しげな上っ面の中、冷たく激しく渦巻く憎悪を秘めたような、普段のエゴイズム溢れる笑いとは全く別の意味で悪寒がする嗤いだった。
「…………悔しい、ね。うん、……実に悔しいよ。この場で……死にたいくらいに」
荒い呼吸の合間合間に、必死で言葉を紡ぐマーヴィンの頬に血と汗が混じった液体が流れ、床に落ちる。
死にたい、なんて言葉を口にした彼を鼻で笑い、ソーマはシェイドの背後からナトゥスの鎌の刃を向けてやった。
「……今この場で、殺してやることもできるが?」
氷。その一言に尽きる冷たさを秘めた藍色に射抜かれてもマーヴィンは笑う事を止めず、鉄パイプから手を離してコートのポケットから何かを取り出せばきゅっ、と手に握る。
彼の手に包み込まれたそれはかなり小さなものなのか、その正体が何なのか確認することもできない。
「いや、遠慮しておくよ。……もっと楽しみたいんだ、僕は。この世界を、ね……だから、」
そこで一度言葉を句切ったマーヴィンはちらりとヘメティを見てから、口許に微笑を浮かべて手に握った『それ』を指先で摘む。
金属光沢を放つ立方体のそれはパッと見では金属製のサイコロにも見える。だがこの場でそれを取り出したという時点で、小さな小さなサイコロが何らかの『兵器』であることは目に見えて分かることだ。
起爆スイッチを押すことで作動するような超小型の爆弾か、と一瞬身構えたシェイドの目の前で、マーヴィンはふふっ、と嗤って妖美とも取れる笑みを浮かべた。
それと同時にそのサイコロ状の物体を摘む指に力が込められ、カチッというやけに軽い音と共に光が辺りを包み込む。
「……だから、ここは逃げることにしておくよ。……アレスも僕も、……ヘメティもぼろぼろだからさ」
マーヴィンの消え入りそうな掠れ声は聞こえるものの、目映い光の所為で目を開けていることすらままならない。シェイドはヘメティの身体を支えている手とは違う手——丁度傷を負った手で反射的に目を覆っていた。
ソーマも同じように目を眇め、舌打ちして視界を覆う。
その光自体は数分どころか数十秒もせずに収まり、二人はゆっくりと腕を降ろせばお互いに顔を顰めた。
「次元歪曲式の転送装置だったか……くそっ!」
化学による技術に魔力や魔術を加え、作動することにより自分と自分の周囲、もしくは製造過程でインプットしておいた人間を別の空間へと転送させる装置。どんな仕組みなのか詳しくは知らないが、聞いたことはあった。
恐らく、というよりも確定であるのだが、彼等の転送先はマーヴィンの自室かどこかの病院だろう、とも思う。
シェイドは悪態を吐き、アレスもマーヴィンも忽然と居なくなっている空間を見る。
その場に彼等が居たという痕跡といえば、床に滴り落ちている血だけだ。アレスに至ってはそんな痕跡すら殆ど感じられない。
この状態では、恐らくラスター達を追っていたハウンドもまた同じように消えているのだろう。
背後でソーマが溜め息を吐いて能力を解除し、今までその手に握っていた白銀の鎌を青白い粒子として霧散させるのを感じながら、シェイドは悔しさから苦虫をかみつぶしたような表情で床の血溜まりを見つめていた。
[樹海] ┗(^o^ )┓三
にしても話数を重ねるごとにどんどん長くなること。
作業用BGM:アンチクロロベンゼン
ほんの少しだけカップに残っていた生ぬるい紅茶を飲み干し、アイドは唇を嘗めてから再びモニターに視線を注ぐ。
先程まではその場に二本足で立ち、主の盾として矛として立ち回っていた白い髪を持つ執事。
彼が実に呆気なくシェイドの銃撃によって吹き飛ばされ、床に這い蹲る様をアイドはそれは楽しそうな眼で鑑賞していた。
「……何て言うか、呆気ないな」
世界の支配者に仕える機械人形であるというのだから、もう少し頑丈かと思っていた。そうなればハウンドもそうなのだが、彼はその行動やだらしなく着崩した燕尾服などの事もあり、マーヴィンに絶対の忠誠を誓っているとは考えづらかった。
考えづらい、というよりも、何となくマーヴィンへの反発心が見受けられる。
それもあり、アイドは真っ先に自分やダグラスの所に近付いてきそうな彼を封じた。今頃は自分の“仲間”によって総攻撃を受けているだろうな、なんて事を考えて、アイドは思わず噴き出してしまう。
笑いを堪えながら空になったカップを置き、モニターを見ていた彼は不意にモニターの端を掠めた『それ』に眉を顰めた。
見間違いかも知れない。そう思い、ごしごし、と目を乱暴に擦る。目を擦っている間に先程の影はモニターから消えていた。
普段ならば「何だったんだろうな」とすぐに視線を逸らすところを、今のアイドは何故かそうしなかった。
あの影を捉えた瞬間に、嫌な予感がした。背筋が凍るような、身体が震えてしまうような。
現実離れしたパステルカラーの水色をした前髪を掻き上げ、アイドは食い入るようにモニターを見つめる。
凝視し始めてから一分も経たず、そのモニターの中心にとある人影が映った。どうやら監視カメラは斜め後ろからその姿を捉えているらしく、その横顔が見て取れる。
「…………嘘だろ……」
焦燥感を含んだ声で呟いたアイドの視線の先にあるモニターの向こうで、『彼』は口角を吊り上げて歪に笑った。
RELAYS - リレイズ - 69 【暴走】
マーヴィンを除いたほぼ全員が疲弊し、負傷し、その場から動けなくなっていた状況で、突如響いた足音と金属音にその場に居た全員が例外なく目を瞠った。
ソーマやシェイドが呆然と目を瞠っているのとは違い、マーヴィンだけはすぐに平常心を取り戻したのか普段通りのにやにやとした笑みを浮かべて楽しげに眼を細めていた。
その視線の先にいるのは、自分とは何もかもが正反対にある筈の、三つ違いなだけの数年前に捨てた兄弟。
力がある癖にそれを使わず、役立たずな癖に戦場に出向き、結果的に何もできずに——それでも無惨に命を散らすこともなく無事に帰ってくる。忌々しささえ覚えるほど、相変わらずの『悪運』の強さを持つ弟。
今回もまた、その悪運の強さにより引き起こされたものだろうか。
黒い軍服と白い手袋を赤く汚しながら床に赤く模様を描く鮮血を流しながら、シェイドもまたヘメティの変化に敏感に気付いていた。
自分に限らず仲間がこうして血を流していれば敵が目の前にいようが武器を捨てて近づき、身を案じてくれる彼が、自分や床に膝を着いてしまったソーマの状態に見向きもせずに刀の柄を握り締めてゆっくりと歩みを進めている。
それだけでも、十分異常だった。
「……本当に君は、良く空気を読んで僕を楽しませてくれるね」
自分のすぐ足下に膝を着いたソーマを軽く蹴り飛ばし、マーヴィンはくすりと笑ってから一歩一歩着実にヘメティに向けて歩みを進めていく。規則正しく響く足音はヘメティのそれと重なり、フロアに響いては掻き消えた。
「ッマー、ヴィン、さ——」
主の身を案じるアレスの声を、甲高い銃声が遮った。それと同時にアレスは短く悲鳴を上げ、無機物で構成された身体をどうすることもできずにほんの少し後方に飛ばされる。
その後も何度も彼の身体は痙攣でも起こしたかのように跳ねて徐々に砂埃が薄く積もった床の上を転がっていく。血は出ていないものの、燕尾服に開いた幾つもの穴が何発もの銃弾が撃ち込まれたという事実を物語っていた。
当然、床に縫いつけられていたシェイドにも流石にそんな芸当は出来ない。そうなれば最早誰がやったのかなど明白な物だ。
アレスに向けた銃口から薄く煙を立ち上らせる黒光りするそれを構え、冷淡にさえ見える佇まいでヘメティは彼を撃ち抜いていた。
幾ら機械人形であろうと、自我のあるもの、生きているものを傷つけることを恐れてばかりだった少年が、今ここで自分の目の前で他人に発砲した。その事実に、どうしようもなくこの場にいる人間は動揺していた。
どうやら全ての銃弾を撃ち終わったのか、もう用済みだと言わんばかりに拳銃を投げ捨てたヘメティは俯いたままだった顔を上げてマーヴィンを見る。
彼の口角は歪に吊り上がり、狂気のような感情を露わにした笑みを形作っている。瞳は今までヘメティが持つとも思えなかった感情で煌々と煌めいていた。
これだけでも混乱と戸惑いは増幅するというのに、更に追い打ちをかけるような事実にも、周囲の人間は気付いてしまう。
紫水晶のように澄んだ紫を宿していた筈のヘメティの左目が、今は血を被ったように赤く染まっていた。
その様は、数メートルほどの間合いを取って対峙するヘメティとマーヴィンが切っても切れない血縁関係にあるのだ、ということをあからさまに誇示しているようにも見える。
暫くは歪みに歪んだ笑みを浮かべたままでその場に立っていたヘメティだったが、一度獰猛そうに唇を一嘗めしてその手に携えた闇の名を冠する刀を構え、地面を蹴った。
それも予想していたかのようにマーヴィンは涼しい顔で受け止めては、ソーマにもしたように弾き返す。
だが、ヘメティは刀を弾き返されても尚、素早い剣劇を繰り返した。
甲高い金属音は短く、連続して辺りに響き渡ってはびりびりと空気を震わせて反響し続ける。
その音に顔を顰めながら、鎌を杖代わりに立ち上がったソーマは額に浮いた汗を拭えばシェイドの元までつかつかと歩み寄る
「……ソーマ」
この状況に似付かわしくない——いや、逆に調和しているのかもしれないが、静かな声でシェイドは彼の名を呟く。しかし、シェイドの瞳はソーマを捉えてはおらず、ただただ目の前でマーヴィンに切り掛かるヘメティのみを映していた。
「何だ」
短く、どこか切羽詰まったような様子でソーマは聞き返す。
「…………今、オレ達の目の前で何が起こっている?」
「見ての通りだ」
ソーマに尋ねた時点で既に答えは知れたようなものだった。「見れば分かる」というような内容の答えを返されることなど分かっていたが、それでも違う答えを期待して問い掛けたのに、とシェイドは歯噛みしてしまう。
その間にも、刀と鉄パイプが触れ合って起こる金属音は止まないままで鼓膜を揺さぶり続ける。
「——ただ、異常であることは確かだがな」
ぽつりと付け加えたソーマにシェイドは頷き、自分から肩を拘束する剣を引き抜こうと柄を掴む。
彼がその行動を取った瞬間、マーヴィンが今までに一度も上げなかった悲鳴を上げて背後の壁へと叩き付けられていた。
今まで延々と片手で刀を扱い続けていたにもかかわらず、何も疲労など感じていないかのようにヘメティはその場に立ち尽す。実際、今の彼に疲労など何のブレーキにもなりはしないのだ。
彼は遠目から辛うじて分かる程度に肩を微かに揺らし震わせ、噛み殺したような笑いを上げ始める。
それを確認し、「今彼は笑っている」とソーマ達が認識した頃には、その狂った笑い声はマーヴィンを彷彿とさせる高く響く哄笑にまで変わっていた。
「……予想通り、か」
空気を震わせる耳障りな笑い声に顔を顰めながら、ソーマはそう意味深な言葉を漏らす。
苦々しく呟いた彼の様子にシェイドは怪訝に思ったのか一瞬身動ぎしたものの、貫かれたままの肩に激痛が走ったことで動きを止めた。
哄笑は徐々に収まり、今ではくすくすと嘲り笑うような笑い声へと変わっている。
「…………どういう事だ?」
状況が全く理解できない、というような表情を崩さないまま、独り言のようにしてシェイドがソーマに問うた。ソーマは彼の薄い黄色の瞳を一瞥し、すぐに視線を逸らしてしまう。
「……俺達『能力者』は、自分の意志で力を抑える事で能力を使役する。俺の場合は大鎌、アイツの場合は刀、という風にな」
突然、それも今自分が問うた内容には全く沿っていないようにすら感じられる内容の話をし出したソーマに虚を突かれたものの、シェイドは黙って彼の言葉を聞き入れる。
その間にもヘメティはその口許に歪んだ笑みを浮かべ、起き上がり自分に向かってきたマーヴィンに応戦していた。
またもフロア中を包み込む金属音に負けないよう、声を張り上げながらソーマは続ける。
「そして当然、アイツも人間だ。アイツには感情がある。脆弱な精神がある。……平たくまとめれば、今回はアイツが精神的に受け止められるものの許容量を超えたんだろう」
敵である筈のマーヴィンから告げられた事実に加え、自分はおろか仲間までもが窮地に陥った今回の状態。その状況に、ただでさえソーマ曰く『脆弱』なヘメティの精神が耐えられるわけもなかったのだ。
「——おかげで、普段力を抑え込んでいる箍が外れたらしいな。俺も味わったことがある。言わば『暴走』だ」
淡々とした声音は普段通りで、危機感も焦燥感も全く感じさせない。相変わらずの無表情でそう締め括って、ソーマはナトゥスを肩に担いだ。
「……要するに、今ヘメティがマーヴィンに刀を向けているのもヘメティ自身の意思ではない、と?」
「そうなる」
やっと状況が呑み込め、理解できたらしいシェイドの呟きにも、彼は特に感情を表に出そうとはしない。
ただその藍色で、マーヴィンの身体に着々と傷を刻み続ける『臆病者』の姿を捉えているだけ。
他人を傷つける事が嫌いで怖くて仕方がない、それとは真逆の様子でマーヴィンに向かっていくヘメティも当然身体中に傷を負ってはいるのだが、その傷の量も血の量も、マーヴィンに比べてみれば遥かに軽い。
マーヴィンに至っては既に片腕を深々と切り裂かれて赤いコートの袖を更に濃い赤で染め上げていた。あの傷では腕を動かすことも困難であることは遠目から見てもよく解る。
結局彼は片手で鉄パイプを操ってヘメティの剣劇を受け止めるしかないのだが、その力は普段のヘメティの比ではない。
圧倒的な力の差とも言えるそれを目の当たりにして、シェイドは勿論のことソーマも少なからず驚愕は感じているらしい。
「……まあ、俺自身アイツにここまでの力があることは予想していなかったがな」
口許に嘲るような、それでいて焦燥感を滲ませた笑みを微かに浮かべ、吐き捨てたソーマの頬に汗が伝う。
だがその直後にはその笑みは消え、逆に戸惑いや訝るような感情が浮かべられた。
悲鳴や呻きを噛み殺し、自分の肩に鈍痛を発していた傷口を作り出し、その傷を塞ぐ長剣の柄を掴んで引き抜こうとするシェイドに、ソーマは今度こそ眉を顰める。
「何をしている」
「見ての、通りだ、……ッ」
確かに見れば彼が何をしようとしているかなんて分かるのだが、そんな事はどうでもいい。
「余計に血を流すつもりか?」
今彼の傷を塞いでいるのはその長剣だ。それを引き抜けば、当然今以上の血が噴き出す事になる。
まるでシェイドの身を案じるかのように口にしたソーマの目の前で、彼の身体を縫いつけていた長剣が床から抜ける。それでも大分楽になったのか、彼は上体を起こせば息を吐いて剣の刃を手で掴んだ。
「……オレの血程度ならば、安いものだ」
答えになっていないだろうが、と嫌味を込めて言ってやりたいのをぐっと堪え、ソーマは口を噤んだまま彼を見守る。否、傍観する。
恐らく特殊な素材で出来ているのであろう白い手袋のおかげか、手が切れる事もなく徐々にではあるが長剣は引き抜かれていく。真紅の血で赤く光る鈍色の刃は不気味でもあった。
シェイドが痛みに耐えている間、ヘメティはただマーヴィンを追い詰め、傷つけて楽しんでいるようにしか見えない行為ばかりを繰り返して刀を振るっている。
肩で息をしているマーヴィンと、呼吸を弾ませることもしないヘメティの差は歴然で、ソーマはシェイドから意識を逸らして彼等の『兄弟喧嘩』という名の殺し合いを見ていた。
ヘメティの刀がマーヴィンの服も皮膚も肉も切り裂き、彼の命を悪戯に生死の境まで追い遣る。それを止めようと声だけでも張り上げるアレスにすら容赦はない。
つい数十分前までは逆だった筈なのに、マーヴィンがその場に膝を着く。それをソーマが認識したとほぼ同時に、耳の端でからん、というやけに軽い音を聞いた。
視線を向けてみれば、そこにあったのは血に濡れた長剣だけ。その場に居た筈のシェイドの姿は既に無い。
その代わりに、とでも言うように聞こえてきた足音と転々と切取線のように続く鮮血のお陰か、彼の動向は知ることができたのだが。
ソーマはその場に縫い止められたかのように動くことも出来ず、傍観者のようにして立ち尽くした。
その間にも、当然の事ながらヘメティの暴走は続いている。
ぼろぼろになった黒い燕尾服を身に纏い、降り積もったばかりの雪のように白かった髪を汚したアレスの頭を片足で踏みつけ、闇霧を携えていないもう片方の手では赤いコートを殊更赤く染めたマーヴィンの胸倉を掴んでいる。
ワインレッドのリボンタイも、今は解けて申し訳程度に首に掛かっている状態だ。白くフリルのついたシャツもまた、深い刀傷の形にじわじわと緩慢ながらも確かに血が滲んでコートと遜色ない色にまで変わっている。
気道を圧迫された苦しみからか、ただでさえ苦痛で歪んでいた顔を更に歪めてマーヴィンは軽く咳き込む。それと同時に微かに血が吐き出され、彼の白い口許を伝いヘメティの手に落ちた。
「……っ、殺したかったら殺したらどうなんだい? そんな薄気味悪い嗤いなんて、浮かべてないでさ」
傲慢な様子は相変わらずだが、ここまでくるとそれが虚勢であることなど誰が見ても明白なものだ。
自分の兄の赤い瞳を薄笑いを浮かべて見下ろし、彼はだらりと下げていた刀をマーヴィンの首へと突き付ける。
あと少し力を込めて刃を動かすだけで、いとも容易くこの戦争の終焉は訪れる。この世界も、恐らく破滅を迎える事になる。何せ支配者である男が居なくなるのだから。
その事をヘメティが考えられたのかは誰にも分からない。
彼は胸倉を掴んで引き寄せた支配者の首を切り落とそうと更に力を込め、微かに引きつったような笑い声を零す。
それに被るようにして足跡が止まり、小さな金属音が嫌なほどに辺りを包んだ。
その音に反応してなのか、それとも頭に感じる感触に対してなのか、ヘメティの動きが止まる。
「やめろ」
どんな状況であっても、よく通る声だった。
荒い呼吸の合間に吐き出された割には掠れてもいない声に、王族二人の血の色の瞳が見開かれる。
血を流す右肩の所為で力の入らない右腕を下げ、唯一無事な左手で拳銃を構えたシェイドは無理矢理に取り繕ったような無表情で、ヘメティを見据えていた。
その拳銃の銃口は、自分の仇であり憎悪を向ける相手であるアレスでも、支配者であるマーヴィンでもない。ヘメティの後頭部に震えることなく押し付けられていた。
「……ヘメティ、もうやめるんだ」
マーヴィンの胸倉を掴む手が震え、白くなるほどに力が込められているのを見て一度は止まった手の動きが再開されたことを悟る。
シェイドは短く息を吐き、ほんの少しだけ身体から力を抜いた。
「それ以上やったら、戻れなくなるぞ」
一度人を殺してしまえば、もう後には戻れない。自分に残るのは『人殺し』という汚名だけ。軍人という職業柄、シェイドはそれを身をもって理解していた。
その言葉がヘメティの耳に届くかどうか、というのは最早賭けで、これでもし彼の暴走とやらが止まらなければ容赦なく手足を撃ち抜いてでも止めてやろう、とシェイドは考えていた。それはソーマも同じで、彼もまたシェイドの背後からではあるがヘメティの首に鎌の刃を押し当てている。
暫くの間、戦闘の行われていたフロアにはマーヴィンの荒い息づかいとアレスの時折挙げる呻き声だけが反響し、尾を引いていた。
その静寂を破るように、マーヴィンは不意に嘲り笑うような声を漏らした。
「……僕らに、情けをかけるつもりかい? 軍人のクセに」
酷く掠れ、ぜぇぜぇという呼吸音に掻き消されそうなものだったが、辛うじて聞き取れた声に彼は態とらしく溜め息を零す。
「別に、貴様等を助けようとは思っていないさ。オレは仲間を助ける、それだけだ」
言葉とは裏腹に、銃口をヘメティの後頭部に押し付ける力は徐々に強まっている。ここで誤って引き金を引いてしまえば当然彼も死ぬことになるというのに。
シェイドが再び、今度は懇願でもするような声音でヘメティの名を呼ぶ。
その硬質の感触、首に当てられる冷たい感触に感化されたのか、それともただの『気紛れ』か——それとも、本当に『仲間』の声が届いたのか。
今までマーヴィンの胸倉を掴んで刀を突き付けているだけだったヘメティが、不意にマーヴィンから手を離した。
だがその動作もまた荒々しいもので、ゴミ袋を無造作に投げ捨てるようにして彼の身体を床に叩きつけるそれ。ろくな受け身も取れずに床に横たわったマーヴィンは身体中に奔った激痛に短く悲鳴を上げた。
その悲鳴を聞き届けたかのように、今度はヘメティがその場に膝を着く。銃をその場に落として彼の身体を間一髪の所で片腕を使い支え、シェイドは安堵に溜め息を漏らした。
かと思えば、今度はヘメティの身体からがっくりと力が抜け、強く掴んでいた筈の闇霧が滑り落ちる。重厚、とも耳障り、とも、何とも言えない音が、悲鳴や笑い声とは違い反響する事泣く掻き消えた。
ヘメティは既に意識を手放してしまっているのか、目を閉じて腕を力なく下げたままだ。薄笑いで情事吊り上がっていた頬も、眠っている時のような表情に変わっている。そのあどけなさすら残る表情は、今までのヘメティと何ら変わりない。
ただその頬にべったりと付着した血飛沫が、全てを物語っていた。
その血痕を何とも言えない表情で見つめていたシェイドだが、何の前触れもなく耳に飛び込んできた吐息のような嗤い声に顔を上げる。
床を這いずるようにして身体を僅かに起こし、血が染み込んで若干汚れてしまった焦げ茶の長髪を床に垂らしながらマーヴィンは嗤っていた。
楽しそうでもあり、悔しそうでもあり、それでいて嘲笑のようで、微笑のようで。優しげな上っ面の中、冷たく激しく渦巻く憎悪を秘めたような、普段のエゴイズム溢れる笑いとは全く別の意味で悪寒がする嗤いだった。
「…………悔しい、ね。うん、……実に悔しいよ。この場で……死にたいくらいに」
荒い呼吸の合間合間に、必死で言葉を紡ぐマーヴィンの頬に血と汗が混じった液体が流れ、床に落ちる。
死にたい、なんて言葉を口にした彼を鼻で笑い、ソーマはシェイドの背後からナトゥスの鎌の刃を向けてやった。
「……今この場で、殺してやることもできるが?」
氷。その一言に尽きる冷たさを秘めた藍色に射抜かれてもマーヴィンは笑う事を止めず、鉄パイプから手を離してコートのポケットから何かを取り出せばきゅっ、と手に握る。
彼の手に包み込まれたそれはかなり小さなものなのか、その正体が何なのか確認することもできない。
「いや、遠慮しておくよ。……もっと楽しみたいんだ、僕は。この世界を、ね……だから、」
そこで一度言葉を句切ったマーヴィンはちらりとヘメティを見てから、口許に微笑を浮かべて手に握った『それ』を指先で摘む。
金属光沢を放つ立方体のそれはパッと見では金属製のサイコロにも見える。だがこの場でそれを取り出したという時点で、小さな小さなサイコロが何らかの『兵器』であることは目に見えて分かることだ。
起爆スイッチを押すことで作動するような超小型の爆弾か、と一瞬身構えたシェイドの目の前で、マーヴィンはふふっ、と嗤って妖美とも取れる笑みを浮かべた。
それと同時にそのサイコロ状の物体を摘む指に力が込められ、カチッというやけに軽い音と共に光が辺りを包み込む。
「……だから、ここは逃げることにしておくよ。……アレスも僕も、……ヘメティもぼろぼろだからさ」
マーヴィンの消え入りそうな掠れ声は聞こえるものの、目映い光の所為で目を開けていることすらままならない。シェイドはヘメティの身体を支えている手とは違う手——丁度傷を負った手で反射的に目を覆っていた。
ソーマも同じように目を眇め、舌打ちして視界を覆う。
その光自体は数分どころか数十秒もせずに収まり、二人はゆっくりと腕を降ろせばお互いに顔を顰めた。
「次元歪曲式の転送装置だったか……くそっ!」
化学による技術に魔力や魔術を加え、作動することにより自分と自分の周囲、もしくは製造過程でインプットしておいた人間を別の空間へと転送させる装置。どんな仕組みなのか詳しくは知らないが、聞いたことはあった。
恐らく、というよりも確定であるのだが、彼等の転送先はマーヴィンの自室かどこかの病院だろう、とも思う。
シェイドは悪態を吐き、アレスもマーヴィンも忽然と居なくなっている空間を見る。
その場に彼等が居たという痕跡といえば、床に滴り落ちている血だけだ。アレスに至ってはそんな痕跡すら殆ど感じられない。
この状態では、恐らくラスター達を追っていたハウンドもまた同じように消えているのだろう。
背後でソーマが溜め息を吐いて能力を解除し、今までその手に握っていた白銀の鎌を青白い粒子として霧散させるのを感じながら、シェイドは悔しさから苦虫をかみつぶしたような表情で床の血溜まりを見つめていた。
[樹海] ┗(^o^ )┓三
俺が混乱するのでまとめてみました。
現在俺の脳内にある話、もとい執筆中の話、執筆予定の話等々。
え? 何で今更やったんだって? シュリさんに影響されただけよ?←
ですが粗筋などはないのであんまり面白くないかもです。ただこれからの俺の活動方針がチラッ☆と見れるかも知れません。
長いので追記へどうぞ ノ
現在俺の脳内にある話、もとい執筆中の話、執筆予定の話等々。
え? 何で今更やったんだって? シュリさんに影響されただけよ?←
ですが粗筋などはないのであんまり面白くないかもです。ただこれからの俺の活動方針がチラッ☆と見れるかも知れません。
長いので追記へどうぞ ノ
リレイズbot始めました
りれいずbot
◆りれいずbotとの遊び方◆
・まず話しかけてみる
話しかけるとランダムでキャラが返信してくれます。ダーグウェッジ家の比率が高いのは三人いるからです(シェイド・ラスター・アノード)。ヘメティの比率はそんなに高くありません。
普段は本編の台詞(主にシリアス)をつぶやきます。
時折リレイズ外伝の「Dunkelheit.」、「異形狩り」などの台詞も。そこまで多くはありません。
そして堂々とネタバレの台詞ツイートも混ざっています……が、台詞だけで全てを理解するのは難しいと思われるので皆様の妄想力を飛躍的にうpさせる為の(強制終了
一応過度のネタバレと思われる台詞(ヘメティの正体暴露、ラスターの真意等)はありません。
・反応する単語
「おはよう」「眠い」「おやすみ」「ただいま」等、基本的な単語には大体反応するようにしています。
少しマニアックなものとして、「ぎゅっぎゅ」と「ちゅっちゅ」も準備万端。
最早俺得ですが「死にたい」と冗談でもリプすると慰めてくれたり突き放してくれたり、といった反応も見せてくれます。大体はアーシラトが慰めてくれる……筈です(ランダムなので保証はできません^p^)。
若干アノードがツンデレだったりしますが気にしないで下さい。
「イメソン」「イメージソング」という言葉にも反応します。これらにはキャラ個人個人のイメージソングをキャラが直々に教えてくれます。
ちなみにイメージソングとはいえ俺の趣味が主ですので、余り期待しないでください。ボーカロイド、アリプロが多めだったり。
「ソーマ」や「大佐」など、キャラの名前や階級で呼ぶとそのキャラが反応を示してくれます。
・諸注意・小ネタ
アレスは基本として礼儀正しく、本編のような主厨っぷりは余り見られません。
ですが「主厨」とリプしてみると切れる寸前のアレスが見れます。
そして裏設定としてお遊び心。「非処女」とリプしてみてください。
とある方がキョドります。
未だ本編に出ていないキャラも出てきますが、あまり気にしないでお楽しみ下さい。
ソーマの台詞が少ないのは、ソーマが既にbotとして独立しているからです。
こちらも合わせてお楽しみ頂けると俺が喜びます @r_soma_bot
ゆっくり楽しんでいってね!!
りれいずbot
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・まず話しかけてみる
話しかけるとランダムでキャラが返信してくれます。ダーグウェッジ家の比率が高いのは三人いるからです(シェイド・ラスター・アノード)。ヘメティの比率はそんなに高くありません。
普段は本編の台詞(主にシリアス)をつぶやきます。
時折リレイズ外伝の「Dunkelheit.」、「異形狩り」などの台詞も。そこまで多くはありません。
そして堂々とネタバレの台詞ツイートも混ざっています……が、台詞だけで全てを理解するのは難しいと思われるので皆様の妄想力を飛躍的にうpさせる為の(強制終了
一応過度のネタバレと思われる台詞(ヘメティの正体暴露、ラスターの真意等)はありません。
・反応する単語
「おはよう」「眠い」「おやすみ」「ただいま」等、基本的な単語には大体反応するようにしています。
少しマニアックなものとして、「ぎゅっぎゅ」と「ちゅっちゅ」も準備万端。
最早俺得ですが「死にたい」と冗談でもリプすると慰めてくれたり突き放してくれたり、といった反応も見せてくれます。大体はアーシラトが慰めてくれる……筈です(ランダムなので保証はできません^p^)。
若干アノードがツンデレだったりしますが気にしないで下さい。
「イメソン」「イメージソング」という言葉にも反応します。これらにはキャラ個人個人のイメージソングをキャラが直々に教えてくれます。
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「ソーマ」や「大佐」など、キャラの名前や階級で呼ぶとそのキャラが反応を示してくれます。
・諸注意・小ネタ
アレスは基本として礼儀正しく、本編のような主厨っぷりは余り見られません。
ですが「主厨」とリプしてみると切れる寸前のアレスが見れます。
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未だ本編に出ていないキャラも出てきますが、あまり気にしないでお楽しみ下さい。
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文章サイトバトン
⇒はじめに
★二次でも創作でも書いてる人ならやっちゃえ!なバトン。正直に答えなきゃ駄目ですよー。
1.サイト名とHN
魔界に堕ちよう/赤闇
2.いつからそのサイトやってる?
去年の四月辺りから。
3.ちなみにジャンルは
オリジナルファンタジー小説恥曝しブログ。
4.自分の作品で個人的にお気に入りな作品を貼ってランク付けして
1位:りれず(RELAYS - リレイズ -
2位:Dunkekheit. →リンク
3位:かるま(- KARMA -
4位:逢魔ヶ刻の灯火(BL・紛失済
5位:無機物の腕に抱く(BL・創作アンソロ提出作品
えっなにこれ何て羞恥プレイ?
5.どのような文が好きですか?
堅苦しい文章しか書けないけど、たまには柔らかくて綺麗な文章を書いてみたいな←
6.苦手な文章はありますか?
綺麗な文章と柔らかい文章。
7.あなたの作品は『陽』と『陰』どちらだと思いますか?
断然後者。絶対後者。陰。
8.話を書いている時の苦労や楽しさはありますか?また、それはどんなものですか?
自分の語彙力のなさには苦労しっぱなし。
でも楽しいのは自分の思い描いていた話が文章になってしっかり存在できる事とか?
9.スランプに陥ったときの対処はありますか?
現実逃避と放置に限るわよ←
10.ネットに公開する際、フォントの大きさや書体、また文章全体のレイアウトで心掛けていることはありますか?
いや全然。何も気にかけてない。読み手のこと考えてない分けじゃなくて、携帯小説みたいなスッカスカの小説しか読めない人間に読んで欲しくない。
いや、偉そうなこと言える人間じゃないけどさ。
11.今書いてる作品のテーマソングをつけるなら何?
りれず/初音ミク「鳥葬」or初音ミク「ワールズエンド・ダンスホール」
Want/初音ミク「Mrs.Pumpkinの滑稽な夢」
かるま/初音ミク「炉心誘拐」orバンプの「カルマ」
Dunkelheit./あまり考えたことないけど多分アリプロの「亡國覚醒カタルシス」
逢魔ヶ刻の灯火/初音ミク「ローリンガール」
12.では妄想になりますがもし貴方の小説が漫画化や同人誌化された場合、希望の作家さんを教えてください。
黒執事の枢やなさんかD,グレの星野桂さんに…!
13.↑どの作品を描いてもらいたいですか?(妄想)
一番思い入れのあるりれずで←
14.以下のイメージに当てはまる文章を書く管理人様に回してみましょう
・感動的 ふ
・ダーク り
・可愛い │
・綺麗 で
・癒し す
・切ない お
15.では、心惹かれるサイトとはどんな雰囲気ですか?
特に考えたことない…
16.心惹かれる小説ってどんな?
ファンタジー。そりゃもうファンタジーがいい。
17.心惹かれるブログってどんな?
考えたこともない。
18.最後に一言、または回すひとをどうぞ*お疲れ様でした!
最近ソーマが好きすぎて生きるのが辛い。ふりー。
⇒はじめに
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去年の四月辺りから。
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4.自分の作品で個人的にお気に入りな作品を貼ってランク付けして
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えっなにこれ何て羞恥プレイ?
5.どのような文が好きですか?
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6.苦手な文章はありますか?
綺麗な文章と柔らかい文章。
7.あなたの作品は『陽』と『陰』どちらだと思いますか?
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8.話を書いている時の苦労や楽しさはありますか?また、それはどんなものですか?
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10.ネットに公開する際、フォントの大きさや書体、また文章全体のレイアウトで心掛けていることはありますか?
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いや、偉そうなこと言える人間じゃないけどさ。
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りれず/初音ミク「鳥葬」or初音ミク「ワールズエンド・ダンスホール」
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かるま/初音ミク「炉心誘拐」orバンプの「カルマ」
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12.では妄想になりますがもし貴方の小説が漫画化や同人誌化された場合、希望の作家さんを教えてください。
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13.↑どの作品を描いてもらいたいですか?(妄想)
一番思い入れのあるりれずで←
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18.最後に一言、または回すひとをどうぞ*お疲れ様でした!
最近ソーマが好きすぎて生きるのが辛い。ふりー。
俺はこうしてまたトラウマを一つ抱えて時間に溺れながら辛うじて息をするしかできないんだろうなぁ。
いっそのこと「お前のせいだ」って罵ってくれた方が楽だったんだよ。宣言通りに1ヶ月以上経ちました。それどころか2ヶ月(ry
機関本部の最上階——とはいってもそこまで高い建造物でもない為に四、五階程度だが——に位置する司令室の執務机の前にダグラスは座っていた。
喧しいサイレンも、耳障りな銃声も、ここまでは届かないらしく殆ど聞こえてこない。ただその激しさだけは張り詰めた空気や振動からも伝わってくる。
何故総司令官がまず最初に逃げなかったのか。
別に格好付けでもないし、ここまで辿り着いた彼等を自分の力で討ち取ろうだとか、そういうことを考えているわけではない。当然ここは逃げるべきだと理解している。
ただ自分だけが尻尾を巻いて逃げるというのがどうしてもできなかった。それだけだ。
下の階では本部陥落を防ぐべく、侵入者を撃退すべく戦闘要員である彼等が動いているというのに、その彼等を置いてさっさと自分達だけ安全区域に逃げるなんて事が出来るわけもない。いや、だからこそ批難すべきなのだろうが、ダグラスにはそれが出来ない。
生来の性格が影響しているのかもしれないし、彼のポリシーともいえるそれが関係しているのかもしれない。
ダグラスは椅子に深く腰掛け、そのまま執務机に両肘をついて組んだ手に額を着けていた。
組まれた手には何かが強く握られているようで、親指の隙間からシルバー製のリングのようなそれが覗き蛍光灯の光を反射して鈍く光っていた。
眼鏡の奥に見える筈の瞳は強く閉じられ、その光を差し込ませる事はない。まるで全てを拒絶するように、もしくは何かを強く祈るように、ダグラスは手を組んで目を閉ざしている。
自分は何て無力なのだろうか。ただ指示を出すだけで、高みから見ていることしかできない。戦地に赴いて彼等の助けになることも出来ない『お荷物』。
総司令官という地位には自分から望んでなった。だが、それが余計に苦痛になるなんて。
そこに『彼』が関わればその無力感と葛藤は更に大きくなる。
アイドは彼の事を「そこまで精神が弱いとは思えない」という風に言っていたが、それは楽観的すぎるのではないか。彼はまだ成人もしていないそれこそ子供で、精神も安定しているとは言えない年齢だろう。
その上彼は自分が何者なのかすら理解できていない。『自分』を構成する記憶を殆ど失っていると言って良い。
だからこそ、怖い。恐ろしくて仕方がないのだ。
彼が自分のたがを外してしまい、そのまま自分の力に踊らされてしまう事が。
RELAYS - リレイズ - 68 【踏み外した足の行き先】
何を今更、という感じだが、薄々嫌な予感はしていた。
だがそれから嫌だ嫌だと目を逸らして、そんな事はないんだと自己暗示をかけて、俺は彼にそれを言われるまで自分の中に芽生えたそれと向き合おうとしなかった。
この絶望とやらは、そのツケなのかもしれない。延々と逃げ続けた自分への。
呼吸が荒く、短くなっていくのが自分でも解る、自分の頬を汗が伝い落ちるのが痛いほどによく解る。
それでもどうしても目の前にいる『兄』から眼を外せず、俺はただ何も言えないままで立ち竦んでいた。
「——君は僕を捨てた。そして僕は君を捨てた。その結果がこれさ!」
他人を追い詰めることに至福を感じるらしいマーヴィンは、変わらぬ笑みを浮かべたままで両手を広げて高らかに言葉を紡ぎ続ける。本来ならば聴き取りやすく良く通る筈のその声が、やけに遠く聞こえた。
闇霧の柄を握る手が震えている事に気付き、更に強く握り締めてどうにかその震えを押さえようとしてみるもののそれも上手くいかない。
「……辛い? 苦しい? それとも僕が憎いか? ……もしくは、何も考えたくないくらいに絶望してる?」
呪詛のように自分に投げかけられる言葉を聞きたくない、そう思ってその場にうずくまって耳を塞ぎたくとも、それをする術はない。この手から武器を滑り落とせばその時点で俺の負けだ。だから、黙ってマーヴィンを見据えてきついほどに拳銃と刀を握り締める以外にできなかった。
——口許に弧を描き、手に鉄パイプを携えただけのその姿がやけに恐ろしく思えたのは何故だろうか。
「何だ、君は『この程度』でもう何も答えられないのかい? ……仕方がないから、そこの君に話を聞くことにしよう」
携えていた細身の鉄パイプの先で指し示した先に居るのは、今までの話を普段通り興味なさげに聞き流していたらしいソーマだった。彼に話を聞く、と言っても、彼は何も知らない筈なのに。
ソーマは最初に自分に「口を挟むな」と一滴託せに突然自分に話を振られたこと、そして鉄パイプで示されたことに対しての苛立ちや不快感で顔を顰めながらもマーヴィンの眼を見返した。
「……初対面の俺に、何を訊くつもりだ?」
この状況下でも余裕を失わず、マーヴィンを小馬鹿にするように鼻で笑い飛ばしたソーマの言うことは尤もだと思う。話を聞くなら、無理にでも俺から聞き出した方が早いに決まっている。
ほんの僅かなものだが、冷静なソーマの様子に現実に引き戻されたような感覚を覚えた。当然俺自身はまだ混乱している——いや、混乱なんて言葉では言い表せない程のぐるぐると渦巻く感情。それを抱えている。
それでも幾分かはマシになった頭で、自分の意志でちらりとマーヴィンの隣に佇むアレスを見る。
彼は自分から自発的に何かを言うでもなく、ただただマーヴィンに付き添う影のようにしてすぐ傍に立っているだけ。己の武器である拳を今は下ろしているものの、俺達に対しての殺意は微塵も薄れてはいない。
もしも自分の主であるマーヴィンに手を出したらすぐに殺してやる。アレスの闇夜のように暗い瞳はそう語っていた。
機械人形というのならばその瞳もまた人の手、マーヴィンの手によって造られたものなのだろうが、それでもここまで『念』を感じてしまう。そこらの人間とは比べものにならない殺意。それが主への忠誠心と崇拝の上に成り立っているのだ。
「そうだね、君と僕は初対面だ。だけど訊ける事はある」
苦笑してソーマに同意し、指し示していたままだった鉄パイプを杖のようにして土埃にまみれた床についた彼はにたり、と凶悪な笑みを浮かべた。
「……君、気付いていただろう?」
勿論その言葉が俺に向けられている訳ではないのだが、上手く意味が汲み取れない。
だが尋ねられた当の本人はその意味を十分に理解しているらしく、感情の読み取りづらい藍色の瞳でマーヴィンと視線を絡めれば再び嘲笑めいた笑みを零した。
「気付かないとでも思っていたのか?」
「いーや、君なら感付いてるだろうと思ったよ。観察眼の鋭さが他人と比べものにならないからね。あの戦場でそれは十分解った」
リグスペイアでの邂逅のみで、彼は既にソーマの観察眼やら勘の鋭さを見抜いていた。他人を拒絶し続けて感情を表に出そうともしない彼からそれを見抜けるマーヴィンの方こそ鋭いのではないかとも思う。
マーヴィンはくすくすと笑いながら鉄パイプを持っていない片手で顔を覆う。
「…………元々、あの時点で大体そんな予感はしていた。あくまでも『予感』だ。決定的な証拠もなければ、確定できる何かもない」
淡々と、それでいて聴き取りやすい音程を意識しているのかマーヴィンに説明するような口調でソーマはただ言葉を紡ぎ、彼から視線を外すこともしなかった。
だが自らの武器を構える手には未だに力が込められているし、何か攻撃を受ければすぐに反応できるであろう程の警戒心も露わにしている。それは向こうも同じ事で、そんな一触即発の状態でこんな風に話をしているというのが不思議なくらいだった。
一度言葉を句切ったソーマに、マーヴィンは「それで?」と続きを促して顔を覆っていた手を外す。
「——まあ、これも確定する材料としては不十分なのだろうがな。……貴様が何故あの時にコイツだけを捕らえようとしたのかだ」
ベガジールでの奇襲を受けた際の事。ソーマの言葉が吐き出される度、彼の憶測や予想や確信が吐き出されようとする度、ましになっていた思考力がまたよく解らない感情に覆い尽くされるような、自分がどこかに堕ちていくような錯覚に囚われる。
「……大方、自分の手で捨てた奴を今度は自分の手で始末しようと思ったんだろう? 今後一切邪魔をされない為に」
どうだ? と続けたソーマに、マーヴィンは数秒間ほどきょとんとした様子で言葉を失っていたものの、すぐにその口許に弧を描けば鉄パイプを持ったままで器用に拍手し始めた。ぱちぱち、という軽快で間抜けな音は、この緊迫した状況に不釣り合いすぎるそれ。
似付かわしくないその音は、底まで反響することもなく虚しくフロアに吸い込まれた。
「——素晴らしいね! 大・正・解!! 本当に! 間違いなんて一つもないくらいだ!」
楽しげな響きを持ち、男性のにしては高らかな声。テノールではあるのだろうが、やはり気分が高揚しているということも関係しているのか地の声よりも随分高いように聞こえる。
そんなマーヴィンの声も殆ど鼓膜を震わせてこなかった。実際は聞こえているのだろうが、本能的に彼の声を聞くことを拒否している、といった感じだろうか。
彼はそこで話を終わらせる事をせず、更には今まで黙ってソーマの『推理』や自分の演説を聴いていたシェイド大佐にまでその赤い瞳を向けた。
「どうだい、大佐! 君だって薄々解っていたんじゃないのかい!? 彼が自分が忌むべき憎むべき、こちら側の人間なんだって事をさぁ!」
そう話しかけられた瞬間、包帯に隠された彼の表情が一瞬鋭いものへと変わったような感覚を覚える。シェイド大佐の瞳は先程までとは違う光も宿していて、まるでマーヴィンの言葉が事実だと肯定するようなものでもあった。
彼は暫く思考を巡らせるような様子で口を閉ざしたままだったが、不意にマーヴィン達に銃口を向けたままで口を開いた。
「ああ、その通りだ。薄々気付いていたさ。……当然、そこまで深く疑ったりはしなかったが」
最初こそは彼の声に絶望に良く似たそれを抱いたものの、すぐに打ち消すようにして救いの言葉ともとれるそれが俺の耳に届く。
当然それはマーヴィンにも届いていて、満足そうな笑みは少しむっとした表情に変わっていた。
「……どうしてだい? 僕らに仲間を殺された君なら、すぐに行動に移すと思ってたのに」
残念だなぁ、なんて間延びした声でのんびりとのたまうマーヴィンはシェイド大佐の答えに御立腹のようで、人の良い笑顔——いや、この状況ではただ恐ろしいだけだが、それも穏やかで緩やかで、それでいて傲慢な雰囲気も失われてしまっている。
「ならばオレからも質問させて貰おう。何故そう考える必要がある?」
逆に質問で返されたことにも不快感を抱いたらしく、マーヴィンはぴくりとこめかみをひくつかせる。彼の表情や心境の変化を察しておきながら、シェイド大佐は言葉を続けた。
「生憎だが、仲間を売る程、オレは冷酷になりきれないからな」
仲間。その短い単語の響きがまるで俺の胸に満ちる絶望や戸惑い、様々な負の情念を浄化していくようにゆっくりと染み渡る。
くすりと苦笑めいた笑みを浮かべてはっきりと言い放った彼に、マーヴィンは今度こそ顔を歪めて舌打ちすれば一度は鞘に収めていた剣を再度鉄パイプを持っていない手に持った。
「……つまらない、つまらない、つまらない! 全く面白くないんだよ、偽善的でさ!!」
声を張り上げて怒鳴るように吐き捨て、マーヴィンは鉄パイプと細身の長剣をしっかりと持ち直せば、つい数分前まではちらつくことさえなかった殺意をその瞳に宿らせて此方を睨み付けてくる。
その姿は威圧感や気迫、というよりも純粋な殺意と嫌悪を内包しているかに見えた。流石に以前出会った死神ほどの殺気や愉悦はないにしろ、やはり本能的にか恐ろしいと感じてしまう。
怖気が立つかのようなそれを肌で感じ取るのとほぼ同時に、今まで口を閉ざしたまま主の言動を見守っていたアレスが腰を沈め、軽く地を蹴る。
その動きには前触れも殆ど無く、不意を突かれたという表現が正しいとも思う。
シェイド大佐はアレスを狙うべく両手の拳銃の銃口を向け、彼と同じくソーマもまた応戦すべく鎌の柄を持ち直せば自分から足を踏み出しているというのに、俺は腕を上げる事が出来ずに居た。
せめて攻撃を受け止めたり防いだりすることはしなければならないのに、それができない。
シェイド大佐やソーマとは分が悪いと感じたのか自分に向かってくるアレスの手、掌打が俺に届くのが先か、二人の攻撃がアレスを襲うが先か。
そのぎりぎりの状況に耐えられず反射的に目を閉じるも、いつまで経ってもその衝撃も銃声も聞こえてこない。
それに恐る恐る目を開いてみれば、アレスの白い手袋が嵌められた手は眼前にあり、あと数センチで俺を吹き飛ばすという所まで迫ってきていた。だがその手は動いておらず、それどころか彼の身体の動き自体が止まっている。
この現象に対して一番驚いているのは他でもないアレス本人で、彼は驚愕にその黒い瞳を見開いていた。
「……どうしたんだい、アレス」
訝りに満ちた、それでいて苛立ちを含んだ声音でマーヴィンは自らの従者に尋ねるも、その問いを何発もの甲高い銃声が掻き消した。
短い悲鳴を上げて吹き飛ばされ、受け身を取ることも出来ずにその場に崩れ落ちたアレスに特に大丈夫かと声を掛けることもなく、マーヴィンは彼に視線を向ける。
「——まさか、ここで『身体が動きません』なんて事はないよね?」
見ていれば一目瞭然だが、主の言葉が図星だったらしくアレスは頷くことも出来ずに視線を地に落として口を噤んでしまう。その様子は明らかに肯定だったし、彼自身が戸惑っているということも誇示していた。
「…………何が起こったのかは知らないが、好都合だ」
「全く、面倒臭いなぁ。……仕方がないから、僕が彼の代わりに相手をしてあげるよ」
再度拳銃を持ち替えて構えたシェイド大佐の呟きの声に被さるようにして、マーヴィンは困ったように目尻を下げて口角を吊り上げる。
マーヴィンはそれからすぐに表情を変えて俺に眼を向ければ、意地の悪そうな凶悪な笑みで口許を形作った。
「大丈夫だ、君はあとでゆっくりと遊んであげるからさ。少し待っているといいよ、ヘメティ」
彼が自分の名を口にする度、言葉では言い表せないような感覚が身体を駆け巡る。恐怖とは少し違うこれは、嫌悪に良く似ていた。
片方の拳銃でアレスを狙いながらもう片方の銃でマーヴィンを狙い、シェイド大佐は彼に向けて躊躇うことなく引き金を引いた。
だが放たれた銃弾をマーヴィンは難なく長剣で弾き落とし、緩やかな足取りで彼は一歩だけ前に出る。
銃弾でも弾き返されるのならば当然ソーマの扱う魔術も全てが意味を成さない物で、彼もまたそれを理解しているのかすぐに地面を蹴れば跳躍してマーヴィンへと鎌の刃を振り下ろした。
「……甘いよ」
短い言葉を紡ぎ終わるのが早いか、すぐに彼は剣でナトゥスの刃を防ぎ今度は鉄パイプでソーマを狙ってその腕を振りかぶる。
自分に向けられて振り下ろされるそれを間一髪で避けたものの、マーヴィンはそれも予想していたのかソーマの腹部へと蹴りを繰り出せば力の限り彼の身体を蹴り飛ばした。
十八歳という歳やその長躯にしては細いソーマの身体が宙を舞い、俺の横を掠めて背後の壁へと叩き付けられる。その音とソーマの呻き声がやけに耳に響いて、一瞬耳を塞いでしまいたい衝動に駆られた。
シェイド大佐もそれらの声と音に顔を顰め、今までアレスに向けていた拳銃も使いマーヴィンを睨み付けて立て続けに銃の引き金を引いていくも、その銃弾は一発も当たるどころか掠る事なく彼の防御の前に弾かれる。
彼の銃が一体何丁あるのか正確な数は解らないが、このままでは弾を浪費するだけで意味を成さない。
それを告げようと口を開いた瞬間、背後からも全く同じ鋭い声が聞こえてきた。
「……シェイド、弾を浪費するな! 貴様では分が悪すぎる事程度解るだろうが!」
荒い息の合間に紡がれた怒声に、二丁拳銃を構える彼の身体が固まる。
「…………どちらでも同じだよ。どうせ君達は負けるんだ」
全てを見透かしたようにマーヴィンは言う。こちらがそんな言葉を受け入れるとでも思っているのか、ただ茶化しているだけなのか。
未だに銃口も向けられず、刀の切っ先すら向けられずに居る俺の横をまたソーマが通り過ぎ、マーヴィンに飛び掛かっていく。シェイド大佐はただ黙って拳銃を握り締めているだけで、彼の邪魔をしてしまわないようにと必死で抑えているようにも見えた。
マーヴィンはまたも難なくソーマの一撃を鉄パイプで受け止めれば、今度は持っていた長剣をまるで槍投げの要領で軽々と投げる。
俺に向けられた物だろう、と勝手に解釈していたそれを避けるべく足を一歩後ろに踏み出した途端、今度は押し殺したような悲鳴が斜め前方から耳に飛び込んできた。
「大佐、ッ!?」
先程マーヴィンが放った長剣はシェイド大佐の左肩を射抜き、そのまま深々と彼の身体と床を縫いつけていた。どれだけの力で放ったのかは解らないが、恐らく余程の力で彼は剣を手放したのだろう。
シェイド大佐は痛みに苦悶し、顔を歪めて傷口を押さえている。立ち上がれずに居る彼の指の隙間から血が垂れ、白い手袋を徐々に赤く染め上げていった。
ここまで来ても恐怖を拭えない、それどころか足が地面に縫いつけられたかのように動かない。そんなに自分の手を汚したくないのか、と俺は自分のことなのにもかかわらず他人事のように、どこか頭の片隅で思っていた。
ソーマは諦めることなくマーヴィンに向かっているが、傷は付けられていないらしい。逆に軽くあしらわれ、ただ疲労が溜まっているだけにも見える。
ここで俺が出向けば状況は変わるのか、それとも彼の足を引っ張るだけなのか。
アレスがほぼ戦闘不能に等しい状態の今、一対三という状況の筈が逆に此方が押されている。——否、俺は参加できていないのだから一対二だろうか。
このままではマーヴィンの言葉通りに負けるのが目に見えている。そうすればソーマもシェイド大佐も、勿論俺も彼の手で殺されるのは確実だ。
そう考えれば俺のするべき事なんてものは決まっているのに、何故か身体が動いてくれない。
足は前に出ることすら拒み、いつの間にやら気を抜いてしまえば崩れ落ちてしまいそうな程に震えている。呼吸も無意識の内に弾んでいて、頭が重くなるような、くらくらする感覚を覚えた。
どうして俺は今までも、今でもこうなのか。「ゆっくり克服できればそれでいい」なんて悠長な事は言ってられなかったのに。
何で、どうして、そんな意味もない自問ばかりが繰り返されても答えはなく、状況が悪化していくのが否応なしに目に飛び込んでくる。
暫くマーヴィンと鍔迫り合いのような状態になっていたソーマが再び弾かれ、それでも尚自分の武器を手放すこともなくただ向かっていく状況に対しての「どうして自分は何もできないのか」という自己嫌悪が湧き起こってくるも、どうしようもない。
力がないんじゃない、それを使おうとしていないだけ。
目の前で繰り広げられる光景と鳴り響く高く澄んだ金属音。その中でソーマが耐えきれずに膝を着いたのを視認したとほぼ同時に、ゆっくりと眠りにつくような緩やかさで、どこか心地良さすら持って俺の意識が強制的に切断された。
眠気を堪えてると何をしてるか解らない罠。
いっそのこと「お前のせいだ」って罵ってくれた方が楽だったんだよ。宣言通りに1ヶ月以上経ちました。それどころか2ヶ月(ry
機関本部の最上階——とはいってもそこまで高い建造物でもない為に四、五階程度だが——に位置する司令室の執務机の前にダグラスは座っていた。
喧しいサイレンも、耳障りな銃声も、ここまでは届かないらしく殆ど聞こえてこない。ただその激しさだけは張り詰めた空気や振動からも伝わってくる。
何故総司令官がまず最初に逃げなかったのか。
別に格好付けでもないし、ここまで辿り着いた彼等を自分の力で討ち取ろうだとか、そういうことを考えているわけではない。当然ここは逃げるべきだと理解している。
ただ自分だけが尻尾を巻いて逃げるというのがどうしてもできなかった。それだけだ。
下の階では本部陥落を防ぐべく、侵入者を撃退すべく戦闘要員である彼等が動いているというのに、その彼等を置いてさっさと自分達だけ安全区域に逃げるなんて事が出来るわけもない。いや、だからこそ批難すべきなのだろうが、ダグラスにはそれが出来ない。
生来の性格が影響しているのかもしれないし、彼のポリシーともいえるそれが関係しているのかもしれない。
ダグラスは椅子に深く腰掛け、そのまま執務机に両肘をついて組んだ手に額を着けていた。
組まれた手には何かが強く握られているようで、親指の隙間からシルバー製のリングのようなそれが覗き蛍光灯の光を反射して鈍く光っていた。
眼鏡の奥に見える筈の瞳は強く閉じられ、その光を差し込ませる事はない。まるで全てを拒絶するように、もしくは何かを強く祈るように、ダグラスは手を組んで目を閉ざしている。
自分は何て無力なのだろうか。ただ指示を出すだけで、高みから見ていることしかできない。戦地に赴いて彼等の助けになることも出来ない『お荷物』。
総司令官という地位には自分から望んでなった。だが、それが余計に苦痛になるなんて。
そこに『彼』が関わればその無力感と葛藤は更に大きくなる。
アイドは彼の事を「そこまで精神が弱いとは思えない」という風に言っていたが、それは楽観的すぎるのではないか。彼はまだ成人もしていないそれこそ子供で、精神も安定しているとは言えない年齢だろう。
その上彼は自分が何者なのかすら理解できていない。『自分』を構成する記憶を殆ど失っていると言って良い。
だからこそ、怖い。恐ろしくて仕方がないのだ。
彼が自分のたがを外してしまい、そのまま自分の力に踊らされてしまう事が。
RELAYS - リレイズ - 68 【踏み外した足の行き先】
何を今更、という感じだが、薄々嫌な予感はしていた。
だがそれから嫌だ嫌だと目を逸らして、そんな事はないんだと自己暗示をかけて、俺は彼にそれを言われるまで自分の中に芽生えたそれと向き合おうとしなかった。
この絶望とやらは、そのツケなのかもしれない。延々と逃げ続けた自分への。
呼吸が荒く、短くなっていくのが自分でも解る、自分の頬を汗が伝い落ちるのが痛いほどによく解る。
それでもどうしても目の前にいる『兄』から眼を外せず、俺はただ何も言えないままで立ち竦んでいた。
「——君は僕を捨てた。そして僕は君を捨てた。その結果がこれさ!」
他人を追い詰めることに至福を感じるらしいマーヴィンは、変わらぬ笑みを浮かべたままで両手を広げて高らかに言葉を紡ぎ続ける。本来ならば聴き取りやすく良く通る筈のその声が、やけに遠く聞こえた。
闇霧の柄を握る手が震えている事に気付き、更に強く握り締めてどうにかその震えを押さえようとしてみるもののそれも上手くいかない。
「……辛い? 苦しい? それとも僕が憎いか? ……もしくは、何も考えたくないくらいに絶望してる?」
呪詛のように自分に投げかけられる言葉を聞きたくない、そう思ってその場にうずくまって耳を塞ぎたくとも、それをする術はない。この手から武器を滑り落とせばその時点で俺の負けだ。だから、黙ってマーヴィンを見据えてきついほどに拳銃と刀を握り締める以外にできなかった。
——口許に弧を描き、手に鉄パイプを携えただけのその姿がやけに恐ろしく思えたのは何故だろうか。
「何だ、君は『この程度』でもう何も答えられないのかい? ……仕方がないから、そこの君に話を聞くことにしよう」
携えていた細身の鉄パイプの先で指し示した先に居るのは、今までの話を普段通り興味なさげに聞き流していたらしいソーマだった。彼に話を聞く、と言っても、彼は何も知らない筈なのに。
ソーマは最初に自分に「口を挟むな」と一滴託せに突然自分に話を振られたこと、そして鉄パイプで示されたことに対しての苛立ちや不快感で顔を顰めながらもマーヴィンの眼を見返した。
「……初対面の俺に、何を訊くつもりだ?」
この状況下でも余裕を失わず、マーヴィンを小馬鹿にするように鼻で笑い飛ばしたソーマの言うことは尤もだと思う。話を聞くなら、無理にでも俺から聞き出した方が早いに決まっている。
ほんの僅かなものだが、冷静なソーマの様子に現実に引き戻されたような感覚を覚えた。当然俺自身はまだ混乱している——いや、混乱なんて言葉では言い表せない程のぐるぐると渦巻く感情。それを抱えている。
それでも幾分かはマシになった頭で、自分の意志でちらりとマーヴィンの隣に佇むアレスを見る。
彼は自分から自発的に何かを言うでもなく、ただただマーヴィンに付き添う影のようにしてすぐ傍に立っているだけ。己の武器である拳を今は下ろしているものの、俺達に対しての殺意は微塵も薄れてはいない。
もしも自分の主であるマーヴィンに手を出したらすぐに殺してやる。アレスの闇夜のように暗い瞳はそう語っていた。
機械人形というのならばその瞳もまた人の手、マーヴィンの手によって造られたものなのだろうが、それでもここまで『念』を感じてしまう。そこらの人間とは比べものにならない殺意。それが主への忠誠心と崇拝の上に成り立っているのだ。
「そうだね、君と僕は初対面だ。だけど訊ける事はある」
苦笑してソーマに同意し、指し示していたままだった鉄パイプを杖のようにして土埃にまみれた床についた彼はにたり、と凶悪な笑みを浮かべた。
「……君、気付いていただろう?」
勿論その言葉が俺に向けられている訳ではないのだが、上手く意味が汲み取れない。
だが尋ねられた当の本人はその意味を十分に理解しているらしく、感情の読み取りづらい藍色の瞳でマーヴィンと視線を絡めれば再び嘲笑めいた笑みを零した。
「気付かないとでも思っていたのか?」
「いーや、君なら感付いてるだろうと思ったよ。観察眼の鋭さが他人と比べものにならないからね。あの戦場でそれは十分解った」
リグスペイアでの邂逅のみで、彼は既にソーマの観察眼やら勘の鋭さを見抜いていた。他人を拒絶し続けて感情を表に出そうともしない彼からそれを見抜けるマーヴィンの方こそ鋭いのではないかとも思う。
マーヴィンはくすくすと笑いながら鉄パイプを持っていない片手で顔を覆う。
「…………元々、あの時点で大体そんな予感はしていた。あくまでも『予感』だ。決定的な証拠もなければ、確定できる何かもない」
淡々と、それでいて聴き取りやすい音程を意識しているのかマーヴィンに説明するような口調でソーマはただ言葉を紡ぎ、彼から視線を外すこともしなかった。
だが自らの武器を構える手には未だに力が込められているし、何か攻撃を受ければすぐに反応できるであろう程の警戒心も露わにしている。それは向こうも同じ事で、そんな一触即発の状態でこんな風に話をしているというのが不思議なくらいだった。
一度言葉を句切ったソーマに、マーヴィンは「それで?」と続きを促して顔を覆っていた手を外す。
「——まあ、これも確定する材料としては不十分なのだろうがな。……貴様が何故あの時にコイツだけを捕らえようとしたのかだ」
ベガジールでの奇襲を受けた際の事。ソーマの言葉が吐き出される度、彼の憶測や予想や確信が吐き出されようとする度、ましになっていた思考力がまたよく解らない感情に覆い尽くされるような、自分がどこかに堕ちていくような錯覚に囚われる。
「……大方、自分の手で捨てた奴を今度は自分の手で始末しようと思ったんだろう? 今後一切邪魔をされない為に」
どうだ? と続けたソーマに、マーヴィンは数秒間ほどきょとんとした様子で言葉を失っていたものの、すぐにその口許に弧を描けば鉄パイプを持ったままで器用に拍手し始めた。ぱちぱち、という軽快で間抜けな音は、この緊迫した状況に不釣り合いすぎるそれ。
似付かわしくないその音は、底まで反響することもなく虚しくフロアに吸い込まれた。
「——素晴らしいね! 大・正・解!! 本当に! 間違いなんて一つもないくらいだ!」
楽しげな響きを持ち、男性のにしては高らかな声。テノールではあるのだろうが、やはり気分が高揚しているということも関係しているのか地の声よりも随分高いように聞こえる。
そんなマーヴィンの声も殆ど鼓膜を震わせてこなかった。実際は聞こえているのだろうが、本能的に彼の声を聞くことを拒否している、といった感じだろうか。
彼はそこで話を終わらせる事をせず、更には今まで黙ってソーマの『推理』や自分の演説を聴いていたシェイド大佐にまでその赤い瞳を向けた。
「どうだい、大佐! 君だって薄々解っていたんじゃないのかい!? 彼が自分が忌むべき憎むべき、こちら側の人間なんだって事をさぁ!」
そう話しかけられた瞬間、包帯に隠された彼の表情が一瞬鋭いものへと変わったような感覚を覚える。シェイド大佐の瞳は先程までとは違う光も宿していて、まるでマーヴィンの言葉が事実だと肯定するようなものでもあった。
彼は暫く思考を巡らせるような様子で口を閉ざしたままだったが、不意にマーヴィン達に銃口を向けたままで口を開いた。
「ああ、その通りだ。薄々気付いていたさ。……当然、そこまで深く疑ったりはしなかったが」
最初こそは彼の声に絶望に良く似たそれを抱いたものの、すぐに打ち消すようにして救いの言葉ともとれるそれが俺の耳に届く。
当然それはマーヴィンにも届いていて、満足そうな笑みは少しむっとした表情に変わっていた。
「……どうしてだい? 僕らに仲間を殺された君なら、すぐに行動に移すと思ってたのに」
残念だなぁ、なんて間延びした声でのんびりとのたまうマーヴィンはシェイド大佐の答えに御立腹のようで、人の良い笑顔——いや、この状況ではただ恐ろしいだけだが、それも穏やかで緩やかで、それでいて傲慢な雰囲気も失われてしまっている。
「ならばオレからも質問させて貰おう。何故そう考える必要がある?」
逆に質問で返されたことにも不快感を抱いたらしく、マーヴィンはぴくりとこめかみをひくつかせる。彼の表情や心境の変化を察しておきながら、シェイド大佐は言葉を続けた。
「生憎だが、仲間を売る程、オレは冷酷になりきれないからな」
仲間。その短い単語の響きがまるで俺の胸に満ちる絶望や戸惑い、様々な負の情念を浄化していくようにゆっくりと染み渡る。
くすりと苦笑めいた笑みを浮かべてはっきりと言い放った彼に、マーヴィンは今度こそ顔を歪めて舌打ちすれば一度は鞘に収めていた剣を再度鉄パイプを持っていない手に持った。
「……つまらない、つまらない、つまらない! 全く面白くないんだよ、偽善的でさ!!」
声を張り上げて怒鳴るように吐き捨て、マーヴィンは鉄パイプと細身の長剣をしっかりと持ち直せば、つい数分前まではちらつくことさえなかった殺意をその瞳に宿らせて此方を睨み付けてくる。
その姿は威圧感や気迫、というよりも純粋な殺意と嫌悪を内包しているかに見えた。流石に以前出会った死神ほどの殺気や愉悦はないにしろ、やはり本能的にか恐ろしいと感じてしまう。
怖気が立つかのようなそれを肌で感じ取るのとほぼ同時に、今まで口を閉ざしたまま主の言動を見守っていたアレスが腰を沈め、軽く地を蹴る。
その動きには前触れも殆ど無く、不意を突かれたという表現が正しいとも思う。
シェイド大佐はアレスを狙うべく両手の拳銃の銃口を向け、彼と同じくソーマもまた応戦すべく鎌の柄を持ち直せば自分から足を踏み出しているというのに、俺は腕を上げる事が出来ずに居た。
せめて攻撃を受け止めたり防いだりすることはしなければならないのに、それができない。
シェイド大佐やソーマとは分が悪いと感じたのか自分に向かってくるアレスの手、掌打が俺に届くのが先か、二人の攻撃がアレスを襲うが先か。
そのぎりぎりの状況に耐えられず反射的に目を閉じるも、いつまで経ってもその衝撃も銃声も聞こえてこない。
それに恐る恐る目を開いてみれば、アレスの白い手袋が嵌められた手は眼前にあり、あと数センチで俺を吹き飛ばすという所まで迫ってきていた。だがその手は動いておらず、それどころか彼の身体の動き自体が止まっている。
この現象に対して一番驚いているのは他でもないアレス本人で、彼は驚愕にその黒い瞳を見開いていた。
「……どうしたんだい、アレス」
訝りに満ちた、それでいて苛立ちを含んだ声音でマーヴィンは自らの従者に尋ねるも、その問いを何発もの甲高い銃声が掻き消した。
短い悲鳴を上げて吹き飛ばされ、受け身を取ることも出来ずにその場に崩れ落ちたアレスに特に大丈夫かと声を掛けることもなく、マーヴィンは彼に視線を向ける。
「——まさか、ここで『身体が動きません』なんて事はないよね?」
見ていれば一目瞭然だが、主の言葉が図星だったらしくアレスは頷くことも出来ずに視線を地に落として口を噤んでしまう。その様子は明らかに肯定だったし、彼自身が戸惑っているということも誇示していた。
「…………何が起こったのかは知らないが、好都合だ」
「全く、面倒臭いなぁ。……仕方がないから、僕が彼の代わりに相手をしてあげるよ」
再度拳銃を持ち替えて構えたシェイド大佐の呟きの声に被さるようにして、マーヴィンは困ったように目尻を下げて口角を吊り上げる。
マーヴィンはそれからすぐに表情を変えて俺に眼を向ければ、意地の悪そうな凶悪な笑みで口許を形作った。
「大丈夫だ、君はあとでゆっくりと遊んであげるからさ。少し待っているといいよ、ヘメティ」
彼が自分の名を口にする度、言葉では言い表せないような感覚が身体を駆け巡る。恐怖とは少し違うこれは、嫌悪に良く似ていた。
片方の拳銃でアレスを狙いながらもう片方の銃でマーヴィンを狙い、シェイド大佐は彼に向けて躊躇うことなく引き金を引いた。
だが放たれた銃弾をマーヴィンは難なく長剣で弾き落とし、緩やかな足取りで彼は一歩だけ前に出る。
銃弾でも弾き返されるのならば当然ソーマの扱う魔術も全てが意味を成さない物で、彼もまたそれを理解しているのかすぐに地面を蹴れば跳躍してマーヴィンへと鎌の刃を振り下ろした。
「……甘いよ」
短い言葉を紡ぎ終わるのが早いか、すぐに彼は剣でナトゥスの刃を防ぎ今度は鉄パイプでソーマを狙ってその腕を振りかぶる。
自分に向けられて振り下ろされるそれを間一髪で避けたものの、マーヴィンはそれも予想していたのかソーマの腹部へと蹴りを繰り出せば力の限り彼の身体を蹴り飛ばした。
十八歳という歳やその長躯にしては細いソーマの身体が宙を舞い、俺の横を掠めて背後の壁へと叩き付けられる。その音とソーマの呻き声がやけに耳に響いて、一瞬耳を塞いでしまいたい衝動に駆られた。
シェイド大佐もそれらの声と音に顔を顰め、今までアレスに向けていた拳銃も使いマーヴィンを睨み付けて立て続けに銃の引き金を引いていくも、その銃弾は一発も当たるどころか掠る事なく彼の防御の前に弾かれる。
彼の銃が一体何丁あるのか正確な数は解らないが、このままでは弾を浪費するだけで意味を成さない。
それを告げようと口を開いた瞬間、背後からも全く同じ鋭い声が聞こえてきた。
「……シェイド、弾を浪費するな! 貴様では分が悪すぎる事程度解るだろうが!」
荒い息の合間に紡がれた怒声に、二丁拳銃を構える彼の身体が固まる。
「…………どちらでも同じだよ。どうせ君達は負けるんだ」
全てを見透かしたようにマーヴィンは言う。こちらがそんな言葉を受け入れるとでも思っているのか、ただ茶化しているだけなのか。
未だに銃口も向けられず、刀の切っ先すら向けられずに居る俺の横をまたソーマが通り過ぎ、マーヴィンに飛び掛かっていく。シェイド大佐はただ黙って拳銃を握り締めているだけで、彼の邪魔をしてしまわないようにと必死で抑えているようにも見えた。
マーヴィンはまたも難なくソーマの一撃を鉄パイプで受け止めれば、今度は持っていた長剣をまるで槍投げの要領で軽々と投げる。
俺に向けられた物だろう、と勝手に解釈していたそれを避けるべく足を一歩後ろに踏み出した途端、今度は押し殺したような悲鳴が斜め前方から耳に飛び込んできた。
「大佐、ッ!?」
先程マーヴィンが放った長剣はシェイド大佐の左肩を射抜き、そのまま深々と彼の身体と床を縫いつけていた。どれだけの力で放ったのかは解らないが、恐らく余程の力で彼は剣を手放したのだろう。
シェイド大佐は痛みに苦悶し、顔を歪めて傷口を押さえている。立ち上がれずに居る彼の指の隙間から血が垂れ、白い手袋を徐々に赤く染め上げていった。
ここまで来ても恐怖を拭えない、それどころか足が地面に縫いつけられたかのように動かない。そんなに自分の手を汚したくないのか、と俺は自分のことなのにもかかわらず他人事のように、どこか頭の片隅で思っていた。
ソーマは諦めることなくマーヴィンに向かっているが、傷は付けられていないらしい。逆に軽くあしらわれ、ただ疲労が溜まっているだけにも見える。
ここで俺が出向けば状況は変わるのか、それとも彼の足を引っ張るだけなのか。
アレスがほぼ戦闘不能に等しい状態の今、一対三という状況の筈が逆に此方が押されている。——否、俺は参加できていないのだから一対二だろうか。
このままではマーヴィンの言葉通りに負けるのが目に見えている。そうすればソーマもシェイド大佐も、勿論俺も彼の手で殺されるのは確実だ。
そう考えれば俺のするべき事なんてものは決まっているのに、何故か身体が動いてくれない。
足は前に出ることすら拒み、いつの間にやら気を抜いてしまえば崩れ落ちてしまいそうな程に震えている。呼吸も無意識の内に弾んでいて、頭が重くなるような、くらくらする感覚を覚えた。
どうして俺は今までも、今でもこうなのか。「ゆっくり克服できればそれでいい」なんて悠長な事は言ってられなかったのに。
何で、どうして、そんな意味もない自問ばかりが繰り返されても答えはなく、状況が悪化していくのが否応なしに目に飛び込んでくる。
暫くマーヴィンと鍔迫り合いのような状態になっていたソーマが再び弾かれ、それでも尚自分の武器を手放すこともなくただ向かっていく状況に対しての「どうして自分は何もできないのか」という自己嫌悪が湧き起こってくるも、どうしようもない。
力がないんじゃない、それを使おうとしていないだけ。
目の前で繰り広げられる光景と鳴り響く高く澄んだ金属音。その中でソーマが耐えきれずに膝を着いたのを視認したとほぼ同時に、ゆっくりと眠りにつくような緩やかさで、どこか心地良さすら持って俺の意識が強制的に切断された。
眠気を堪えてると何をしてるか解らない罠。
「俺もうリレイズの67話を1周年に間に合わせるので力使い果たしたわ、1ヶ月は書かないよ」
宣言通り1ヶ月くらい書いてませんほんとごめんなさい。
気分が乗らないのもありますが文章が浮かびません、どうすればいいですか。これがスランプという奴ですか。
でもそろそろ書きだしていきたいです、1ヶ月に1話くらいやらないと何年かかっても終わらないwww
それはそうと待草さんのブログをリンクさせて頂きましたー。ありがとうござやす!
他にも凄く鬱々してて気分的にも辛いとか、色々あるんですけどね。
リレイズ書き直したい(´・ω・`)取り敢えずヘメティを根本から作り直したりしたいです。ヘタレは書いてて凄くストレスが(ry
アイツはヘタレというよりチキンな気がする。
宣言通り1ヶ月くらい書いてませんほんとごめんなさい。
気分が乗らないのもありますが文章が浮かびません、どうすればいいですか。これがスランプという奴ですか。
でもそろそろ書きだしていきたいです、1ヶ月に1話くらいやらないと何年かかっても終わらないwww
それはそうと待草さんのブログをリンクさせて頂きましたー。ありがとうござやす!
他にも凄く鬱々してて気分的にも辛いとか、色々あるんですけどね。
リレイズ書き直したい(´・ω・`)取り敢えずヘメティを根本から作り直したりしたいです。ヘタレは書いてて凄くストレスが(ry
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ソルジャー1st
趣味:
妄想!
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こちらは更新凍結しました
サイトにて活動中。
手描きブログ。
FF、DMC、TOAをメインにやる予定だったのに何かオリジナル増えそう。
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