I permanently serve you. NeroAngelo
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何でこんな時間に更新してるんだろうねっていう。
まあいつものことだからいいけどさあ、もう外がうっすら明るくなってきてるのよね。もう寝ないでモンハンしようかな。
やっぱり眠かったり気分が乗らないときに小説書いても駄目ですね。何か違う。違くなる。
だから進まないんですね解ります! 実はもう頭の中に流れできてて後は文章にするだけなのにできないんだ!!
取り敢えずリレイズはもう少しで序盤を抜けます。序盤を抜けたらトントントントンと色々物語が進む…予定。うん、悪魔で予定。
具体的には(ネタバレ)ヘメティの正体が解ったりダーグウェッジ家の男陣が終結したりアーシラトがまた出てきたり禁術師が出てきたりアルディックが死体として出てきたりソーマの両親殺した軍人二人組が出てきたりとかラスターの正体が暴露されたりとかソーマの師匠が出てきたりとか(ネタバレ終わり)します。
取り敢えずこれでも色々削除して頑張ったつもりです、はい。だってソーマが敵側に回るシーンなくなったもん。
実は今からでも入れようかなーとか考えてるけどどうだろうね。
その代わり最初考えてなかった展開になりました。
ちなみに今現在どこまで進んでるか簡単に表せばテイルズオブジアビスで言うアクゼリュス。そしてルークの正体が明かされ所だよ。
そういえば前にキャラの人気投票やったらヘメティがソーマ倍くらいの票取ったんだよね。
今ヘメティとソーマとアーシラトでやったらどうなるかなーと思った^p^
取り敢えずアレスは人気低いよね、っていうかアレか、マーヴィン厨すぎてウザいからか?←
そろそろ寝ます、おやすみなさ。
まあいつものことだからいいけどさあ、もう外がうっすら明るくなってきてるのよね。もう寝ないでモンハンしようかな。
やっぱり眠かったり気分が乗らないときに小説書いても駄目ですね。何か違う。違くなる。
だから進まないんですね解ります! 実はもう頭の中に流れできてて後は文章にするだけなのにできないんだ!!
取り敢えずリレイズはもう少しで序盤を抜けます。序盤を抜けたらトントントントンと色々物語が進む…予定。うん、悪魔で予定。
具体的には(ネタバレ)ヘメティの正体が解ったりダーグウェッジ家の男陣が終結したりアーシラトがまた出てきたり禁術師が出てきたりアルディックが死体として出てきたりソーマの両親殺した軍人二人組が出てきたりとかラスターの正体が暴露されたりとかソーマの師匠が出てきたりとか(ネタバレ終わり)します。
取り敢えずこれでも色々削除して頑張ったつもりです、はい。だってソーマが敵側に回るシーンなくなったもん。
実は今からでも入れようかなーとか考えてるけどどうだろうね。
その代わり最初考えてなかった展開になりました。
ちなみに今現在どこまで進んでるか簡単に表せばテイルズオブジアビスで言うアクゼリュス。そしてルークの正体が明かされ所だよ。
そういえば前にキャラの人気投票やったらヘメティがソーマ倍くらいの票取ったんだよね。
今ヘメティとソーマとアーシラトでやったらどうなるかなーと思った^p^
取り敢えずアレスは人気低いよね、っていうかアレか、マーヴィン厨すぎてウザいからか?←
そろそろ寝ます、おやすみなさ。
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昨日でこのブログが一周年だったとか\(^o^)/すっかり忘れてたwwwwww
オリジナル創作ブログ一周年です(`・ω・´)
テメンニグルを上ろう時代からがんがったよ! がんがったよ俺!!
この一年の間に創作関係であったことをちょっとまとめてみる(順不同)
・オリキャラ増殖(現在165人
・オリジナル長編小説執筆
・初めて長編小説完結
・二次創作から離れたっぽい
・一応描写力も上がったと思いたい
一応6月25日でリレイズも1周年なんだけどね、まだ序盤抜ける気がしないんだよ。
想像とかプロット状態ならそんな長くねっかなーと思ってたのに滅茶苦茶長ぇwwwwwwwwww
Wantがリレイズ並に長くなるよとか言ってたあの頃の俺馬鹿としか言い様がないwww
それでは、これからもよろしくお願いします(`・ω・´)
お祝い絵とかも何も出来ないがな!!
オリジナル創作ブログ一周年です(`・ω・´)
テメンニグルを上ろう時代からがんがったよ! がんがったよ俺!!
この一年の間に創作関係であったことをちょっとまとめてみる(順不同)
・オリキャラ増殖(現在165人
・オリジナル長編小説執筆
・初めて長編小説完結
・二次創作から離れたっぽい
・一応描写力も上がったと思いたい
一応6月25日でリレイズも1周年なんだけどね、まだ序盤抜ける気がしないんだよ。
想像とかプロット状態ならそんな長くねっかなーと思ってたのに滅茶苦茶長ぇwwwwwwwwww
Wantがリレイズ並に長くなるよとか言ってたあの頃の俺馬鹿としか言い様がないwww
それでは、これからもよろしくお願いします(`・ω・´)
お祝い絵とかも何も出来ないがな!!
ヘメティ、ソーマ、イーナ、シェイド、ラスター、ウライ、マーヴィン、アレス、ザクスト、アーシラト
アイド、ダグラス、ハイドラ、ホリック、キリク、レイズ、オンブラ、ルーチェ、ヴェルガーダ、クヴァシル
カラッド、ダーク、アルディック、行峯、努哉、アポフィス、ソレイユ、サーゼ、カイザレ、クライム
夢喰、白樺、暁、ラディス、カルマ、ツィオル、バイアス、ジェイル、アシュルク、デバイス、影沼間
スティアーナ、名無しさん、チノミヤ、ファイド、御舟、イシュタム、レイピア、タナシン、ゲシュタルト、井塚
サイラス、ファンデヴ、アダメス、ステル、ネクス、ロロ、ティオ、クライシス、ガング、ヘイト
ドール、ディーク、グリード、クラヴァット、シグマ、ロスト、エスト、木崎、ソウマ、桐宮
カルミナ、アリス、イキシア、アリオト、スクリーム、ウェザー、ジーク、リーゼ、アヴィー、英雄
ミナル、ガンマ、アール、メイズ、ライヤ、ミスト、メルエム、ランファン、シルヴィ、アシ
カヴァー、赤聖、ディン、ザクロ、佐倉、ソフィア、マザー、アクセル、マーイョリス、ホーリィ
エヌルタ、ロイト、リーネット、オルトワ、メイジ、スコール、リア、ヴァーラ、闇霧、流介
ユレイ、エイジ、ヒイラギ、ジキル、アオバ、竹市、誠、サラ、アイリス、ルナン
アポロ、リリス、ヒスイ、ティア、タード、聖、針、飴玉、赤誠、晄一
アノード、カソード、ファントム、セキア、ホープレス、ルッシュ、シャドウ、スティアーナ、名無しさん、ヴィンゼント
那誉月、オルファ、アルシラ、フィレンツェ、トレヴィ、ベルージャ、ネフィリル、ハウンド、玲、オルクス
ルシフェリア、フラウロス、イザナミ、アビス、ヴィトリオール、白沢、リベリオン、有音、聖学、ゼヴィロ
アイ、ファルター、ダンテ、オンルッカー、チェイサー、情報屋、ロスティ、フリーク、シアン、ラミエル
ロノウェ、トート、閻魔、インヘルト、英寺、エンシェント、コンビクト、(´・ω・`)、Re:U X、那賀
ジェイダイド、ロベリア、ヴィレム、煉獄、玲瓏、Lux、トゥエルブ、ニール、モナーク、音無
190人になった件\(^o^)/
アイド、ダグラス、ハイドラ、ホリック、キリク、レイズ、オンブラ、ルーチェ、ヴェルガーダ、クヴァシル
カラッド、ダーク、アルディック、行峯、努哉、アポフィス、ソレイユ、サーゼ、カイザレ、クライム
夢喰、白樺、暁、ラディス、カルマ、ツィオル、バイアス、ジェイル、アシュルク、デバイス、影沼間
スティアーナ、名無しさん、チノミヤ、ファイド、御舟、イシュタム、レイピア、タナシン、ゲシュタルト、井塚
サイラス、ファンデヴ、アダメス、ステル、ネクス、ロロ、ティオ、クライシス、ガング、ヘイト
ドール、ディーク、グリード、クラヴァット、シグマ、ロスト、エスト、木崎、ソウマ、桐宮
カルミナ、アリス、イキシア、アリオト、スクリーム、ウェザー、ジーク、リーゼ、アヴィー、英雄
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ジェイダイド、ロベリア、ヴィレム、煉獄、玲瓏、Lux、トゥエルブ、ニール、モナーク、音無
190人になった件\(^o^)/
作業用BGM:初音ミク ローリンガール
RELAYS - リレイズ - 62 【暇】
あの後、俺はすることもなく歩き回っていた。端から見ればただの暇人だ。実際暇だったのだから、その表現は間違っていないと思う。
恐らく皆は既に自分の部屋に戻っているらしく、一人も姿が見えない。アイドやホリックさん達も、まだ話が終わっていないようだった。
そうなると、もうすることがない。だからといって部屋に戻って寝るのもどうかと思ってしまう。
頭を掻きながら、俺は堂々巡りに近い思考を繰り返していた。色々と考えすぎて頭痛がしてきそうだ。ただでさえ時折頭痛に襲われるしデジャヴだって感じているのに。
と、そこでふと以前自分でも感じたことを思い出した。
俺は記憶喪失、それは確かだ。だが記憶を失った原因が未だに不明。俺が覚えていないのだから仕方がないが、これがまた奇妙なのだ。
頭部に強い衝撃を受ければ記憶が飛ぶという事もあるようだったが、俺の場合は頭部に傷があるわけでもない。要するに、そのような衝撃で失ったという訳ではないらしい。
それに頭が痛むといっても表面上で痛むような、傷が痛む感じではない。頭の奥底から何かが響いてくるような、そんな感じだ。
最近はないからいいものの、頻繁に起こっていた時期は地獄だった。鎮痛剤だって効きやしない。結局何もできなかったから周囲の人間にかなり迷惑を掛けた、何て事を懐かしく思う。
考え事をしながら歩いていた所為か、無意識の内に俺の足は色々なところをふらふら彷徨っていたらしい。
先程とは明らかに違う景色、それに入れ替わり立ち替わり変わっていく人混み。
白衣を着た研究員が圧倒的に多いが、その他にも話をしたこともない魔術師達や能力者達らしき人間も居る。本当に本部には人が多いのだと再認識させられた。
階段を宛もなく、リズムに乗って上っていく。この行動に意味はない。もしかすれば、ただ階段の上り下りを繰り返している変な人間にも見える……かもしれない。俺だって今の自分のような行動を取っている人間が居たらそう思ってしまいそうだ。
そこまで考え、自分の行動が周りから見れば異常すぎる事をやっと悟る。幾ら暇だからってこれはない。
俺は元来た道を戻ろうと踵を返しかけるが、視界の端を掠めた何かに動きを止めた。
ちらりとそちらに視線を向ければ、そこには活字、それこそ本当に飾り気のない活字で『談話室』とだけ書かれていた。ダグラスさんの司令室の前にある看板とは大違いのシンプルさだ。
そういえば、談話室というものがあるのは知っていたが訪れたことはなかった。というか、来る理由も見当たらなかったというべきだろうか。
アイドとならば研究室で立ち話する程度で十分だし、ソーマは勿論気軽に話すような人間でもない。数えてみれば、案外気軽に話せる人間は少なかった。
丁度暇だったからと理由づけて、俺は何の気なしに談話室へと足を向ける。躊躇することもなく、看板と同じ簡素な両開きの扉を開けた。
談話室はやはり多くの人間が出入りする為か、かなり広々としていた。とはいっても、予想通り人が多い所為でそこまで広く見えないが。ただ、広さはある。
多くはそのまま立ち話をしているが、やはり座る為に所々にソファやテーブルも置かれている。中には簡素な椅子だけが置いてある場所もあった。
談話室、というよりは集会所を喚起させるその中を、これまた宛もなく突き進んでみる。誰か知り合いに出会ったら話せばいいし、もしも誰も見当たらなかったらそのときこそ戻ればいい。
目にかかる前髪を適当に手で払い、地面に落としていた視線を水平に戻す。
それと同時に、見慣れた後ろ姿が目に飛び込んできた。
黒いジャケットに黒いスラックス、その黒に良く映える焔のようなと表すのが的確だろう長い赤髪。俺が知っている赤髪の人間なんて殆どいない。おかげで、すぐに誰なのか特定できた。
ファンデヴはその手に何かを持って、誰彼構わず——というのは失礼かも知れないが、会った人全員に何らかを尋ねているようだった。
彼女は手に持っているものを見ながら俺の方へと歩いてくる。どうやら、まだこちらには気付いていないらしい。
「……ファンデヴ、どうしたんだ?」
声を掛けてみれば、ファンデヴはやはり今気付いたと言わんばかりの表情で顔を上げ、俺を見てきた。
「……いや、ただ少し、訊いて回ってた。これだけ人が居れば、一人くらいは知ってるんじゃないか、って」
その言葉の意味が一瞬解らなかったが、彼女の手にあるものを見てすぐに理解できた。
最初に俺に会ったときにも訊いてきた、今現在行方不明になっている自分の兄についての事だろう。
ファンデヴは少し古いと思われる程度の写真を無言で俺に差し出してくる。見てくれ、という事だろうか。
素直にそれを受け取り、目を通してみる。それには殺風景な白い壁を背に立つ一人の男性の姿が写っていた。
彼女とは違い、暗い赤……それこそ、表現が悪いかも知れないが血のような色をした赤髪をオールバックにしている。長髪らしく、肩には低い位置で一まとめにした髪が垂れていた。服装は、それこそ社員達が着るような黒スーツ。白いシャツのボタンは第二ボタンまで開け放たれ、青いネクタイを緩めに締めている。
格好は別に特別な物ではなかったが、彼の整った顔には表情が浮かんでいなかった。彼女とは若干違うらしい色合いの目は普通の人間の目にあるような光ではなく、何か別の感情で輝いている。
ファンデヴの兄である彼のそんな風貌に、目を奪われていた。美しい物に惹かれるような感じではなく、恐ろしい物から目を離せないような感覚に似ている。
「……2,3年前の写真だから殆ど役に立たないかもしれない、けど。……知らない?」
「え? あー……悪い、知らないんだ。悪いな」
気付けば食い入るように見つめていた事に気づき、俺は顔を上げるとそれをファンデヴに返す。
彼女はそれをジャケットのポケットに入れると、短く息を吐いた。口には出していない物の、やっぱりかと思っている事がありありと解ってしまい、更に何となく申し訳なくなってしまう。
「……なあ、その……お兄さんってどんな人だったんだ?」
気紛れでこんな事を訊いていいものかどうか若干悩んだが、どうしても訊いてみたかった。彼がどのような人間だったのか。彼がどのような人柄だったのか。
ファンデヴは怪訝そうに見返し、傍にあった椅子に座った。丁度空いていた隣に俺も腰を下ろす。
「どんな……何て表せばいいのか、解らない。……ただ、自分は兄さんを救えなかった」
抽象的すぎる言葉でどういう意味なのか聞き返したかったが、彼女が悲しそうに目を伏せた事もあり訊くことができなかった。他人の傷を抉るような真似はしたくない。
「……ああ、ごめん。気にしなくて良い。上手く教えられないんだ」
そんな俺の心境を察してくれたのかそうでないのか、ファンデヴは片手を上げて言ってくれた。彼女なりの気遣い、と取って大丈夫だろうか。
気にしなくていいと言われても、やはり少しでも気にしてしまう。これが俺の性分なのだと自分でも解っている分タチが悪い。直したいが、この不安症じみたこれはどうしても直せないらしかった。
突然ファンデヴが音も立てずに立ち上がる。それに若干ではあるが驚きながら彼女を見上げれば、ジャケットの襟を正していた。
「……そろそろ自分は戻るけど、どうする?」
ファンデヴは恐らく、本当に自分の兄のことを訊く為にこの談話室を訪れたのだろう。誰もが知らないというのなら、最早彼女は居る理由もないと考えているようだった。
俺も、別に話したい相手もいない。暇潰しの為に入っただけで、何の理由もなかった。
「俺も戻る。誰も居ないし、部屋に戻ってホントに寝るか何かする」
寝るのは別にいいが、夜中に眠れなくなる可能性もある。できれば違うことが良いが、例によって俺は読書嫌いだ、何もすることがない。
それでも、ただ暇を持て余すよりはマシだろうと考えての結論だった。寝る。これでいい。
俺の答えを聞いてから頷いたファンデヴの後ろに付き、俺も談話室を出る。まだ耳に大勢の人間の話し声が残響のように残っていたが、気にしない。
「それじゃあ、また。……多分、明日も会う」
「そう、だな。……また明日」
彼女の言うとおり、恐らく明日も自分はファンデヴと顔を合わせるのだろう。
俺は軽く手を振ると、ファンデヴとは別方向にある自室へと足を向けた。
ある程度の広さがある部屋の中心に、二人の男が立っていた。
一人は赤いロングコートを羽織った青年、もう一人が黒い燕尾服を着用した男。男は青年に添い従うように傍に立っている。
二人の間に会話はなく、静寂だけが室内を包んでいる。時折男が銀色の懐中時計で時刻を確認する以外、目立った動きもない。
そんな静寂を破ったのは、荒々しく扉が開け放たれる音だった。その残響に被さるようにして、この場に似付かわしくないとも思える足音が響く。
不機嫌そうに足音を立てながら歩いている張本人である男もまた燕尾服を身に纏っていたが、雰囲気は燕尾服などという服を着る人間とは思えないようなものだった。
「——今回は遅れなかったのか、貴様にしては珍しい」
皮肉を交えてアレスが言い、慣れない燕尾服をまだ気にしているらしい男に嘲笑を向ける。馬鹿馬鹿しい、と言わんばかりに。
「ハッ、黙れよ女顔」
酷く不釣り合いな、子供じみた反論だった。アレスは子供臭いと理解しているのに反応しそうになる身体と自分を恨んだ。ここで軽くやり過ごせればいいが、どうにも自分はそうできないらしい、という自嘲も。
男は黒に近い茶髪を揺らしながら、隣にいる青年に眼をやる。
「……何も変わってねぇな、マーヴィン」
喉の奥で笑い、まるで小馬鹿にするように声を掛ける。世界の支配者と言っても過言ではない地位に居る人間に対する態度ではなかった。それでも男には、敬う気すらない。
「君もね、ハウンド」
そんなハウンドに気を悪くした素振りも見せず、マーヴィンはにこにこと笑みを浮かべた。その笑みはどこか作り笑いのようで、真意が読めない不確かなものだった。
全く気分を害したように見えない自分の主にアレスは心配そうな視線を向けるが、それにも彼は笑っているだけだ。
「……で、今回は車で移動するんだっけか。めんどくせぇな。……ま、しょうがねーか」
「解っているのなら文句を言うな」
「……どうして君達は会えばいつもそうなのかな。別に良いけど」
嫌味のような皮肉のような。そのマーヴィンの呟きは彼等二人には幸いと言うべきか届かなかったらしい。会えばいつもいがみ合う二人。こうなったのは恐らく自分の所為だと解っているからか。
「——さて、もう無駄話は終わりにしよう」
白い革手袋を嵌めた手を軽く叩き、彼は未だに続いている——それどころか逆に激しさを増しているアレスとハウンドの口喧嘩を強制的に打ち切った。
それで途端に口喧嘩を止めた二人に笑みを深め、マーヴィンは鮮血のように赤いコートを翻して歩き出す。
「さあ、行こうか。……彼等に教えてあげないとね」
今までの戦いが、単なる序曲に過ぎなかった事を。
次の次辺り書きたいよ^p^
RELAYS - リレイズ - 62 【暇】
あの後、俺はすることもなく歩き回っていた。端から見ればただの暇人だ。実際暇だったのだから、その表現は間違っていないと思う。
恐らく皆は既に自分の部屋に戻っているらしく、一人も姿が見えない。アイドやホリックさん達も、まだ話が終わっていないようだった。
そうなると、もうすることがない。だからといって部屋に戻って寝るのもどうかと思ってしまう。
頭を掻きながら、俺は堂々巡りに近い思考を繰り返していた。色々と考えすぎて頭痛がしてきそうだ。ただでさえ時折頭痛に襲われるしデジャヴだって感じているのに。
と、そこでふと以前自分でも感じたことを思い出した。
俺は記憶喪失、それは確かだ。だが記憶を失った原因が未だに不明。俺が覚えていないのだから仕方がないが、これがまた奇妙なのだ。
頭部に強い衝撃を受ければ記憶が飛ぶという事もあるようだったが、俺の場合は頭部に傷があるわけでもない。要するに、そのような衝撃で失ったという訳ではないらしい。
それに頭が痛むといっても表面上で痛むような、傷が痛む感じではない。頭の奥底から何かが響いてくるような、そんな感じだ。
最近はないからいいものの、頻繁に起こっていた時期は地獄だった。鎮痛剤だって効きやしない。結局何もできなかったから周囲の人間にかなり迷惑を掛けた、何て事を懐かしく思う。
考え事をしながら歩いていた所為か、無意識の内に俺の足は色々なところをふらふら彷徨っていたらしい。
先程とは明らかに違う景色、それに入れ替わり立ち替わり変わっていく人混み。
白衣を着た研究員が圧倒的に多いが、その他にも話をしたこともない魔術師達や能力者達らしき人間も居る。本当に本部には人が多いのだと再認識させられた。
階段を宛もなく、リズムに乗って上っていく。この行動に意味はない。もしかすれば、ただ階段の上り下りを繰り返している変な人間にも見える……かもしれない。俺だって今の自分のような行動を取っている人間が居たらそう思ってしまいそうだ。
そこまで考え、自分の行動が周りから見れば異常すぎる事をやっと悟る。幾ら暇だからってこれはない。
俺は元来た道を戻ろうと踵を返しかけるが、視界の端を掠めた何かに動きを止めた。
ちらりとそちらに視線を向ければ、そこには活字、それこそ本当に飾り気のない活字で『談話室』とだけ書かれていた。ダグラスさんの司令室の前にある看板とは大違いのシンプルさだ。
そういえば、談話室というものがあるのは知っていたが訪れたことはなかった。というか、来る理由も見当たらなかったというべきだろうか。
アイドとならば研究室で立ち話する程度で十分だし、ソーマは勿論気軽に話すような人間でもない。数えてみれば、案外気軽に話せる人間は少なかった。
丁度暇だったからと理由づけて、俺は何の気なしに談話室へと足を向ける。躊躇することもなく、看板と同じ簡素な両開きの扉を開けた。
談話室はやはり多くの人間が出入りする為か、かなり広々としていた。とはいっても、予想通り人が多い所為でそこまで広く見えないが。ただ、広さはある。
多くはそのまま立ち話をしているが、やはり座る為に所々にソファやテーブルも置かれている。中には簡素な椅子だけが置いてある場所もあった。
談話室、というよりは集会所を喚起させるその中を、これまた宛もなく突き進んでみる。誰か知り合いに出会ったら話せばいいし、もしも誰も見当たらなかったらそのときこそ戻ればいい。
目にかかる前髪を適当に手で払い、地面に落としていた視線を水平に戻す。
それと同時に、見慣れた後ろ姿が目に飛び込んできた。
黒いジャケットに黒いスラックス、その黒に良く映える焔のようなと表すのが的確だろう長い赤髪。俺が知っている赤髪の人間なんて殆どいない。おかげで、すぐに誰なのか特定できた。
ファンデヴはその手に何かを持って、誰彼構わず——というのは失礼かも知れないが、会った人全員に何らかを尋ねているようだった。
彼女は手に持っているものを見ながら俺の方へと歩いてくる。どうやら、まだこちらには気付いていないらしい。
「……ファンデヴ、どうしたんだ?」
声を掛けてみれば、ファンデヴはやはり今気付いたと言わんばかりの表情で顔を上げ、俺を見てきた。
「……いや、ただ少し、訊いて回ってた。これだけ人が居れば、一人くらいは知ってるんじゃないか、って」
その言葉の意味が一瞬解らなかったが、彼女の手にあるものを見てすぐに理解できた。
最初に俺に会ったときにも訊いてきた、今現在行方不明になっている自分の兄についての事だろう。
ファンデヴは少し古いと思われる程度の写真を無言で俺に差し出してくる。見てくれ、という事だろうか。
素直にそれを受け取り、目を通してみる。それには殺風景な白い壁を背に立つ一人の男性の姿が写っていた。
彼女とは違い、暗い赤……それこそ、表現が悪いかも知れないが血のような色をした赤髪をオールバックにしている。長髪らしく、肩には低い位置で一まとめにした髪が垂れていた。服装は、それこそ社員達が着るような黒スーツ。白いシャツのボタンは第二ボタンまで開け放たれ、青いネクタイを緩めに締めている。
格好は別に特別な物ではなかったが、彼の整った顔には表情が浮かんでいなかった。彼女とは若干違うらしい色合いの目は普通の人間の目にあるような光ではなく、何か別の感情で輝いている。
ファンデヴの兄である彼のそんな風貌に、目を奪われていた。美しい物に惹かれるような感じではなく、恐ろしい物から目を離せないような感覚に似ている。
「……2,3年前の写真だから殆ど役に立たないかもしれない、けど。……知らない?」
「え? あー……悪い、知らないんだ。悪いな」
気付けば食い入るように見つめていた事に気づき、俺は顔を上げるとそれをファンデヴに返す。
彼女はそれをジャケットのポケットに入れると、短く息を吐いた。口には出していない物の、やっぱりかと思っている事がありありと解ってしまい、更に何となく申し訳なくなってしまう。
「……なあ、その……お兄さんってどんな人だったんだ?」
気紛れでこんな事を訊いていいものかどうか若干悩んだが、どうしても訊いてみたかった。彼がどのような人間だったのか。彼がどのような人柄だったのか。
ファンデヴは怪訝そうに見返し、傍にあった椅子に座った。丁度空いていた隣に俺も腰を下ろす。
「どんな……何て表せばいいのか、解らない。……ただ、自分は兄さんを救えなかった」
抽象的すぎる言葉でどういう意味なのか聞き返したかったが、彼女が悲しそうに目を伏せた事もあり訊くことができなかった。他人の傷を抉るような真似はしたくない。
「……ああ、ごめん。気にしなくて良い。上手く教えられないんだ」
そんな俺の心境を察してくれたのかそうでないのか、ファンデヴは片手を上げて言ってくれた。彼女なりの気遣い、と取って大丈夫だろうか。
気にしなくていいと言われても、やはり少しでも気にしてしまう。これが俺の性分なのだと自分でも解っている分タチが悪い。直したいが、この不安症じみたこれはどうしても直せないらしかった。
突然ファンデヴが音も立てずに立ち上がる。それに若干ではあるが驚きながら彼女を見上げれば、ジャケットの襟を正していた。
「……そろそろ自分は戻るけど、どうする?」
ファンデヴは恐らく、本当に自分の兄のことを訊く為にこの談話室を訪れたのだろう。誰もが知らないというのなら、最早彼女は居る理由もないと考えているようだった。
俺も、別に話したい相手もいない。暇潰しの為に入っただけで、何の理由もなかった。
「俺も戻る。誰も居ないし、部屋に戻ってホントに寝るか何かする」
寝るのは別にいいが、夜中に眠れなくなる可能性もある。できれば違うことが良いが、例によって俺は読書嫌いだ、何もすることがない。
それでも、ただ暇を持て余すよりはマシだろうと考えての結論だった。寝る。これでいい。
俺の答えを聞いてから頷いたファンデヴの後ろに付き、俺も談話室を出る。まだ耳に大勢の人間の話し声が残響のように残っていたが、気にしない。
「それじゃあ、また。……多分、明日も会う」
「そう、だな。……また明日」
彼女の言うとおり、恐らく明日も自分はファンデヴと顔を合わせるのだろう。
俺は軽く手を振ると、ファンデヴとは別方向にある自室へと足を向けた。
ある程度の広さがある部屋の中心に、二人の男が立っていた。
一人は赤いロングコートを羽織った青年、もう一人が黒い燕尾服を着用した男。男は青年に添い従うように傍に立っている。
二人の間に会話はなく、静寂だけが室内を包んでいる。時折男が銀色の懐中時計で時刻を確認する以外、目立った動きもない。
そんな静寂を破ったのは、荒々しく扉が開け放たれる音だった。その残響に被さるようにして、この場に似付かわしくないとも思える足音が響く。
不機嫌そうに足音を立てながら歩いている張本人である男もまた燕尾服を身に纏っていたが、雰囲気は燕尾服などという服を着る人間とは思えないようなものだった。
「——今回は遅れなかったのか、貴様にしては珍しい」
皮肉を交えてアレスが言い、慣れない燕尾服をまだ気にしているらしい男に嘲笑を向ける。馬鹿馬鹿しい、と言わんばかりに。
「ハッ、黙れよ女顔」
酷く不釣り合いな、子供じみた反論だった。アレスは子供臭いと理解しているのに反応しそうになる身体と自分を恨んだ。ここで軽くやり過ごせればいいが、どうにも自分はそうできないらしい、という自嘲も。
男は黒に近い茶髪を揺らしながら、隣にいる青年に眼をやる。
「……何も変わってねぇな、マーヴィン」
喉の奥で笑い、まるで小馬鹿にするように声を掛ける。世界の支配者と言っても過言ではない地位に居る人間に対する態度ではなかった。それでも男には、敬う気すらない。
「君もね、ハウンド」
そんなハウンドに気を悪くした素振りも見せず、マーヴィンはにこにこと笑みを浮かべた。その笑みはどこか作り笑いのようで、真意が読めない不確かなものだった。
全く気分を害したように見えない自分の主にアレスは心配そうな視線を向けるが、それにも彼は笑っているだけだ。
「……で、今回は車で移動するんだっけか。めんどくせぇな。……ま、しょうがねーか」
「解っているのなら文句を言うな」
「……どうして君達は会えばいつもそうなのかな。別に良いけど」
嫌味のような皮肉のような。そのマーヴィンの呟きは彼等二人には幸いと言うべきか届かなかったらしい。会えばいつもいがみ合う二人。こうなったのは恐らく自分の所為だと解っているからか。
「——さて、もう無駄話は終わりにしよう」
白い革手袋を嵌めた手を軽く叩き、彼は未だに続いている——それどころか逆に激しさを増しているアレスとハウンドの口喧嘩を強制的に打ち切った。
それで途端に口喧嘩を止めた二人に笑みを深め、マーヴィンは鮮血のように赤いコートを翻して歩き出す。
「さあ、行こうか。……彼等に教えてあげないとね」
今までの戦いが、単なる序曲に過ぎなかった事を。
次の次辺り書きたいよ^p^
所詮正義を掲げていてもそれはただのエゴなのであって、自分達も本質的には変わらない。
自分達だって人殺しじゃないか、それを背負わせて背負っているんじゃないか。
銃口の先にあるのは敵の左胸、敵の心臓、敵の頭、敵の命を終わらせる為に引き金を引く。
戦いが終わった後には傷しか残らない。自分だって傷を負っているし相手だって傷を負っていて、それは肉体だけに留まらないかも知れない。それこそ精神的に。
自分達のしていることは本当に正しいのか、それをずっと自問自答しているかも知れない。
子供の時からそれを教えられていたら、それに対して迷いを抱くこともないのかも知れない。彼がそうだった。彼がそうなんだ。彼を突き堕としたのは自分達なんだ。
涙ながらに引き金を引くのか。涙ながらに剣を振るのか。それが正しいのか。
エゴの先に笑顔はあるの、答えは「いいえ」意外に有り得ない。
希望だって存在しない、絶望しいか残らない。……それでも?
「それでもこうするしかない」なんて、本当に偽善以外の何者でもない。
やらない善よりやる偽善。それはただの自己満足で、それこそエゴだ。
僕らはこれ以上なく愚かなんだ。
初音ミク--ワーミー・アナーキー
RELAYS的自己解釈。
自分が書いている物についても考えさせられる歌詞でした。
やっぱりこういうテーマ(それこそ戦争とか戦いとか)はまだ俺のような「子供」が書ける物ではないんだということを実感する。
ダグラスの心境に合わせたいけどどうしてもコイツが真面目だと違和感がある。
自分達だって人殺しじゃないか、それを背負わせて背負っているんじゃないか。
銃口の先にあるのは敵の左胸、敵の心臓、敵の頭、敵の命を終わらせる為に引き金を引く。
戦いが終わった後には傷しか残らない。自分だって傷を負っているし相手だって傷を負っていて、それは肉体だけに留まらないかも知れない。それこそ精神的に。
自分達のしていることは本当に正しいのか、それをずっと自問自答しているかも知れない。
子供の時からそれを教えられていたら、それに対して迷いを抱くこともないのかも知れない。彼がそうだった。彼がそうなんだ。彼を突き堕としたのは自分達なんだ。
涙ながらに引き金を引くのか。涙ながらに剣を振るのか。それが正しいのか。
エゴの先に笑顔はあるの、答えは「いいえ」意外に有り得ない。
希望だって存在しない、絶望しいか残らない。……それでも?
「それでもこうするしかない」なんて、本当に偽善以外の何者でもない。
やらない善よりやる偽善。それはただの自己満足で、それこそエゴだ。
僕らはこれ以上なく愚かなんだ。
初音ミク--ワーミー・アナーキー
RELAYS的自己解釈。
自分が書いている物についても考えさせられる歌詞でした。
やっぱりこういうテーマ(それこそ戦争とか戦いとか)はまだ俺のような「子供」が書ける物ではないんだということを実感する。
ダグラスの心境に合わせたいけどどうしてもコイツが真面目だと違和感がある。
何か目次まとめるのが怠くなってきt(ry
RELAYS - リレイズ - 61 【偽り】
司令室のソファに座り、俺達はダグラスさんと向き合っていた。
普通ならば司令官は椅子に座って、俺達はその前に一列に並んで報告するのだろう。だが、何故かそのスタイルを彼は取ろうとしない。別にそれで何か問題が起こるというわけでもない為、もう黙認している。
「——成る程、奇襲か」
ダグラスさんは苦々しく呟き、ポットを手に取り紅茶をカップに注ぐと角砂糖を一つ落とし、数回スプーンでかき混ぜてから口を付けた。
「……迂闊だったとしか言い様がない。……これは僕の落ち度だ。申し訳ない」
カップを置いて俯いたダグラスさんに、俺は頭を振って否定する。
彼に罪はない。あの状況で緊張感もなしにふらふらと歩いていた自分達の責任だ。アレス達と接触した時点であの町を出ていれば、こんな事にはならなかった筈だ。
逃げる時間、猶予は十分にあった。それなのにそれをしなかった俺達が悪いのは明白だった。
「……それでも、良く生きていてくれた」
顔を上げてふっと微笑んで、彼は言ってくれた。彼がこのような状況で、このような話の時に冗談を言ったりしないという事はよく知っている。
今俺達が生きているのは、恐らくアレスとザクストの二人と戦っている時にアノードが割り込んできた事も影響しているのだと思う。予測もしていなかった乱入者、それは彼方も考えていなかった筈だ。
「……どうやら、今回の事から解釈するにアッチも本格的に皆を確実に始末する為に動いているみたいだね。……さて、これからどうするか」
これからどうやって動けばいいのか、ダグラスさんは思案する為に口を閉ざす。誰も口を開かず、ただ静寂だけが司令室を包んでいく。
ちらりと皆を見てみれば、俺の横に座っているソーマは何を考えているのか紅茶のカップに大量の角砂糖を放り込んでいるし、サイラスは何も言わずに身じろぎもしないまま……だが、彼の頭の上にある猫耳だけが時折動いている。
かと思えばラスターさんは心此処に在らずといった風にぼんやりとしているし、ファンデヴは何時も通り何を考えているのか解らない。イーナは先程から紅茶のカップを手に持ったまま。見ただけで考えていると解るのはシェイド大佐だけ、だった。
勿論皆も何か考えているのだろうから別にそこを気にしたりはしないが。
「——しばらくは、余り動かない方が良いだろうな。それだけは確かだ」
シェイド大佐が口を開き、ダグラスさんの目を見据えてはっきりと口にする。やはり軍人というだけあって、こういう部分は判断に長けている。
「動かずにいれば、その間に色々と作戦も立てられる。これからの動きも考えやすい。……どうだ、司令官」
「……僕も、それがいいと思っていた。しばらくの間、何もせずに居よう。その間に、今後どうするか考える。……これでいいかな?」
俺を含めて、誰も反対する人間は居なかった。ダグラスさんとシェイド大佐の言っている事は正論だし、丁度俺もそう考えていたところだったから。
「しばらく僕は何もしない。この間にゆっくり休むか鍛錬をするかは君達の自由だ。……ただし、絶対に本部の外に出ないように」
彼は俺達に釘を刺し、残っていた紅茶を一息に飲み干した。だからといって乱暴という訳でもなく、どこか優雅さが漂っているように見えた。
「それじゃあ、もう戻って良いよ。——ああ、そうだ」
そこで思い出したように声を上げたダグラスさんに、ソファから立ち上がろうとしていた全員の動きが止まる。そrめお見事なまでに全く一緒のタイミングで。
「……ヘメティ、君だけは少し残ってくれ」
いつものあだ名ではなく普通に名前を呼ばれ困惑するも、俺は黙って頷いた。あだ名を使えるような話ではない、という事に違いない。
何を話されるのかは解らないが、気を引き締めておくに超したことはない。
「じゃ、オレ達は先に戻ってるぜ?」
「あ、解りました。それじゃあ、また後で」
ラスターさんに軽く手を振り、ぞろぞろと司令室を出て行く皆の背中を見送る。
サイラスはあんな話をした直後だと言うのに既に眠そうにしていた。後ろ姿からそれが解るのかと問われれば、肯定する。うつらうつらと舟を漕いでいるのだからすぐに解った。
全員が司令室から出たのを見計らい、ダグラスさんはこちらを振り向いた。
「……突然すまない。ただ、どうしても言いたくてね」
ぎこちなく笑い、彼は司令官が座るべき椅子へと腰掛ける。思えば、彼がその席に座っているのを見るのは本当に久々だった。
いつも普通にソファに座っているから忘れかけていたが、本来司令官であるダグラスさんが座るのはその席だ。
「……何、ですか?」
彼が身に纏う雰囲気が普段とは違うことを感じ取り、妙に不安になる。恐る恐るといった風に、それを尋ねてみる。
「いや、そこまで……大したことじゃないんだ」
大したことじゃない、とは到底思えない。だが、それをしつこく食い下がって追求するわけにも行かず、俺はただダグラスさんの次の言葉を待った。
「君は一度あちら側に捕らえられそうになった身だ。今回は良かったものの、今後どうなるか解らない。……兎に角、用心してくれ」
「……はい」
彼は普段とは違う真面目な光を帯びた目で俺を見据え、はっきりと固い口調で言った。
言われなくても、そうするつもりだった。どうなるか解らないのだから、用心するのは当然のことだ。
それでも、まだ解らないことはある。
「それにしても、何で俺だけ捕まえようとしたんでしょうかね?」
何気なしに俺が口にした瞬間、ダグラスさんの表情が強張った。見たこともない、所謂狼狽と呼ばれるような物だった。
「それは……——解らないね」
少しの間をおいて、ぽつりと彼が漏らす。どこか堅苦しい、演技のような響きを持っている言葉だったが、これ以上訊くことも出来ない。彼の纏っている雰囲気が、そう告げていた。
俺は頭を掻き、首を傾げる以外にできることがなかった。
「さ、ヘメ君ももういいから。引き留めてしまってすまなかった」
今まで通りの微笑と声音で言われ、思わず頷く。もうこれ以上訊いてもダグラスさんは話してくれないだろうと、心の何処かで悟っていた。
「……失礼しました」
俺は頭を下げると扉を開け、司令室を出た。
扉を閉めて息を吐いたのとほぼ同時に肩を叩かれ、僅かに肩を震わせる。誰だと思いながら振り返れば、そこにはアイドが悪戯っぽく笑いながら立っていた。
「よっ、ヘメティ」
「何だアイドか……って、やっと俺の名前覚えたのか?」
今までオッドアイとしか呼ばなかった彼がまともに自分の名前を呼んだことに、俺は少なからず感動を覚えていた。自分の名前を覚えて貰えた、という達成感が胸を満たしていく。
「別に覚えてなかったんじゃなくて、あえてアッチのあだ名で呼んでただけなんだけどな?」
「なっ……覚えてないとか忘れたとか言った癖に!」
まさか、今までの言葉が嘘だったというのだろうか。だからといって別に構わないが、やはり腹が立つ。
彼の白衣の襟を掴んで訊けば、アイドはただ笑っているだけだった。
「ま、いいだろ。今度からはちゃんと呼んでやるから。それじゃ、俺等は司令官に用があるから、じゃあな」
俺等、ということは他にも来ているのだろうかと思い辺りを見回せば、丁度アイドの後ろに隠れるようにしてホリックさんが立っていた。
長い灰色の髪を揺らしながら彼はアイドの後ろから出てきて、俺に微笑んできた。その微笑みはやさしいものだったが、その目は『今まで気付かなかったなんて酷いですね』と冗談無しに語っている。気迫が半端じゃない。
「気配を殺すのは得意ですが……まさか戦う人間にまで通用するとは思っていませんでしたよ」
含み笑いをしながら、ホリックさんは眼鏡を指で押し上げる。それだけを言い残し、彼はさっさと司令室に入ってしまった。
「アイツの嫌味は気にしなくていいぜ? どうせ冗談だろうから。それじゃ、今度こそな」
アイドは短く切られたパステルカラーの水色の髪を掻き上げながら、ホリックさんの後を追って司令室へと足を踏み入れた。
どんな話をするのかは少し気になったが、そこまで気にする必要もない。どうせまた研究班に何か妙なものでも作らせるつもりなんだろう。ダグラスさんの思考回路から行けばそうなる可能性が高い。
一度司令室の扉に目を向けてから、その場を後にした。
「——司令官、またですか?」
紅茶を啜り、アイドは呆れたように、それでいて悲しそうにダグラスへと言った。
向かいにはホリックがソファに腰を下ろしており、ダグラスは司令官の座るべき椅子に腰掛けている。
彼は何も言えず、ただ細く長く溜め息を吐いた。
「……そろそろ、言うべきなんじゃないですか」
普段のアイドからは想像も付かないほどに真面目な固い声で、彼は呟く。その表情は苦しげで、酷く辛そうだった。
「……解っている。……解って、いるんだ……他の皆も、薄々気付いてる。恐らく、ソーマはもう完璧に感付いていると考えていい」
頭を振り、ぼそぼそとダグラスは絞り出すようにして言葉を紡いでいく。
「やっぱり、ですか。……アイツは、昔から勘も良いですからね」
まだその頃は少年と呼べるかも知れない年齢だった頃に、アイドは機関に保護されたソーマと出会った。その頃から、彼が他の人間とは違う事をアイドは見抜いていた。
「後々気付いて絶望するよりも、今言ってしまった方が彼の為にもなると思うんですが、ね……」
ホリックは苦々しく言い、全てを吹っ切るかのようにカップに注がれていた紅茶を全て飲み下した。
「……俺が思うに、アイツはそこまで精神が弱くはないと思うんですよ。絶望しても、それを乗り越えられると……俺は、信じてます」
アイドに返事をすることもなく、ダグラスは立ち上がると机の上に置いてある金属光沢を発する物体を手に乗せる。手の平で軽く包める程度の小さなものだった。
それを握り締め、彼は目を伏せる。
「僕は未だに解らない。このままでいいのか? 彼はこのままで幸せなのか? ここで真実を告げてしまった方が、楽になるんじゃないかって」
「……そんなの、俺だってアイツの顔見る度に考えてますよ」
男三人が同時に溜め息を吐く司令室という空間は、陰気で重苦しくまとわりついてくるような空気に満ちていた。
いつもの明るさなどどこへやら、全員が頭を抱え、苦悩している。
「——彼は何も悪くない。……彼に罪はないんだ……」
呟いたダグラスの声は弱々しく、僅かに震えていた。物体を握り締める手も、声と同じく震えている。
「だからこそ、言う事も必要なのでしょう。……先日やっとまともな会話をした私よりは、あなた達が言った方が……彼の為にもなる筈です」
自分は、真実を告げる程に彼と関わっては居ない。ホリックはそのような意味を込めて、アイドとダグラスに向けて静かに話した。
「……でも、まだ……まだ、時間が欲しい。——こうしていれば、ずっと先送りにしてしまうのは目に見えているのに……」
最早ダグラスの声には涙が混じっていた。それでも頬に涙が伝うことはなく、言葉を詰まらせることもなかった。
アイドはもう一度大きく溜め息を吐き、髪を掻き上げる。
「もう一度、考えてみた方がいいですかね。……司令官も、俺達も」
脱力したように肩の力を抜き、彼はホリックとダグラスを見る。彼等も、言葉には出さずにいるものの同じ考えだった。
今ここで互いに言い合っていても、堂々巡りになるだけなのは目に見えている。
結局、自分達は何もできない無力で覚悟も何もない人間なのだと、三人は否が応にも理解してしまっていた。
「……わざわざ呼んだのに、すまない。……今日は、もういい」
ぽつりと漏らしたダグラスに、二人はまだ何か言いたげだったがソファから腰を上げる。
「——失礼、しました」
その言葉だけを残しホリックとアイドが司令室を出たのを確認してから、ダグラスは大きく息を吐いた。まるで、何かに必死に耐えていたかのように。
指をゆっくりと開いて今までずっと握り締めていたものを見る。余程強い力で握り締めていたのか、手の日は赤く痕がついていた。
「……外さない方が、良かったのかもしれないね」
シルバーのリングに同色の細長い長方形のネームプレートがついたそれを見つめ、彼は何を今更言っているんだと歯噛みし、顔を歪める。
それを机の上、元あった場所に置くとダグラスは紅茶のカップを片付ける為に席を立った。
伏線はあえてバレバレ、それが俺。
何気に五七五とかwww
RELAYS - リレイズ - 61 【偽り】
司令室のソファに座り、俺達はダグラスさんと向き合っていた。
普通ならば司令官は椅子に座って、俺達はその前に一列に並んで報告するのだろう。だが、何故かそのスタイルを彼は取ろうとしない。別にそれで何か問題が起こるというわけでもない為、もう黙認している。
「——成る程、奇襲か」
ダグラスさんは苦々しく呟き、ポットを手に取り紅茶をカップに注ぐと角砂糖を一つ落とし、数回スプーンでかき混ぜてから口を付けた。
「……迂闊だったとしか言い様がない。……これは僕の落ち度だ。申し訳ない」
カップを置いて俯いたダグラスさんに、俺は頭を振って否定する。
彼に罪はない。あの状況で緊張感もなしにふらふらと歩いていた自分達の責任だ。アレス達と接触した時点であの町を出ていれば、こんな事にはならなかった筈だ。
逃げる時間、猶予は十分にあった。それなのにそれをしなかった俺達が悪いのは明白だった。
「……それでも、良く生きていてくれた」
顔を上げてふっと微笑んで、彼は言ってくれた。彼がこのような状況で、このような話の時に冗談を言ったりしないという事はよく知っている。
今俺達が生きているのは、恐らくアレスとザクストの二人と戦っている時にアノードが割り込んできた事も影響しているのだと思う。予測もしていなかった乱入者、それは彼方も考えていなかった筈だ。
「……どうやら、今回の事から解釈するにアッチも本格的に皆を確実に始末する為に動いているみたいだね。……さて、これからどうするか」
これからどうやって動けばいいのか、ダグラスさんは思案する為に口を閉ざす。誰も口を開かず、ただ静寂だけが司令室を包んでいく。
ちらりと皆を見てみれば、俺の横に座っているソーマは何を考えているのか紅茶のカップに大量の角砂糖を放り込んでいるし、サイラスは何も言わずに身じろぎもしないまま……だが、彼の頭の上にある猫耳だけが時折動いている。
かと思えばラスターさんは心此処に在らずといった風にぼんやりとしているし、ファンデヴは何時も通り何を考えているのか解らない。イーナは先程から紅茶のカップを手に持ったまま。見ただけで考えていると解るのはシェイド大佐だけ、だった。
勿論皆も何か考えているのだろうから別にそこを気にしたりはしないが。
「——しばらくは、余り動かない方が良いだろうな。それだけは確かだ」
シェイド大佐が口を開き、ダグラスさんの目を見据えてはっきりと口にする。やはり軍人というだけあって、こういう部分は判断に長けている。
「動かずにいれば、その間に色々と作戦も立てられる。これからの動きも考えやすい。……どうだ、司令官」
「……僕も、それがいいと思っていた。しばらくの間、何もせずに居よう。その間に、今後どうするか考える。……これでいいかな?」
俺を含めて、誰も反対する人間は居なかった。ダグラスさんとシェイド大佐の言っている事は正論だし、丁度俺もそう考えていたところだったから。
「しばらく僕は何もしない。この間にゆっくり休むか鍛錬をするかは君達の自由だ。……ただし、絶対に本部の外に出ないように」
彼は俺達に釘を刺し、残っていた紅茶を一息に飲み干した。だからといって乱暴という訳でもなく、どこか優雅さが漂っているように見えた。
「それじゃあ、もう戻って良いよ。——ああ、そうだ」
そこで思い出したように声を上げたダグラスさんに、ソファから立ち上がろうとしていた全員の動きが止まる。そrめお見事なまでに全く一緒のタイミングで。
「……ヘメティ、君だけは少し残ってくれ」
いつものあだ名ではなく普通に名前を呼ばれ困惑するも、俺は黙って頷いた。あだ名を使えるような話ではない、という事に違いない。
何を話されるのかは解らないが、気を引き締めておくに超したことはない。
「じゃ、オレ達は先に戻ってるぜ?」
「あ、解りました。それじゃあ、また後で」
ラスターさんに軽く手を振り、ぞろぞろと司令室を出て行く皆の背中を見送る。
サイラスはあんな話をした直後だと言うのに既に眠そうにしていた。後ろ姿からそれが解るのかと問われれば、肯定する。うつらうつらと舟を漕いでいるのだからすぐに解った。
全員が司令室から出たのを見計らい、ダグラスさんはこちらを振り向いた。
「……突然すまない。ただ、どうしても言いたくてね」
ぎこちなく笑い、彼は司令官が座るべき椅子へと腰掛ける。思えば、彼がその席に座っているのを見るのは本当に久々だった。
いつも普通にソファに座っているから忘れかけていたが、本来司令官であるダグラスさんが座るのはその席だ。
「……何、ですか?」
彼が身に纏う雰囲気が普段とは違うことを感じ取り、妙に不安になる。恐る恐るといった風に、それを尋ねてみる。
「いや、そこまで……大したことじゃないんだ」
大したことじゃない、とは到底思えない。だが、それをしつこく食い下がって追求するわけにも行かず、俺はただダグラスさんの次の言葉を待った。
「君は一度あちら側に捕らえられそうになった身だ。今回は良かったものの、今後どうなるか解らない。……兎に角、用心してくれ」
「……はい」
彼は普段とは違う真面目な光を帯びた目で俺を見据え、はっきりと固い口調で言った。
言われなくても、そうするつもりだった。どうなるか解らないのだから、用心するのは当然のことだ。
それでも、まだ解らないことはある。
「それにしても、何で俺だけ捕まえようとしたんでしょうかね?」
何気なしに俺が口にした瞬間、ダグラスさんの表情が強張った。見たこともない、所謂狼狽と呼ばれるような物だった。
「それは……——解らないね」
少しの間をおいて、ぽつりと彼が漏らす。どこか堅苦しい、演技のような響きを持っている言葉だったが、これ以上訊くことも出来ない。彼の纏っている雰囲気が、そう告げていた。
俺は頭を掻き、首を傾げる以外にできることがなかった。
「さ、ヘメ君ももういいから。引き留めてしまってすまなかった」
今まで通りの微笑と声音で言われ、思わず頷く。もうこれ以上訊いてもダグラスさんは話してくれないだろうと、心の何処かで悟っていた。
「……失礼しました」
俺は頭を下げると扉を開け、司令室を出た。
扉を閉めて息を吐いたのとほぼ同時に肩を叩かれ、僅かに肩を震わせる。誰だと思いながら振り返れば、そこにはアイドが悪戯っぽく笑いながら立っていた。
「よっ、ヘメティ」
「何だアイドか……って、やっと俺の名前覚えたのか?」
今までオッドアイとしか呼ばなかった彼がまともに自分の名前を呼んだことに、俺は少なからず感動を覚えていた。自分の名前を覚えて貰えた、という達成感が胸を満たしていく。
「別に覚えてなかったんじゃなくて、あえてアッチのあだ名で呼んでただけなんだけどな?」
「なっ……覚えてないとか忘れたとか言った癖に!」
まさか、今までの言葉が嘘だったというのだろうか。だからといって別に構わないが、やはり腹が立つ。
彼の白衣の襟を掴んで訊けば、アイドはただ笑っているだけだった。
「ま、いいだろ。今度からはちゃんと呼んでやるから。それじゃ、俺等は司令官に用があるから、じゃあな」
俺等、ということは他にも来ているのだろうかと思い辺りを見回せば、丁度アイドの後ろに隠れるようにしてホリックさんが立っていた。
長い灰色の髪を揺らしながら彼はアイドの後ろから出てきて、俺に微笑んできた。その微笑みはやさしいものだったが、その目は『今まで気付かなかったなんて酷いですね』と冗談無しに語っている。気迫が半端じゃない。
「気配を殺すのは得意ですが……まさか戦う人間にまで通用するとは思っていませんでしたよ」
含み笑いをしながら、ホリックさんは眼鏡を指で押し上げる。それだけを言い残し、彼はさっさと司令室に入ってしまった。
「アイツの嫌味は気にしなくていいぜ? どうせ冗談だろうから。それじゃ、今度こそな」
アイドは短く切られたパステルカラーの水色の髪を掻き上げながら、ホリックさんの後を追って司令室へと足を踏み入れた。
どんな話をするのかは少し気になったが、そこまで気にする必要もない。どうせまた研究班に何か妙なものでも作らせるつもりなんだろう。ダグラスさんの思考回路から行けばそうなる可能性が高い。
一度司令室の扉に目を向けてから、その場を後にした。
「——司令官、またですか?」
紅茶を啜り、アイドは呆れたように、それでいて悲しそうにダグラスへと言った。
向かいにはホリックがソファに腰を下ろしており、ダグラスは司令官の座るべき椅子に腰掛けている。
彼は何も言えず、ただ細く長く溜め息を吐いた。
「……そろそろ、言うべきなんじゃないですか」
普段のアイドからは想像も付かないほどに真面目な固い声で、彼は呟く。その表情は苦しげで、酷く辛そうだった。
「……解っている。……解って、いるんだ……他の皆も、薄々気付いてる。恐らく、ソーマはもう完璧に感付いていると考えていい」
頭を振り、ぼそぼそとダグラスは絞り出すようにして言葉を紡いでいく。
「やっぱり、ですか。……アイツは、昔から勘も良いですからね」
まだその頃は少年と呼べるかも知れない年齢だった頃に、アイドは機関に保護されたソーマと出会った。その頃から、彼が他の人間とは違う事をアイドは見抜いていた。
「後々気付いて絶望するよりも、今言ってしまった方が彼の為にもなると思うんですが、ね……」
ホリックは苦々しく言い、全てを吹っ切るかのようにカップに注がれていた紅茶を全て飲み下した。
「……俺が思うに、アイツはそこまで精神が弱くはないと思うんですよ。絶望しても、それを乗り越えられると……俺は、信じてます」
アイドに返事をすることもなく、ダグラスは立ち上がると机の上に置いてある金属光沢を発する物体を手に乗せる。手の平で軽く包める程度の小さなものだった。
それを握り締め、彼は目を伏せる。
「僕は未だに解らない。このままでいいのか? 彼はこのままで幸せなのか? ここで真実を告げてしまった方が、楽になるんじゃないかって」
「……そんなの、俺だってアイツの顔見る度に考えてますよ」
男三人が同時に溜め息を吐く司令室という空間は、陰気で重苦しくまとわりついてくるような空気に満ちていた。
いつもの明るさなどどこへやら、全員が頭を抱え、苦悩している。
「——彼は何も悪くない。……彼に罪はないんだ……」
呟いたダグラスの声は弱々しく、僅かに震えていた。物体を握り締める手も、声と同じく震えている。
「だからこそ、言う事も必要なのでしょう。……先日やっとまともな会話をした私よりは、あなた達が言った方が……彼の為にもなる筈です」
自分は、真実を告げる程に彼と関わっては居ない。ホリックはそのような意味を込めて、アイドとダグラスに向けて静かに話した。
「……でも、まだ……まだ、時間が欲しい。——こうしていれば、ずっと先送りにしてしまうのは目に見えているのに……」
最早ダグラスの声には涙が混じっていた。それでも頬に涙が伝うことはなく、言葉を詰まらせることもなかった。
アイドはもう一度大きく溜め息を吐き、髪を掻き上げる。
「もう一度、考えてみた方がいいですかね。……司令官も、俺達も」
脱力したように肩の力を抜き、彼はホリックとダグラスを見る。彼等も、言葉には出さずにいるものの同じ考えだった。
今ここで互いに言い合っていても、堂々巡りになるだけなのは目に見えている。
結局、自分達は何もできない無力で覚悟も何もない人間なのだと、三人は否が応にも理解してしまっていた。
「……わざわざ呼んだのに、すまない。……今日は、もういい」
ぽつりと漏らしたダグラスに、二人はまだ何か言いたげだったがソファから腰を上げる。
「——失礼、しました」
その言葉だけを残しホリックとアイドが司令室を出たのを確認してから、ダグラスは大きく息を吐いた。まるで、何かに必死に耐えていたかのように。
指をゆっくりと開いて今までずっと握り締めていたものを見る。余程強い力で握り締めていたのか、手の日は赤く痕がついていた。
「……外さない方が、良かったのかもしれないね」
シルバーのリングに同色の細長い長方形のネームプレートがついたそれを見つめ、彼は何を今更言っているんだと歯噛みし、顔を歪める。
それを机の上、元あった場所に置くとダグラスは紅茶のカップを片付ける為に席を立った。
伏線はあえてバレバレ、それが俺。
何気に五七五とかwww
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プロフィール
HN:
赤闇銀羽
HP:
性別:
非公開
職業:
ソルジャー1st
趣味:
妄想!
自己紹介:
こちらは更新凍結しました
サイトにて活動中。
手描きブログ。
FF、DMC、TOAをメインにやる予定だったのに何かオリジナル増えそう。
こちらは更新凍結しました
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手描きブログ。
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