魔界に堕ちよう 34話 忍者ブログ
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43歳と27歳のコンビはどうなんだろうか(サイラスとファンデヴ)
いや、それを言ったらアルディックとカラッド(29歳と16歳)もそうd…マスタング大佐とエドかよこいつら^p^p^p^




RELAYS - リレイズ - 34 【掃除】

「──というか何なんだこの紙の山は……」
「面倒だな」
「少しは整理した方が良いぞ、仕事の効率が上がる」
「兄サンの机が綺麗すぎるだけじゃね? 取り敢えずもうこれ面倒なんだけど」
「……逃げないでよ? 私だってちゃんとやってるんだから」
「逃げねーよ! ぶっちゃけ逃げたいけどな!!」
「仕方ないと思う。愚痴っても始まらない」
無理矢理掃除に参加させられた俺達は、巨大兵器の破損した部位や飛んできた資料等で酷い事になっている廊下を中腰で歩き回りながら掃除をしていた。
「取り敢えず、かなり度胸があると思うな、あの人は」
「そうですか?」
ゴミ袋を片手に、ネジや金属板、その他諸々の部品を拾い上げてはその中に放り込んでいたシェイド大佐が軍服の襟元を緩めながら言った。
「そうだろう。……堂々と大佐に掃除をさせるなんてな」
「……要するに怒ってるんですね、解ります」
「怒るに決まっているだろう! オレは何もしていないんだぞ!!」
確かにそうだが、ダグラスさんが『みんなで掃除しようよ!』と言ってしまったのだから仕方がない。
別に反論しても死刑とかはないに決まっている。ただ何となく反抗できないだけで。
あの人に逆らったら何があるか解ったもんじゃない。変な薬の実験台にされる可能性だってある。
実際研究班でそういう事になった人達を何回も見てきた。怖くて怖くてしょうがない。
「……自分のせいで、ごめん大佐」
今までほぼ無言で黙々と資料を集め、揃え、近くの部屋にあった机の上に置いていたファンデヴが不意に口を開き、大佐に向かって謝罪した。
「いや、お前のせいではない。こんなのをちゃんと強度のあるワイヤーで縛っておかなかった研究班が悪い」
「俺達のせいだって言いたいのか!」
そうだろ、どう考えても。何でそんな細いワイヤーなんだ。
ワイヤーの太さはせいぜい1,2ミリ程度だ。これだけ巨大な機械を拘束しておくにはどう見ても太さが足りない。
故障させたから大丈夫だ、ということでこうなったのかもしれないが、あんまりだろう。
「あー畜生……腰が痛ぇ」
「さすがオッサンだな」
「うるせェ誰がオッサンだ!! 20超えてるかどうかすら解らないような餓鬼に言われたくねぇよ!!」
「餓鬼じゃねぇ、オレはもう23だバーカ!!」
「馬鹿っていう奴が馬鹿なんだろうが!!」
「何だと、アンタの方が」
「煩い黙れ、どちらも馬鹿だ」
不毛な言い争いを続けていたサイラスとラスターさんを、ソーマが一言で黙らせた。これを鶴の一声っていうのか?
っていうかラスターさん23歳だったのか。まだ20歳くらいだと思っていたのに。
それにしても資料の種類──内容?が雑多すぎる。
何か訳の分からない薬品の調合法とか、複雑すぎてただの暗号にしか見えない数式とか、何が書いてあるのかさっぱり解らない物とかが溢れかえっている。
そして薬品の書類がまとめてクリップで留められているのかと思ったら、今度は能力者の旧名簿だったりする。何年前のなんだ。
若干この酷い惨状からの現実逃避も兼ねて、その旧名簿に目を通した。
俺の名前がどこにもない。恐らく俺が機関に来る前の名簿だ。ソーマの名前があったことに驚いたが。
俺は殺意のようなオーラが滲み出しているソーマの背中を見る。
一体こいつはどれだけの間、機関に所属しているのだろうか。
それが少し気になったが、ソーマが簡単に教えてくれる訳がない。どうせ『何故貴様に教えなければいけないんだ』と一蹴されるのがオチだ。
「──11年だ」
「え?」
一瞬心を見透かされたのかと思った。突然の言葉に、俺はソーマに聞き返す。
ソーマは俺の手から資料を取ると、それを読みながら答えた。
「俺がいつから此処に居たのか、それが訊きたいのだろう。だから答えただけだ」
「……何で解ったんだよ」
「旧名簿を見た後にこちらを見ていれば、すぐに解る」
資料を投げ捨てながら、小馬鹿にするような声音でソーマは告げた。
「って、何普通に投げてるんだ! 折角整理したのに!」
そんな俺の尤もな──自分でそう思っているだけかもしれないが──反論には答えないまま、ソーマは堂々と資料と機械の破片を踏みつけながらどこかに行ってしまった。
「11年……か」
今のソーマの年齢が18、ここに来たのが11年前──ということは、ソーマは7歳の頃から機関に所属していることになる。
どうしてそうなったのかは訊いてみなければ解らない。それに、あまり知りたいとも思わない。
勿論『今のところ』は、というだけだけれど。もしかしたら、今後知りたくなる事もあるかもしれない。
「はいはーいサボる暇があったらちゃんとやってねー」
「あ、すみませ……ダグラスさんが一番サボってません!?」
コーヒーカップを片手にのんびりと椅子に座りながら言われても困る。一番サボってるのは言っている本人だ。
「やだなー休憩だよこれは」
「休憩とは思えないんですけど」
「休憩って言ったら休憩」
本当に休憩ならコーヒーを自分で注いでゆっくりと飲むなんてしない……いや、この人ならしそうで怖い。何をしでかすか解らない人だから。
「──あれ、兄サンどうしたんだよ」
「包帯が邪魔で仕方がない。取る」
「え、いいのかよ?」
不意に聞こえた会話に、ダグラスさんから視線を外してそちらを見る。
シェイド大佐が、自分の後頭部に手を回して包帯を解いていた。
あれは邪魔だと思う。うん、絶対邪魔だ。
そういえば、イーナには『ただの怪我を隠すため』みたいな感じで話していたな、なんて事を思い出しながら、俺は資料を手にしたままで立っていた。
微かに衣擦れの音を残して、包帯が全てシェイド大佐の手の中に収まった。
「……やはり目立つか、傷は」
「いや、前に比べたらずっと目立たなくなってるけど。ホントに外して良かったのか?」
左頬の正面から見て斜め右下から鼻の辺りまで続いている傷痕と、髪の毛で隠れているが右の額に僅かに見える傷痕。
かなり時間は経っていると思うのだが、それは未だにはっきりと刻まれていた。
それを触りながらラスターさんと言葉を交わしている。
「──ああ、そういえばヘメティ達はオレの傷痕を見るのは初めてか。というよりも包帯を外す所さえ見ていなかったか」
俺の視線に気付いたのか、シェイド大佐が俺に近づきながら訊いてきた。
「そうですけど……その傷どうしたんですか?」
「数年前の戦いで、な。治っているから大丈夫だ。包帯を巻いているのは傷を隠す為でもあるが、それよりもオレ自身の趣味と言った方が正しいくらいだからな」
「どういう趣味ですか」
「格好いいだろう」
それは多分思春期の辺りに入ったほんの一部の子供が思う『眼帯とか血は格好いい』と同類な気がしてならない。
いや、本人の嗜好なのだからどうこう言うつもりはないけれど。
「あ、じゃあ私がむしり取っても大丈夫ってことね?」
「そうなるが──って、お前はいつの間にオレの後ろに居た!!」
「いや突っ込むところ違う! 何でむしり取っても良い感じになってるんですか!!」
本当にいつの間にイーナはシェイド大佐の後ろに立っていたんだ。しかも暗黒微笑ときている。
「だから換えの包帯だったら幾らでもあるから大丈夫だと言っているんだ」
大丈夫じゃないだろ、どう考えても。換えがあるから大丈夫、なんて。
「……にしても……傷、結構深かった?」
まるで患者の怪我の治りが遅いのを心配する医者のような目つきで、歩み寄ってきたファンデヴが問いかけた。
「確かに深かった。そうでなければ、傷痕がここまではっきりと残っているのもおかしい」
「やっぱりそうか。うん、いきなりごめん」
「おーいファンデヴ、あんまりふらふら歩き回るんじゃねぇぞー」
先程まで腰痛で唸っていたサイラスの声に、ファンデヴは「解ってる」とだけ返すとそちらの方へと今度は小走りで走っていった。
会ってから間もないのだから、相手がよく解らないのは仕方がないとは思う。
だが、ファンデヴの場合は色々扱いづらいというか、言動が意味深で対応しづらい。
元々そういう口調なのか、意図的にこうしているのかは知らないが、話し方も特徴的すぎてどう返したらいいのか少し戸惑ってしまう。
「……まあ、これから少しずつ慣れていけば大丈夫か」
最初はソーマもかなり戸惑った。何を言っても黙れとしか言われなかった。
それでも時間が経つに連れて結構上手く会話できるようにはなった。結局は『慣れ』なのだと思う。
だからきっと、何れはファンデヴともちゃんと話せるようになる。
それよりも、まずはこの惨状をどうにかするのが先決だ。早く終わらせないとこの後に色々響く。
俺はそう考えながら、取り敢えず手当たり次第に資料を手に取った。




真面目に掃除してるのはファンデヴとシェイドだけだったりする←

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